14人の使徒   作:丸井メアリ

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 館にいた少年はなんとあの魔王グリムであった。
 ある日、ドミニクから着いてくるようにと言われた。


第一章 其の参

第二章:逆光の館

 

 バァーン!ザァーン!

   …ゴォォォォ…

 

  *悪魔の館―東棟ドミニクの館―

 

 …通称:逆光の館…

 

 穏やかな声―と言うよりかは外の音に掻き消えそうな程の小さな声で―この館の歴史を語る夫人の後について行く。激しい雨が滝のように打ち付ける回廊を、夫人と2人で。大きな窓から入るのは薄暗い光と稲光の眩い瞬きのみで、反対に、壁には銀の壁掛燭台の仄暗い灯りが点在するのみである。

 

 そう、ここは私が目を覚まし、そして気絶した館。

 「それにしても、凄まじい雨ですね、嘆きの荒野がここまで酷い雨が降る場所だとは知りませんでした。」

 そういうと、夫人は振り返るのと同時に首を横に振った。

「違います。」

 「え?」

「この館は時空が捻れていて、外から見ると雨は降っていなません。」

 ―どういうことだろうか…頭に疑問符を浮かべた私の様子を見て、夫人は続ける。

「もっと分かりやすく言うなら…そうですね…」

 

 ボッ    ―目の前が明るくなる。

 

「私の指先の炎、あるでしょう?」

 「はい、あります。」

 ―赤い揺らめく、鮮やかな炎。

 

「触りなさい。」

 

 

 「え?」

「触りなさい。」

 

 「え、いやただ」

「いいから、触ってご覧なさい。」

 

 

 ―恐る恐る触ってみるその刹那、夫人は私の腕をがっしりと掴んで思い切り炎を掴ませた。

 

 反射的に手を引っ込め、

 「ドミニク様!?一体何をされるのですか!?」

 …

「熱かったですか?」

 「え、えぇ!それは…もう、て、あれ?」

 ―そういえば、熱を感じなかった。

顔を上げると炎は夫人の指先で赤く揺らめいていた。

 

「これは実態の無い炎、見せかけ物です。」

 「は、はぁ…」

「視たところ、貴方、炎は得意じゃない、と言うよりかは触れたことがないので、判別できなくったって当然ですね。」

 「そ、そうなのですね」

 ―お、驚いた…と一息つく間も無く再び、

 

 ボッ    ―音が聞こえた。

 

 …

「私の指先の炎、あるでしょう?」

 「いえ、ありません。」

 ―指先には何も見えない、夫人の顔が見えるのみである。

「いいえ、ありますわ」

 「どういうことですか?」

「そうですね…」

 そう言って夫人は近くにあった花瓶から花を1輪とって指先に近付けた。すると、ジュワッとまるで蒸発するように花が焼けてしまった。

「これと同じような事で、そこにはありますが、見えないのです。」

 「なるほど、理解しました。」

 

 ―雨はまだ、降り続く。

 

       *     *     *

 

 長い長い回廊を歩き、突き当たりの小部屋の前に立つ。

 

 「ドミニク様、ここは?」

 …

 ―夫人?

 

「………貴方…いえ、タンジェロ・バチェス」

 

 であってるかしら?そう付け加えてから振り向く。

 

 

    ―キィン!

 

 ―私の爪を眼前で、ドミニクはいなした。

「中々の挨拶ですね、《夜の風(エ・レ・ジャーヌ)》と呼ばれるだけありますわ。」

 「…どこからですか?」

 

 お互いに距離を取り、円を描き合う。

 

    ―スワッ!

          …後ろからか

 

 姿勢を前へ倒し、後方から飛んでくる剣を躱す。

 

   ―シャッ チャッ…

 

 これは遠くから来てるな、起動は変わるかもしれない。

 

「考え事なんて、随分と余裕ですか?」

    ―シュワン!   ギリギリで躱す

 「いや、そんなまさか、一つ一つが…」

 

    ―キィィンン!

 「九死に一生です…よ!」 ―ギャン!

 

「あらまぁ、これだけ距離を空けないと行けないの?詰める側も大変なのですよ?」

 ふふふ…と和やかに笑うドミニクの瞳は殺意に満ちていた。

 

 これ程なのか、悪魔の伴侶は…

 

 ―ドミニク・ヒルデ・ロンド…社交界にも滅多に顔を出さない―翳りの者とはよく言われるそうだが―そのような方が奇術を扱うことは知っていた。

 その身体から白銀色の武器を錬成し、使役する、恐ろしい能力は眉唾物ではあったが、これがそうなのか…

 

    ―ギャィン! シャッ!

 

「ところで。」

 ドミニクがそう切って入った。

 

「難儀なものですね、あの子はどうやら私に気があるようですけど?」

 「そんなことは知りません、貴女の勘違いでは?」

 ―面倒なところを掘り下げてきやがって…

 

    ―キィン! キィン!!

 

 「そういう貴女こそどうなんですか?先程まで笑顔を見せていた相手にそう簡単に刃を向けるなんて!残酷なものですな。」

「可哀想な人ね、自分の置かれた状況が解っているのかしら。」

 

 ―周囲から武器の音が消えた。

 

 「どういうことですか?」

 

 …

 

 

「見捨てられたのですよ。」

 

 

 …貴方は。

 

 

 

 

 …いや、

 

 「そんなことは認めない!!彼らが、私を裏切るなど絶対にあってはならない!」

「でも事実、そういうことですよ。」

 これを見なさい。

 ペラリと、彼女が一枚の布を見せる。

 

 ―三本の短剣を、茨が囲ったペンダント。

 

 「あぁ……

 

 

   ァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

 ダン!ダン!!ダン!ダンダン!!!

 

 床に突っ伏して汚い嗚咽をあげる。

 

「私も目を疑いました、貴方ほどの実力者を切り捨てるとは、彼らも見る目がありませんね。」

 

 …

 

「先日、貴方に伝えたこと、もとよりカヒタリスから聞いていたようですが、干ばつ調査というのは真っ赤な嘘です。」

 

 …

 

「この館に近づいている生命体があるので、その調査でした。ただ、貴方は既に弱体化していましたので、そこに連れてこられる前に」

 

 「黙れ」

 

    ―キィン!

 

「懲りないのですね。」

 

 

 

 

 ズバン!!

 

 

 

 

 ―鈍い音が響き渡るのと同時に、視界が一気に暗くなる。

 「…俺も、ここまで、か……」

 

「ええ、貴方はね。」

 

 もう見上げる力もない、そのまま床に崩れ落ち、目を閉じた。




 最後まで読み進めていただき、有難うございます。
 主人公が急に牙を向ける、それも、何かが憑依したかのように。この後、タンジェロはどうなるのでしょうか?次回もお楽しみくださいませ。

グリム・シュヴィルツヒア・ロンドについてのキャラ紹介は欲しいですか?

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