転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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滅界竜イヴァラージェ

 

 緊急事態発生!

 

 俺は先ほど帰還したフェルドウェイの報告を受けながら、光球を覗き込んだ。

 その中には巨大な獣の如きナニカ───仮称「滅界竜イヴァラージェ」が映り込んでいる。

 

 滅界竜イヴァラージェ。

 それは最近になって突如として発生した謎の力の凝縮体だ。

 命名は俺。意味は「始まりの憤怒」ぐらいをイメージしている。

 イヴァラージェは今もヴェルダナーヴァの作った多次元世界をどんどんと破壊して、虫食いのように広がり続けている。

 

 というか、ヴェルダナーヴァも世界創り過ぎって話なんだよな。

 作っては放り出し、作っては放り出しと増えていった世界はもはや数え切れないほどだ。

 しかも飽きたのか碌に確認もしないし。

 

 そんな散らかった世界の隙間から誕生した特大のゴキブリ。

 まさにイヴァラージェはそんな感じの存在である。

 

 ヴェルダナーヴァにも困ったものだ。だから部屋を片付けなさいと言ったんだ。

 息子を持つ母親みたいな心境で重たい腰をあげ、フェルドウェイに「これは私が対処します」と伝える。

 

「かしこまりました。ヴェルダナーヴァ様にもお伝えさせていただきます」

「ええ。頼みました。では、私は現場へ向かいます。ヴェルダナーヴァの楽しみを邪魔するわけにはいきませんから、応援は必要ありませんと伝えてください」

「はっ」

 

 最近は若干ながら知性体も増えてきて、ヴェルダナーヴァも楽しく世界巡りをやっているそうだ。

 神祖トワイライト・ヴァレンタインとやらが頑張って実験を繰り返し、知性体の元を増やしてくれたのだとか。

 今更だが実験ってなんだ。普通に子作りしたんじゃないのか。

 

 まぁいいか。ともかく、そんなお楽しみタイムのヴェルダナーヴァを呼び戻すほどのことじゃ無い。

 

 現場に行けば、まさに大怪獣大暴れといった様相で滅界竜が世界のテクスチャを剥ぎ取り、喰らい、破壊して咆哮を上げていた。

 とんでもねーなしかし。

 存在規模は恒星級。ORTと見紛うばかりの強大さに、世界喰らいの権能付き。

 Fate世界に居たら余裕でグランドオーダー級の事態である。

 

 とはいえ、こちらも伊達に長く創世神をやっていない。

 基本はまったりスローライフであるものの、時の経ち具合で言えば何千何万と世界が生まれては滅ぶ時間を過ごしているのだ。

 その時間圧に見合った権能の成長だってある。

 

 光球から廻剣を取り出し、狙いを定める。

 知性も理性もないのか、突然現れて危害を加えようとする俺に滅界竜は振り向きすらしない。

 

 ま、楽でいいか。

 廻剣に魔力を込めていく。無尽蔵に無制限に、この強大な獣を滅ぼせるだけの力を汲み上げる。

 光が高まる。

 刃の形に現出するは終末の概念。世界すら断つ滅びの一撃。

 

「不出来なものよ、滅びるがいい。廻剣駆動。今こそ粛清の時、今こそ壊劫の時」

 

 ───帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)

 

 くるり、と剣が駆動して。

 次の瞬間、滅界竜イヴァラージェは収縮。そしてその力の残滓を多次元世界中にばら撒きながら消滅していった。

 

 あれ。

 欠片も残さず消滅させるつもりだったのだが、なんかの権能でも使ったのか?

 

 どうやら先ほどの力の拡散で様子を見にきたらしい天使フェルドウェイが、俺の足元にひざまづいて口を開いた。

 

「害獣駆除、お見事です。アルジュナ様。先ほどの残滓について調査いたしますか」

「頼みます。あまり良いものではなさそうですからね」

「かしこまりました。至急我々で調査いたします」

 

 なんか嫌な予感がする。

 先ほどの力の残滓に権能のようなものを感じたのだ。

 これが思い違いならいいのだが、ふむ。

 

 超統合神性としての勘が、これだけでは無いと囁いているのだ。

 

 

 

 

 

 悲報。

 滅界竜、滅び際にとんでもない呪いを多次元世界中にばら撒いていった件。

 

 時を500年ほど早回しで進めながら調査したところ、あの死に際の粒子がとてつもなく害悪な振る舞いをすることが分かったのだ。

 

 粒子は時と共に増える性質を持ち、増えれば増えるほど世界を「悪い方、安い方」へと引っ張る。

 具体的には運が悪くなり、不幸が重なり、争いが絶えず、人々は悪心を抱きやすくなる。

 加えて粒子が固まって悪しき怪物として生まれることもあり、それらは世界を傷付ける。

 

 まったくもってとんでもねー限りである。

 

 流石に俺一人で抱え切れるものでなく、ヴェルダナーヴァにも報告した。

 俺の廻剣で粒子を消滅させることもできなくは無いが、あまりに小さくあまりに世界に馴染み過ぎていて全てを一撃でとはいかない。

 そうしているうちに再び急激に増殖して世界を蝕む。

 まさにゴキブリだ。

 

「それは……仕方ないね。定期的に掃除をするよりほかないだろう」

「この際、ほったらかしの世界群を片付けるのはどうです。あの辺を廻剣で一掃すれば粒子もだいぶ減りますし」

 

 ヴェルダナーヴァが困った顔をした。

 大切にしていた良い感じの枝を捨てろと言われた小学生のような顔だ。

 そんなに大切なんか……。

 

「できれば多次元世界群は取っておきたい。なんとか世界をそのままで粒子だけ取り除けないかな」

 

 きゅーーん、と子犬のように眉を下げるヴェルダナーヴァの姿に俺も折れざるを得なかった。

 なら仕方ない。このアルジュナもどきさんが一肌脱ごうではありませんか。

 

「では……少し荒っぽくなりますが。一度廻剣でまとめて世界を滅ぼした後、粒子を除いた世界だけ再創造することならできそうです」

 

 FGOにおけるユガの構想と同じだ。

 一定期間ごとに世界を滅ぼし、悪しきもののみを取り除いて新しく世界を始め直す。

 滅界竜の粒子が増えたころ……だいたい千年ぐらいでいいか。

 そのぐらいの周期で廻剣を駆動させて世界を再生成すれば、ひとまず悪影響は限定的となるだろう。

 

「本当かい!!よかった、さすがはアルジュナだ!ボクの作った多次元世界は任せたよ!」

「っ、ちょっと待ってください。全部私がやるんですか!?世界何個作ったと思ってるんですか貴方は!」

「だってボクはもう世界を滅ぼすのも再生成するのも無理だし」

 

 見れば、前に見た時のよりずっとずっと弱くか細い姿となってしまっている。

 一般的なサーヴァントぐらいの力、といって良いだろう。

 神霊ほどの力もない弱々しさだ。

 

「ちょっと、力を放出しすぎですよ!?何かあったら身を守ることすらできないじゃないですか!?」

「大丈夫大丈夫。天使を幾人か付けてるし。最近悪魔とも友達になったんだ。ギィというんだけど、彼には人間を監視する役をやってもらっている」

「ああ、あの闇の大精霊から生まれたとかいう……会おう会おうと思って会ってませんでした」

「楽しい子達だよ。君も一度会ってみると良い」

 

 へー、悪魔か。どんな感じの見た目なんだろうか……なんて考えて、はっと話題が逸れていることに気がついた。

 

 俺がこの多次元世界全部を廻剣で斬っては作り直しする!?

 無理だろ!一世界千年周期だとして、どんだけあると思ってんだ!

 365日一睡もせず世界を斬り倒してようやく間に合うかどうかってレベルだぞ!

 

「じゃ、頼んだよアルジュナ!あ、これ君に良さそうな権能を作っておいたから、受け取って欲しい」

「また貴方は自分の権能を削って!受け取りませんからね!!あ、ちょっと、逃げない!権能置いて行かない!コラ、待ちなさい!!!」

 

 ピューっと恐るべき速さでこの宮殿、天星宮からヴェルダナーヴァは逃げ出した。

 権能が霧散しないように咄嗟に受け取ってしまったので追うことができなかったのだ。

 この…ものぐさ竜!!

 

 仕方なく体内に権能を入れれば、それは自動化や繰り返し制御に秀でた設置型自立機構じみた権能だった。

 これを使えば、俺も比較的忙殺されることなく世界の再生成ができるだろう。

 

「………あの竜、最初からこのつもりでしたね」

 

 まあなんだ。

 俺はヴェルダナーヴァの手のひらで踊らされていたというわけだ。

 仕方ない。こうなればやるしかなかろう。

 

 ユガ回しはアルジュナ・オルタの基軸ともいって良い。

 龍は責めなかったが、根本的には俺が蒔いた種だ。

 俺が責任を取らねばどうすることもできまいよ。

 

 廻剣を携え、俺は渋々立ち上がった。

 




・幻獣族、蟲魔王
原作において滅界竜イヴァラージェから生まれた種族。
本作ではイヴァラージェがマハープララヤったため登場しない。
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