転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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もしもボックス

 

 定期的なディアブロの報告会にて、現在のファルムスの動きを聞かされている今現在。

 

 どうも、東の商人ダムラダの扇動があったらしい。

 「王なき地方連邦の国であったファルムスを不当に支配しているラーゼン王を廃せよ」と、地方領主たちが一斉に立ち上がったとの報告があった。

 

 今は兵を出して首都に攻め込もうと進軍しているとのこと。

 もちろん、これにラーゼンは反発。ディアブロの協力のもと中央政権を担う悪魔たちを用いてこれに対処しているらしい。

 

 現状は中央都市は地方軍に囲まれているようだ。

 リムルがガタッと立ち上がって心配そうにディアブロへと声をかけた。

 

「おいおい、それ大丈夫かよ!」

「問題ございません。人間の軍程度に、多数のアークデーモンで構成された首都を落とすことなど不可能です」

「……なるほど、ただ、武力鎮圧になるから、民衆の反発は必至、と」

「ええ。首都に呼んだ次男三男は所詮は数あるスペアのうちの一つ。領地に残った貴族が増長するのは目に見えたことでありました」

「あー、じゃあディアブロはどうするつもりなんだ?」

「今まで放っておいたのは、奴ら自らに当主の消えた穴を埋める後継者を決めさせるため。新しくトップさえ決まって仕舞えば、権力関係は安定しますから。それを傀儡にするなり悪魔にすげかえるなり、楽に対処が可能です」

「おお…流石ディアブロ。怖いくらい優秀だな」

「お褒めに与り恐悦至極」

 

 リムルのドン引きの顔は「怖いくらい優秀っていうか純粋に怖い」とでも思っていそうだが、それは伝えないでおく。

 ディアブロが褒められて実に満足そうに背景に花を飛ばしていたからな。

 水を差すのも可哀想だろう。

 

 と、そこまで話したところでディアブロが眉を下げた。

 

「しかし懸念が一つ。内紛が長引いて、他国の介入を許してしまう可能性が高いのですよ。特に今、三武仙と東から多数のデーモンハンターがやってきています」

「デーモンハンターなんているんだな!専門職か…東にはそんなにたくさん悪魔が出るのか?」

「東にはあの原初の白(ブラン)がいますからね。国家的に対策を練る必要もあるのでしょう」

 

 ブラン、と聞いて少々懐かしい気持ちだ。

 独立独歩の気があるブランは俺のことを苦手にしていたからな。

 近づくだけで地の果てまで逃げられるものだから、俺の方も気を遣って東方には近寄らなくなったものだ。

 

 ディアブロが机に広げられた地図にコマを配置した。

 軍事作戦用に作らせたもので、それぞれ周辺国に合わせて色の違うチェス用に似たコマが使われている。

 

「三武仙もデーモンハンターも、呼び出した悪魔たちでは荷が重いでしょうから。そちらは私が対処する予定です」

「三武仙って、たしか西方聖教会のテンプルナイツだよな。なんだってルベリオスがこのタイミングで動くんだ?」

 

 「俺らと国交を結ぶために使節団まで派遣しようとしてるのに」とリムルが首を捻った。

 そりゃそうだ。

 というかグランベル・ロッゾの不屈の精神がすごい。

 俺の呪いも世界の趨勢も屁とも思ってないあたり、狂人とは時に凄まじい力を発揮するものだ。

 

 ソファでぶらぶらしていた俺は二人の会話に口を挟んだ。

 

「七曜の命令でしょうね。七曜、というよりグランベル・ロッゾの陰謀でしょうが」

「七曜かー、目的は俺らの台頭を潰すためか?」

 

 ディアブロが「表向きは邪悪な悪魔の討伐のためであり、テンペストとは無関係で通すつもりでしょうね」と言葉を続ける。

 このネバーギブアップの精神は、彼の持つ不屈者(あきらめぬもの)のスキルが影響しているだろう。

 俺の神罰でもめげずに人類支配を目指すとは、その屈強さに少しばかり感服する俺である。

 

「じゃあ、強者たちについてはディアブロに任せるとして。地方の平定っていう根本的な問題についてはどの程度かかりそうだ?」

「順次進めてまいります。安定するには数年ほどかかる予定です」

 

 ディアブロがとてつもなく悲しげに目を伏せた。

 リムル命のこの悪魔にとって数年も近くに侍れないのは地獄にも近しいことだろう。

 俺のせいで子たる原初の七悪魔が苦しむのは本意ではない。

 

 しかしどうしたものか。この場合、歴史の書き換えが一番早いのだろうが、選択肢が多すぎて変更方法が決めきれない。

 よし。

 

 ずるり、と白い半円形のポケットを具現化する。

 「???」と疑問符を乱舞させたリムルが俺を覗き込む。

 

 さらにその中から公衆電話のボックスを丸ごとずるりと引っ張り出す。

 亜空間から引き摺り出された電話ボックスがやや狭い会議室内を圧迫する。

 

 一部始終を見守っていたディアブロが宇宙猫をしている。

 まず四次元ポケットが謎だし、そこから出てきた電話ボックスは何の用途で使うかもわからないしで仕方ないことだろう。

 リムルが絶妙な表情で「突然公衆電話出すじゃん」と訝しげにしている。

 

「はて、これは……?」

「使い方がボックスの内側に貼ってありますから、その通りに使ってください。三回だけ望み通りに世界を書き換えますから」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、「ぶッ!?!?」とリムルが吹き出した。

 

「もしもボックスじゃねぇか!!!」

「私にかかれば秘密道具の再現ぐらい容易いことです」

「今までで一番お前すげぇって思ったわ」

 

 真顔で言うリムルに若干なんでじゃと思うなどするなり。

 もっと色々すごいことやってたのに、今までリムルの中では俺はドラえもん以下だったってこと???

 

 ま、今回のもしもボックスについては実質的には単純に俺に繋がる電話でしかない。

 その場で相談して願い通り適切な世界になるようプレビューもして、その上で世界を書き換えるのだ。

 原作もしもボックスよりも高度な物であるのは疑いようもない。

 

 うん。俺はドラえもん以上。いいね?

 

「まぁ、まずそうな変更内容だったら変える前に私が警告するので問題ありませんよ」

「ならいいけど…本当に大丈夫か?」

 

 不安そうなリムルが、大きいため息を吐いて頭をかく。

 ディアブロは「ありがとうございます、アルジュナ様」と珍しく恭しい礼をした。

 若干悔しそうなのは自分だけで解決できなかったからだろうか。

 ディアブロはディアブロで俺と若干距離を取ろうとするからな。

 

 よし。たまには息子とのキャッチボール的なアレを楽しんでみるのもよかろう。

 

「悩んでばかりでもあれですから、少し体を動かしましょう」

「げっ、いやー、俺まだまだ仕事があるからさぁ!」

「そう言わずに。しっかり手加減しますから。あ、そろそろディアブロも力をつけたほうがいいですし、新しい風も必要ですので参加してもらいましょう」

 

 唐突な巻き込み宣言にディアブロがギョッとした顔をした。

 ここですかさずリムルが「ディアブロ、一緒に死んでくれるよな…?」と甘えたような声を出す。

 言ってることは全然甘えなど見当たらない血生臭いものだったが。

 

 主命とあらば、「かしこまりました、我が君よ」以外の返事を持たないディアブロである。

 顔色は真っ青だったが、それでも意見を翻さないあたりリムル命の男前が光る。

 ちゃんと化身で戦うから命の心配はないのに。

 

 最近では、消しとばして己を取り込み力を増幅させるよりも技能面での習熟に力を入れているからな。

 必要技能だけ持たせた化身で戦ってるので、早々消し飛びはしないのだ。

 

 

 そうして二人を演習場へと引っ張っていき、道中会ったシオンが「ディアブロばかりずるい!!!」と盛大に駄々をこね始めるのであった。

 

 

 

 

 

 ダムラダとグランベルは、暗い部屋にて邂逅していた。

 

 ダムラダが眉間に皺を寄せたまま、かつてないほど余裕のない顔で目を細めた。

 

「義理で手は貸しましたが。そもそも、我々に魔王リムルと敵対する必要性は薄い。あとのことはあなただけでことを起こされるといいでしょう」

「どういうつもりだ、ダムラダ。我らとの販路を失っていいのか?」

 

 西方評議会の闇、グランベルが脅しかけても東の商人はそれをカケラも意に介する様子はなかった。

 

「風向きが変わりましたからね。どうやらルベリオスのトップもテンペストからは手を引く様子」

「………それがどうした」

 

 グランベルの膝の上で幼い少女、マリアベルが足を振っている。

 退屈だからではない。自分の意にそぐわない展開にイラついて、ゆらゆらと足を揺らす。

 

 ダムラダはしばし押し黙った後、じろりとグランベルを睨め付けた。

 

「アルジュナ神に喧嘩を売るなど正気ではありませんよ。貴方も破滅したくなければ早々に手を引くことだ。これは親切心で言っています」

「我らの間柄に親切などと言う言葉が介在する余地はない。違うか?」

「なんにせよ、私はドラゴンの尾を踏む前に本国へ戻ります。かの神は余程のことがない限り他者を消すことはありませんが。何事にも程度というものがある」

 

 ガタリと椅子を立ち上がって、ダムラダは踵を返した。

 

「では、失礼する。……それと」

 

 振り返り、鋭い瞳でグランベルを睨みつける。

 それは紛れもない強者の印。かつて光の勇者だったグランベルにもわかる、覇気の類である。

 

「変な気は起こされぬよう。我らとことを構えたくなければ」

 

 それだけ言って、ダムラダは去っていった。

 静寂の戻る室内で、マリアベルが不機嫌そうに口を開いた。

 

「不愉快ね。不愉快なのよ」

「そうだね、マリアベル」

「神なんて強大な力を持つ魔物に過ぎないわ。欲こそが真に世界を支配するのよ。そうでしょう?」

 

 マリアベルはニコリと笑って、それと同時に酷く屈辱そうに眦をつよめたのだった。

 

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