ロリキラー 作:荒餓鬼
『お前さぁ、何回言えば殺せる訳ェ?』
世間一般の常識的には考えられない発言だがこの業界では正論である。殺し屋業界では当たり前の事だ。
「すみません……」
間違っていないけれど法的には間違っているが、そこに突っ込めるほど元気じゃない。僕はただ頭を下げて、上司の怒りが収まることを待つ事しか出来ない。
『ったく、いつもいつもそうだよなぁ!!お前。謝れば許されると思ってんだろ?そしたら警察はいらねえし、俺らが上に頼まれて人を殺す必要もねえんだよ!』
上司怒りは最高潮に達し、机に置かれていた本の角で頭を殴られる。これが木とかもっとやばい物じゃなくて良かった。痛みはこれぐらいじゃ済まないだろう。
それから暫く僕でストレスを発散した後。漸く本題に移った。
『お前さぁ、拾ってやったのは良いけどさぁ全然仕事しねえじゃん。なぁ』
「すいません……初めてで色々分からなくて」
『三回目だろ?これで三回メェ!初めてじゃないの!!普通は三回やればバカでも猿でもガキですら殺れるんだよ。なのに、お前は何なんだ?』
「……」
『ゴミだよ。いや、ゴミ以下だな』
「ははっ、そうですね……ゴミでごめんなさいすいません」
『そうだ、お前はゴミだ。だが、俺はゴミにも優しくする男だ。ゴミの中にこそお宝が眠ってる可能性がある。良いか?分かるよな俺の言ってる事』
「分かります」
頷くと、ニヤリと上司は笑って僕の足元に紙を落とした。
『それがお前の最後の仕事だ。それに書いてある奴を殺せ。成功したら、またお前を此処に居させてやる。だが、これすら失敗したら俺がお前を殺してやる』
生きて帰れると思うなよと言う激励の言葉を浴びながら、鉛のように重い身体を動かして部屋を出た。
異世界転生しても、ラノベみたいな生活は送れませんでした。
僕のゴミみたいな二度目の人生を語るにはこの一言に限ると思う。産まれて早々何処かに捨てられて、そこからスラム街みたいな荒れ果てた街で呆然としていたら今の上司に拾われた。そして今は殺し屋をやっている。いや、それすら出来てない。
……まぁ、そんなのどうでも良いか。今は仕事に集中しないと死んじゃうから頑張らないとな。今回の仕事は……。
はいはい、成程ね。そう言う事ね。
よし、それじゃあ行きますか。
それからそこら辺をウロウロしていると、紙に描いてある少女の絵と同じ見た目の少女がいた。今にも崩れそうな建物の前で蹲っている。
俺は背後へと回り。漏れる息を殺し、ポケットからそっとナイフを出し彼女の白く細い首を切ろうとした。
出来なかった。
出来なきゃ死ぬのに、殺さなきゃ僕が。なのに、なのに。死にたく無い。だけど、誰かを殺してまでこのゴミみたいな人生を僕は続けたいのか。それに首は振れない。そこまでして価値のある人生じゃないからだ。じゃあ死のう、これで終わろう。
僕は彼女からそっとナイフを遠ざけ、ポッケにしまうとその場からゆっくりと離れる。
『殺さないの?』
「え」
足が止まった。
途端に汗が止まらなくなる。目撃者は絶対に殺さなきゃ行けない。最悪だ、殺さなきゃと言う考えがまた頭によぎる。
「な、何言ってるんだい?」
今だに蹲っている彼女が見えてる訳無い。そう思い、僕は誤魔化すことにした。彼女を殺したくは無かった。
『何で誤魔化すの?そうだって言えば良いのに、変なの』
彼女の声は明るかった。こんな掃き溜めの様な場所にいるのに、不気味な程明るい声色で彼女は笑う様に話す。
『私の元へは皆近付かないんだ。私ってヘンらしくてさ。今こうしてるけど、全部見えるんだ。だからさっきまで私の首に当てて、今は左ポケットに入っているナイフも汗をかいてるお兄さんの顔も見えるよ』
「こ、これはオモチャだよ」
『そう言えば、昨日隣の家の人が言ってたのを聞いたんだけど私死ぬらしいんだよね。何でも、今日殺し屋が来て私は殺されるらしいよ』
お兄さんが
『さぁ、殺してよ』
手を広げて彼女は近づいて来た。ナイフを取り出して胸に突きつければ死ぬ。そして、彼女の亡骸を……。
「いや、殺さない」
『何でさ』
「死にたいのは僕の方だから。死にたいのなら、先に僕からナイフを奪って僕を殺してから、勝手に死んでよ。どっちみち、僕は死ぬんだからさ」
『いや、私死にたい訳じゃないし。殺し屋なのに死にたいんだ。面白いね』
地獄の様な場所で馬鹿みたいに笑い転げる彼女を見ていると、全てがどうでも良くなって来た。そしてつられて僕も笑っていると、どっちかのお腹が鳴った。
『あーお腹空いた』
「僕もだよ……」
二人揃ってお腹をさすっているとまた笑いが込み上げて来た。どうしようかと考えた所。肉が食べたくなった。
鉄板に油を引いて肉を焼けばジューッと音が立つ。次第に良い匂いがその場に広がる。
「美味しいね」
『そうだけど、良いの?私も食べて』
「横で見られながら一人で食べるのは気まずいから食べてよ」
最後の晩餐にと、肉を買った為。二人で食べるには多い量だが気にしない。腹一杯食べようと思う。まぁ、タレとか欲しいかなとは思うがワイルドな味わいが結構クセになって美味い。部位ごとに味も違うし、飽きない味わいだ。
『こんな時間がずっと続けば良いのにね』
減らない肉を眺めながら、彼女はそう言った。肯定の意味を込めて、頷きながら肉を頬張った。
それから暫く無心で肉を頬張る時間が続いた。焼肉臭いだろうなと思いながら、そこで一つ思い付いた。これが上手く行けば、僕は死なずに済むし彼女も死ななくて済む。ハッピーエンドである。
急いでその場から離れ街へと走った。
『どうしたの?突然走り出して』
急いで戻って来た僕を見て不思議そうな顔をしているが、それには気を止めず買ってきた粘土を彼女の手に纏わりつける。
『え、何これ』
少ししてそれをそっと取ると。今度は肉を巻きつけて焼いた。焦げ付く様な匂いがしてから、取り出すと。
そこには黒焦げの少女の手があった。
『え、何してるの?』
「証拠品づくり。これなら、僕が臭いのも時間が掛かったのも納得される筈。それで、君は死んだ事になり僕も死ななくて済む」
上手く行くかは分からないけどやるしか無い。残りの肉を平らげると、上司の元へ戻った。
『殺ったのか!?』
驚いた様子で、上司は俺の元へ近付く。それに対して僕はなるべく狂った様な感じでニヤリと笑う。いつも見ているからそれを真似れば良いだけだ。
『……あの子供はやべえ奴らしいからな。良くやったぞ!後で金が振り込まれるだろうからお前にも渡そう!』
「まだここに居て良いんですね」
『あぁ、勿論だ。良くやったな』
それを聞いて僕は心の中で笑った。