でもそれはそれとして、歳の差気にしてたら可愛い!!
ガンドラが旧溜永ルナに宣戦布告して早々、離人は彼女に腕を引かれて購買部に来ていた。
「何だ? りぼんぬもなかよろしもマルガレットも今月分は買ったはずだが。増刊号でもあるのか?」
「決まっているじゃない。あの女を倒す為のカードを買いに来たのよ!」
そう言うと、彼女は離人のDPカードを財布から抜き出してレジ横からカードパックを選び始める。
「やれやれ……面白味の無い話だな。カードの精霊なんだから、何処からともなくデッキが現れるご都合の良い能力でも見れるのかと思っていたのに」
「…………ひとつ、意地悪なことを言うわね?
産まれてからずっと山に封印されていた私が、仮にそんな潜在能力を持っていたとして。デュエルをする相手もいないのに発現すると思うかしら?」
これは藪をつついたな……と、乾いた笑いを一つ漏らす離人。近くのフリースペースの椅子に腰かけて大人しく待つ。
ガンドラは並べられている数十個ほどのパックから、淀みない仕草で8パック選び取って支払いを済ませて離人の対面に座る。ついでに購入した温かいお茶の一本を離人の前に置いて、カードパックを剥いた。
「その8パックで出たカード40枚がデッキです、って言うつもりなのか?」
「それは難しいわね。だから離人くんのデッキに必要なカードを入れるのよ」
「フッ、ご主人様のモノを無許可で拝借か……」
内ポケットからデッキを取り出して彼女の前に置く。ついでにお茶のキャップを開けて一口飲んだ。
「安心して、離人くん。
強力な魔法・罠カードを選んだから、貴方のデッキの強化でもあるのよ」
「それは【ガジェット】じゃなく【ガンドラワンキル】としての強化じゃあるまいな?」
「もちろん【
「…………まあ良い。俺が戦うわけでもない。デュエルが終わったら
「ウフフ。相変わらず酷い人……都合のいいところだけ欲しいだなんて。素敵よ……♡」
「それはどうも。
それで? 肝心のカードは俺の都合の良いものがあるのかい?」
「そうね。まず一パック目。
速攻魔法『速攻召喚』があったわ。他は使い道が無いわね。
二パック目。
罠カード『敵襲警報-イエローアラートー』ね。他は使い道がないわね。
三パック目。
『速攻召喚』二枚目。
四パック目。
『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』。
五パック目。
『手札抹殺』。
六パック目。
『敵襲警報-イエローアラートー』。
七パック。
『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』。
八パック。
『速攻召喚』。
ウフフ。良いカードを引いたわ」
「ガンドラギミックばっかりじゃねえか。
【ガジェット】じゃラヴァゴも使えない。召喚権を消費出来ないし火力不足で処理に除去カードを使うことになりかねない。本末転倒だ。
『速攻召喚』はガジェットとは相性が良いが、いかんせん使いたい上級モンスターが無いと来た」
「私がいるじゃない♡」
「
「つれないわね……でも好きよ♡」
「ここまで拒絶されてもブレない好意をぶつけられる側の恐怖、少しは慮って貰いたいね……」
「変わらぬ愛、とっても素敵でしょ?」
「…………やれやれ」
それからしばらくして。
「待たせたわね。そしてさようならよ、
「キャハハハ☆ すっごい殺気~♪
婚期を逃して焦ってるオ☆ バ☆ サ☆ ン☆ って、怖ぁ~いwww」
「フフ、フフフフフ…………殺すわ。離人くんの視界からなんて言わず、この世界から消してあげる」
「物騒なことを言うな破滅竜。
意図的で無いにしろ、お前と言う『意思のある存在』を億年単位で封印しちまった俺の後ろめたい気持ちを、客観的な正当性で消失させてくれるな……」
「ふ、フフフフ…………あのメスガキ、よくも気にしてることをハッキリ言ってくれたわね。何よ、ちょっと数億年だけお姉さんなだけじゃない!!」
(聞いちゃいねえーってか、そこまで行ったらもう別に良いだろ。何をニンゲンの女みたいなこと気にしてんだこの破滅竜)
両者の戦意は上々と言ったところか。愛する者を独占したい破滅竜と、ただ面白半分に煽るだけのメスガキのデュエルが、今始まる。
「「ーーデュエル!!!!」」
破滅竜 LP4000
「私のターン、ドロー」
(さて、楽しみが減るからデッキの構築中はジョンを弄って遊んでたわけだが、どんなデュエルをするやら)
「カードを二枚伏せてターンエンドよ!」
「あれあれぇ~? モンスター引けなかったの?
そ れ と も ぉ。 ロックバーンみたいな一生独身一直線なモテないデッキでも作ってたりしてぇwww」
「今日はやけに煽りの切れ味が鋭いな、
「さ、さっさとターンをっ、進めなさいよ!!」
「こっちは悔しさで顔真っ赤の涙目と来た……」
「はいはーい♪ それじゃあ……アタシのターン、ドロー」
ルナがターンを開始する。するとそれまでの人を小ばかにして遊んでいた表情が一変して真面目な表情になる。
(バトルロイヤルの時もそうだが、ハンドル握ると人格が変わるのかあの娘?)
「アタシもカードを二枚伏せる。モンスターと伏せカードだけどね。
ターンエンド」
「生意気なこと言って、そっちこそ消極的じゃない!」
「そう思うんなら攻めて来なよ? アタシのデッキは、
「良いわ、やってあげようじゃないの! 流れる暇があるほど原型を保っていられたらね!!
私のターン、ドロー!」
(無辜の血……ねえ)
「手札から『創世の預言者』を召喚!」
創世の預言者 ATK1800
(手札をコストに、墓地のレベル7以上のモンスターを対象にして手札に戻すカードか。破滅竜を回収するための要員兼アタッカーってとこか)
「バトル! 創世の預言者でセットモンスターに攻撃!」
創世の預言者の攻撃で、セットモンスターが表側に返る。
創世の預言者 ATK1800 VS ジャイアントウィルス DEF100
「アタシのモンスターはジャイアントウィルス。
戦闘で破壊されたことで、相手に500ポイントのダメージを与える」
破滅竜 LP3500
「くっ……!」
「更にその後、デッキからジャイアントウィルス二体を攻撃表示で特殊召喚するよ!」
ジャイアントウィルス ATK1000×2
(やっぱしジャイアントウィルスか。
アレが無辜の血かどうかは疑わしいけどね)
「おかげで生贄モンスターが二体揃っちゃった~ありがとうね、助かっちゃったよ~オバサンがバカでwww」
「それはどうかしらね?」
「え?」
破滅竜が手札からカードを発動する。
「速攻魔法『速攻召喚』発動。
このカードはモンスター一体の召喚を行う。その際に相手の場にモンスターが居ればレベル5以上のモンスターの召喚の生贄は必要なくなる。
さあ、行くわよ。手札から『
「私の効果発動! 手札から召喚した時、私以外の離人くんに近づく
破滅竜の全身から呪いの閃光がフィールドを焼き尽くし、味方諸共無辜の血を蒸発させた。
「くぅぅーーっ!!」
「そして、破壊したモンスターの中で一番高い元々の攻撃力の数値分だけ相手にダメージを与えて、与えたダメージ分の数値を自分の破滅の力に変換する!
一番攻撃力の高い創世の預言者の1800ダメージを与えて攻撃力に変換よ」
「…………っっ!!」
「さあ、追撃よ!
「きゃあああーー!!」
「あと一息……あと少しで、離人くんに近づく泥棒猫を追い払える!
私はカードを一枚伏せて、エンドフェイズへ。
ターンエンドよ」
破滅竜 LP1750
思い通りの展開になり、少し表情に柔らかさが戻る破滅竜。
一方、ルナは……。
「…………なぁんだ。自分自身の癖に、ぜーんぜんダメじゃん」
「え、ダメ……って、何がよ?」
「さあね。片思いのご主人様に教えてもらえば?」
「…………か、片思い……」
ルナの言葉にショックを受けて、和らいだ表情はすぐに不安気なものへと落ちていく。
順調だった。思い描いた理想のデュエルが彼女には出来ていた。なのに何故? コレをダメだと言われている意味が彼女には分からない。思わず縋るような気持ちで、この世で唯一の想い人に視線を向けた。
「…………デュエル中だろ。外野に助言を求めてどうする? まして、何かを賭けた決闘で」
「……っ、そ、そうね! ええ、大丈夫よ。私は、大丈夫。
……………………後で、教えてくれる?」
「あとで、な……」
草試合とは言え、誇りを賭けたデュエルだ。
対戦相手を言葉で揺さぶることは常套手段、駆け引きの範疇。だが、戦わない部外者が助言をすればソレは横槍。
これは快楽主義なりの、踏み越えては行けない境界線ーーデュエリストとしての誇りだ。
ゆえに。
(…………このデュエル。多分、
この一言は、白夜離人の胸中に封じるのだった……。
遅筆になる作品は自然とエタる傾向にあるのですが、何故か時々書きたくなるんですよねえ。
ところで、現在名前隠して書いてる作品が2つあります。みんなは分かったかな?
じゃ、また半年後とか来年とか。