メイドのエポーナに驚かされて負傷したところを、館の主人(少年)と黒いドレスの女性、その従事たちの介抱によってかなり回復した。
そうして何日かが過ぎた。
2日も経てば、満足に動き回ることが出来るようになったし、自分の状況も少しずつだが分かっていった。
まず、自分は「嘆きの荒野」という、東大陸の中でも指折りの広さを誇る地に在る、第二魔参皇王グリムの館、通称【 悪魔の館 】にいるということを知った。
第二魔参皇王グリム・シュヴィルツヒア・ロンド…といえば、果てしなく長い年月を今もなお生きている大悪魔だったはずだ、、。数多くの聖騎士団が返り討ちにされていることも聞いたことがあるため、その大悪魔とは一体どのような化け物かと恐れていたが、まさかあの奇抜な格好の少年がそうだったとは、、。
幾つかの違和感と謎と共に、私はこのまたと有り得ない出来事に、少しばかり、いや、大変強い運命のようなものを感じていた。
―特に、あのドミニクという夫人はとにかく美しく、儚く、そして麗しい印象も併せ待つ美女であった。後に男だと分かったが。
人間であるはずの彼女がなぜ大悪魔の伴侶としてそばにいるのだろうか、知りたくてたまらない。タリーさんに聞いてみても、はぐらかされてしまって、余計に気になってしまう。
私の心は、粘性のある液体が少しづつ水溜まりを作るように不思議な感情が蓄積されていった。
* * *
「こんにちは」
3日目の昼下がり、館にある大聖堂の回廊で―グリム様の館はとてつもなく広く、大聖堂の他にも迎賓館やダンスホールも在る―思い悩んでいると、背後から声をかけられた。
振り返ると、夫人がいた。…気まづい。
「かなり回復できたみたいね、良かった…」
「はい、グリム様がくださったお薬もそうですが、タリーさん方のおかげです。」事実、ここ3日間あの場にいたメイドたちは本当に私に良くしてくださっている、不思議なくらいに。
すると、夫人がふふっと笑った。
「ど、どうされましたか?私は何か可笑しなことを…」
「いいえ、失礼。あの薬、私が作ったんですよ。」
「なんと、そうでありましたか、これは失礼なことを…」そう言って頭を下げようとしたとき、ふわっと、柔らかな感触が頭に伝わった。
夫人が、私の頭を、もっと言うならば額を撫でていた。それはもう女神のような微笑みで!
―しばらく撫でているところに、私は嬉しさと心地良さに喉を鳴らしてしまった。
ゴロゴロゴロ…それを聞いた瞬間、夫人が手をサッと離した。
「まぁ、本当に失礼しました。物語や絵画には見ていた獣人が目の前にいるのが物珍しくて、つい…とんだご無礼を書いてしまいましたわ…」
深々と頭を下げようとする夫人に私はすかさず
「そんな!お好きならばどうぞいくらでも、私の額も喜びます!」額が喜ぶってなんだと自分でも思いながら、その後も何言か夫人に心配の無用さを必死に伝えていると、アッハッハッハと夫人が明るく笑った。
「そんなに言ってくださるとは思いませんでしたわ、申し訳なくなってしまいます。ふふふ…」
笑いが収まるのと同時に、夫人は私に直って、
「本当に、無事でよございました。危なかったのですよ。」
「私の状態についてはタリーさんから伺いました。荒野の真ん中で野垂れ死にそうであった私めを、ドミニク様が救ってくださったことは身に余る幸福であります。」
「いえいえそんな…荒野の干ばつ調査の最中の偶然でした。ゴジームの晩餐になることも考えられました。」
「その、ゴジーム、とは?」
「あぁ、貴方を見つけましたのはこの屋敷から見て北西、大型の獣の縄張りでしたの、あのまま放っておくことは出来ませんでした。」
「なるほど、改めて誠に有難うございました。」
えぇ、えぇ、良いのです…そう言って夫人は私が見ている空を見て、一言。
「着いてきてください。」
第一章:運命の出会い ―終―
最後まで読み進めていただきまして、有難うございます。
主人公は、ドミニク夫人どこに連れていかれ、どうなっていくのか。次回からは第二章:逆光の館、どうぞお楽しみくださいませ。
グリム・シュヴィルツヒア・ロンドについてのキャラ紹介は欲しいですか?
-
はい
-
少しはい
-
少しいいえ
-
いいえ