転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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アダルマンの意見

 

 テンペストもすっかり冬だ。

 暇にあかせてルベリオスの会議を覗く瞳には吹雪も映り込む。

 

 神社の一角、畳敷きの純和風な部屋にてゴロゴロしながら、俺は千里眼(超越)を稼働させる。

 

「お茶どうぞー」

「ありがとうございます、シズ」

 

 最近ではシズさんはすっかりこの神社の巫女さんとして定着してきた。

 ただ、シズさんの振る舞い自体はどちらかといえば実家感のにじむものだったが。

 

 少し前などカイジンと協力して作ったらしいこたつを持ち込んでここに設置していたし。

 

 唐草模様の布団に囲まれたこたつは実に暖かく、俺は足を伸ばして顎を机に乗せた。

 そしてそのままみかんを二つ具現化。

 

 片方をシズさんへ渡せば、「わぁ!ありがとう!」と喜んで受け取ってくれた。

 いいってことよ。

 

 視界を移せば、ルベリオスでは会議が続けられている。

 どうやら紛糾している模様。

 議題は新興国のテンペストについて。そして「魔物の生存は認めない」という教義の撤廃にかかる影響についてだ。

 

 ちなみに、リムルの方は尋ねてきたクレイマンと会談中だ。

 部下を連れたクレイマンは、昨日夜にジスターヴ産の香り高い紅茶を手土産にやってきた。

 

 今は交易の話や相互安全保障の話を詰めているはずだ。

 大まかな話に関しては俺も同席していたのだが、ことは次第に利益配分の細かなパーセンテージの話になったので、リムルに後を任せて出てきたのだ。

 軟禁されていたミュウランも今は一旦ジスターヴに戻っている。

 

 すると、俺の後ろから声がかかった。

 リムルが片手をあげて俺の名を呼んだ。

 

「よ、アルジュナ」

「ああ、会議が終わったんですか?」

「ああ、協定は結び終わった。事務的なことはミョルマイルに任せて俺は休憩ってな」

 

 リムルはんー、と伸びをしてシズさんの横に座った。そのままこたつに入る模様。

 「おー、外は寒いなぁ」と言うので「熱変動耐性があるでしょうに」と茶化してみた。

 シズさんがくすくす笑う。

 

「そう言う問題じゃねーんだよ!……クレイマン、策謀が得意と聞いていたが、案外普通のやつだったよ。仲間思いだってのに気付いたら人望は壊滅的ってのは辛いよな」

「ですね。しばらくは国内の舵取りで忙しいでしょう」

「一応、今後俺のところからも使者を出すことに決定したから。これから人員選定予定」

「なるほど」

 

 リムルにもみかんを一つ渡せば、「お!みかんだ!」とパッと顔が明るくなった。

 

「こっちにもみかんっぽい果物はあるけど味わいはワイルド極まりないもんな。あー、これだよこれ!品種改良がされた甘くみずみずしい味わい!」

「そうだよね!私も色々なところを旅したことがあるけど、こんなに日本っぽい美味しいみかんは無いよ」

 

 リムルの言葉にシズさんが同意した。

 大満足の様子なので、追加でざるに乗せたみかんの山を机の上に出現させる。

 うーんドラえもん、とリムルが何とも言えない表情で眉をハの字に下げる。

 そこですかさず「僕ドラえもん(裏声)」と渾身のボケをすれば、リムルが吹き出した。

 

「つーか、何見てるんだ?千里眼を発動してんだろ」

「ルベリオスで開かれている会議ですよ。ちょうどテンペストについて話し合っていたので」

「へぇ、それは俺もちょっと興味があるな」

 

 視覚をちょちょいと思念伝達で共有すれば、リムルも会議の様子が見えたようだ。

 おお!と言って視界に映る聖騎士たちを見ている。

 

「千里眼だっけ?相変わらず便利なスキルだよな」

「これは意外と高位の権能ですから。リムルにも渡したいところですけど、渡すとリムルが弾け飛ぶのでできないんですよね」

「怖ぇなおい!!」

 

 この千里眼(超越)だが、型月のそれがどうかは知らないが、今使っているコレは視覚に関するスキルというより根源に接続する権能となっている。

 根源は、かつて創世時にヴェルダナーヴァが捨てた全能を核に俺が手を加えて作ったものだ。

 権能「虚無崩壊」の莫大なエネルギーを使い、この世全ての運命を詰め込んだ果ての星。

 意思のない全能神と言っていい。

 

「でもこりゃ終わりかけと言うか、会議も意見が出尽くした空気だな。ここまででルベリオスはなんだって?」

「人類圏であるファルムスを魔王に侵されるのをよしとしないみたいですよ。ルミナスの決定ではあるためテンペストと国交は結びますが、多くの聖騎士たちが懐疑的です」

「ま、そりゃそうだ」

 

 リムルが嘆息した。俺は追加で情報を投下する。

 

「とくに、東の商人からの情報で、悪魔の陰謀でファルムスが支配されていると言う情報を重く見ているようですね」

「あぁー…否定できない……」

 

 現状、ファルムスの上層部はみんな悪魔だもんな。

 国民を生贄に悪魔の大量召喚をしようとしていたディアブロを何とか止めて、代わりに俺が生贄用の肉人形を用意した事件が一週間前だったか。

 生成する生贄人形だが、効率を重視し、脈動する巨大な心臓のオブジェとした。

 

 フロムゲーに出てきそう、とかドン引きの顔のリムルが言うのでついでに触手もつけた。

 自衛能力もあった方がいいからな!

 

「しかし、対策しようにも俺もルベリオスについてよく知らないんだよな」

 

 リムルが悩ましげに腕を組み、むいたみかんを口の中に放り込んでいる。

 ざっと障子が開き、話は聞きました!と言う顔をした凛々しい表情のシュナがするりと入ってくる。

 最近ここの空気に慣れてきたのか、シュナのテンションもおかしいんだよな。

 

「ルミナス教の高僧のアダルマンに話を聞いてみてはいかがでしょうか」

「シュナ?」

「先ほど交易の詳細をお話ししていたのですが、ジスターヴの五指の一人、アダルマンさん元々生きていた時はルベリオスで枢機卿をやっていたそうですよ」

「なんだって!そりゃちょうどいい。話を聞いてみることにするよ!」

 

 シュナはニコッと笑い、締め切られた部屋の窓を開け放った。

 冷たい風が吹き込み、皆が震えて炬燵の中に入る。

 

「空気が澱んでいます。換気も時々はしてくださいね!」

 

 そうして皆が皆肩まで布団を被った状態で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 というわけで、アダルマンに話を聞くこととなった。

 場所は迎賓館の会議室。

 立ち合いは俺とリムルのみだ。

 

「お招きいただきありがとうございます、リムル様」

 

 目の前の穏やかそうなアンデットが両手を広げた。

 

「ルベリオスについて知りたいと言うことですが。そもそも、ルベリオスには権力が二つあるのはご存知ですかな?」

「ふたつ?」

 

 流石はかつて権力の頂点まで来た男。

 滔々と流れるような説明はわかりやすく、リムルも黙ってその話に聞き入ってきた。

 

 なんでも。

 純粋な宗教機関でありルミナスを頂点におく教皇庁と、地方権力と結びついた世俗の力としての西方聖教会。

 その二つが主な権力としてあるのだと言う。

 教皇庁に関しては、ルミナスの部下、法皇ルイ・バレンタインが表向きの頂点であるが故。

 今回のテンペストとの国交樹立も内心では聖騎士たちにも不満もあるだろうが、特に問題ないとのこと。

 

 問題は西方聖教会だ。

 地方権力からすれば、交易の要所たるファルムスが潰されたのは頭の痛い問題だろう。

 

「しかし、テンプルナイツとクルセイダーはともかく、教皇庁の七曜の老師には油断召されぬよう!私は奴らに嵌められて殺され、アンデッドに身をやつしたのです…!!」

 

 メラメラと怨嗟の炎を燃やしてアダルマンが拳を握る。

 

 じろっと見たところ、七曜はルミナスの寵愛を奪われることを危惧してアダルマンを謀殺したらしい。

 七曜の老師は同担拒否だったということか。哀れなことよ。

 

「権力が二分されている以上、ルベリオスの会議が紛糾するのは仕方ないってことか。とすると、後注意すべきはその七曜ってやつと、悪魔が関与してるって噂を流した東の商人か」

「私の見たところ、該当の東からの商人の名前はダムラダというみたいですね。ただし、別に彼は商人ではありませんが」

「へ?」

 

 リムルが間の抜けた声をあげる。

 俺も実はダムラダとか言う男に前会ってるんだよな。

 

「1500年ほど前に東の帝国であったことがあります。帝国の近衛騎士団に所属していました。今は…おお、副団長をしているみたいですね。出世してます」

「え、待て待て待て、ということは、東の帝国が情報工作を仕掛けてファルムスを立て直そうとしてるディアブロを潰そうとしてるってことか?」

「そうなるでしょうね。どうやら東の商人だけでなく西方諸国評議会も一枚噛んでるようですが」

 

 まさに政治戦のるつぼだ。

 法皇庁は俺と融和したいトップと人類圏を脅かされるのを危惧する聖騎士との軋轢に苦しみ。

 西方聖教会はテンペストの台頭を快く思っていない。

 東の帝国は西側諸国を混乱に陥れたいと暗躍し。

 西方評議会は新参の勢力が気に入らない。

 

「テンペスト、大まかにいうと歓迎されてなくない?」

「そうなりますね」

 

 ガックリと肩を落とすリムルに、俺はポンと肩を叩いた。

 出る杭な新参者が歓迎される時空なんてねーから。

 

「はぁ。まぁいいや。ルベリオスからの使節団がやってくるのは二週間後だ。どちらにせよ、使節団の歓迎準備を進めるしかないな」

 

 使節団には西側最強の騎士、ヒナタと一部聖騎士がついてくることはルミナスからの連絡でわかっている。

 その場でいかに対応できるかが、今後のルベリオスとの関係性を決めるだろう。

 

 リムルは力強く頷いて、遠く窓の外を見つめた。

 

「謁見の祭りにも間に合う予定だし。せいぜい歓迎するとしようか!」

 

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