ある日、ドミニクから着いてくるようにと言われた。
第二章:逆光の館
バァーン!ザァーン!
…ゴォォォォ…
*悪魔の館―東棟ドミニクの館―
…通称:逆光の館…
穏やかな声―と言うよりかは外の音に掻き消えそうな程の小さな声で―この館の歴史を語る夫人の後について行く。激しい雨が滝のように打ち付ける回廊を、夫人と2人で。大きな窓から入るのは薄暗い光と稲光の眩い瞬きのみで、反対に、壁には銀の壁掛燭台の仄暗い灯りが点在するのみである。
そう、ここは私が目を覚まし、そして気絶した館。
「それにしても、凄まじい雨ですね、嘆きの荒野がここまで酷い雨が降る場所だとは知りませんでした。」
そういうと、夫人は振り返るのと同時に首を横に振った。
「違います。」
「え?」
「この館は時空が捻れていて、外から見ると雨は降っていなません。」
―どういうことだろうか…頭に疑問符を浮かべた私の様子を見て、夫人は続ける。
「もっと分かりやすく言うなら…そうですね…」
ボッ ―目の前が明るくなる。
「私の指先の炎、あるでしょう?」
「はい、あります。」
―赤い揺らめく、鮮やかな炎。
「触りなさい。」
「え?」
「触りなさい。」
「え、いやただ」
「いいから、触ってご覧なさい。」
―恐る恐る触ってみるその刹那、夫人は私の腕をがっしりと掴んで思い切り炎を掴ませた。
反射的に手を引っ込め、
「ドミニク様!?一体何をされるのですか!?」
…
「熱かったですか?」
「え、えぇ!それは…もう、て、あれ?」
―そういえば、熱を感じなかった。
顔を上げると炎は夫人の指先で赤く揺らめいていた。
「これは実態の無い炎、見せかけ物です。」
「は、はぁ…」
「視たところ、貴方、炎は得意じゃない、と言うよりかは触れたことがないので、判別できなくったって当然ですね。」
「そ、そうなのですね」
―お、驚いた…と一息つく間も無く再び、
ボッ ―音が聞こえた。
…
「私の指先の炎、あるでしょう?」
「いえ、ありません。」
―指先には何も見えない、夫人の顔が見えるのみである。
「いいえ、ありますわ」
「どういうことですか?」
「そうですね…」
そう言って夫人は近くにあった花瓶から花を1輪とって指先に近付けた。すると、ジュワッとまるで蒸発するように花が焼けてしまった。
「これと同じような事で、そこにはありますが、見えないのです。」
「なるほど、理解しました。」
―雨はまだ、降り続く。
* * *
長い長い回廊を歩き、突き当たりの小部屋の前に立つ。
「ドミニク様、ここは?」
…
―夫人?
「………貴方…いえ、タンジェロ・バチェス」
であってるかしら?そう付け加えてから振り向く。
―キィン!
―私の爪を眼前で、ドミニクはいなした。
「中々の挨拶ですね、《
「…どこからですか?」
お互いに距離を取り、円を描き合う。
―スワッ!
…後ろからか
姿勢を前へ倒し、後方から飛んでくる剣を躱す。
―シャッ チャッ…
これは遠くから来てるな、起動は変わるかもしれない。
「考え事なんて、随分と余裕ですか?」
―シュワン! ギリギリで躱す
「いや、そんなまさか、一つ一つが…」
―キィィンン!
「九死に一生です…よ!」 ―ギャン!
「あらまぁ、これだけ距離を空けないと行けないの?詰める側も大変なのですよ?」
ふふふ…と和やかに笑うドミニクの瞳は殺意に満ちていた。
これ程なのか、悪魔の伴侶は…
―ドミニク・ヒルデ・ロンド…社交界にも滅多に顔を出さない―翳りの者とはよく言われるそうだが―そのような方が奇術を扱うことは知っていた。
その身体から白銀色の武器を錬成し、使役する、恐ろしい能力は眉唾物ではあったが、これがそうなのか…
―ギャィン! シャッ!
「ところで。」
ドミニクがそう切って入った。
「難儀なものですね、あの子はどうやら私に気があるようですけど?」
「そんなことは知りません、貴女の勘違いでは?」
―面倒なところを掘り下げてきやがって…
―キィン! キィン!!
「そういう貴女こそどうなんですか?先程まで笑顔を見せていた相手にそう簡単に刃を向けるなんて!残酷なものですな。」
「可哀想な人ね、自分の置かれた状況が解っているのかしら。」
―周囲から武器の音が消えた。
「どういうことですか?」
…
「見捨てられたのですよ。」
…貴方は。
…いや、
「そんなことは認めない!!彼らが、私を裏切るなど絶対にあってはならない!」
「でも事実、そういうことですよ。」
これを見なさい。
ペラリと、彼女が一枚の布を見せる。
―三本の短剣を、茨が囲ったペンダント。
「あぁ……
ァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
ダン!ダン!!ダン!ダンダン!!!
床に突っ伏して汚い嗚咽をあげる。
「私も目を疑いました、貴方ほどの実力者を切り捨てるとは、彼らも見る目がありませんね。」
…
「先日、貴方に伝えたこと、もとよりカヒタリスから聞いていたようですが、干ばつ調査というのは真っ赤な嘘です。」
…
「この館に近づいている生命体があるので、その調査でした。ただ、貴方は既に弱体化していましたので、そこに連れてこられる前に」
「黙れ」
―キィン!
「懲りないのですね。」
ズバン!!
―鈍い音が響き渡るのと同時に、視界が一気に暗くなる。
「…俺も、ここまで、か……」
「ええ、貴方はね。」
もう見上げる力もない、そのまま床に崩れ落ち、目を閉じた。
最後まで読み進めていただき、有難うございます。
主人公が急に牙を向ける、それも、何かが憑依したかのように。この後、タンジェロはどうなるのでしょうか?次回もお楽しみくださいませ。
グリム・シュヴィルツヒア・ロンドについてのキャラ紹介は欲しいですか?
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