ワグナスの行きつけのバーなのだそうだ。
そして討伐隊が作戦会議によく使っている場所なのだと。
……正直訳がわからない。
王城の作戦会議室使っちゃダメなの??
もしかしてダンターグとかロックブーケが
でも立場は俺も似たような物だと思うんだけど。
まあ、なんかワグナス流の慣例でもあるんだろ。
そう納得してグラスに注がれている琥珀色の液体をちびっと舐める。
こいつはワグナスの奢りである。
場所が場所なのでワンドリンクは必須である。
俺はあまりこう言う場所は来ない。酒を積極的に飲まないと言うのもあるが、そもそも楽しめないのだ。クソ上司に酒を注ぐたびに怒鳴られる光景がフラッシュバックするので。
やれラベルは上にしろとか持ち方はこうだろとか乾いてるのが見えないのか使えない奴だとか、ホント色々。
幸いにして、ここにボトルはないので酒つぎ意識しなくても良いのはありがたい。
ありがたいのだが、ワグナスや隣のダンターグに合わせてウイスキーをストレートで頼んだのをクソ後悔している。
なんだよこのねっとりした甘いアルコールの塊。
いい匂いはするんだけど、舌と喉に尋常じゃないダメージ与えてくるんだが。
これ飲み切らないとダメな奴??
アンタらいつもこんなの飲んでるの??
ちなみに、ロックブーケは白のワイン*1だった。
俺もあっちにすれば良かった。
「とりあえず、過去に前例が無さそうでまだ通りそうな戦術や戦略を雑に書き出して来ました」
ボクオーンがテーブルにペラ1枚を置いた。
反対の手にはなんかおしゃれな色のカクテルを持っている。
カクテルの名前もおしゃれだった気がするが、おしゃれ過ぎて既に俺の記憶からは消えている*2。
おしゃれで言ったら、何気にスービエも青くておしゃれなカクテル*3を飲んでる。
こいつら慣れてやがるわ。
差し出されたペラをのぞき込む。
色んな戦術が箇条書きになってズラズラズラズラ書かれていた。
『地術で局所的に崩落を起こし、我々は通れるがタームは通れない障害物を散発的に作成する』
『囮を中央に置いて攻撃役を壁ギリギリに配置し、会敵したら天術で目くらましを掛けた上で囮役に食いつこうとしている所を攻撃役が強襲する』*4
『道を横断するようにワイヤを張り、簡易的な防御柵とする』
お、『樹脂と炭液を混ぜた液体をタンクに詰めた水鉄砲を持ち込みタームの顔に目つぶしとして射出』なんてのもある。ちょっと楽しそうだなこれ。
中には『クジンシーを先頭に順番を決めておき、会敵順に吸収を行う事で回復と安定性を両立する』なんてリスキーなのもちらほら。
……そしてなんか、リストの中に『ダンターグがダンターグする』とか言う一文がノミネートしてている。こいつ、絶対前回のこと根に持ってる。
「……ってか、ダンターグがダンターグするのは前回やったんだから、再び使うのはマズいのでは?」
「関係ないな。何をされても俺の方が強い」
「大歓迎なのかよ無敵だなあんた」
さすが、ちょっと前に「なんで馬に乗らないのに
いや解ってるよ。馬に乗って
さすがに口には出せないので、代わりにウイスキーを舐める。
「さすがに全てやるのは後に響くから、実施は有効打になりそうな順からいくつか程度で良いだろう。効果的なものが2~3あれば条件を満たす筈だ」
「ふん、最も有効打になりそうなのはやはりコレだな」
にやにやしながら『ダンターグがダンターグする』に指を置くダンターグ。もはや誰も突っ込まなかった。もう好きにやれば良いんじゃないかな。苦労するの俺じゃなくてスービエだし。
「以前、スービエとダンターグを囮にして下層を目指したが、その行き先は全て塞がれていた。クイーンに辿り着く事は出来なかったのだ。
――だが、今回は違う。
『タームが指示を仰がなければならない状況』を意図的に作成する。そうすれば、タームがクイーンへ続く道を開いてくれる筈だ。そこを一気に侵攻し――」
ワグナスが一気に煽ったグラスをダンっ!とテーブルに叩きつけた。
……ウッソでしょ??アンタこれをイッキ出来るのかよバケモンか??
皆が緊張や奮起で沈黙してるが、きっと俺だけ沈黙している理由が違う。
「――おそらく同じ手は2度と通じまい。次の決戦が最初で最後のチャンスになる筈だ」
「クイーンの情報が全くないため、ここだけは策の練りようが全くないのが非常に不愉快ですが……もともと不利な戦況です。そこまで贅沢は言ってられませんね」
「どれだけ消耗を抑えてクイーンの所まで行けるのかが鍵となるわけか」
……。
あれ?え、ちょっと待って??
「あの……タームへの指示誘発も俺らがやるのか?消耗抑えるのが肝要なら、戦術はボクオーンがなんとかしてくれたんだから、赤竜隊やら王兵やらになんとかして貰えりゃいいじゃないか」
ワグナス達が複雑そうに視線を絡ませる。
「……そう言えば、ロックブーケには溢した事があったが、お前には言ってなかったな。
ターム巣穴への侵攻は、実は評議会の了承を得られていない。下手に巣穴をつつけば報復が苛烈になる危険があると。
王城は新市街地の鉄門を閉じて籠城の構えだ。前回タームの巣穴を閉じるのに兵を借りれたのがギリギリで、実は我々7名によるターム討滅は独断専行扱いだった。赤竜隊ももはや、我々の私兵扱いされているとしてマークされている。
……今回動けるのは、本当にここにいるメンバーだけだ」
空いた口が塞がらなかった。
「……貴族連中は頭脳がマヌケか??苛烈な報復も何も、もうアデナ川の防塁まで突破されてたろ確か。鉄門閉じても時間稼ぎにしかなんないだろ。食われる時間を後回しにしてるだけじゃ……」
……そして、気づく。
貴族連中は頭脳がマヌケなのではない。
「つまり……つまり、そうか。そうかよ。
「……ああ、そうだ。
悪態をつきたくなる。
どおりでこんな所で作戦会議やってる訳だよ。俺ら全員無法者だった訳だ。そりゃあ王城の会議室は使えねえよな。
吐き気がしてきたのは絶対にこのウイスキーが理由ではない。
つまり、貴族連中だけで逃げるアテがあるって事なんだろう。
一体どこに逃げるつもりなんだろうな。海の上に人工島でも作ってんのかね。異常気象で沈んで洗い流されちまえば良いのに。
「……悪い、余計なこと聞いたみたいだ。……戦えるのが俺たちだけなのはわかった」
「クジンシー、あるいはお前の分だけなら脱出チケットは手に入るかもしれないぞ?無理をする必要はない」
「勘弁してくれよそっちの方が地獄だ。戦って死んだ方がまだマシだ。頼むから俺を置いていかないでくれよ……ほんと頼むよ……!」
そんな汚物に塗れたオゾましいチケット、貰っただけでも死にたくなる。
最悪の特級呪物じゃないか。
ワグナスが皆を見回した。
「クジンシーだけでは無い。この作戦には決死の覚悟が必要だ。――ここで降りる奴がいても、私は責めないぞ?」
「いまさらその手の話か?ワグナス。前にも言っただろう……俺はただ、お前を信じるだけだ」
スービエが不敵に笑う。
「私も、お兄様とその手の話は沢山しました。……ワグナス様、私は例え置いてかれたって絶対について行きます!」
「まあ……そう言う事だ。俺も勿論退くつもりはないぞ」
ロックブーケとノエルが追従した。
「センスのない愚問ですね。ここで退くようなら、そもそもここには立ってはおりませんよ」
「――俺に対しては、まさか本気で聞いている訳では無いだろう?」
ボクオーンとダンターグが聞くまでも無いと吐き捨てた。
「よし……わかった。もはやこれ以上は聞くまい。ならば、王国の為に……いや、違うな。
――我々の切り開く未来のために。乾杯と行こうか。
マスター、ウイスキーをもう一つ頼む」
既に飲み干されていたワグナスのグラスに代わりが届く。
「「「「「「「――乾杯」」」」」」
ぶつかった7つのグラスから、それぞれの決意の音が響いた。
@ @ @
ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!ダンっ!
俺がちびっと口を付けたその目の前で、6人が全員自分のグラスを飲み干した。
……おいおいおいおいウソだろ!?全員イッキしやがった!?ワグナスなんてウィスキー2杯目だぞ!!?
図らず呆然と固まってしまう。
未だ口をつけてる俺に視線が集まり……特にダンターグの目線が特ににやにやと笑っていて。
「お、オイちょっと待て、お前は別に無理しなくても、」
スービエの声を脇に置く。
やるしかなかった。
この空気で干さないとか絶対無理だ。
覚悟を決めて口を付けたグラスを一気に傾け流し込む。
――ゴッッッフアアアアッッッッッッッ!!?
「~~~ッッッ!!!ッッッッ!!!!!!!!ッッッッッッッッッ!!!!!!!???」
それは、目と鼻とのどに塩酸をぶっかけたかのごとき耐え難い刺激だった。
もはや声すら出なかった。
「ハハハハ、なんだお前下戸だったのか?」
「まてまてまてまてウイスキーストレートだぞ!?一気するモノじゃあない!!ダンターグとワグナスが頭おかし過ぎるんだ!!……おいクジンシー大丈夫か!!?」
「身の程を知りなさいよ……バカな男」
「いやいやいやいやさすがにそれはないぞロックブーケ。失敗したな、飲み干してしまった俺も悪かった……マスター、タオルをお願いできるか*5」
「いや、その……なんかすまん」
「すみませんマスター、エスプレッソ・マティーニのお代わりをお願いします」
……もう、このメンツで絶対酒は飲まないと誓った。
飲みニケーションでな。
飲みニケーションでな。
別方向に失敗するクジンシーが書きたくなっちゃったんじゃ。
奥義、捏造乱舞Ver2。
そもそもリベサガの『七英雄の記憶』見るからにバーで皆が飲んでるのは赤ワインだし、だいたいこんな絶望的な情勢でそんなに品数作れるはず無いだろごめんなさい許して。
きっとロックブーケはずいぶん解釈違いだと思う。
でもロックブーケは子供枠なので、実はあんまりお酒のこと知らなくて、最初はノエルお兄ちゃんと同じ赤を頼もうとしたらこっちの方が渋くなくて飲みやすいよとお兄ちゃんに勧められたので白にした経緯を妄想。ワグナス様と同じのは死ぬ気で止められた。
きっと歳を経て酒飲むようになったらブラッディ―マリーとか飲んでる。
ちなみに私はグラスホッパーが好きです。
ダンターグさんがちょっとはっちゃけて来ちゃった。
なんか筆が滑ってしまうなどーにも……
でもこう言う、肩の力抜いてる七英雄も見たかったんです。
……チラ裏タグつけた方が良い?