14人の使徒   作:丸井メアリ

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 ―どうだろう。雨は、未だ止みそうになく、ただ私を叱るように降っている。

先日赴いた雨の森ですらこのような降り方はしないはずだ。
─どうしたものか。

いづれ来るであろう朝を待つしかないのだろうか。しかし、いや、どうしても今のままではいけないと思い、此処を出ることを決心した。

私は、古そうなドアノブに手を伸ばし、やさしく、その扉を開けた。

 少し、湿った匂いがした。



第一章 プロローグ

○第一章:運命の出会い○

 

 大きな窓に、大粒の雨が打ち付けられる音を聞きながら、私は天井の高い廊下を進む。黒い壁は、銀の壁掛け燭台によって灯されており、その模様も仄暗いながら鮮明に見える。クモーレの壺からタジが伸びて、その周りを蝶や鳥たちが賑やかしてる、非常に愛らしい壁紙だ。

 なるほど、ここはきっと東北の人間の館に違いない。そう思った時、黒雲が轟いた。稲光が3つ続けて空を照らし、空を舞った。突然のことであったがために、驚き、また、同時に不思議と物凄く苛立ちを覚えた。

 ―ったくどこまで続いてるんだ、、、。

整理しきれないこの感情を、ただぶつけるだけの、八つ当たりだ。八つ当たりだが、今、この瞬間だけは無性に腹が立って仕方がなかった。

 

       *     *     *

 

 ―足音が聞こえた。絶対に、聞こえた。

 誰かが、いるのだ。

 突き当たりの廊下から聞こえたきたと思う。誰なのかは分からないが、確かめねばと思い、限界まで壁につき、恐る恐る覗き込んだ。すると、黒い壁と高い天井の長方形の中に、ポツリと炎が揺らめいていた。3つの小さな火が少し大きな明かりとなって高いかかとの音を響かせている。何故か顔が確認できない。もっと見ようと思い、少しばかり、縁を出る。長いスカートが確認出来た。なるほど、女性か。顔はまだ確認出来ない。細やかなフリルが施されている。

 ―ふむ、メイドなのか?まぁこんなに広く、 年期がありそうな屋敷ならば、メイドがいてもおかしくはないか。

 夜の見回りだろうか、なら、良かった。安堵して目を彼女に向けたその瞬間、私は酷く慄いた。女には、頭が無かった。暗すぎて見えなかったのではない、初めから無かったのか、、。

 私はあまりの恐怖に少しばかり我を忘れてしまいそうになったが、それでもこの場から逃げようとする意識は保ち、足を後方へやる。女?は、まだ私に気付いていないようだった。―今だ。そう自分に(心の中で)声をかけ、後ろを振り返って私は絶叫した。

 

 頭が、浮いていた。――私の目の前で。そこで私の記憶は途絶えてしまった。

 

       *     *     *

 

 、、、!―…。、、! …。、、!――ん、なんだ、、、。

「、、だから、わざとぢゃないんですって!」

「、、、わざと、「では」ないのです。、、ではなくって?」

「あ、はい…―すんません、、、。」

 二人の女の声に私は目を覚ました。

「すみません、でしょう、、。はぁ…もう本当に言葉遣い、なかなか直らないものね…。」声のする方に視線をかろうじて向ける。

 長い黒髪の、漆黒のドレスの女性が、私を驚かせたのであろうメイドを少し嫌味たらしく叱っていた。

 「さて、大切なゲストを気絶させた訳だけど、どう言った処置をお考えで?」

 ―貴方?、、、そう聞かれた方を向くとまた違う姿が見えた。なんというか、形容し難い服装の少年だった。

 「う〜ん、そうだね。今月に入ってこういった粗相は5回目だからねぇ、、さすがの私も、ね?」

、、しっとりとした、柔らかな声ではあったが、何処か憤りと苛立ちがひしひしと伝わってくる。メイドは震えながら泣いており、それには少しばかりの小気味良さを感じた。

 すると、少年が、「あぁ、起きたんだね。」と一言。少年と目が合った。優しく微笑みかけてきた少年の瞳は不思議な、光のようなものを放っていた。心が包み込まれるような、暖かな心地良さ感じた。

 すると、部屋にいた人々の視線が一斉に私の方へ向く。動揺していると今度は4、5人の女性が駆け寄って来た。

 

 「あぁ、良かったです!」「何処か痛いところはございませんか!?」「お手伝いさせてください!」「お、お召し物も、、」

寄って集って私の周りでキャアキャアと騒ぐ。

 これもまた突然のことで、どうしようと思ったところ、

 「もう、あなたたち、失礼でしょう!早くおどきなさい!」と、強かな声が部屋に響き、女性達を飛びあがらせた。

 声のした方に顔を向けようとすると、

 「無理はなさらないでください、お体に障ります。」と、静かにたしなめられた。

 赤いドレスを着ていて、細やかな刺繍入りのロングヴェールを深々と被った大柄の女性。ヴェールが目隠しになり、顔の上半分は見えなかった。

 女性が続けた。「先程は、メイドのエポーナが失礼しました、私はこの館でメイド長を務めております、カヒタリスと申します。」気軽に、タリーとお呼びください。―そう言ってタリー、、さんはピシッと一礼をした。

「、、、ヵ…。」―声が出ない。

タリー、、さんが手を握って微笑みかけた。

「、、大丈夫ですよ。」「、、、ハ、ィ…」

部屋に暫しの沈黙が訪れる。

 

 初めに沈黙を破ったのは、少年だった。

 「声が出ないのはねぇ…。頭を強く打ってしまったからなんだよね。」

「誰かさんのせいでね。」カヒタリスがすかさず言葉を放ち、そのメイドを睨む。

メイドがビクリと身を震わせる。

 「まぁね、、。事実なんだけどね。とりあえず今は安静にすることが1番だと思うよ、お薬はここに置いておくから、お腹が空いたなと思ったら2粒飲んでね。あ、そうそう、無理はしないことだよ!じゃあね。」そう言って少年軽やかに一礼すると次の瞬きには掻き消え、黒のドレスの女性も、優雅に一礼すると空に吸い込まれるように掻き消えてしまった。




 最後まで読み進めていただきありがとうございます。
 急に場面が切り替わったように見えますが、物語に間違いはございません。少年や黒のドレスの女性、見知らぬ人々が出てきましたが、それもおいおいわかってきますぬで、次回もお楽しみくださいませ。

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