転生したら創世滅亡輪廻の神だった件   作:ラムセス_

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東の帝国商業紀行

 

 商業区画の端っこに空き家を借りて、商売を始めること二年。

 店の名は「アルジュナの雑貨店」。

 

 俺が創造で生み出した様々なインテリア雑貨を扱う、そこそこに人気の店だ。

 特に人気なのは比較的お求めやすい価格のおしゃれな陶磁器だ。

 前世の現代日本を参考にした豊富なデザインが人気の秘訣。

 貴族からの発注もある格調高いものから、市民が親しみやすい価格帯まで幅広く揃えているのも強みの一つ。

 

 最近では俺の店の食器を使っていることが貴族のステータスにもなっているくらいだ。

 商売は順調だと言えるだろう。

 

 ちなみに、創造しているだけだと不経済なので適度に他の業者から仕入れたり、商業組合に加盟したりときちんと活動はしている。

 

 新参者として完全に足元を見られていて、俺の謎の資金源に「西の王国のお坊ちゃん」なんて陰口を叩かれたりもしているが。

 お坊ちゃんってなんだよおい。

 俺はオメーらより何十億年単位で年上だっつの。

 

 まぁ、新参者のくせに急に成功したから妬みも入っているのだろう。

 妬み嫉みは人のサガ。多少のことは有名税として受け止めねばなるまいよ。

 

 なお、クソほど性格の悪い商業組合トップの三大商人のジジイは「穢らわしい魔物が商売の真似事など、まったく帝国の質も落ちたものですなぁ!」とか正面から喧嘩売ってきたので、目にもの見せてやった。

 

 帝国の上の方で資金が滞留してたのはこの性悪ジジイのせいだったからな。

 

 商業の神ガネーシャの権能で金回りに圧力をかければ、流れの障害はすぐに解消された。

 つまり資金の流出、大損、事業の失敗ということだ。

 その富の大部分を失った性悪ジジイはその権勢を曇らせ、今は隠居の身であるらしい。

 あまり急激にやると従業員にも不幸が生まれるからな。

 没落していないだけ感謝してもらわなければ。

 

 とはいえ、俺が魔物に間違えられることはままあることだ。

 俺は今のところアルジュナ・オルタ第三再臨姿、短いツノにかっちりした露出の少ない服を着ている。

 文明的には見えてはいるのだろうが、角が鬼人の一種にでも見えていたのだろう。

 

 角隠しでもしようか…と考えもするが、常連さんには「角も似合っていてかっこいいですよ!」と好評なので今のところそのままなのである。

 

 そうして、ガネーシャ神の権能のもと好景気に湧く帝国で現代日本パクリ系陶磁器を売り捌いていれば。

 

 ある日、兵士がやってきて俺は連行される運びとなった。

 

 なんでや。

 俺は無実だ、これは何かの間違いだ!と騒ぐものの兵士は何も取り合ってはくれなかった。

 

「皇帝陛下の命令によりお前を王宮へと連れていく。これは勅命だ逃げようと思うな」

「え、あの、一体何が」

 

 「黙れ!」と兵士は俺を強めに槍の柄で殴打した。

 こんな横暴許さぬ!とは思えど、俺の権能から見たこの兵士さんはご家庭では一児の良きパパである。

 真面目で堅物、職務に忠実らしく上司の言うことを忠実に守っているだけだ。

 

 全くもってやりづらい。

 非常に威圧的に一般市民である俺を縄で縛り付け、無理矢理にひっとらえられるのは許された行為ではない。

 もし冤罪とかなら適当に振り切って逃げ出そうか、なんて考えたりもする。

 

 とはいえ、こんな弱々の一般兵士たちを傷付けずに振り払うなんて無理難題、俺にはできそうもないが。

 おお、弱き生命よ。どうしてお前はそんなに脆い…。

 

 ほぼ罪人のように引き摺られて歩いていけば、王城前には簡易的な陣が引かれていた。

 そこには美しい女性が一人、設えられた豪華な椅子に座っている。

 

 女性の姿を目にした途端、兵士たちが皆一斉に平伏した。

 

 遠目に見た美しい女性は目を伏せ、ただ静かに椅子に座っている。

 時代にそぐわない特徴的なチャイナドレスが緩やかな風に靡き、緩くシニョンにした髪がふわりと揺れる。

 

 姿に見覚えはないが、その魔素の動きと権能には覚えがあった。

 俺は取り押さえられて頭を下げさせられたまま、慎重に口を開いた。

 

「あなた、ヴェルグリンドさんですよね。ヴェルダナーヴァの妹の」

「っこの!グリンド元帥に…口の利き方を弁えろ!」

 

 棒で再び打ち据えられそうになって、俺は反射的に身を固めそうになり。

 「やめなさい!!!」とヴェルグリンドさんが悲鳴のような叫び声を上げたのだった。

 

「なんてこと!私は丁重にお招きしろと言ったのよ!それをこんな…恥を知れ!!」

「!?!?もっ、申し訳ありませ…」

「下がれ!沙汰は追って下す!」

 

 激昂、というに相応しい烈火の表情で兵士を怒鳴りつける。

 そして服が乱れるのも構わず設えられた椅子から降り、簡易陣からこちらへと走り寄ってきた。

 

 縛られた縄を鉄扇でさらりと斬り外して、ヴェルグリンドは地面に両膝をついて平伏した。

 

「お久しぶりでございます、創世と破滅の神、唯一なりし輪廻の管理者、アルジュナ様。この度の失態、どうか私の首でお赦しいただければ」

「気にしないでください。ああいう意思伝達の齟齬は組織が大きくなればなるほど起こりがちですからね。私に実害はありませんし」

 

 というか服が汚れるから立ってくれヴェルグリンドさんや。

 友人の妹がこんなふうにガタガタと震えているのを見ると心苦しくて仕方がない。

 

 というか、兵士たちなんて存在規模から言ってなんの脅威でもなかったしな。

 偉そうな子犬の群れに絡まれている感じだ。

 可愛くて小さな命だなぁとは思うものの、怒りなど感じるはずもない。

 

 嘘。ちょっとイラっとしたが、その程度だ。

 

 というか、俺が下手に動けばこの辺一体の小さき命を壊してしまう恐れがあったからか。

 動くに動けなかったと言うべきか。

 

 せっかく商業シミュを楽しんでたのに、帝国経済に不況を招くような真似をしたくなかったのだ、

 最近ではガネーシャ神の権能をうまく使って帝国経済を回して成長させることに喜びを覚えていたからな。

 ハマるとつい熱中してしまう俺の悪いくせである。

 

「寛大な御心に感謝いたします、アルジュナ様。偉大なる千年周期の浄化を司る神」

 

 ヴェルグリンドさんはさらに深く、額を地面につけてひれ伏した。

 大袈裟すぎる。あとその美辞麗句そろそろやめないか。

 

「ところで、私を呼んだのでしょう?何の用だったんですか」

「は、はい。実は、この頃の帝国の異常な景気の良さに皇帝が危惧を抱いておりまして」

 

 ぎく、と俺は肩を跳ねさせた。

 まさかやり過ぎてバブルに入りかけてたか?いや、健全に成長させていたからそこまでは行っていないはずだが。

 たしかにちょっとやりすぎたかもしれない。

 

 俺が少し反省していると、ヴェルグリンドさんが続きを口にした。

 

「何らかのスキルの影響を疑いその出所を調べたところ、貴方様の名が上がったのです」

「……これは、その。申し訳ないことをしました。つい経済を回すことに夢中になり過ぎました」

「いいのです!貴方様のお力により帝国はより大きく、より強大に成長しました。伏して感謝こそすれ、責めるなど!」

 

 先ほどから兵士たちが周囲で右往左往している。

 この国の唯一無二の元帥が地面でひたすら平伏しているのだ。さもありなんである。

 そろそろ立ち上がって欲しいんだがダメかな……。

 

「とにかく、ルドラが…この国の皇帝がスキルの持ち主に会いたがっております。どうかルドラに会ってはいただけないでしょうか」

「構いませんよ。どうせここまで来たんですし、私も帝国に来てから楽しい3年を過ごせました。お礼に加護の一つでも授けましょうか」

「もったいないお言葉でございます」

 

 まさに突然のこと、蒼天の霹靂である。

 皇帝に会うなんて、一般人には地味に緊張することだ。

 長らく生きてきたが、権力的に偉い人に会うのは地味に初めてのことかもしれない。

 

 あ、そうだ。

 せっかく偉い人に会うのだからちょっと身だしなみを整えねばなるまいよ。

 

 俺はどの再臨段階で会おうか若干思案しながら、「皇帝陛下に会う前に、体の泥を落とすためにちょっと部屋を借りてもいいですか?」とヴェルグリンドさんに聞いたのだった。

 




・ヴェルグリンド
千年周期ごとに「自分だけでない、世界の全てが問答無用で滅ぼされて再創造されている」と竜として感覚で理解している。
この己がなんの抵抗もできずに滅ぼされ、その莫大であるはずの存在値をなんてことないように次の瞬間創造し直される。
その絶技、脅威に心底恐怖している。
千年ごとの終末が怖くて仕方がないお年頃。
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