転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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ソーマの滅亡

 

 腹一杯に美食の数々を食べて、最高の満足感で帰宅する道すがら。

 

 もうプリップリのエビがね、最高だったんだわ。

 濃厚なホタテのソースと絡まって白身魚にも合う旨味のカルテット。

 爽やかな新鮮野菜のマリネも舌を和ませる非常に良きものだった。

 海に面した王都ならではの良さが存分に出ていた逸品だと断言できる。

 

 こんなものをミリムと一緒に食べたかったなぁ、なんて夜道を歩きながら鼻歌を歌う。

 あの気難しい原初の黒も、文句を言いながらも地味に気に入ることだろう。

 

 そういえば、なんだかんだ四年近くミリムに会っていない。

 そろそろ顔見せに行くべきだろうか、なんてふと思う。

 

 四年なんて瞬きの間もないくらいの一瞬だしついこの間別れたばっかじゃん、と思えど。

 考えれば考えるほど心配になるのは仕方ないというものだ。

 親バカ…と蔑んだ目でこちらを見るノワールを幻視する。

 いやいやそんなことはないはずだ。四年だぞ?もう会っても構わんだろう。

 

 思い立ったら吉日だ。

 帰りにちょいと寄り道がてらミリムに会いに行くことを決意する。

 お土産の東の帝国で流行している牡丹を模した髪飾りを露店で買って、手土産はそれで十分だろう。

 

 反応を確認すると、今は超魔導大国ソーマにいるらしいことが分かった。

 あの大国もなかなか繁栄していていい国だからな。

 メカメカしい魔法が多くて割と男のロマンをくすぐる文明が多い。

 

 テクスチャをぐいっと引っ張って、徒歩ならば一年近くかかるであろう距離を素早く移動する。

 

 

 果たして。

 そこは血と灰と死体の山、そして攻性魔法の閃光が渦巻く地獄が広がっていた。

 

 どういうこっちゃ!?!?

 ヒョイっと適当に権能で防壁を張って周囲を見渡せば、どうやらギィと……ミリム、そして精霊らしきものが戦っているのが遠目から確認できた。

 

 てくてくと彼らの元へ向かおうとすれば、容赦なく戦闘の余波である核撃魔法が頭上から降ってくる。

 特に脅威ではないが、髪が灰まみれになったら嫌なので防壁はそのまま。

 舞い上がる灰を風の権能で遠くへ押しやり、どんどんと進んでいく。

 

 一際開けた場所に出ると、その戦いの全容が確認できた。

 そこには、暴れ狂う子竜ガイアの成れの果てと。

 涙を流しながら子竜へと必死に呼びかけるミリムの姿がそこにはあった。

 

 ギィが俺がいることに気がついたらしく勢いよく飛んでくる。

 

「遅すぎんだろうが!こっちは死ぬところだったんだぞ!!」

「え、どうなってるんですこれ。詳しく3行ぐらいで簡潔に教えてください」

「知らん。俺はこの竜娘が全世界を壊滅させかねん勢いで暴れてたから止めに入っただけだ。なんかペットが殺された?とかなんとか」

 

 ……なるほどわからん。

 仕方ない。権能で調査しかないか。

 時間を流体と捉え、サラスヴァティーの権能にて過去にここで起こった出来事の概要を大雑把に掴み上げる。

 

 ぐるりと視界が切り替わり、知恵と知識とが流入する。

 

 ふむ。

 どうも、この国の王は邪悪なるものに乗っ取られていたらしい。

 ジャヒルと名乗る精神生命体に王が支配され、乱心。

 ミリムを支配下に置こうと子竜を手にかけたようだ。

 

 ペットを殺され盛大にキレたミリムは、そのまま怒りのままにスキルにより暴走。

 この国を灰燼に帰したということだ。

 それをギィに止められ、精霊女王の尽力によりなんとか正気に返る。

 

 その後奇跡的に肉体だけ蘇生したらしい子竜が今、カオスドラゴンへと変貌して暴れ狂っているというわけだ。

 

「大体わかりました。とりあえずあのジャヒルとかいう奴、次のユガには不要ですね」

「誰だよそれ。……つか、あの竜だよ。お前ならなんとでもできるだろ。なんとかしてやれよ」

「分かってます」

 

 ミリムの隣で必死に子竜を正気に返す方法を探す金髪の精霊女王…たしかラミリスと言ったか。

 竜とミリムの邪気を全身に浴びて存在自体が堕落してしまっている。

 あれでは死と生とを繰り返す無限地獄に囚われてしまったも同然だろう。

 可哀想に、後で呪縛を解いてやらねば。

 

 隣まで歩み出て、カオスドラゴンたる子竜を黄金の鎖で縛り上げる。

 瞬時に現れた鎖がカオスドラゴンの首へと巻きつき、その力を大幅に減衰させた。

 

 この鎖には権能を付与しているので、時間停止にも等しい絶対の縛鎖として機能する。

 

「ミリム、よくがんばりましたね」

「!!っあ、アルジュナ……」

 

 俺の姿にバッと振り返ったミリムは、暫しののちに堪えきれないと言ったように涙を溢れさせた。

 

「ワタシ、ワタシ……酷いことをしてしまったのだ!こんな、ガイアも元に戻らなくて、屋台のおじさんも果物屋のお婆さんも、我を忘れて、みんなワタシが殺して、それで、」

「……」

「…全部ワタシのせいなのだ。ワタシの」

 

 未だ子竜の成れの果ては目の前で鎖に繋がれながら暴れている。

 ラミリスはボロボロで、スキルにより強く無限の魔素を持つミリムのみが無傷だった。

 

 戦闘の余波で灰と泥とに塗れたミリムは歯を食いしばって、長い沈黙の後ボロボロと泣いた。

 

 俺は大きく息をついた。

 

 ピクリとミリムが肩を震えさせた。

 ラミリスが不安そうにこちらを見ている。

 

「不出来。本当なら次のユガには残せない大惨事です。」

「……」

「ですが、これはあなたを育てた私の責任でもある。だから償うべきはあなただけではない。私も同じことです」

 

 これは全く、ぼんやりしてた俺も悪いと言わざるを得ない。

 こんなんじゃ親代わり失格だ。

 ヴェルダナーヴァも草葉の陰で泣いていることだろう。

 

「ち、違うのだ!アルジュナは何も悪くな、」

「シャラップ。いいですか。創造神命令です。今後はその力の暴走を抑える訓練を500年の間義務付けます。二度とこんなことがないように精進してください」

 

 ミリムの片方の手首に錠前に似たアーティファクトを創造し、外れないようしっかりと権能で固定する。

 力を抑えるとともに、能力制御の補助として働くアイテムだ。

 これを基軸に訓練すれば、500年もすれば完璧に力を制御できるようになっていることだろう。

 

「で、この惨状ですが。私が治めます」

 

 俺は廻剣を駆動し、生み出した光球から悪を断つ剣を取り出した。

 少しばかり早いが、ユガの切り替わりといこう。

 

 世界をまるごと滅ぼすほどの力が凝縮して廻剣へと集う。

 ギィが目を見開き、ラミリスが思わずと言ったように後退った。

 

 どうせ作り直すなら。

 この一帯においてのみ、少し前の時間軸にて作り直すのも悪くあるまい。

 つまりは少し前のバックアップを呼び出して世界を修復するのだ。

 

 子竜は子竜のまま、超魔導大国ソーマが滅びる前の姿で復活する。

 しかしジャヒルとかいう真なる人類。てめーはだめだ。

 娘代わりのミリムをこんなに泣かせたんだ。未来永劫その存在は無かったことにしてやるよ。

 

 創世滅亡輪廻……ん?

 

 ……いや待て、ミリムはこれでシステムの影響で魔王とかいう階級に進化したのだ。

 時を戻せばミリムの力も失われて───いや、別にミリムからすれば子竜さえいれば力なんてあってもなくても構わないか。

 ラミリスもこれで呪縛を受ける前に戻せるからいいだろう。

 

 問題は市民たちだ。

 単純に戻せば七日間もの時の齟齬が発生してしまう。

 死と滅びの記憶なんてあっていいことなど何もないが、やはり七日もの時を巻き戻すと大小の齟齬が生まれてしまうだろう。

 世界の言葉で通知を入れるようにしようか。

 

 特例で滅びから復活したこと、その際七日間の時間的齟齬が生まれたことを通知すればいいか。

 

 よし。

 

 黄昏色に世界が染まっていく。

 「いつ見ても恐ろしいもんだな」とギィがコミカルに己の両肩を抱いて震えた。

 埒外の力が収縮していく。世界の終わりがここにある。

 

「創世滅亡輪廻。善性なるものには生を、悪性たるものには裁きを」

 

 帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)

 

 

 世界はそして滅び、再構成された。

 

 

 

 

 

 雑多な人々が行き交い、落ち着きを取り戻した超魔導大国ソーマの首都はお祭り騒ぎだった。

 

 千年ごとの滅びにて例外が起こり、ソーマの主神たる滅亡神アルジュナの加護で国は滅びから蘇ったのだという。

 天体の運行や旅人の証言から、国民全員の記憶に七日もの時間的誤差が生まれていることが分かったのだ。

 

 旅人は「ソーマの首都が火の海だった」「魔法が嵐のように降り注いでいたので必死で逃げた」と証言した。

 世界の言葉は真実だったのだ。

 

 偉大なる滅亡神の慈悲に国を挙げた祭りと感謝の儀式を行う中。

 

 街の一角で、楽しそうに果物屋のお婆さんと会話を交わしてりんごを一つ買うミリムの姿があった。

 その両腕の中では小さく変化した子竜ガイアが大欠伸をしていた。

 

 神たるアルジュナはそれだけ確認して。

 するりと跳躍し、元いた場所へと戻っていった。

 




次回からはようやく原作軸に入る予定。
4000年ほど時間が飛びます。
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