こっちの世界へ早くおいでね。
夜中の2時
真っ暗な世界の中その男は光に照らされていた。
月の光では無い。
自分の机の周りの光とパソコンから放たれる光によって。
もう何日目になるのだろう?
家にも帰らず、会社に残って仕事をこなすのは。
机の周りの缶コーヒーやらエナジードリンクの残骸が教えてくれるはずがない。
ただただ感情を殺し仕事をこなしていく。
自分がブラック企業に勤めていることはとっくの前に気づいている。
「ふぅ、、」
ため息がもれる。
集中力が切れてきた。
タバコを吸いに少し席を立つ。
ぐにゃりと世界が歪む。
転びそうになるのを防ぐために足を出そうとする。
しかし、その足は前に出ることはなかった。
「あ、、れ、、、」
初めて言葉を話した赤子のように拙い声を出しながら、床にキスをする。
「い、、、た、、、、」
自分が言葉をだし終えるより先に、世界から光が消えた。
小学生の頃、クラスでモテていた男子は足の速いやつだった。
中学生の頃、クラスでモテていた男子は運動神経が良いやつだった。
高校生の頃、クラスでモテていた男子は顔が良いやつだった。
大学生の頃、学校でモテていた男子はコミュニケーション能力が高いやつだった。
大人になって、社会でモテていた男子はお金を稼いでいるやつだった。
そんな中、僕は足も速くない、運動神経も良くない、顔も良くない、コミュニケーション能力も高くない、お金も稼いでるってほど稼いではいない。
僕には何も無い。何も持ってなかった。何も得ようとしなかった。
だから、僕はいつの間にか周りのせいにした。周りのせいにしてしまった。
いつからだろうか、努力しなくなって、夢を諦めて、全部諦めて、生まれた環境のせいにしたのは。
これが走馬灯ってやつか。
僕は薄れゆく意識の中、自分の人生を振り返っていた。
ろくでもない人生だった。
最後の最後にはモテてるやつに嫉妬して。
知っている。彼らは努力したからモテている。
知っていた。その事に僕は気づいていた。
知っていて。僕はその事実から目を逸らしていた。
これが今までのツケかもな。
薄れゆう意識の中、僕は僕の人生に後悔していた。
目が覚めたら真っ白な空間にいた。
「知らない空間だ。」
「何を言っておる?」
声が聞こえる。きっと幻聴だろう。僕は死んだはずだ。
「余を無視するでない。」
また声が聞こえる。でも周りには何も無い。
「お主聞こえておるか?」
真っ白な空間から声が聞こえる。意味がわからない。
「おーい、聞こえておるなら返事をしてくれぬか。」
きっと働きすぎて幻聴が聞こえてきてるだけだろう。
「いい加減にせんかばかもの。」
「ひゃい」
「聞こえておるなら無視するでない。」
変な声が出てしまった。驚いただけだ。ここは真っ白な空間で誰もいないはずなんだけど。
とりあえず謝ろう。社会人とりあえず謝ることが大切。
「大変申し訳ございませんでした。姿がお見えしなかったので私がおかしくなったかと勘違いしておりました。」
「あー余は姿がないからの、まぁ許してやろう。」
「ありがとうございます。」
その場で深々と頭を下げながらお礼を言う。
姿がないとは?そもそも誰なんだ?様々な疑問が浮かび上がる。
ここはひとつ質問して聞いてみるか。
「すいませんが質問してもよろしいでしょうか?」
「どうした?」
社会人として質問する前にしっかり聞くこれ大事。
「貴方様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「余に名前はないが、そうじゃな、そちらでは神様とか呼ばれておる存在である。」
神様?今神様と言った?神様ってあの神様?
確かに僕が死んだのなら神様に天国が地獄を決めてもらうってことか?
あれ?でもそれは閻魔様じゃなかったか?どちらにせよ僕は地獄に行くと思う。
僕が思考を凝らしていると声がかかる。
「まぁ余がお主をここに呼んだのだ。」
「私が天国に行くか、地獄に行くかを決めるということですね。」
「お主何を言っておる?それはあいつの役割であるぞ。」
どうやら違ったらしい。それならここに呼ばれた理由がよく分からない。
「すいませんが、なぜ私はここに呼ばれたのでしょうか?」
「それはお主が転生することに決まったからである。」
「は?転生?」
意味がわからない言葉に思わず声が漏れる。
「そうじゃお主は今から転生してもらう。」
「申し訳ございません。私の知識不足で申し訳ございませんが転生とはなんでしょうか?」
「まぁ簡単に言うとお主が生きた世界と違う世界で生きてもらうってことじゃな。」
ちょっとよく分からない。違う世界とはなんだろうか?
よくゲームとかである剣とか魔法とかの世界で生きろってことだろうか?
「すいません。私が今から生きる世界というものはどのような世界なのでしょうか?」
「それは、、、行ってからのお楽しみじゃ。」
まるで人をからかうかのような声で僕に告げてくる。
「おっと、話をしておったらだいぶ時間が経ってしまった。それじゃ頑張るんじゃぞ。」
「最後にひとつよろしいでしょうか?どうして私なんでしょうか?」
これが分からない。どうして僕なんだろうか?もっといい人だっているはずだし、僕みたいな何もない人間なんて。
「それは、お主が甘いからな。たくさん苦しむ姿見せておくれよ。」
神様がそう言うと僕の意識は遠のいていく。
僕が甘いってどういうことだろうか?
なんで神様が苦しむ姿を見たいのだろうか?
そもそも神様って言ってるけど悪魔じゃないんだろうか?
最後にそんな事を思いながら意識は途切れてしまった。
「知らない天井だ。」
僕はそう呟いて身体を起こそうとする。
しかし、その瞬間流れてくる僕の知らない記憶。
僕はその膨大な記憶を処理するのに、知恵熱を出して三日三晩寝込んでしまった。
次回もゆるっと書いていきますのでお待ちください。
誤字脱字報告あればお願いいたします。
こんなのあったらいいなーなどありましたら感想お願い致します。
ではまた次回お会いしましょう。