転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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フォビオの失言

 

 国が富み、街も順調に大きくなってきた。

 

 ほったて小屋みたいだった迎賓館もその名の通り西洋風の見事な作りの館になり。

 街道は整備され街並みも一端のものとなった。

 畑も豊かに広がり、肥沃な大地の栄養を吸ってすくすくと成長している。

 

 国家事業は安泰。

 これからの成長を夢に描き、希望に溢れた日々を過ごすある日のことである。

 

 獣王国ユーラザニアから、使者がやってきた。

 

 俺はその様子を神社からいち早く感知し、千里眼で見ていた。

 街をぶらつく不良グループみたいな風体で街を歩くのは獣人四人だ。

 先頭を歩くのは……獣王国ユーラザニアの三獣士、黒豹牙のフォビオというらしい。

 ユーラザニアといえば新興の魔王が立ち上げた国だったか。

 

 見ていると、周囲を威圧しただならぬ気配を出していたフォビオに、リグルドが庶務のまとめ役として進み出ている。

 リグルドと比して圧倒的強者だというのに、名無し時代から胆力だけは侮れない御仁である。

 

 しかしフォビオの方はそうは思わなかったようだ。

 笑顔で対応したリグルドへと舌打ちし、殴りつけようとして。

 俺が加護で防ぐ前に、すんでの所で自ら拳を引いたようだった。

 

「おい、お前達なにをしてるんだ!?」

「スライム……?」

 

 急行したリムルが現場に到着したらしい。

 おそらく迎賓館に連れていくから、俺も祭神……というより、見張り役として出るべきだろう。

 神社を出て迎賓館へと徒歩で歩きながら、千里眼はフォビオとやらをとらえたままだ。

 

 見たところ、血気盛んでプライドが高いものの、努めて意識して自制している模様。

 内心不満が大きいようだが。

 

 目的は……ユーラザニアとテンペストの国交を結ぶため、か。

 真意としては、魔王カリオンとしても俺と敵対するのは避けたかったというところか。

 まぁ、それもフォビオの側がどこまでわかっているかは微妙なラインだが。

 

 迎賓館に到着すれば、リムルに「ちょうどいいところに来た!いや待て、見てたなお前!?」と怒られてしまった。

 俺も動いたほうが良かったのだろうか。

 

 ともかく。

 こちらはディアブロ、ベニマルを左右に据えたリムルと俺。

 シオン、シズがサブで威圧する形で布陣し、フォビオを迎えることとなった。

 

 そうして始まった会合。

 穏やかに咳払いするリムルをよそに、フォビオは開口一番で派手に放火してきた。

 

「それで、お前達がこの国に来た用向きを聞いていいか?」

「下等なスライム風情が俺に生意気な口を利くんじゃねぇよ」

 

 瞬時に部屋の空気は氷点下にまで冷えた。

 ミリムと念話だけで通じて、こっそり悪態を吐きあう。

 

『このミジンコ頭が高いですね』

『のだ。私がぶっ飛ばしてやろうか』

『いえ、まだ様子を見ましょう』

 

 ここまでアウェイな空気でよくそんな大口を叩けたものだ、と思いつつ。

 

 どうも、フォビオとやらは言動に反して物がわかっていない馬鹿ではないらしい。

 プライドは高いが自分の力も他人の力もよくわかっている。

 問題は、あまりに高いプライドが邪魔をして、感情を割り切ることができないことだ。

 

 その悪癖の大元は、己の力がないことの焦り。魔王カリオンへ功を示せない己への怒りがある。

 

 まあ。

 だからといって俺のダチにふざけた口を利くのは許されないが。

 後ろでディアブロがすうっと妖気を激らせてる。あれは絶対相当怒ってるな。

 般若の形相のシオンとは逆に、ベニマルはさわやかな顔で笑っている。

 リムル自身はといえば、ムッとしつつも冷静にスライム体を弾ませた。

 

「どういう意味だ」

「下等なスライムごときが、魔王ミリムを笠に着て、アルジュナ神の加護を食い荒らしていいご身分だな、と言っているんだ」

 

 ─────………。

 

 廻剣駆動。

 コンマ秒も経たないうちに装填した宝具の真名解放を喉元に突きつけ、極大の権能をぐるりと回転させる。

 世界すら断つ黄金の剣が光球より出現し、窓から差しこむ陽光を反射する。

 

 瞳孔が散大している。ああ、冷静さを失うなんて久しぶりだ。

 

 その規格の差がこの不出来な男にもよくわかるように、廻剣の規模を可能な限り落としている。

 具体的には、国一つ消滅させるに十分な力であるとわかる程度に。

 

 数拍置いてようやく状況を理解したのか、フォビオの顔が土気色になる。

 俺は可能な限り己を落ち着けるように嗤った。

 

「不出来。ユーラザニア諸共消し飛ばされたいと見える」

「待て待て待て待て待てェ!!ストーップ!アルジュナステイ!ステイ!」

 

 急いで割って入ったリムルがスライムボディを器用に伸ばして待てのポーズをとった。

 

 どうやらリムルはキレ過ぎて無表情のディアブロと手の中に黒炎獄を構築したベニマル、剛力丸を振り下ろす寸前のシオンを止めていたのでこちらに来るのが遅くなったらしい。

 シズも眉間に皺を寄せつつも一緒にベニマル達を止めている。

 

 ああは言ったが、実のところユーラザニアを消すとかは単なる脅し文句だ。

 不出来の連帯責任を負わせられるのは国民も可哀想だしな。

 

 ただ、このダニは消し飛ばしても構わへんと思うのだけどなぁ。

 

 リムルが眉間の皺を深めてため息をつき、腰が抜けたようで椅子からずり落ちているフォビオへと向き直った。

 

「で、ほんとに何なんだよ。遠路遥々喧嘩売りに来たのか?意味わかんねーよ。ヤンキーの遠征かよ」

「……」

 

 リムルも言いたい放題言われて不満はたまっていたのだろう。

 棘のある言葉がフォビオを突き刺す。

 

 フォビオはそれでもまだ捨てきれぬプライドがあるのか、とつとつと睨めあげるようにリムルを見た。

 

「俺の要求は一つ。我らが魔王カリオン様と、獣王国ユーラザニアと国交を結べ」

 

 もはや国交がどうのとかいう段階ではないヘイトを買っているのは理解しているはずだ。

 己のプライドのせいであまりにも酷い失敗をしたと、フォビオは自分でもわかっているのだ。

 

 これにはリムルも困り顔だった。

 政策的にユーラザニアと国交を結ぶのは悪い話ではない。

 が、この使者の行いを許せばそれはテンペストの国主たるリムルの尊厳に、ひいてはテンペスト自体の尊厳に関わる。

 

「話はわかった。ユーラザニアとは後日改めて日時を指定して話し合うとしよう」

「!俺の話が聞けないと…」

「───今日の行いは不問に伏すから帰れと。そう言っている」

 

 声を冷えさせたリムルが人型になり、すっと手を上げる。

 それを合図に動き出したディアブロとシオンがフォビオを両側から掴み上げ。

 

 そうして、フォビオとその一行はテンペストよりつまみ出されることになったのであった。

 

 

 

 

 

「何なんですかねあいつ。本当に意味がわからないですよ」

「本当にな。魔王カリオンも盛大に人選ミスった感じだ」

 

 ベニマルが未だ怒り冷めやらぬとばかりにシャドウボクシングをしている。

 はぁ、とため息をつくシズはどっと疲れたように肩を落とした。

 

 シオンなんて「私が!今からでも一刀両断してきましょうか!!」と剛力丸を振り回しているし。

 黙ったままのディアブロが逆に不気味で、部屋は散々の有様だ。

 

 しかし、創造物の言葉で心を乱すなんて俺もまだまだ未熟。

 創世の神にして俺唯一の友、那由多の時を共にした神であるヴェルダナーヴァのこととはいえ、少しばかり短気に過ぎた。

 

 今更恥ずかしくなって窓から外を見ていると。

 遠くの方でやや大きな邪気と破壊の意思が膨れ上がっていることに気がついた。

 

 遠く千里眼を使って見てみれば、それはいつぞやかに人間の国を襲って回った災厄級モンスター、カリュブディスであった、

 ヴェルドラの魔素溜まりから生まれた、やや強いミジンコだ。

 

 そのまま放置しておけば、復活してこの辺の土地を更地にしてしまうだろう。

 森の環境にも悪いのでくるりと指を回してきゅぽっと吸収。

 小さなスルメに変えて出力する。

 

「リムル。力が欲しいですか…?」

「いやなに急に。魔王みたいなこと言い出すな」

 

 返事は特に聞いていない。

 スルメ(カリュブディス味)をリムルの口に勢いよく突っ込む。

 

「じゃあこの力はリムルに渡しておきます」

「いやお前まだ俺いるって言ってないし唐突すぎモゴォ!?」

 

 「なんだこれ!?スルメ!?懐かしい味付け!!」とリムルが混乱しながら叫んでいる。

 

「カリュブディスという名前のモンスターです。近場で復活しそうだったので栄養たっぷりのスルメにかえてみました」

「そうか…うん……どこから突っ込んでいいか俺わからないよ」

 

 釈然としない顔でもっちゃもっちゃとリムルがスルメを噛んでいる。

 エクストラスキル、魔力妨害と重力操作を獲得したようだ。

 嬉々としてラファエルがスキルの分離統合で新スキルへと組み替えている。

 

 善きかな善きかな。

 もしかしたら明日の訓練では究極能力が二つ生えるかもしれん。

 

 そんなことを考えながら、俺は亡くした友の思い出から目を背けたのだった。

 

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