ちょっと待って! 私の下の階級に猪熊柔がいるんだけど……! 作:怪盗218
合宿5日目の夜。
合宿所にほど近い某焼き肉屋の一角では、恰幅のいい二人の男が焼き網を囲み、煙がもうもうと立ちあがる中、良い音を立てて焼ける肉に舌鼓を打っていた。
「犀藤、どうだい、調子は?」
「そりゃもう、ここまでくれば気力で勝負っすよ、山上さん!!」
恰幅が良いのも当然。一人はソウルオリンピックで金メダルが期待されている男子無差別級代表の犀藤、そしてもう一人は前回のロス五輪で金メダルを獲得した後現役を引退した山上だった。その山上は犀藤の喰いっぷりに満足したのか、大きく手を上げて厨房の奥に向かって声を張り上げる。
「その調子だ、犀藤! ほれ、もっと食え! カルビ焼けたぞ! おばちゃん、タン塩十人前追加!」
「はーい!」という威勢の良い声が飛んだ後、その犀藤と山上が食べている背後、衝立の向こう側からも声が飛ぶ。
「おばちゃーん、こっちにも上ロース十人前追加! 藤堂さん、まだまだ序の口だよね。辺ちゃんは? カロリー? だったらハラミにしとくと良いよ。ハラミをレタスで巻いて食べたら何の罪もない完璧なラインナップになるから。おばちゃん、上ハラミも五人前で! あ、柔ちゃん、それもう焼けてるから食べちゃって!」
「はいはーい」
注文した肉が山上達の席と後方の席に次々と運ばれ、最後に追加注文分が記載された伝票が、山上達の卓上にどん、と置かれる。その分厚い伝票の一番上に書かれた数字をちらりと目の動きだけで確認した山上は幾分頬を引きつらせながら、声のトーンを落として犀藤にそっと尋ねる。
(おい、犀藤。なんであの娘達まで一緒に付いてくる事になったんだ?)
(いや、それが、練習が終わって合宿所を出ようとしたら、何故か桐生が玄関で待ち伏せしていて。そのままなし崩し的に藤堂と高辺、三上、猪熊まで……)
『犀藤パイセン、どこ行くんすか? 焼き肉でしょ? 知ってますよ、山上さんのおごりなんでしょ? 良いなぁ、焼き肉。私も食べたいなぁ♪』
『な、なんでそれを……。い、いや、確かに山上さんと会う予定だけど、山上さんはオリンピックに向けて俺の英気を養ってやるって――』
『だったら、私達もついていく資格がありますよね! 皆、ついて来て良いって!』
『お、おいっ、待て、桐生! み、皆……?』
『やった! 良い鼻しているじゃないか、桐生』
『ご馳走になります!』
『そ、その、私は桐生さんの付き添いとして……』
『……すいません、犀藤さん』
「な、なるほど……、ま、まあ良いさ。こんな事で日本柔道陣がソウルで良い成績を取ってくれるのなら、OBとして本望だ」
万が一の事も考えて多めにお金を引き落としておいて良かったと安堵する山上だったが、その彼の神経を逆なでするような言葉が背後から投げかけられる。
「さっすが、山上さん! じゃあ、おばちゃん! こっちにもタン塩五人前! あと、ホルモン盛り合わせと中落カルビをえーと、二、いいや、めんどくさい。五人前ずつお願いします!」
突然衝立の上から乗り出すようにして現れその上追加注文を始めた桐生に、さしもの山上も慌てる。
「き、桐生、お前、減量は大丈夫なのか? そ、それぐらいにしておいた方が……」
しかし、その山上の泣きの言葉に「あ、私、どれだけ食べても体重変わらないんで、全然大丈夫です!」と無情に応える桐生と、「山上先輩、自分は最初から減量考えなくていいんで、いくらでも食べれるっす!」と、これまた胸を張る藤堂。
そして衝立の向こう側からは「ホルモンもカロリー低いから、減量中の身にお勧めだよ、辺ちゃん」、「本当ですか、桐生先輩。それじゃあ、もっといただきます」という声が漏れ聞こえてきて、更に山上の表情は青ざめる。
男性陣がそんな食欲逞しい女性陣に圧倒されている時、その女性陣の中でも例外的に常識人と言っても良い二人がやおら席を立ち、彼らの隣に現れた。
「あの、本当にすいません、山上さん、犀藤さん」
「お二人のお邪魔をしてしまったんじゃあ……」
三上と猪熊だ。彼女達は申し訳なさそうな表情で二人にぺこりと頭を下げる。その姿を見て山上はふっと微笑み、「まあ、そんな所に立ってないで、座りなよ」と、4人掛けの座敷の空いたスペースに誘う。二人は顔を見合わせた後、それぞれ山上と犀藤の隣に腰を降ろす。
山上は、焼き網を挟んで斜め前に腰を降ろした猪熊を一瞥して、ビールで喉を潤した後「この際だから、君にも話しておこうか」と口を開く。
何の事だろう、と首を傾げる猪熊に告げたのは、かつて山上が戦った事のある猪熊虎滋郎という柔道選手についての事だった。
「お父さんと山上さんとの間にそんな過去が……」
「ああ、君のお父さんに勝ったのはほんの偶然だったんだ。しかし、もしその偶然のために彼が表舞台から姿を消したのだとすれば、私は君達にどう謝ればいいか――」
「謝らないで下さい、山上さん」
猪熊の言葉に、顔を俯けていた山上は「え……?」とその顔を上げる。そして猪熊は、山上に微笑みかける。
「お父さん、きっと山上さんに負けて嬉しかったんだと思います」
「嬉しかった……? 負けたのにかい……?」と、不思議そうに問いかける山上。
「……はい。きっとお父さん、山上さんに負けた事で、超えないといけない目標がはっきり見えたと思うんです」
「超えないといけない目標……」
「はい、私がそうでしたから。私も、負ける事で目の前に大きな目標が出来ました。それまで何の目標も無く柔道に掛けて来た時間の全てをぶつける事の出来る、受け止めてくれる誰かがはっきりしたんです。きっと、お父さんもそんな気持ちをその時持ったんだと、私、思います……」
そして猪熊は、山上の背後の衝立の向こう側が見えているかのように、じっと衝立に視線を向けた。その衝立の向こうからは「やばっ! 藤堂さん、この特上ロース、口の中でとろけるよ! もう―人前、いっとく!?」、「本当だね、一人前と言わず、三、いや、五人前いっとこう! 高辺、溶けるロースだから、カロリーは気にしなくて良いよ!」、「はいっ! 溶けるならもうカロリーは無いようなものですもんね!」という恐ろしい会話が漏れ聞こえてくる。
「ふっ。虎滋郎さんの一人娘である君が言うのなら、そうかもしれないね。ありがとう、猪熊。おかげで長年のどに刺さっていた棘が抜けたような気分だよ」
「私こそ、ありがとうございます。山上さんからお父さんの昔の話を聞けて嬉しかったです。合宿から帰ったらお母さんにも教えて上げなきゃ。きっと喜びます」
ふふふ、と花の咲いたような笑みを浮かべる猪熊。その笑みを隣で盗み見て、お酒によって赤らんだ顔をより赤くする犀藤。
「あー、犀藤先輩のその真っ赤な顔、
「なっ、桐生、お前はまた! 何度言えば分かるんだ! 俺に子供はいないんだよっ!」
衝立の向こう側から首を伸ばして揶揄する桐生に、頭から湯気を出す勢いで声を張り上げる犀藤。
「……子供って何の事だ?」と、きょとんとした表情で犀藤に顔を向ける山上。その山上に犀藤は、「いや、それが、今日マスコミ公開練習があったんですが……」と苦い顔で応える。
「はっはっは! それで、犀藤は隠し子の存在を記者に疑われたのか! 傑作だな、それは!」
「ちょっと山上さん、笑い事じゃないんですから! 取材を受けている最中に、あいつが突然背後から『先輩のお子さん、めっちゃ可愛かったですよ!』なんて言うものだから、えらい事になりましたよ!」
犀藤は、記者から『犀藤さん、お子さんって……、確か独身でしたよね?』、『まさか隠し子とか!?』などとオリンピックに向けたインタビューはそっちのけで、ある事ない事質問攻めになった数時間前の苦い記憶を呼び起こして山上に文句を言う。
そんな犀藤に、三上と猪熊が再び申し訳なさそうに頭を下げて謝罪する。
「すいません、犀藤先輩。私が桐生さんから目を離したばかりにとんだご迷惑を……」
「茜さん、ときどきおかしな事を言い出すんですよね。でも、どういうわけかそれが的外れじゃない事が多いから不思議な……。あっ、ごめんなさい、犀藤さんに本当に隠し子がいるという訳じゃなくて……!」
そんなやり取りをしている彼らの背後から、「あっ、おばちゃーん! 盛岡冷麺の大盛も良いですか? 後、〆に焼き芋アイスを――」という桐生の声が飛んだものだから、良いようにたかられていた山上の堪忍袋の緒がとうとう切れてしまう。
「おいっ、桐生! お前、それだけ食ったからには、ソウルで金メダルを獲らんと承知せんからな!」
「まっかせてください! 桐生茜、必ずやオリンピック3連覇を果たしてみせます!」
「――お前は初出場だろうがッ!!」
声を荒げた事でゼーゼーと荒い息を吐く山上に、猪熊は「ごめんなさいっ。茜さん、お爺ちゃんの影響で時々話を盛る癖がついちゃってて」と再び謝罪するのだった。
ブロロロ……。道を行き交う車の排気音と初夏特有のうだる様な日差しから隔離された、適度に冷房の効いた渋谷109内のとあるブティック。そのブティックの奥まった場所にある試着室の前には、猪熊、三上の姿が。彼女達の見つめる試着室の内側からは、時折衣擦れの音が漏れ聞こえてくる。
突然、シャッという軽快な音を立てて、試着室と外を隔てている薄いカーテンが勢いよく引かれる。中から現れたのは、涼し気な白いブラウスと蒼いジーンズが目に眩しい赤毛の女性 桐生茜だった。
「わっ、桐生さん。良く似合ってるじゃない。さすが、桐生さんの事をよく分かっている猪熊さんの見立てね」
「そんな……。でも、本当に、白いブラウスが茜さんの髪によく映えてるし、動きやすそうなジーンズも、活動的な茜さんにぴったりだと思う。この間原宿で買ったデニムジャケットにも合わせやすいし、それに決めたらどう?」
二人からそんな好評をいただいても、ファッションセンスに乏しい桐生は「そう……? 韓国で着る服なら、公式ジャージとこの間柔ちゃんに見立ててもらった服で十分じゃないかなぁ。舐め猫Tもたくさんあるし……」と、自身の身体を見下ろしながら首を傾げる。
「駄目よ、そんなの。せっかく海外旅行に行くんだから、オシャレして行きましょうよ。ねえ、三上さん」
「それが良いわよ、桐生さん。西ドイツ遠征の時もジャージばかりだったじゃない。まあ、あの時は外出禁止令が出ていたからそれで充分だったけど……」
二人からそう諭された事であっけなく白旗を上げる桐生だが、同時に桐生は、ブラウスの襟元とジーンズの腰に手を添えて難しい顔をする。
「うーん、私じゃよく分からないから、二人がそう言うならこれに決めても良いけど、サイズがちょっとな……。この服、胸はちょっときついし、腰回りは少し緩いかな……」
「……ふんだ。どうせ私は、茜さんよりスタイルが悪いですよーーだ!」
自身のサイズを把握していない桐生に、とりあえず自分のサイズの服を見繕っていた猪熊は、その桐生の何気ない言葉に幾分傷ついたのか、憮然とした表情でつぶやく。そしてそれを知っている三上は、苦笑しながら猪熊の肩にそっと手を置く。
「どんまいだよ、猪熊さん。それじゃあ、サイズは確認するとして、桐生さんはそれに決めようか。これで私と猪熊さん、桐生さんの買い物は大体終わったけど、藤堂さんは何処に行ったんだろう?」
三上は渋谷109の中にある広いブティック内をキョロキョロと伺うが、72kg超級の彼女の目立つ巨体は彼女の視界に入らない。その様子を見て猪熊は、ああ、と思い出したように応える。
「藤堂さん、この店には合うサイズが無かったみたいで、別の店に行ったようです。私、ちょっと探してきますね。三上さん、茜さんの事お願いします」
「分かったわ。すいませーん、彼女の試着している服のサイズ違いはありますか? ブラウスは――」
猪熊は、店員を呼んで購入する服のサイズを確認している三上と桐生を残して、ブティックの扉を開き、熱気の立ち上がる店外に足を踏み出した。
「いないわねぇ、猪熊さん。どこまで藤堂さんを探しに行ったのかしら?」
「もういいんじゃないかい。ばらばらになったらハチ公前で待ち合わせって話になっていたんだから、もうあっちに行っているかもしれないよ」
路地を行く人々の中から猪熊を探して目を凝らす三上に応えたのは、藤堂だった。彼女は、猪熊と入れ違いになる形で三上達のいたブティックへ戻ってきていた。
「桐生さん、猪熊さんがどこまで探しに行ったか心当たりは無い?」
左手首に巻いた機械式時計に視線を落としていた桐生が顔を上げる。
「くすっ。心当たりは無いですけど、もうすぐ良いものが見られそうな心当たりはあります。一雨来そうですし、ここらで一服しませんか?」
「「……雨?」」
雲一つない空を見上げて三上と藤堂が首を傾げる。そんな彼女達に隠しきれない笑みを浮かべていた桐生は、道路を挟んだ向かい側の歩道に視線を向ける。
桐生の視線の先。人が行き交う歩道の片隅には、赤い屋根のついた小さな電話BOXがポツンと鎮座していた。
「ジャンボフルーツパフェと、宇治抹茶グリーンティー、お待たせしました。それと、こちらメロンクリームソーダです。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
オーダーされた品をトレーに乗せてやってきた女性のカフェ店員が、4人掛けのBOX席に腰を落ち着けている3人に対して声をかける。
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
三上が店員に礼を言う間にも、窓際に腰を降ろしていた藤堂と桐生がそれぞれテーブルの上に置かれたジャンボフルーツパフェとメロンクリームソーダに我先にと手を伸ばす。その様子を横目に、三上も自身の前に置かれたグリーンティーにストローを挿し、口に含む。途端に汗がすうっと引いて行くような清涼感に包まれた三上は、思わず「ああ、美味しい。生き返るわぁ」と笑みを顔に浮かべた。
「でも桐生。もうすぐ雨が降るなんて言っていたけど、そんな気配は全く無いじゃないか」
それだけで成人の1日分のカロリーを優に超えていそうな大きさのジャンボフルーツパフェに舌鼓を打ちながら、藤堂が窓の方に顎を振る。その問いかけに、やはり桐生もメロンソーダの上に盛られたアイスクリームをスプーンですくいながら、「ふふふ、まあ見ていてください」と、眼下に見える歩道に視線を投げかける。
彼女達が一息ついているカフェは、歩道に面したビルの2階にあり、大きな窓ガラスからは眼下の歩道を行き交う歩行者と、『TELEFHONE』という銘板の架けられた赤い電話BOXを見下ろす事が出来た。
「ふうん……?」と、桐生の言葉に半信半疑ながらもパフェを次々と平らげていく藤堂。桐生は、何故か視線を誰も利用していない電話ボックスに固定しながら、エメラルド色のドリンクをストローでずずずっと吸い上げる。
ポツ、ポツ……。
彼女達がデザートタイムに入って5分ほど経過した頃だろうか。窓ガラスに微細な水滴が跳ね、不審に思った藤堂がガラス越しに空を見上げる。既にジャンボフルーツパフェの大部分は、彼女の大きな胃袋に収まっている。
「あら、天気雨――」
ポツ、ポツ、……ザーー!
藤堂の動きに釣られて桐生の頭越しに空を見上げた三上の言葉が終わらないうちに、小雨だった雨が突然どしゃ降りの雨へと変貌した。突然の天候の変化に藤堂と三上が唖然としている中、桐生は目を爛々と光らせ、眼下の歩道に視線を固定している。歩道上では、突然の雨に行き交う人達が足早に駆け始めているが、その人達の中に目当ての者を発見したのか、突然桐生が「いたっ!」と声を上げる。
「誰がいたって言うん――。おっ、猪熊じゃないか」
桐生の視線に釣られて眼下の歩道に目をやった藤堂が、路地裏から駆けて現れた猪熊を見つける。
「え、猪熊さん? 本当だ。私、ちょっと外に出て声をかけて来るわね」
しかし、席を立とうとテーブルに手を付いた三上のその手をそっと桐生が抑える。
「待って、三上さん。それは野暮ってものよ。ほら、見て」
「……え? ――! まあ!」
桐生の視線の先を追った三上だが、彼女は視界に入ったとある情景に大きく目を見開く。
「あれは……。へえ、猪熊もなかなか……」
藤堂も面白そうな表情で、眼下を覗き込む。
彼女達が目を輝かせている理由。それは、彼女達の真下にある電話BOXの前で行われていた。一人は彼女達のよく知っている女性である猪熊柔。そしてもう一人は桐生以外には面識のほとんど無い一人の青年。二人は、互いに突然降り始めた雨の雨宿りの場所に電話BOXを選んだのだろう。取っ手を取ろうとした手が、偶然互いの手を取り合う形となっていた。
「えっ、手を握り合ってからどうなるの――。わっ、一緒に電話BOXに入っちゃったよ、桐生さん! 胸キュン、生胸キュンだわッ!」
「うん、うん。ちょっ、落ち着いて、三上さん。胸キュンは分かったから、揺さぶらないでってば」と、興奮した様子で身体を左右に揺さぶる三上に閉口したように苦笑いする桐生。
桐生もにやにやしながらその光景を見守っているが、三上は彼女以上にこのような色恋沙汰に目が無いのだろう。三上はまるで自分の事のように頬を赤らめて、「やーん、出てこないわよ、猪熊さん。密室、これはもう完全密室逢瀬だわ!」と、少女のように身をくねらせる。
「ふうん、あんな狭い所、あたしなら男まで入る余裕は無いだろうね」と見当違いの感想を述べる藤堂を故意に無視して、「桐生さん、あの男の人誰!? もしかして猪熊さんの恋人!? ううん、あの二人の様子じゃあ、まだ友達以上恋人未満って所かしら!? いやーん、ロマンティックが止まらないわ!」と、恋に恋する瞳で桐生を質問攻めする三上。
「は、ははは。三上さんの見立ての通り、あの二人、今は微妙な時期なのでそっと見守っていてあげましょうね。あっ、雨も上がったし、出てきましたよ!」
桐生の言葉の通り、雨の滴る電話BOXの扉を開き現れた二人は二言三言言葉を交わして別れる。
「あっ、猪熊さん、渋谷駅の方に行っちゃったわ」
「本当だ。それじゃあ、私達も追いかけますか。藤堂さん、行きましょう!」
そして彼女達は、ソファから立ち上がるのだった。