転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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ヴィオレの愛

 

 ヴィオレは、アルジュナ神を慕っている。

 

 これまでずっと、ヴィオレはテンペストを観察していた。

 正確にはアルジュナ神を、だが。結果的には似たようなものだろう。

 

 彼が旅商人をしている時も、戯れに農民としてジャガイモ栽培を営んでいる時も、

 ヴィオレは人知れずずっとその御姿を見守ってきた。

 

 一言で「慕っている」と言ったが。

 

 その感情をヴィオレ自身は「雛鳥が親を慕うようなもの」と認識していた。

 言語化できるようなきっかけがなかったのが理由だ。

 

 一応理由らしきものはいくつかある。

 生まれたての頃、何もない冥界に偶然訪れたアルジュナ神が、なにかと世話を焼いてくれた。

 初めてアルジュナ神の滅亡創世の御技を見て、そのあまりの美しさに息を呑んだ。

 

 だがその全てがここまでの思慕を説明するには至らないので、結局は「きっと親への愛なのだろう」と定義することとなった。

 悪魔が親への愛など奇妙極まるが、こういうことがあるのも悪くはない。

 

 アルジュナ神のお姿を見るたび高鳴る胸に、ヴィオレはそのように判断していた。

 

 

 そんなある日のことだ。

 

 いつも通りアルジュナ神の姿を水晶に映して「あぁ…」と恍惚に浸っている時。

 ふと、水晶が捉えた先でアルジュナ神について相談事が行われていることを察知した。

 

 少しばかり覗き見してみれば、そこでは人間の男とアルジュナ神の親友たるスライムが間も無く開かれるという開国祭について相談していた。

 

 このスライムは元々は星王竜ヴェルダナーヴァという話だ。

 竜種からスライムなど天地驚愕の転生だが、アルジュナ神の判断に間違いなどあろうはずもない。

 知覚を分割し、アルジュナ神の方も映しながらスライムの話の方にも耳を澄ませる。

 

 そしてその内容を聞いた瞬間、ヴィオレは椅子を蹴っ飛ばしてにわかに立ち上がった。

 

「テンペスト内でボクの下僕、…いない!クソ!じゃあ近場!」

 

 検索をかければ一件、偶然召喚された紫の系譜の木端悪魔がブルムンド周辺にいるのがわかった。

 まったくもってベストではないが、この雑魚は幸いにも受肉している。

 この悪魔の肉体を捧げさせれば、一時的ではあるが無理やりに顕現できることだろう。

 

 通話を繋いだ悪魔が「そんな、ヴィオレ様…!」と生意気にも否定の姿勢を見せたので、イラつきのあまりやや本気で凄んでしまった。

 この時間のない時にうざったい下僕である。

 

 原初の七悪魔の本気の怒りに震え上がった悪魔は、泣きながら悪魔召喚の儀式に入った。

 あとはいかに早くテンペストに到着するかだ。

 

 転移魔法をストックしながら、召喚のための足りない魔素を自腹で出して召喚に応じる。

 

 木端悪魔を押し除けて依代に憑依する。

 捧げられた肉体は相性が悪く力が思ったように出せないが、とりあえず今はいいだろう。

 

 後ほど他の肉体を探せばいいだけだ。

 ラージャ小亜国の芽は後少しで開花すると思われるし、そちらをあたってみるのもいいだろう。

 

 魔素の急激な不足にゼエゼエと息を切らして連続転移を行う。

 こんなみっともない体ではとてもアルジュナ神の御前には出られないが、それもひとまずの辛抱だ。

 

 神官の役!お側付き!!

 こんな大役をたとえばノワールなどに奪われることがあってはあまりの屈辱に自死すら選ぶことだろう!

 

 そうして、ヴィオレはリムルのいる会議室へと出現した。

 

 精一杯取り繕って、ポカンとしているスライムへと胸を張った。

 スライムもさすがは星王竜ヴェルダナーヴァ。

 内包する魔素量が桁違いで、存在規模の大きさは原初たるヴィオレのそれすら上回っている。

 その魂の輝きも素晴らしい。

 これはノワールが惚れ込むわけである。

 

 スライムが疑問符を飛ばしながら首を傾げた。

 

「だ、誰だ?というか何の用だ???」

「ボクは原初の紫(ヴィオレ)。アルジュナ様のお側に侍るに相応しい悪魔さ。キミの話は聞いていたよ」

 

 優雅に一礼する。

 肉体の不備に魔素不足が重なり立っているのも辛かったが、ここが正念場だ。

 意地でも取り繕わねばなるまい。

 

「アルジュナ様の側近を探しているのならボク以上に有能な人材はいないと断言する!実力も十分だし!」

「お、おう、それよりすごく辛そうだけど、まともな肉体がないんじゃないか?ちょうど最近魔鋼で作った人形があるし、そっちに移ったらどうだ?」

 

 と、そんなヴィオレの意地をスライムは見抜いていたらしい。

 若干の気恥ずかしさもあったが、ありがたい申し出にヴィオレは頷いた。

 

「!!それはいいね!もらっても構わないの?」

「ああ。そっちのほうが落ち着いて話もできるだろ?」

 

 「まぁ、もともとディアブロへの褒賞用に試作してたやつだけど…」という声は耳に入らなかった。

 悪魔耳は都合のいい言葉しか聞き入れないのが常なので。

 

 しばらくして指示された人間の男が持ってきたのは、非常に純度の高い神輝金鋼(オルハルコン)の骨格と培養された肉体を持つ培養人形であった。

 

 これには流石のヴィオレも舌を巻いた。

 ここまで完璧に受肉するための理想的な肉体を作成するなど、可能なことだとは思っていなかったからだ。

 

「俺のスキル、智慧之王(ラファエル)をベースに俺のところの研究者達の知恵を借りたんだ。どうだ?」

 

 するりと入ってみれば、我が体のように自然と馴染むことができた。

 代わりに低位悪魔の使っていた肉体が打ち捨てられる。

 これでは見苦しいし、あちらに処分してもらうのは気が引ける。

 

 破裂性のない圧縮した魔法でパチンと無に返せば、「おおう…」とややドン引きした声をスライムが出した。

 解せぬと思うヴィオレなのである。

 

「うん。こんなに合う体は初めてだ。元々予定していた身体よりもずっといい」

「おっ!そうか、それはよかった!俺も作った甲斐があったよ!」

 

 予定していた身体というのはラージャ小亜国の姫の身体だが、今となってはそれも必要あるまい。

 

 小太りの人間の男が「よかったんですかい?」とリムルに耳打ちする。

 

「試着用の肉体だし、わざわざ悪魔を呼んで着心地を確かめる必要も無くなったと思えばちょうどよかったんじゃないか?」

「まぁ、そうリムルの旦那が言うのなら」

 

 ヴィオレが肉体の着心地を確かめていれば、スライムが歩み寄ってきた。

 

「それで、アルジュナの部下になりたいんだよな。あいつとどういう関係なんだ?」

「口にするのは恥ずかしいんだけど……敢えていうなら」

 

 一拍間を置いて、ヴィオレは恥じらった。

 口にするのは恥ずかしい。でも誇らしい。不思議な感覚で、口にするのがどうしても遅くなった。

 

「アルジュナ様とは親子……ってことに、なるかな…?」

「!?!?!?!?!?」

 

 スライムも人間の男も、なぜか驚愕に目を見開いたようだった。

 




次の投稿は一週間後になる予定。
今後の展開を組み直します。
東の帝国と天魔大戦どうしよう…
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