箒ちゃんの専用機を持つタイミングが少し早くなっています
一夏さんはいつまでも届かない専用機に少しイライラしているようだった。
この一週間で鈴さんがISの基礎を、箒さんが剣道を教え、メキメキと状態していた。鈴さん曰わく飲み込みが非常にいいらしい。周りは流石は世界最強の弟などといっているが私自身は『~~~の弟』とかそんなものに興味はないので素直を彼には感心している。………あの鈍感さとシスコンがなくなればもっとよろしいのですがね……
『一年一組の織斑と篠ノ之は今すぐ第2整備室まで来なさい』
あら……専用機が届いたのですかね?
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一夏side
「なあ一夏、お前には専用機が届くとしても何で私まで呼ばれたんだろうな?」
「うーん……わからん。」
口ではそう言ったものの俺も箒も薄々は理解していた。恐らく束さんの仕業だろう。彼女は俺と千冬姉、そして実の妹である箒にはとことん優しかった、なので箒に専用機を用意していてもあながち不思議ではない。
「まあ行ってみればわかるだろう。」
「む…それもそうだな。ここではないのか?第2整備室とやらは?」
箒が指を指した場所には『第2整備室』とプレートが埋め込まれていた。中からは人の声が聞こえる、恐らく千冬姉と誰かだろう、そう思いながら俺と箒は整備室に入った。
「いっくーーーん!!箒ちゃーーーん!!」
目の前にはウサミミをつけ、胸元が開いたデザインのエプロンドレスと独特のファッションセンスを持ち、1人でISの基礎理論を考案、実証し、全てのISのコアを造った自他共に認める天災科学者、篠ノ之束がいきなり俺達に向かって飛びついてきた。
「束、さっさと用件を済ませろ。」
「もー、せっかくの姉妹の再会だってのに~」
イライラしていた千冬姉が束さんを殴りつけた。それでも束さんは笑顔であり、ポケットから何かを取り出した。
「はい!これがいっくんと箒ちゃんの専用機!『ダブルオー』と『サキガケ』だよ!」
そういって束さんはISを展開した。
『ダブルオー』は青と白のカラーリングのスリムな機体であり、腕には大型のブレードが装着されていた。
『サキガケ』は普通のISの規格とは全く違う細すぎる四肢、そして標準的な武装が装備されている。そして両機に共通しているのは背部に非固定のコーン型の何かがダブルオーには二つ、サキガケには一つついていることだった。
「まずは気になっているであろうこのコーン型の非固定武装について説明するね。これはGNドライヴと言って西暦2312年から来た未知の半永久機関だよ。これのおかげでこの二機は既存のISを軽く凌駕するエネルギー効率を誇るね、いっくんのダブルオーには2つついているけどこれはちょっとした実験の為だよ。」
さらっと凄いこと言ったなこの人……まあそれはおいておいて。
「『タブルオー』『サキガケ』は共に近接戦闘特化機体だよ、機体の特徴は──────」
……ふむ、なるほどな、とりあえずこのブレードで戦えってことか。とりあえず時間がない、さっさと出撃するか。
「ありがとうございます、束さん。千ふ……織斑先生。」
「………とりあえず午後の授業は休め、そして調整に当てろ。」
「!………はい!」
俺と箒はアリーナへと、ダブルオーの待機形態である花のネックレスを箒は模造刀を持って走り出した。
二時間後………
「箒」
「な、なんだ…?」
「行ってくる。」
「あ……ああ。勝ってこい!」
箒の言葉に首肯で答えて、俺はピット・ゲートに進む、メインスラスターである二つのドライヴは起動していないもののかすかに体を動かすだけでダブルオーは浮き上がって前へと動いた。
────GNソードⅡ、確認
──────GNビームサーベル、稼働安定
────TRANS-AMsystem、発動可能まで約27分
そんな言葉と共にダブルオーが俺の体に合わせて最適化処理を行う、その前段階の初期化が行われているのだ。今この瞬間にもダブルオーは中身と外見を変化させている。
ゲート解放まで3秒、俺の意識に応えるようにダブルオーは二つのGNドライヴから緑色の美しい粒子を放出した。
「織斑一夏、ダブルオー!行くぞ!」
アリーナ
「あら、逃げずに来ましたのね」
シンシアがふふんと鼻を鳴らす。また腰に手を当てたポーズが様になっている。
けれどおれはそんなところに関心はない、ハイパーセンサーは感知しないのだから。
鮮やかな青色を貴重とした機体『ブルー・ティアーズ』。その見た目にはどこか気高ささえも感じさせる。
「最後のチャンスをあげますわ。」
「はぁ?」
「今、この場で謝ると言うのなら許してあげないこともなくってよ?」
敵のISが射撃モードに入った。恐らく俺がNOと宣言した瞬間に終わらせるつもりだろう。
始めて展開した時は思わなかったがISの処理情報は非常に多い、一度飲み込んでから整理しないとあっという間に飲まれてしまう。シンシアにも、ダブルオーにも。
………よし!
「そういうのはチャンスとは言わねぇな。」
「そう?残念ですわね、それなら─────」
────caution!!caution!!
ダブルオーが警告音を鳴らした瞬間シンシアの持つ大型レーザーライフル『スターライトmkⅡ』を構え、エネルギーの充填が完了した。
「お別れですわね!!」
キィン!
耳をつんざくような独特の発射音、それと同時に走った閃光が俺の体を高速で撃ち抜いた。
「うおっ!?」
ダブルオーのオートガードがなんとか守ってくれた。直撃は避けたものの左肩の装甲が一撃で吹き飛ぶ。直後、遅れてやってきたソニックブームによって左腕が吹き飛ぶレベルの痛みが俺の体にやってく来た。ただ幸運なことに肩の上に存在する非固定武装でありメインスラスターであるGNドライヴを狙われていないのは不幸中の幸いだ。
────バリア貫通、ダメージ130。シールドエネルギー残量550。実体ダメージ、レベル低
(くそっ!俺がダブルオーに追いつけない!)
ISはシールドエネルギーを0にした方が勝者なのだが先ほどのようにバリアを貫通すると実体がダメージを受ける。あくまで絶対防御は『本当に死にそうな時』にしか発動しないため、IS自らが左肩を落とされても死なないと判断しているのだろう。
─────ツインドライヴ同調率60%、稼働不安定粋に入りました
くっ…GNドライヴには頼らない方がよさそうだな……とりあえずこのブレードで!
キィィィン……
高周波の音と共に俺の手には『GNソードⅡ』が展開され、手のひらに収まった。
「中距離射撃型の私に、近距離装備で挑もうなど………笑止ですわ!」
シンシアとの距離は27メートル、今の俺にはこれが何キロにも思える道のりだ、だが───
「やってやるさ!」
引くわけにはいかない、激戦が始まった
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「………25分…よく持ちましたわね…」
俺のシールドエネルギーは残り174、対してシンシアのシールドエネルギーはまだ殆ど残っている。正直絶望的な状況だが……
───可能性を捨てるな、チャンスは必ず来る。
あの金色のISのパイロットの女の子が言っていた言葉だ。………そうだな、まだ勝機はある、ここで諦めたらあの子に会うことだって出来ないしあの子は振り向いてくれない。
────TRANS-AMsystem、発動可能
このTRANS-AMとやらが何かわからないがとりあえずわかったことはあのISのビット兵器『ブルー・ティアーズ』。あれは必ず俺の反応が一番遠い角度を狙ってくる。
逆に言ってしまえばどこに攻撃が来るかが理解できればある程度は俺の考える通りに動かしてくれる。そこを待ち伏せ、間合いに入り込めばあのライフルとビットを腐られることができる。
箒との特訓で戻した剣道における極限の集中、相手の『殺気』を感じ取る力。そして鈴との特訓で手に入れた間合いを詰める方法。
(────行ける!)
それにダブルオーの初期設定も徐々に終わってきたのか反応が異常な程軽くなっている。
俺はやっと見え始めた勝利の『可能性』に胸を躍らせた。
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「はぁぁ……。凄いですねぇ、織斑君。」
ピットでモニターを見ていた山田先生が呟く。これまでに一夏がISを動かしたのは間違えて触れた一回、それに入学試験での山田先生との戦いで一回、そして今回……一回目は触れただけなので実質二回目である。それなのにあの健闘ぶりであった。
だが織斑千冬は対照的に忌々しげな顔をする。
「あの馬鹿者。浮かれているな。」
「え?どうしてわかるんですか?」
「さっきから左手を閉じたり開いたりしてるだろう?あれは、あいつの昔からのクセであれが出るときは大概初歩的なミスをする。」
「へぇ……。さすがご姉弟ですねー。そんな細かいこととまでわかるなんて。」
なんとなくそういった山田先生に、けれど千冬はハッとする。
「ま、まあなんだ。あれでも一応私の弟だからな…」
「あー、照れてるんですかー?照れてるんです………いたたたたた!!!」
ぎりりりっ。と音を立ててヘッドロックが炸裂した。
「私はからかわれるのが嫌いだ。」
「ギブ!ギブです!離して……ううう!!」
じゃれ合っている二人を気にせずに箒は険しい顔でモニターを見つめている。
(一夏……!)
箒がそう思った時、試合は動いた。
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─────ここは俺の距離だ!!
シンシアの間合い────つまり俺の距離に入った俺は、『GNソードⅡ』を振り下ろしビットを破壊。さらに近づいてきたビットを蹴り飛ばして吹き飛ばす。あのライフルは一秒前に撃ちきったばかりだ、次のチャージまで恐らく5秒はかかる。最高の一撃が入ると確信した。
「ここは!俺の距離だ!」
「────かかりましたわ。」
にやりとシンシアが笑うのが見えた。───マズい!
本能的に危険を察知して距離を離そうとするが間に合わない。
シンシアの腰部から広がるスカートアーマー。その突起が外れて動きだした。
「残念!ブルー・ティアーズは六機ありましてよ!」
間に合わない、しかもさっきのレーザーではなくこれはミサイルだ。
──────TRANS-AM
俺の頭に電子音が響いた瞬間、赤を超えて白い、その爆発と光に俺は包まれた。
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「一夏……!!」
モニターを見つめていた箒は声を上げた。
先ほどまで騒いでいた千冬と山田先生も、画面を真剣な面持ちで注視する。
「───ふん」
煙がはれたとき、千冬は鼻をならした。けれど、その顔には安堵の色がある。
「機体に救われたな、ばか者め。」
煙が吹き飛ばされ、その中心にはあの青と白の機体があった。
赤い燐光を纏って────
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────TRANS-AMsystem発動、GNドライヴ同調率120%、ツインドライヴ、発動します。
(なんだ………!!)
見るとダブルオーが赤い燐光を纏っていた。そしてGNドライヴから発せられるGN粒子の量も完全に二つのドライヴが同調を果たしたことにより圧倒的に多くなった。─────行ける!
俺はこの力で千冬姉を守る、守られるだけの関係は終わりにしよう。これからは───
「俺は、俺の家族を守る」
「……は?あなた、何いって「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ!」
元世界最強の、その弟。それが不出来では格好がつかない。そう、あの格好いい千冬姉が格好がつかないなんて冗談もいいところだ。きっとあの子も見ていることだろう。
「………はっ、むしろ逆に笑われるな…。」
「さっきから何いって……ああもう!まどろっこしいですわ!」
ミサイルを装填したビットが二機、こちらに飛んでくる。だが───
「遅い……!!」
GNソードⅡを構えた右手を握りしめ、それを高速で振り下ろしてビットを破壊する。
「そ…そんな……、ハイパーセンサーでも反応できないスピードなんて……。」
……このトランザムとやら、凄まじい。相手の動きが全てスローに見えるぐらいこちらの動きが早くなる。………っ!?
俺は吐きそうな感覚に襲われた、まだトランザムに俺の体が慣れていないせいか、先程一刀両断した際の移動による不可Gが凄まじく、体もヒシヒシと痛み出した。早めに終わらさねぇとな。
「おおおおっ!」
─────GNドライヴ、同調率150%オーバー!!caution!caution!
凄まじく同調率が上昇し、俺の持つGNブレードⅡにはより強い力が集まった。
(行ける……!)
────このままだと負荷に耐えることが出来ません!
シンシアの懐に飛び込んだ俺は下段から上段への逆袈裟払いを放
ボン!ボン!
「なっ!?」
──とうとした瞬間、二つのGNドライヴが爆発し、そのままトランザムが終了してしまった。それと共に試合の終了を告げるブザーが鳴り響いた。
『試合終了。勝者───シンシア・マグドウェル』
………え?
多分俺は全力で「なんで?」と言う顔をしていたことだろう。シンシアも全く同じ顔をしている。
そしてそれはギャラリーも、ピットで試合を見ていた箒、山田先生、なんと千冬姉までもだった。
………ただあそこの離れたところから見ている3人、鈴とセシリア、そしてなぜか7日前の深夜、アリーナにいた更織さんだけが冷静な顔で俺──というよりダブルオーを観察している。
何が起こったのかわからないまま、試合は終了して、結果俺は────負けた。
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ふむ……あのトランザムと言われてたあの発光現状……、あの状態のダブルオーは恐らくデストロイモードに匹敵する性能を誇りますわね…ただあのスラスターが爆発した所を見るとどうやらあの機体は不安定………あの二つのスラスターが通常時にも完全に同調してしまうと、……嫌な予感しかしません…
『オルコットとマクドウェルの試合はマクドウェルのISの修復が完了した後とする。』
……焦らせますわねぇ
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「くっ……」
俺は悔しかった、最後の爆発さえなければ、……いや、俺の技量のせいだ、間違いなく勝てる試合だった。
「ごめんね、いっくん。」
技術室に戻るとそこには束さんがいた、この人にしては珍しく少し悲しそうな顔をしている。
「束さん……」
「…姉さん、どうして一夏のGNドライヴは爆発したのですか?」
箒が俺が聞きたかったことを聞いてくれた。………常に同調率が60~70%というとても不安定な状態でトランザムを使った時のみ完全に同調していた。
「いっくんのダブルオーで行った実験は『ツインドライヴ』と言って波長の似通った………例えるとちーちゃんの使っているGNドライヴといっくんの使っているGNドライヴを同時にくっつける実験だよ。」
「待て束、たったエネルギーを二倍にするためにあそこまでの危険を孕む必要があるのか?」
「二倍じゃないよー、たった二倍ならこんなことしないよー。」
……………まさか……いや、これが本当だったらおかしいぞ……桁が違いすぎる……
「…………二乗ですか?」
「だーいせいかい!!で、爆発した理由はこの右と左のGNドライヴの間には微妙な波長の差があってね、それをいっくんはトランザムを使って無理矢理同調させたことによる反動が来たみたい。」
「……そもそもこの機体の装甲……Eカーボンだったか…?少し調べさせてもらったがあれは現在この地球に存在しない素材だ、どこで手に入れた?それにその他様々なことまであの機体には謎が多すぎる。」
「……まあそれは今度教えるよ。今はいっくんのツインドライヴを安定させる研究をしないと!じゃあねー!」
束さんは技術室を出てすぐにどこかに走っていった。自由だなあの人も……
ほぼ原作です。
シンシア・マグドウェルについては見た目は原作のセシリアに割と似ています。
一夏の専用機がエクシアかダブルオーかで一週間悩み、箒の専用機をGNフラッグかサキガケで3日悩みました。