軽くしめられたダグリュールの息子三兄弟は、素早くシオンの管理下に入ることとなった。
その戦いはあっさり過ぎて見るべき点もなかったほどだ。
実は、シオンは皆に内緒でこっそり俺との特訓をしていたんだよな。
最近だとベニマルとは実力差をつけられ、シュナのような明確な内政的地位の無いシオンは焦っていたのだろう。
そういう時はやはり力!暴力!ということで俺に相談した結果、夜中のトレーニングとなったのである。
軽く1000回ほど死んでもまだ恐れすら見せず向かってくる様をみせられ、そのガッツに心打たれて俺もわずかばかり気合が入った。
そうした特訓はわずか1週間ほどの間でしかなかったが、シオンは見事悪鬼(オニ)から闘神へと進化を果たした。
長い生死の繰り返しの果てに覚醒した上位聖魔霊─炎霊鬼たるベニマルほどでは無いが、それでも新世代の未覚醒魔王を凌駕する力を持っている。
ちなみに、リムルの現在の種族は亜創世粘性星神体である。
つい先日俺の放つワールドエンド系攻撃をベルゼビュートで飲み込むことに成功した彼は、ようやく竜種を超え、シマリスぐらいの強さを得ることができたようだった。
ここまで長かったネ……ここから猫ぐらいまでになるには長い年月と弛まぬ努力が必要になってきそうだ。
閑話休題。
午後になると、一旦ファルムスの件が落ち着いたディアブロがテンペストへと戻ってきた。
若干涙すら堪えた顔で「ようやく我が主の元で仕えることのできる喜びに胸が張り裂けそうです!」とか言っている。
「あれ、あのもしもボックス使わなかったのか?随分早かったけど」
「勿論使わせていただきました。流石に、あれの助け無くしてここまで早く情勢を安定させることはできませんでしたからね」
疲れの滲む顔でにこっと影のある悪魔的笑顔を見せる。
些事ですので現実改変内容に関しては省略させていただきます、と顔に書いてあるようだ。
実際、なんと一回の現実改変で全ての問題を解決してみせたからな。
ディアブロの頭脳も有能さも本物だろう。
変更点は多岐かつ細やかで、書き出せば書類の山になるだろう膨大な内容を電話口で滔々と垂れ流されてちょっとびびった思い出である。
まぁ、それだけの内容をまとめたディアブロの努力の甲斐だろう。
俺が歴史改変──ユガは回さず省略する形──をした後も特に大きな問題もなく、うまくファルムスは安定しだしたのだった。
その後はすぐに天狗の謁見式だ。
一ヶ月前に話は既につけてあるが、概要だけ説明すると突如としてベニマルが婿入りすることが決まったとかなんとか。
なにそれ面白い……じゃない、大変な事態である。
これにはテンペストの上層部一同、好奇の目線で見守るより他ない。
お相手はもみじという名の可憐な天狗だ。
中々の魔素量の子だが、俺が鍛えたベニマルに比べればあまりパッとするような実力ではない。
俺たちの前にひれ伏す天狗達の様子が若干おかしいが、どうも彼らの祖としての天使の側面が俺を過度に怖がっているらしい。
もみじがガクガクと震えながらも気丈な態度で立っているのを見て、祖父たるハクロウがニコニコ笑顔で爺や然とした顔をしている。
娘じゃなくて孫を見る目だなありゃ。
その後もみじの母──つまりはハクロウの嫁さんたるカエデの文が読み上げられ、ふたたびベニマルの視線が気まず気に右往左往しだした。
別に政略結婚的に身を固めて、そのついでに天狗をテンペストの防衛力として使い倒せばいいのに。律儀な男である。
ハクロウとカエデの出会いの話にほっこりしつつ、余波的にシュナとシオンが二人でバチバチ争っている。
色恋はいいものだ。無限の可能性が詰まっている。俺も恋がしてぇー。
などと考えていたらリムルにひそひそ声をかけられた。
「アルジュナはそういう話ないのかよ。例えば好みのタイプとかさ」
「勿論ありますとも。ちょっと小悪魔な子でこちらを振り回してくる子も可愛くていいと思うんですよね」
「へぇー、お前もすみにおけないな!」
「?」
何故かとなりで胸を張るウルティマである。
とはいえ、基本好みの話は前世でのことだ。
創造物と恋はちょっと特殊過ぎて趣味ではない。
自分で描いた漫画のキャラにガチ恋したらちょっとヤバいやつであるように、俺も被造物と恋する趣味はないのである。
それはそれとして、あー、燃えるような恋がしてぇー…。
過ぎ去ったジュブナイルな胸をときめかせる空気が恋しい。
学園ものってロマンだよね。想い人の制服姿とかさ。
などと思いながら、開国祭前のイベント、魔物達の謁見式は終了したのであった。