転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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まったり夕食会

 

 エラルド公爵の瞳は鋭い。

 

 目的、と言われてもこまるんだよなぁ。

 そんな難しいこと考えてないし、個人的な感覚としては友人ちでダラダラしてるだけなのだ。

 俺に大真面目に問われるような目的なんぞないが……。

 

 エラルド公爵の意図としては、俺ことアルジュナがこの世界の知性体を直接支配しようと考え始めたのではないかと疑っている模様。

 神の統治というか、絶対的な神権政治が始まるのではないか的な危惧だな。

 

 そういう事実はまるでない、のだが。

 そのまま俺が弁明しても、エラルド公としても信じられるものではないだろう。

 

 俺は基本嘘などつかないが、ミジンコは生きる術として嘘と共に生きている。

 そういう意味では、俺への疑念は仕方のないことだ。

 

 少しだけ悩んでから。

 俺はがしっとリムルの肩を掴んだ。

 

「私達、ズッ友ですので。私は友を助けたいと思っているだけです」

「あの…恥ずかしいんだがアルジュナさんや。あと古いぞそれ」

 

 リムルがやや困った感じに眉間に皺を寄せた。どうやら恥ずかしいらしい。

 

 リムルと共に栄える国を楽しむ。それが俺の目的だ。

 俺は友人としてリムルの楽しみを共有し、国の繁栄を見守っていくことだろう。

 そのため多少の力も振るおうとも。

 

 これの答えに困惑したのか、エラルド公爵が咳払いした。

 

「貴方ほどの神が一つの知性体に肩入れすると?」

「まぁ、私もシステムではなく意思ある存在ですので。好き嫌いぐらいあります」

「……なるほど」

 

 本物のアルジュナ・オルタなら違ったろうが、俺は感情も意思もある、ある種の不完全性に満ちている。

 それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。

 少なくとも、俺がリムルを贔屓にするのはこの基軸世界が閉じるまで変わらないことだ。

 

 ハラハラした顔で後ろの家臣団が腰を浮かせている。

 どうも不敬でエラルド公爵が消されないか不安らしい。

 流石に俺だってこの程度のことで消したりしないのだが、その辺はわかるはずもないか。

 

 と、その時。

 

 俺の知覚がここへと転移してくる気配を察知した。

 転移者はラミリスだ。4000年前に会ったが、その後は顔を合わせていなかったな。

 

 「っ、誰か来る!」とリムルが立ち上がる。

 

 出現したのは金の長髪を靡かせて白い衣服を風に揺らす女性の姿。

 絶世の美女、太古よりこの世界を見守る精霊女王。

 この世の自然を管理する上位存在そのものである。

 

 ラミリスが口を開く。

 

「ギィより依頼で参りました。精霊女王のラミリス、と申します。ギィ、ダグリュール、ディーノの発議でワルプルギスが開始される運びとなりました。」

「!!!」

 

 フューズが息を呑んだ。リムルが魔王になったという言葉に嘘がないことを眼前で見せられた心地なのだろう。

 

「議題は新魔王のリムルの認定。そして千年毎の滅亡の情報共有です」

「ありがとう。ラミリスさん、だったよな。日取りと会場を聞いてもいいか」

「三日後の正午となります。時が来たらお迎えに上がりますね」

 

 それだけ言ってから、ラミリスはさっさと厳かな雰囲気を捨て去った。

 覇気が消え去り、浮いていた体を下ろして地面に足をつき、そのままうーんと伸びをする。

 

「では、私は仕事はこれまで。せっかく商人にも評判のテンペストに来たんですもの。この街の贅を堪能させていただきますわ」

「お、おう。ゆっくりしていってくれ。シュナ、この人を温泉宿に案内してくれないか」

 

 「かしこまりました」とシュナが一礼する。

 るんるんと上機嫌でシュナの後についていくラミリスは随分と俗っぽく、単なる旅行者のお姉さんのように見えた。

 

 「見た目によらず愉快な人だな」と唖然としたリムルが漏らした。

 エラルド公も首をコキコキと鳴らして息を吐く。

 

「では我々も一旦休憩と行きますか」

「うむ。そうだな。俺も少しばかり疲れた」

「なら皆で温泉に入って、食事でもしてゆっくりしよう!近海でとれた新鮮な海鮮が用意してあるんだ」

 

 「おお、それは素晴らしい!」とフューズの顔に喜色が浮かんだ。

 彼は幾度かこの国に来ているから、その料理がいかに美味しいかわかっているからな。

 

 この辺の海には鯨ぐらいのサイズがあるエビやらダイオウイカみたいなビッグなタコとか沢山出るし。

 それを氷魔法とポータルで新鮮なままテンペストまで届けることが可能となっていて、実に美味なのだ。

 

 特にタコが良いんだよな。

 ぷりぷりで身が引き締まり、味もいい。

 タコしゃぶにするとなお美味い。最高である。

 

 その後。

 温泉に入りながら熱燗を楽しんだフューズ、エラルド、ガゼル王は、海鮮の豪華さに舌を巻いたようだった。

 

 やはり流通が発達していないこの世界において、遠く離れた海からの幸をこのように存分に使うのは珍しいのだろう。

 「美味いっ!!」とガゼル王が巨大エビの活け作りからいくつか身を取り分けてもらって舌鼓を打った。

 

 エラルド公が「そういえば」と口を開く。

 

「西方聖教会への対応はどうするおつもりかな」

「それは俺も気になっていた。今は情報が錯綜して碌な話が入ってこん。なんでも西方聖教会は神の呪いを受けただとかなんとか」

 

 ぱくっと食べたシャケ(のような魚)の西京焼きに目を見開き、ガゼル王は満足げに頷いた。

リムルが眉間に皺を寄せる。

 

「あー、それは本当。アルジュナが西方聖教会の上層部に呪いをかけたんだ」

「なに!それは真か!」

 

 ガタリと立ち上がったガゼル王をよそに、俺はタコのマリネをひょいひょい口に運びながら答えた。

 

「あくまで暫定処置ですよ。西方聖教会はニコラウス枢機卿が主導していたようで。彼にリムルが書状を送りました」

「……賠償請求か?」

「はい。西方聖教会の魔物敵視の教義を変更しろ、と」

「なるほど」

 

 エラルド公爵がふうむと首を捻った。

 

「そんなもの、西方聖教会が呑むというのか?」

「気長に待ちますよ。一千年ぐらい待てば人間の文明も常識も変えられることでしょうし」

「まあ、たしかにあそこは人間国家。500年もすれば過去のことを覚えている者も少ないが」

「気の長い話ですね……」

 

 フューズが話の流れに呆然と言葉を漏らした。

 ドワーフもエルフも人間より遥かに長寿だからな。その辺の感覚の違いは大きかろう。

 

 それに、変更がなくば呪詛が解けぬだけの話だ。

 俺はタコのマリネのおかわりをもらいながら瞳を閉じた。

 

 

 千年もすれば、ほとほと嫌になって教義ぐらい変更してくれるはずだろう。

 そんなふうに考えながら。

 




・ラミリス
魔王ではない。精霊女王。大人型。
アルジュナに対しては助けられた感謝もあるが、若干恐れが強い。
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