Fate/Utsuwa Night   作:HAL_FS_H

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――王に必要なモノは、ただただデカいUTSUWA


第一話 王のUTSUWA

 

「私は国を守れなかった。国を守るために王となったのに、その責務を果たせなかった。」

 その時に思ったのです、そう言ってからセイバーは一度言葉を切り、迷いを振り払うかのようにこう続けた。

「――私は、王のUTSUWAではなかったのではないかと」

「ば―――――」

 バカな。

 なんだって、そんな。

 

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Fate/Utsuwa Night

 

第一話 王のUTSUWA

 

 

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「……いえ、その迷いは常に私の中にありました。

 シロウ、王に最も必要なものは何だと思いますか?」

 セイバーは、突然俺にそんなことを尋ねた。

「何って、それは――」

 王に必要なもの。それはもちろん、色々あるだろう。

 例えば、武力。例えば、理念。例えば、理想。

 ――しかし、何より重要なのは判断力では無いかと思う。

 私情を交えたが故に滅びた王朝は枚挙に暇がない。

 いざという時に判断を下せない王など、存在するだけで害悪だ。

 そしてその点では、セイバーは十分に王の資格を持っているように思える。

 そうセイバーに伝えたが、セイバーは瞑目して頭を振った。

「私も、かつてはそう思っていました。

 選定の剣を抜くときに見た私の未来。多くの人が笑っていて、それなら間違いではないと。そう思いました」

 大切なものを失うと言われた。人々を守りたい、という感情は王として国を守るためには邪魔だからだ。下すべき判断を下せない王など存在しない方がいい。であるならば感情を捨て、無謬の王として人々を守る機構と化そうと――

「――そう、私は思って、そしてそれを最後までやり遂げました。

 その結果は、ええ、シロウも知っている通りです」

"アーサー王は、人の気持ちが分からない"

「私に十分な王のUTSUWAがあれば、そんなことにはならなかったはずです」

 例えば、あのイスカンダルのように。

 真に魅力のある人間であれば、例え合理性を欠いていても人はついてくる。

 セイバーは、まるでかの征服王を実際に見たことがあるかのように、そしてその王のUTSUWAを心底羨んでいるかのように呟く。

「本当に選ばれるべき者は他にいたはずなのです。

 私より大きなUTSUWAを持った、人を引き付けることのできる王が。

 ……だから、もし聖杯の力で王の選定をやり直すことができるなら、その時に戻ればきっと――」

 その時に戻れれば、きっと。

 彼女の国は、滅びなかったとでも言いたいのか。

「――――」

 気が遠くなる。怒りを覚えることすらない。

 たぶん、自分は呆然としている。

 だってそうだろう。

 王のUTSUWAなんて、そんなよくわからないもののために、セイバーはそれまでの自分を全てなかったことにしようとしているのだ。

「――――馬鹿、か」

 そんなの許せない。

 仮にそうすることで全てが上手く行くとしても。

 彼女自身が望んだものがそうすることでしか得られないとしても、だ。

 頭が沸騰しそうだった。

 セイバーはそんな俺の様子に気づかないのか、如何に自分が王のUTSUWAではないかを語りだした。

「モードレットを見て、私は気付いたのです。自分が王のUTSUWAではないことを。」

 モードレット。魔女モルガンが生み出した妄執の塊。王の後継者たろうとして拒絶され、陰謀と反乱で彼女と相討った反英雄。

「本当に王たり得るUTSUWAがあれば、ああはならないはずです。

 王のUTSUWAが彼女にないことを突き付けて、逆上されて、そこでようやく私は考えました。

 自分が同じ立場であればどう思うかを」

 唯一の寄る辺であった王の子であるという自負。なるほど王のUTSUWAではないという指摘は確かなものだ。しかし息子と呼ぶことすらしないと言うのは――果たしてどうなのか。

「そこではじめて、私はかつて言われたことを思い出しました」

"アーサー王は、人の気持ちが分からない"

「国を導くためには、私情を交えてはならない――しかし、人を導くためには、私情を捨ててはならなかったのです。……そんな簡単なコトに、私は最後の最後まで気づけなかった。わかるでしょう、シロウ。そんな私が、王のUTSUWAであるわけがない」

 そう、だからきっと、無謬の王という機構はその時壊れて/治ってしまったのだ。

「……セイバー」

 消沈する彼女に声を掛ける。

「そんなの俺は認めない。王に必要なモノは、UTSUWAだけじゃないんだ!」

 




次回「そんなの絶対認めない!」
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