美雪伝   作:丸井メアリ

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 皆さんこんばんは。
「美雪伝」は私が初めて書く、ミステリー?要素を含む小説でございます。ぜひ、最後までよろしくお願い申し上げます。

 ※2025/12/26加筆修正


第一幕

 

 七月中旬

 地元を離れて他県の大学に進学してから一年、か。

 

 大学生活も順調で、授業も楽しいし、ここに来てよかったな。

 今日は三限からだし、少しゆっくりでもいいな。

 

 コーヒーを飲みながらスマホをいじっていると、見慣れたバナーが現れた。

 

 L○NE(竹内:おは!今日すれ違うかも…)

 

 鼻から大きく息を吐き、画面を押す。

 

竹「おは!今日すれ違うかもしれんき、行きながら話そ~や!  」

 

美「おk」

 「何時に着きそう?」

 

竹「10時とかそんくらい!」

 

美「10時には着いてるから、A棟の近くで待っとくね。」

 

竹「おk 」

 

 スマホを閉じてコーヒーを一気に飲み干す。

 結構間に合わんかも、急がな。

 

 ギリギリで電車に乗り、座席確保。

 

 9時半過ぎに駅に着き、バスに乗り換える。

 大学前のバス停まであと10分。

 

 普通に間に合いそう。

 

 

 9時50分、大学到着、あいつはいない。

 

 まあ予想はついてたけど。

 

 …5分待つか。

 

 

 ――10分後

 

 来んやん、もう行こ。

 大体後からぶつかって来るからいいか。

 

 ちょっとむかつくので速足でA棟横の階段を上る。

 

 登りきったところで振り返る。

 

 

 あ

 

 見える。7月には到底合わない紫とオレンジの奇天烈ジャンパーが。

 

 おお走ってる走ってる。

 しかもなんか言いよる。

 

 逃げよ。

 

 A棟の陰に身を隠しつつC棟へ避難。

 

 あいつが追いつくまで暇だし、今日の歴史の講義の資料でも見よ。

_______________

 香島 美雪―こうしま みゆき

 年齢不詳、おそらく女

 

 遥か古の時より語り継がれ、そして現在もなお御伽噺として、絵本にのみ存在する逸話。実在したかすら分からないのに、一部の大学では、この物語を史実に基づいた歴史物語だと主張しているらしいが―

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「よっ!みっさき!」

 今日は速かったな。

 

 ―毎回聞く明るい声。

「竹ちゃん、朝から五月蝿いねぇ…」

「みーちゃんも毎朝お暗いですわねぇ…」

 腹立つなぁ。

「俺はそんな風に喋らないでしょ」

「ほーい、無自覚乙。あ!それよりさ、今日の食堂のメニュー最高じゃね?」

「朝一番で話す事かよ」

「はぁ?」

 おっといかん口に出てた。

「あーえっと…なんだっk」

「牛カツ定食!!!」

「あっ、そっか…」

 絶対美味しいやつだな。

「楽しみやn」

「つーか今日の歴史文学の講義謎じゃねー?居たのかも分からんような女のこと調べろってさ。真面目に調べる方が馬鹿だよな」

 まぁそんなものだよね。

「それは同意、時間の無駄」

「だろー?まぁどーせ、みさきも調べてきたんだろ」

「竹ちゃんもやっては来てるでしょ」

「もち」

 チャラチャラしてるくせして成績は無駄に良いのがなぁ、…嫌いではない。

 

 三限目はお互い違うものを取っているので、ここで一旦別れる。

「じゃ、また後で」

「おぅ!またの〜」

 

 さて。

 

 さっきの話の…美雪伝。生没年不詳の美雪について書かれた歴史書、伝説じみているからこそあれには幾つか欠陥がある。

まず、もとが御伽噺では無いのは本当。間違っているのは苗字の読み。「こうしま」じゃなくて「かしま」だし。

 

 

 

 あと、女じゃない。

 

 

      *     *     *

 

…午後1時半

 

「ああ〜食ったなぁ!マジで美味かったよな!定食!!」

「うん、美味しかったね」

 こいつおかわりし過ぎだろ…まぁ、美味しかったけどさ。

 

「てか、この後美咲は午後ある?」

「いや、とってないよ」

「おっしゃ、付き合って欲しいとこがあんだよなー、美咲はこの後暇?」

「うん、予定ないから良いよ―でも、先にス〇バに寄って論理の課題サッとやっちゃお?」

「いいやん、賛成」

 

…午後3時前

 

「いやー、終わったわぁー笑、やっぱみーちゃんと

一緒にした方が早く終わるわ笑」

「お互いにいい感じに書けたから良かったね」

「おん」

 いや本当に頭いいのよな、普通あの量は3時間かかるぞ。

 

「―なぁ」

 

「ん?どうしたの」

 

「―カラオケ行かね?」

 カラオケか、今、手持ち無事だし良いか。

「あ〜…、良いよ、行こ」

「ぇマヂで!ジャ〇カラでいい?」

「うん、近いしそこにしよ」

 

…午後6時半

 

「いや、マヂサンキューな!カラオケ付き合ってくれて」

「うん、良いよ」

―まぁ楽しかったし。

「楽しかったし、また行こ」

「おぅ。あ、でも要件これじゃねぇから」

「あ、そうなの?」

「こっちの方やき、着いてきて」

「うん」

 

      *     *     *

 

…午後7時過ぎ

 

「ねぇ、まだ?」

「あともうちょい、こっち右に曲がるから」

 入り組んだ路地、ここ初めて来るし、なんか隠れ家的なお店でもあるのかな。

 竹ちゃんはそーいうの好きだし。

 

 

「あっ」

 

「どうしたの?」

「やべ〜、道間違えたかも」

「え〜、ほんとだ、行き止まり」

 

 行き止まりの壁に近づいてみる、窓もないし、11月の空はすごく暗い。

 竹ちゃんは僕の後ろ―僕たちが来た道の方―で多分スマホをいじってるんだろうな。

「ねぇねぇ」

 

 

「ん?なん?」

「いや、どーするのかなって、戻る?」

「ちょいまち、今調べてるから」

「ほーい」

 

…10分後

 

「ねえ、まだ?寒くなってきたよ、結構」

「あ〜、マヂごめん、今分かったから行こ、さっきの分かれ道の所まで戻ろっか、先行き」

「分かった、ありがとう」

 少し小走りに進む、すると

 

「なぁ」

 

「ん?どしたの?」

―咄嗟に振り返ると

 

ゴッ

 

―痛、は?え、殴られた?なに…え、何が起こったの…

 

竹ちゃん…?

 

「…ふぅ、やっとやな」

 え?

「え?」

 

「長かったよ、ほんとに。すごく待ってたから」

 ゆっくりと彼が近づいてくる。これまでの2年の中で見たこともないくらいにねちゃっとした笑顔。

 

「まっで、どぅゆぅこt」

 怖くて、動けなくなった僕に、さっきの痛みとは違う、優しい抱擁。

 

そして、竹ちゃんが耳元で囁く。

 

「美雪さん」

 

 

 …

 

 

 

 

 

 

 

 ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………ゑ?

 

 

 

 

 

 

    ゴンッ

 

 

 

 僕の意識はここで途切れた。




 最後まで読み進めていただき、誠に有難うございます。
 美雪伝。この先、主人公の美咲はどうなるのでしょうか。
次回もお楽しみくださいませ。
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