……弓?そんなユニーク武器を、平民の会社員が??
なんなんですかね、王城の宝物庫やら武器庫やらからくすねて隠し持ってたとかそう言う奴なんですかね。そういう設定されてそう。
本作ではもうちょっと技チックな技として扱います。
俺の戦闘力的なレベルも、ちゃんと上がっていると言う事なんだろう。
タームをあしらうのは随分とうまくなったと思う。こう斬れば弱いとか、ここを斬ればひるむとかも何となく解かってきた。
そして何より、狙ったところを狙ったとおりに攻撃できる技量がついて来たというのがデカい。ノエルにダメ出しされつつひーこら言って素振りしていたあの時間は、間違いなく俺の身になって花開いてきている。
そうなってくると、いろいろ検証したくなってくる。
特に今回は消耗を抑えるのが肝要な作戦だ。どうやれば効率的に動けるか、倒せるか……そしてどうやれば継戦能力を上げられるか。
本来ならそれらを準備した上でこの作戦に挑むべきだが、残念ながら俺は実戦経験これで2度目と言うバリバリの新兵である。そんな余裕はない以上、ひとつひとつの実戦を効率よく経験にしていかなくちゃいけない。
そうやってノエルのサポートを最小限に抑えるのが俺の前半戦の目標だ。
アイデアはいくつかあった。『吸収の法』である。
「っしあっっ!」
タームソルジャーの構える盾の外側に回り込んで逆袈裟に斬り上げる。
頭を斬ると見せかけて盾の位置を上部に誘えば、それはこちらにとって有効な死角に化ける……こいつらとの戦闘で学んできた事だ。
さらに背中に回り込みつつ、その後頭部に渾身のみね打ちを叩き込む。
こいつらは構造上、背中に関節は回らないが、その複眼は真後ろでもしっかり捉えるため油断は出来ない。
そして怯んでいるうちに左手をタームの傷口に突き入れた。
――術を発動。
「ギキィィィイイイィイイイッッッッ!!?」
タームの体がビクビクと盛大に痙攣し――プツン、と糸が切れたように崩れ落ちる。
「クジンシー……それは?」
「ああ、『吸収の法』の手加減版と言うか、下位互換と言うか……こいつらの生命力だけ奪い取ってみた。やりたい事は出来たみたいだけど……ダメだな、ちょっと手順が多いからもっと最適化考えないと」
「なるほど、吸収するのを生命力のみに限定すれば、浸食を避けられる訳か……回復は出来たか?」
「ああ、スタミナとかも全回復だ。やりようによっては使えるよコレ」
吸い取った左手をひらひらさせながらノエルに応える。
消耗戦にあって、回復手段が増えるというのは大きな意味がある筈だ。
「ほう、器用な真似をするじゃねえか……どれ」
ダンターグが手頃な位置にいたタームの頭をわし掴みにして持ち上げた。
ガラスを引っかいたような声をあげながらタームはもがくが、その手は剥がれず、むしろ頭蓋をミシミシ言わせている。
究極の脳筋ホールド技、アイアンクローである。そのまま握りつぶしそうな勢いだが――
ビグンッ、と体を痙攣させるとタームの体が崩れ、光となってダンターグに吸収されて行った。
「ああ……?」
勿論それは望んだ結果ではない。不満そうに眉を顰めるのである。
もういっちょ、とばかりに今度は別のタームの胸に
俺に倣って傷口からアプローチする事にしたようだが、タームが断末の叫びをあげているのを見るとなんだか同情したくなってくる。まるでホラーの様相だ。
そしてやっぱり、タームは体ごと崩れダンターグの体に溶けて行った。
「……ちっ、ダメだな。うまく行く気がしねえ」
舌打ちしながらその鬱憤を晴らすように
まるでゴミのようにまた別のタームが吹き飛んで消えて行った。
今日も元気にダンターグはダンターグしている。
ワグナスがふむ、と納得したように声を上げた。
「『ライフスティール』とでも呼ぶべきか。先ほどのは若干、冥術の気配がしていた。クジンシーの体は『吸収の法』のせいか『冥』に寄り始めているようだからな……それも関係しているのだろう。属性が『天』に近い私は多分出来ないだろうな」
「『冥』は人間では結構珍しいですからね……このメンツでは、クジンシー以外だと使いこなすのは難しいかもしれません」
「うーん、そうか……うまいやり方が見つかったと思ったんだが」
パーティ全体の消耗を抑えるのはどうやら無理だったらしい。
そしてまたぞろ通路の奥からお代わりのタームがやってくる。
「しかしクジンシー、それはお前にとってかなりの力になる筈だ。ちょっと良く見ていると良い」
ワグナスが数歩前に出ると、その手を何気なく翻した。
――瞬間、数本の熱線がタームの一体に突き刺さる。
タームの体に穴が開くと同時に肉が焦げる音とタームの悲鳴が響く。
それが『太陽光線』と呼ばれる天術である事を知るのは、もっと後の話だ。
「ボクオーン、ちょっとあれの足止めをお願いできるか。ダンターグは少しの間で良いのでそいつ以外の相手を頼む」
「分かりました」「あいよ」
そして、以前にも見たボクオーンの足がらめだ。今度は既に相手が虫の息という違いはあるが。
ワグナスが「見ていろ」と俺に視線を合わせ、そのタームに掌を向ける。
術の光がタームに纏わりつく。
タームはしばらくもがき抵抗していたが、やがてガクッと弛緩すると光に溶けてワグナスの体に飛び込んで行った。
「わかったか?」とワグナス。
「……え?『吸収の法』なのか今のは?……遠隔で??」
「そうだ。やはり距離を離しただけ抵抗もあったし射程も限られているがな。弱らせて足を止めてやっと成功できた訳だが……原理的には出来るんだよ。そしておそらく、クジンシーのやり方であれば『吸収の法』よりも難易度は低い筈だ。力や経験ごと取り込む『吸収の法』とは違って、奪うのは生命力だけなのだから」
ワグナス曰く『ライフスティール』だったか。
攻撃して傷をつけた後に、間合いの外から術を発動。
……それが叶えば、確かにこれは大きな力になる。
「あの……少し、練習してみても良いかな?」
「それほど長くは付き合いませんよ。後があるんですから」
あまり乗り気でなさそうな様子で、それでもボクオーンは一歩前に出てくれた。
@ @ @
大前提、今の俺では傷口無しで出来る気がしなかった。
なのでまずは普通に攻撃。
反撃を警戒して腕を落とす事に専念する。
昆虫特有の節だらけのその腕は、胴を狙うよりも実は攻撃が通りにくかったが、今の俺にとってそこまで難易度は高くなかった。
「ボクオーン!」
「すでに入ってますよ」
俺が後ろに下がる時には、既にタームの足元は土に沈んでいた。
相対していたのに術の発動のタイミングが全然分からなかった。
ボクオーンとのレベルの差を感じつつも、呼吸を整えて掌を向ける。
向こうではダンターグとスービエが、「ほれ、ガンバレガンバレ」と見世物を見るようなノリで片手間にタームを片付けていた。
完全な安全圏、完璧なお膳立てだ。
これは成功させなくてはいけない。
手の先にある、タームの傷口に集中する。
伸ばした手の先、術力がタームを包む……感じが全くしない。
「ぐ……ぬぬ……」
感覚がつかめない。
何度も気合を入れ直して手を向け直してみるが、成功の兆しは全くなかった。
数十秒ほどそんな状況が続く。
「ふむ……やはりぶっつけは難しいか?」
「術力を体の外にて運用するのは術法の基礎中の基礎ではありますが……キッカケを得るまで時間が掛かる者は結構いますからねえ。術力が体に留まったままです。これは、ちょっとダメですかね……」
「……仕方ないわね」
ロックブーケだった。
あきれた様子で俺の隣に並んだ。
「まず、直りなさい」
「え……え?」
「早く。それと返事!」
「お、おう!」
慌てて『気を付け』の状態を取る。
「私に続いて」と、俺のすぐ横でロックブーケがその手をタームに向けた。
恐る恐るその動きに追従する。
「向けた手に術力を纏わせる。それぐらいは出来るでしょ?」
俺に見えやすいように、随分過剰な量を手に纏わせる。
「あ、ああ……こうだよな」
「そう。で、ここから術力を相手に向ける訳だけど……最初は、こうよ」
ロックブーケの手の先からまるでロープを伸ばすように、術力のラインがゆっくりタームに伸びて行った。
「――わかる?最初から相手に意識を向けるんじゃなくて、術のラインを相手に届けるの。まずは術力を動かす事を意識するのよ」
ほら、やって。
そう促すロックブーケの言葉に従って俺はまず自分の手に集中した。
それから同じくロープを伸ばすように、ゆっくり術力を延長させていく。
先ほどには無かった『進んでいる』その光景に、ワグナス達が「ほう」と関心の声を上げた。
タームに術力が到着。そして――
「……っ、っけえええ!!」
発動。
タームの傷口から生命力の光が逆流してくる。
タームが力なく声を上げて崩れ落ちた。
――成功だ。
コントロールが随分難しかったが、何とか感触をつかんだ気がする。
「お、おお……できた!」
「言っとくけど、初歩中の初歩よ?術力の体外運用は。アンタ、実践運用出来ないとワグナス様が困るんだから、せいぜい精進する事ね。私はもう教えないわよ」
そう言って、踵を返しながらロックブーケが指を鳴らす。
――閃光。
一瞬だった。
衝撃を伴った眩い雷が前衛に居たダンターグ達を避けてタームの群れに襲い掛かり、瞬く間に焼却する。
……たった今、目の前のタームに術力を通すのに俺はずいぶん苦労した。
だからこそ、今の攻撃がどれほどの神業なのか嫌でも理解させられる。
「術法だって、そこらの魔導士に負けるつもりはない」――そう息巻いていたセリフが脳裏によぎる。
「――せめて、このぐらいは出来るようになる事ね。ワグナス様と共に戦うのなら」
圧倒的な高みから見下ろされる。
……やっぱり嫌な奴だコイツ。嫌な奴だが……
「……あ、ありがとう。勉強になった」
お礼を言うと、ロックブーケは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
@ @ @
ここまで出来たらもう、後は俺が頑張るだけだ。
ボクオーンもダンターグらももう手伝ってはくれなかったが、それで良いと思う。
ロックブーケの教えてくれた初歩の運用方法は随分俺に嵌っていたようで、今は『ロープを伸ばす』あの光景を自分なりにこねくり回して、剣を伝って伸ばした術力で斬りつける工夫を試している。
このやり方であれば攻撃と同時に『ライフスティール』を発動できる理屈だ。
剣と術の同時運用が難しくて、今はまだ斬りつける→術力をくっつける→離れる→ライフスティール、といくつかのステップに分かれてしまっているけども。
それ以外にも、普通に術力を相手に届かせる練習もしている。
どうやら俺には、紐のついた術力の弾を相手に投げつけるイメージがずいぶん適切なようだ。
「あまりそればっかりにかまけるなよ。術力の運用にも消耗はある」
ペアになってるノエルが剣を担いで苦笑した。
「ああわかってる、ありがとう……なんて言うか、出来る事が増えるとそれが面白くなってしまって」
「ははは、俺にも覚えがあるなあ」
応用力と言うか、工夫の伸びしろが大きいのもその一因だった。
これなら、例えば弓矢を撃ち込んでそこからライフスティール発動とか、そういう戦法だってできるかもしれない。わざわざ近づく必要が無いのは強い。
劇的に変わった戦い方に、ポツリと感嘆が飛び出る。
「……ロックブーケ、凄かったんだな」
「凄いとも!そこらの魔導士には負けないぞ?あの『召雷』は水と風の技法を合わせた非常に高等な合成術で、王城でも使える奴の方が少ないんだからな。教えるのだってうまいだろう?」
ノエルはとってもとっても自慢げだった。
「……ノエルお兄様やワグナス様に、剣や体術ではどうあっても並べる気がしなかったので。術法に力を入れたんです。もちろん、剣の稽古だって続けていました」
ワグナスやノエル相手だとロックブーケは露骨に変わる。
照れたように笑うその表情は普通の少女のそれだ。
「まあそれでも……剣も術法も、ワグナス様の下位互換に留まってしまいましたが」
「いやいやそんなことは無い。属性の違う同格の術師と言うのはそれだけでも大きなカードだ。私は『天』と『火』、ロックブーケは『水』と『風』。これだけで大抵の奴の弱点は突けるからな」
「……あなた、『風』も修めてませんでしたか?」
「彼女と比べないでくれ、恥ずかしくなる」
「そんな事ありませんわ!」
とても和気あいあいとしながら、それでも物凄くレベルの高い話をしていた。
……改めて、俺がどれだけ凄い人たちのグループに居るのかを思い知る。
ボクオーンは地術に秀でているようだったし、何より戦略眼でパーティーを支えてる。
スービエだって槍の名手で、さらに水術も飛び出てくる。
ダンターグやノエルは術法が得意じゃなさそうだが、それを除いても余りある実力の持ち主だ。
特にダンターグ。あれはちょっと、色々おかしいと真剣に思う。
技量がついて多少は近づけたかと思ってみれば、逆にその遠さを理解した。
ヒステリックな言い方ではあったが、俺に討伐隊を抜けろと言ったロックブーケの言はしかし、確かに正しかったのだろう。
「足手まといにしかならない」と、考え方が排除に向くのは悔しいが理解できる。
しかもこれから向かうのはクイーンの居場所、いわば最終決戦だ。
我欲の為だけにチームの足を引っ張る身の程知らずなお荷物。
……理解はしていた。
でも。
――グラスをぶつけ合った、昨日の光景を思い起こす。
決めたんだ。
ワグナスだって認めてくれた。……たとえ不本意であったとしても。
ならせめて、今更後ろ向きになるよりも、ひとつでも自分にできる事を探そう。
そう思う。
「ワグナス」
「ああ。……時は、来た」
そして、ついに辿り着く。
クイーンのいる下層エリアへ続く道だ。
「――全員、行けるな?」
「行くさ」
真っ先に応えた。
ワグナスが笑みを浮かべる。
ロックブーケはジトっと俺の事を眺めたが、それでも文句が出て来ることは無かった。
ロックブーケ第二形態の代名詞『召雷』
あれは吸収した物ではなく、彼女がかつてジツリキで手に入れた力なんだと妄想。
……なに、幻影は撃ってこないしそもそも第一形体は召雷を使わない?
気にするな!!
それ言ったら、ボクオーンが地術に秀でてる根拠なんて何もないんだけどね。こいつ地術使ってこないから。
でも、頭脳役で植物属性なんだからと使えることに決めました。
術法自体は使えるみたいだしね。七英雄の記憶でなんか光の弾撃ってたのは見たよ。
次回、クイーン戦‥‥‥の前にたぶんなんか挟む。
つかどうしよう、クイーン戦内容全然決めてません。
てかさ、ホントはクイーンじゃなくて「クィーン」って記述しなくちゃいけないらしい。
直すのメンドクサイしこれはもうそのままで良いか……どうせスペルで書くなら「Queen」だろうし。
フレディ=マーキュリーのいるバントチームも「クイーン」って書くだろ?
マイクみたいな杖持ってんだから、君はそれでボヘミアン・ラプソディでも歌ってなさいよ。