「「「カンパーイ」」」
僕は目の前にある黄金の炭酸を口に含み喉を鳴らす。
口いっぱいに広がる大人の味、鼻から広がるアルコールの匂い、そして全身を巡るビールの味。
「ぷはぁ〜」
思わず声が漏れる。
この味は大好きだ。
何連勤もさせられた仕事の後何もかもを忘れさせてくれる味、現実を少しでも見ないようにとよく飲んでいた。
「いい飲みっぷりだねー、もしかして飲みなれている?」
「いや、初めてですよ。」
隣に座る女性から声をかけられた。
僕は咄嗟に嘘をついた、いや正確にはこの身体では嘘ではない。
周りを見渡す、机の上には沢山の料理が並んでいる。料理というかツマミ的なものが多いが、そして少しばかりの男性陣と、男性陣を取り囲む沢山の女性陣がいた。
なんでこんな状況の中にいるのか、それは1週間ほど前の話になる。
月曜日、人生で2度目の大学の入学式が行われた。
大学生というのは人生の夏休みと呼ばれているほど自由な時間が多い。
少なくとも4年間は仕事をしなくてもいいと思うだけで心がおどった。
そんなウキウキの気分で全体の入学式を受けていたのだが、圧倒的に男性が少なかった。知っていたことだが。
全体の入学式を終えると学部学科ごとに全体のプレゼンテーションが行われた。
ちなみに僕は男性学部、男性学科に通うことになっていた。前世では絶対にない様な学部である。
男性専用の学部学科と一瞬期待してしまった。ちなみにちゃんと違う。
学ぶことはシンプルで、男性の進化のことや男性の変化について調べたり、教授たちはこれからの男性の変化について研究したりするところである。
文系か理系かで言われると理系に入ったりする。
ちなみにこちらの世界、前の世界と逆で理系はほぼ女性しかいない。
文系はまだ男性も数がいたりする。ちなみに保育系の学部がどの大学にも存在する。シングルマザーの人が多いので国が保育系にも力を入れてるとか。
まぁそんな中なぜこの身体の佐藤君はこの学部を選んだのか、記憶があったも気持ちまでは教えてくれない。
学部学科ごとのプレゼンテーションという名の単位の説明と、履修登録の説明など前世の記憶でぼんやりとあったようなことを終え、帰路に着いた。
「ねぇ君見ない顔だね、うちのサークル来ない?」
「いやいや、可愛い顔してるし、私のサークルにおいでよ。」
「とりあえずカンパに来ない?」
僕は女性に囲まれていた。
入学式、新入生を先輩たちが逃がすわけがなかった。
大学の敷地内を歩いていると、サークル勧誘やカンパの誘いなど様々な声をかけられた。
前世の僕はサークル勧誘やカンパの誘いなどされたことがなかったし、何より可愛い子から誘ってもらって嬉しくなってしまった。
そんなテンション高い状態で他の男子も来るっていうサークルではない、新入生の大学の裏技を教えてくれるって人達のカンパに行くことにした。
ちなみにカンパとは歓迎パーティのことらしい。
あとは火曜日から木曜日までを何事もなく過ごして、約束の金曜日の夜が来た。
そして現在に至る。
お酒を飲みながら、ご飯をつまみつつ、先輩たちのありがたいお話を聞いていた。特に単位が取りやすい授業を教えてくれたのはとても大きい。
前世とか大学って1人で何とかするもんとか思ってたし。
やっぱり先輩ってすごいや。
「次何飲むー?」
「あっ、いや、先輩そんなこと気にしなくても大丈夫ですよ?僕の方が後輩なので。」
「うんうん、今日は新入生歓迎パーティだから気にしないで。」
「本当ですか!?ありがとうございます。それじゃ同じのでお願いいたします。」
「うん、おっけー、生ビールねー。」
先輩が手で丸を作って笑顔を向ける。
なんと優しい先輩なんだろうか、こんなに女子に優しくされたのは初めてではないだろうか。そんなことを思いながらお酒を楽しんでいた。
乾杯から1時間半経った頃だろうか、僕はかなり酔っ払っていた。
「すいましぇん、ちょっとおトイレいってきましゅ。」
そう言って席を立つが、身体が少しふらついた。
おぼつかない足で御手洗を済ませ、元の場所に戻ろうとする。
「ちょっとあんた。」
「ぼくでしゅか?」
後ろから声をかけられて、返事をしながら振り向いた。
店員さんだった。
髪はそこまで長くなく、目つきは鋭く、雰囲気は少し気怠げな感じで、身長は170は超えていて、耳にはピアスをした美人な女性がいた。
一言で言うならダウナー系の高身長お姉さんって感じだ。
「そ、あんたさ、これからお持ち帰りされるよ?」
「おもちかえり~?どういうことれしゅか?」
「は?そのまんまの意味なんだけど、もしかして今の立場あんたわかってない感じ?」
全然意味が分からなかった。
シラフでも今の会話の意味がよく分からないのに、酔っ払っている状態ではアホな顔を晒すことしか出来なかった。
「はぁ、まぁあんたちょっとこっちきな。」
そう言われてお姉さんが僕の腕を引っ張って、女性用のトイレの近くに連れてきた。
「どうい「しっ」」
僕が言い終わる前にお姉さんが僕の口を手で塞いだ。
「あの男どう?」
「あの感じなら絶対いける。」
「てかあの子甘すぎ。」
「それな、あんなに酔っ払って。」
女性用のトイレからそんな会話が聞こえてきた。
瞬間、お姉さんの言葉の意味が理解出来て、頭から冷水をかけられた様な気分になる。
お姉さんの手を口からどけ、目を合わせる。
するとお姉さんは何かを察したのか僕の手を引いて、店の人気のない場所に連れてってくれた。
「あんたはこれからどうしたい?」
ちょっと長くなりそうなので、残りは次回にまわします。
ダウナーお姉さんっていいよね。
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