転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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別れ

 

 ミリムと過ごした時間も、気がつけばはや20年にもなっていた。

 

 その間、平和だったともいろいろあったとも言えよう。

 行き倒れに見せかけて何度もここを訪れるディーノと名乗る天使と知り合ったり。

 ノワールを煽るためだけに態々召喚されてきた他の原初の悪魔が周りも憚らず激戦を繰り広げたり。

 

 ディーノはどうもヴェルダナーヴァをかなり慕っているらしく。

 その娘であるミリムを非常に心配して、積極的に見守りに来ているようなのだ。

 バレバレの意図を必死で隠して遭難者を装い「この辺は迷いやすいんだよな」だとか「ついアルジュナ様の加護のあるここに吸い寄せられて」とか抜かすので笑ってしまう。

 

 照れ臭いのはわかるが、ミリムにはともかく俺に隠す意味はないだろうに。

 

 また、悪魔に関してはギィの部下をやっているミザリーとレインがいの一番にやってきた。

 開口一番にノワールを煽り散らし、素早くキレたノワールと周囲の山を三つ四つ消す大迷惑バトルを炸裂させた。

 そのバトルは三日三晩続くかに思われたが、三悪魔が白熱のあまり俺たちの家に核撃魔法を直撃させたので方針変更。

 

 「人の家を破壊するような不出来な悪魔は次のユガには必要ありませんよね?」と脅しかければころっと丸くおさまったのであった。

 まったく、傍迷惑な喧嘩はすんなし。

 

 そんな騒がしくも愉快な日々はあっという間に過ぎ去って。

 ミリムの25歳の誕生日の日。

 

 そろそろ独り立ちをしたい、各地を旅をしたいと言い出したミリムのために俺は一通りの旅支度を用意したのだった。

 

「本当に行くつもりですか?旅は大変ですよ、それに力の制御も大変ですし」

「まだ言っているのか。ワタシは旅をすると決めたのだ!なぁガイア!」

「キュウ!」

 

 子竜だったミリムのペットもすでに人一人乗せられるオオカミぐらいのサイズがあった。

 これでもまだ子竜だというのだから恐れ入る。

 一般家庭ではとても飼えないサイズ感だ。

 

 親心としてはまだまだ心配が尽きないが、二十歳といえばもう成人、大人だ。

 やはりここは涙を堪えて俺も子離れしなければならないだろう。

 

 ミリムの着替えの服を用意し終えたノワールが、いくらでも入る魔法のリュックサックのチャックを閉めて大きなため息をついた。

 

「本当に、本当に長かったですよ…ここまで長く感じた二十年は発生してコレ以前も以降もないと断言できるでしょうね」

 

 ノワールは実に恨みがましくぼやいている。

 最後とか悟りを開いてたしな。まるでミリムを二人世話してるみたいな顔をしていた。

 俺は世話する側だが何故にそんな反応をするのか。それがわからない。

 

「何だノワール。ワタシは楽しかったぞ!」

「そうでしょうね…まぁ、ミリム様ならどこへ行っても無事でしょうからアルジュナ様も安心してください。もっとも、周りの無事は保証しませんが」

「ですが年頃の娘ですよ?不埒な男が現れないとも限らない」

「その場合は不埒な男共々その国が灰燼に帰すだけです」

 

 ノワールは真顔だった。

 俺の育てたミリムがそんな粗野なことをするやろか。するはずがない。

 俺がうんうん頷くと、「創造神の親バカは規模が違いますね…」などと嘆息されてしまった。

 うるせーぞそこ!

 

「とりあえず、この屋敷は残しておきます。里帰りをしたくなったらいつでも帰ってきてくださいね」

「わかったのだ!」

 

 誰かが扉を開ければ俺に伝わるようにしておけばよかろう。

 実家はいつでも帰ってきていい状態だからこそ安心するのだ。

 権能を使って適当に屋敷をいじれば、そこは常に清潔さが行き渡る不滅の空間へと変換された。

 

 「アルジュナ達はどうするのだ?」とちょっと寂しそうにミリムが聞いてきたので、しばし悩ましい気持ちに駆られながらも返事をする。

 

「私は東の帝国に行ってみようと考えています。まぁ、ミリムと同じ旅人ですね」

 

 この辺りにはヴェルダナーヴァの魂はいないみたいだからな。

 足を伸ばして観光がてら世界を巡るのも悪くあるまい。

 

 ノワールはといえばそっけなくいつも通り完璧な佇まいで口を開いた。

 

「私は契約満了ということなので冥界に帰らせてもらいますよ」

「あ、それについてですがノワール」

「はい?」

 

 ノワールは露骨にうげ、という顔をした。

 この流れで20年前俺に捕まったからな。さもありなん。

 

「もう追加契約は断固拒否しますよ」

「いえいえ、そうではなく。契約は百年と言ってあったので、残りの80年分は受肉権をサービスしておきます。好きに使ってください」

 

 権能で契約と世界のルールに干渉した裏技だ。

 回数チケットのように受肉権を取っておけるように組み立てて80年の時間制限付きで付与したのだ。

 冥界に帰って来るべき時のために取っておくもよし、使い切って現世を謳歌するもよし。

 

 与えられた機能を理解したのか、ノワールはしばし目を見開いた。

 

「……あなたの契約は最悪中の最悪でしたが。誠実な契約主としては悪くありませんでしたよ」

 

 それだけ言って。

 しゅんと僅かな風の動きだけを残して、ノワールはどこへなりと退去していった。

 

 ミリムもそろそろ旅立ちの時間だ。

 

「ミリム、健康に気をつけて。力加減にも配慮して。そして、貴方に幸あれ」

 

 超統合神性としてありったけの加護を与えようとも思ったが、それはグッと我慢した。

 ミリムだって自分の力だけで世界を見て回りたいからこんなことを言い出したのだ。

 それを加護だ何だと過保護にしていては彼女の意思を蔑ろにしてしまう。

 

「わかったのだ!アルジュナも元気でな!」

 

 そう言って、ミリムは翼を広げて勢いよく空へと飛び立った。

 遠くなっていく背中をいつまでも眺めて、空を眺める。

 

 ああ、これで一人だ。

 寂しさと切なさと、不思議な充足感が胸を満たす。

 元気で、ミリム。

 

 それでは俺もそろそろ旅立ちだ。

 俺に旅準備は必要ないので、とりあえずフラフラと歩き出すだけで旅は始まる。

 

 誰もいない森の一軒家を背に、俺はゆっくりと地に足をついて歩き出す。

 

 さて。

 行くか、東の帝国!

 

 

 

 

 

 えっちらおっちら、徒歩で旅する伝統的な東海道中膝栗毛。

 適当に旅道具を具現化して、ヴィマーナを変形させた白い馬に乗せての徒歩の旅だ。

 ヴィマーナ馬はちょっとメカメカしい謎の馬?みたいな見た目になってしまったので、布を被せて誤魔化すこととする。

 

 馬に乗せたのは俺の覚えている限りの現代キャンプ用具だ。

 テントやらランタンやらとどっさり乗せたその重量は普通の馬なら潰れているそれだ。

 まぁ、ヴィマーナ馬なら特に問題ないのでよしとする。

 

 とことこ山道をあるけば、俺の気配に慄いたらしい野生動物がバンバン逃げ出していく気配がする。

 気配を隠したほうがいいのか、それとも野獣対策に気配はそのままがいいのか、悩ましい限りである。

 

 そういえば、今頃エルメシアさんはどうしているだろうか。

 なかなかに覇気のあるエルフの娘さんで、いつか国を作りたいと言っていた豪傑だ。

 国を作ったら加護を与えに行くと約束したのでいつか連絡をくれるとは思うのだが。

 

 一ヶ月ほどかけて街道沿いに首都から遠ざかるように進めば、だんだんと人の姿もまばらになっていく。

 この先は超魔導大国ソーマでは「ジュラの大森林」と呼ばれている森深い区域になる。

 その果てしなく深い森を超えたら東の帝国が見えてくる。

 

 道中怖がらせないようにツノを短くして旅商人に扮していたのだが。

 ジュラの大森林に向かうというと商人を含めた旅人達に口々に止められた。

 

 なんでも、慣れた商人でもないと、森を越えるのは危険すぎるのだそうだ。

 森の魔物もそうだし、鬱蒼と茂った森は迷いやすく過酷だ。

 護衛隊を雇って大所帯で航る東の商人もいるが、やはり一般的ではないとこのと。

 

 もし東を目指したいなら、北上するルートであればドワーフの多い長閑な地域を通ることができるらしい。

 しかしそれではとても大回りだ。まわり込むだけで三ヶ月はかかるだろう。

 遠すぎるのでなるべく避けたいところだが…。

 

 面倒くさくなってきたので、やっぱりヴィマーナで空をビュンと横切ろうか、なんて邪念が首をもたげる。

 

 いやいや初志貫徹が一番だ。

 貴金属を具現化して商品として、ヴィマーナ()に乗せて地道に北上してドワーフの住む地を目指していく。

 

 ドワーフの住むそこは大国ソーマから離れておりまだ開墾も進んでいないようだが、もう千年もすれば王国か何かが立ちそうな気配がする。

 

 道中、具現化した各種商品を買い叩かれたりぼられたりと散々失いつつ、山をまわり込む形で道無き道を進んでいく。

 田舎だけど商人はやはりいて、進めば進むほど東から来た商人たちがソーマを目指して大商隊を結成して交流相手となってくれた。

 さすが、本物の商人は手強い。

 俺ももうどれほど勉強代を支払わされたかわからないぐらいだ。

 

 そのおかげで一応、一端の商人といってもいいくらいには磨かれたが。

 

 

 長い長い山道を抜けた、出発から八ヶ月が経過した頃。

 旅の商人として無事、俺は東の帝国に入国したのであった。

 

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