転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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ゴブリンたちと牙狼族

 

 あれから、ゴブリンたちに出会って森のさらに奥深く、ゴブリンの集落へ向かうこととなった。

 

 ゴブリンはジュラの大森林における弱者だ。

 出会ったゴブリン達はゴブリンの中でもさらに集落として脆弱で、戦士もおらず数も100あまり。

 冬を越す力もなく、ただ滅びを待つのみだったという。

 

 だからこそリムルという強者を見つけた彼らは賭けに出た。

 この強者の庇護を得て、なんとか生を繋ごうと命懸けの嘆願に出たのだ。

 

 ちなみに、俺は力を隠蔽して一定程度の力のない弱きものには実力がわからないようにしている。

 大騒ぎになるのは本意ではないからな。

 でも隠しすぎるとミリムや魔王達と連絡を取る時不便なので。

 そのいい具合の塩梅を取ったのが今の状況である。

 

 クベーラ神の「埋蔵された財宝の神」としての権能を応用して隠しているのだが、なかなかいい感じではなかろうか。

 

 

 移動した先の集落は、まさにボロ屋というのが相応しいとんでもない原始時代のそれであった。

 

 竪穴式住居に毛が生えたような建物の数々に、不衛生極まりない泥だらけの地面。

 腐った藁から饐えた臭いがして、廃棄したゴミらしき山には蝿がたかっていた。

 

 居住性は最悪の一言だ。

 疫病が流行ったらあっという間に全滅しそうな、というか実際このままだと一年半後には皆死ぬレベルの環境である。

 

 その中でも比較的マシ──マシか?──な建物に案内され、大きな葉で編んだばかりの綺麗な座布団に誘導される。

 傾いた机に出されたお茶…らしきものを、リムルは「これはこれはご丁寧に」と言って受け取った。

 

 リムルはその茶を普通に啜っているが、俺の権能は誤魔化せない。

 これは何ともしれない雑草をその辺の石で擦って湯で濾しただけのナマモノだ。

 ギリギリ毒ではないが。毒ではないが!!そういう問題ではない。

 

 飲むのか……これを……。

 

 俺は堂々と茶を飲むリムルの姿を隣で見てごくりと生唾を飲んだ。

 ゴブリンの気遣いは本物だし、これが歓迎の印であることは間違いようもない。

 だが、かなりの覚悟が必要なのも真実。

 

 ええい、ままよ!

 友人が平然とした顔で飲んでいるのに、ここで俺が臆しては男が廃る!

 

 ………苦っ!!!!エグ!!!

 生ぬるい水に草の汁が溶け出して青臭さと混じり合い破滅的な味だ!

 

 とまぁ、そんなこんなで道中で聞いた彼らの事情を詳しく聞いていけば。

 彼らの苦境はヴェルドラ消失に端を発したらしい。

 

 そう言えば、あの暴れん坊の弟さんの気配がリムルから発せられている。

 確か、ヤンチャが過ぎて数百年ほど前に勇者によって封印されたはずだが。

 一体どういうことだろうか、

 

 まぁ、元々ヴェルドラ君も可哀想な子で、姉二人が鬼姉過ぎて暴れようとするたびに凄まじい剣幕でボコボコにされていたからな。

 ちょっと捻くれてしまっても仕方あるまいよ。

 姉達も「このままだと貴方はアルジュナ様に消されるわ!」だなんて。

 鬼気迫った顔で教育を施すものだから、ナマハゲがわりにされた俺も若干渋い顔である。

 

 俺はそんなホイホイとヴェルダナーヴァの弟君を消したりしないのに。

 

 閑話休題。

 今はゴブリンの集落を襲う外敵、牙狼族の話に戻ろう。

 

 事情を聞いてリムルも「ふぅむ」と思案気味だったので、そっと思考の補助をする。

 

 ジュラの大森林を簡潔な3Dマップに書き起こし、権能でもって立体映像として出力する。

 そこに色分けしてアイコンを載せる形で勢力図を示せば完成だ。

 イメージは戦略シミュレーションゲームである。

 

「うおっ!なんだこれ!?」

「現在のジュラの森の勢力図です。ここが東の帝国。ファンタジー中華っぽい国です。そこが壁となって牙狼族が追い立てられ、このゴブリンの支配領域に来た形ですね」

「お前なんでもできるな…んん……とすると、狼達がやってくるのこの方向か」

「ええ。どうも勢力拡大を狙っているようですね。牙狼族のトップもなかなか老獪で、ヴェルドラが健在の間は侵入を避けていたようです」

「へぇー」

 

 地図上の可愛い犬のアイコンをテケテケテケ…とゴブリンの領域へと移動させ、俺はそこにスライムの大きなアイコンを追加した。

 

「では頑張ってください、リムル」

「いやお前は何にもしないのかよ!!」

「こういうのに手を出されるのはシュミじゃないでしょう?せっかく記憶を消して最弱からの成り上がり物を楽しんでるのに」

 

 ヴェルダナーヴァもすっかり俗世に染まってしまって、と思ったが昔から奴は流行り物が好きだったなと思い直す。

 絶対日本のネット小説から悪い文化を受けているに違いない。

 スライム体がぽよぽよと憤慨した。

 

「酷い言いがかりだぞそれ!?完全に成り行きだったのお前も見てただろうが!!」

「まぁまぁ。いざとなったらいい感じの加護も授けましょう。リムルなら大丈夫だとは思いますが」

「適当言いやがって……」

 

 内包魔素量から言っても、リムルが牙狼族程度に負けることはあり得ない。

 俺は後ろで最弱魔物成り上がり系物語(友人ヴェルダナーヴァ執筆)を楽しむのみだ。

 

 

 

 

 はてさて。

 やっぱり楽勝だったリムルは、水刃の一撃で牙狼族のトップの首を取った。

 

 あっという間に士気を失った牙狼族の狼たちはクゥーンクゥーンと哀れっぽい声でリムルに擦り寄ってくる。

 あの声を聞くとこちらが悪いことをしているような気にさせられるからずるいよな。

 

 八十匹程度の牙狼族を連れて、大きな開けた丘へと移動すれば次に行うのは名前付け大会だ。

 

 ゴブリンを含めた全匹に名前をつけるとのことだが、リムルの現在魔素量だとギリギリ全員分の名前がつけられる程度だろうか。

 なかなか無理をするものである。

 魔素が尽きれば無防備な状態に置かれてしまうので、その間は俺が守ってやらねばなるまい。

 

 しかし、どうも見ているとリムルの視線が泳いでいる。

 名前が思い浮かばないようだ。

 

 そりゃ確かにこの数の名前を捻り出すのは一苦労だよな、と俺は軽く頷いて右手を広げた。

 

 適当に権能で練り上げた情報を組み上げて一つのシステムと為し、それを木製のボードに反映する形で仕上げていく。

 ユーザビリティもちょっとだけ気にして、見やすいように使いやすいように若干の要素を配置し直す。

 

 そうして出来た単なる木の板にも見える一枚ボードを、リムルへと手渡した。

 

「……ここに名前メーカーがあります。ボタンを押すとランダムに十個の名前をいい感じに生成します。使いますか?」

「!!!助かる!流石アルジュナ!よっ創世神!」

「雑な賞賛ありがとうございます」

 

 名前メーカー(木の板製)を器用にスライム体を伸ばして受け取ると、リムルは意気揚々とゴブリン達の列へぽよぽよ走っていった。

 平和だなぁ。

 

 

 そうして。

 ランガという名前を牙狼族の一体へと付けたあたりで魔素切れとなり、スライムはつるっと力を失ってスリープモードになったのであった。

 




・ヴェルドラ
リムルの内部でブルブル震えている。
姉の教育と千年ごとの創世滅亡輪廻がブレンドされてトラウマ化している模様。
姉は真摯に「弟が不出来として切り捨てられないように」と躾けていたが、実際行われたことは苛烈なしごきである。
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