――武偵。
武装探偵と称される職業の略称で、その名の通り武器を用いて探偵業を営む者たちのことを指す言葉だ。
時の政権が
――まあ、そんないつ
話を戻すとしよう。
もちろん政府も未来ある若者を何の訓練もなしに送り出すわけもなく、ここ東京の湾に浮かぶ
この現状を生みだした世代にしてなおかつ時折叩き潰そうと足を運ぶ頭の固い教育委員会の御老人たちに睨まれながらも存続しているこの場所では、青春真っ盛りの高校生達が今日も弾丸と拳、あと剣閃なんかを交えてその腕を磨き続けている。
まったく、透き通るような青空と白い雲の下で行われる甘酸っぱいドラマのような、若い少年少女のありきたりで正しく、どこか愉快なはずの日々はどこへやら。
彼らは己の武器を身に纏い、鍛えた技巧を持って、硝煙の燻った匂いの中でそれらを交えてあらゆる状況を想定した
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――そんな光景を眼下に置きながら、俺と彼女は立っていた。
栄えある高校生活二回目の四月。
空気は未だ僅かに肌寒く、視界の至る所に満開の桜が新たな始まりを祝うその中で。
「さて、と。じゃあ、それっぽくやろうじゃないか。実はボクも、こういうシチュエーションには憧れていたんだ。――さあ、選んでくれたまえ。宮本大和クン」
こつん、と腰から外した刀を杖のように地面に立て、その上で彼女は両手を重ねる。
陽光に照らされ、鋭く研がれた刃のように輝くのは生まれつきのプラチナブロンド。その下でこちらを見据えるのは、知性を表す切れ長の黒曜瞳。
身に纏う防弾制服の腕には統一された朱色の手甲を括り付け、長めのスカートに同じく朱色の草摺が重ねられている。その下からはちらりと黒光りする銃口が覗き、見た目はまさに西洋風のサムライガール。
しかし残念なことにそれは決してコスプレなどではなく、実戦歴のあるモノホンだ。度重なる傷を経て修復された跡が嫌でも目に付くし、俺もそれを分かってしまう。
――いや。しまう、って言い方は悪かったか。
自分を卑下するのは、先ほど彼女に怒られたばっかりだってのに。
ともかく、そんな目の前の少女はもちろん只の少女じゃない。
薬莢飛び散る武偵の世界で、その始祖となった偉人と同じロンドンの空気で育った彼女は
瞳と同じく、光を呑み込むような黒に染まった剣――担い手の代名詞である《黒刀》を携えた、そんな彼女は。
こちらをその視線の切っ先ですっと見据えながら。
一つ間違えれば何の躊躇いもなく切り捨てるとでも言わんばかりの真面目な雰囲気で。
俺に、問うた。
「
彼女の望む、光ある未来を共に掴むか。
「それとも、血に濡れたままの腕と共に惨めに腐り果てるか」
彼女と出会う以前の、過去に囚われた俺のままでいるか。
――その答えは、この後の記録を読んでいただければ分かって貰えると思う。
ただ、今ここに記すことが出来るのはこの程度が限界だろう。
――そもそもを思えば、これが全ての始まりだったんだ。
俺こと、ありふれた
《黒刀のシンシア》と称される、神保・M・シンシア。
そんな俺たち二人の――黒き色金と人の宿命に纏わる、長きに渡る物語の。