新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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タームの真骨頂ってやっぱアレよね。



新宿は平民である

タームの数が目に見えて増えた。

下層への道が開いた以上、ここから先は速度が重要。安定と速度を両立させるため、さすがにこれ以降ダンターグの先行をワグナスは許さなかった。

ダンターグも理解はしているので大人しく従っている。非常に非常に不満そうではあるが。

 

そしてここでもボクオーンの奇策が炸裂した。

ワグナスとダンターグの配置を逆にして前衛二人を極端に両翼展開したのだ。

 

  ▲ ▲

  

         ●

←    ★

         ●

 

  ■ ■

 

▲:ワグナス&スービエ

■:ノエル&クジンシー

●:ボクオーン&ロックブーケ

★:ダンターグ

 

ボクオーンが書いていた戦術リストの中にあった、一人を囮にする策。

これをダンターグにする形で組み直したのだ。

 

これが物凄いハマった。

速度優先で浸透していると、面白いぐらいにタームの攻撃先がダンターグに集中するのだ。

おかげでダンターグに誘引されたタームたちはワグナス、スービエ、ノエル、そして俺の攻撃を側面からまともに受けなくてはならず、結果会敵して数秒持てば大健闘と言うぐらいにタームがバラバラ散って行く。

それでも処理できないような数が一挙に襲い掛かってくると、ダンターグが雄たけびと共にぶちかまし、結局(はかな)く散って行く。

 

「要するに、ダンターグがダンターグしまくった結果ですね。タームの最優先攻撃目標がダンターグになってる訳です。これほどまでに顕著過ぎる効果が出たのは私も予想外でしたが」

「『吸収の法』を使って回復する意味すらなくなってるな……文字通りタームが溶けてく光景なんて初めて見たぞ」

 

赤竜隊の苦労は何だったんだとノエルが引き攣っている。

そして囮になっているダンターグはと言えば、「さらに歯ごたえが無くなったな」とつまらなそうにグチっていた。

 

空を飛ぶ敵はロックブーケが風術『ウィンドカッター』で撃ち落とし、敵が固まれば間髪入れずボクオーンが地術『足がらめ』で動きを止めてサンドバッグに変化させる。

前衛に入ったワグナスもノエルとタメを張るのではと見まごう動きを見せている。

何で総司令官がこんなに剣が達者なんですか???

時々、目くらましに使う光の弾*1でタームの頭を破裂させている。

――今更ながら、俺はワグナスの認識をダンターグと同じ場所に位置付けた。コイツら揃って意味わからない。

俺がクィーンの側だったら、こんな奴らをどうやって止めろと言うのだと、とっくに頭を抱えて投げ出している。

 

――そんなことを考えていたからか。

クィーンはどうやら、こんなどうしようもないパーティーをどうにかする『奇策』を用意していたようだ。

それは、ノエルをして「軍略においては人間の上を行く」と評価させた、クィーンの出した悪辣で陰湿な『回答』だった。

 

「マ……ママァ……ママァ……」

 

ボロボロに汚れた、10歳ほどの少年だった。

光の無い目でフラフラしながら、通路の奥から歩いてくる。

 

「タスケテ……ママが……ママがァ……」

 

さらわれた民間人だった。

助けを求めてさまようそれは、悪夢のような巣穴から何とか抜け出し、逃げ続けていた……ように見える。

 

「み、民間人!?生きていたの!!?」

「……いえ、ワグナス。あれは……」

「ああ、わかってる。……みんな手を出すな、あれは私が……」

 

悲痛な顔で一歩前へ出ようとしているワグナスを手で制して、俺はそいつに歩み寄った。

視線でワグナスに「わかってる」と告げて。

 

「タスケテ……タスケ……」

「よお。――()()()()()()

 

俺の一言、で空気が凍った。

 

「……タスケ」

「おめーにやられた手の傷、何とか目立たないぐらいには治ったよ。実は未だに強く押したらじんと痛みが奔るんだけど、これはもうしょうがねえらしい。

覚えて無いだろう事を確信して聞くんだけどさ……あの時のパンはうまかったか?俺のこと覚えてる??」

「……」

 

少年は、やはり光の無い目で沈黙して、俺の事をねめあげていた。

構わず続ける。

 

「まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……お前、ずいぶん臭うし、耳の所が腐って崩れてんぞ?」

 

既に、俺の手から冥術のラインが伸びていた。

腐り崩れたその耳へ。そして、()()()()()()()()()()()()()()

 

――そして、生命力の簒奪(さんだつ)を発動する。

 

「ママ……ママガアアァアガアアアアア!!!!」

 

俺の『ライフスティール』に引っ張られるかのようにたまらず体を食い破って出て来たタームは、しかしすでに手遅れだった。

ラインはガッチリ食いついていて、俺はいきなりの光景に驚きはしたが、だがその術は解除していない。

『ライフスティール』が完了すると同時に、少年から出て来たタームは悲鳴を上げて崩れ落ちる。

 

「――旧市街の北区あたりでさ。万引きやってた親子の片割れだよコイツ」

 

タームの体は紫の何かになって消えたが、寄生されていた少年の体はそのまま残っていた。

内側から食い破られ、その様相は凄惨の一言だ。

しかしあまり感情を動かす事なく、ただそれを見下ろしている自分を発見する。

 

「偶然盗んでる所を見つけたんで捕まえたらさ。盗みの罪を擦りつけられた上に、手を斬られて俺の買い物も財布も抜かれて散々だったな。追ってきた『自称正義の味方』に散々っぱら殴られたっけ。

奪われたものがどこにもなく、切り裂かれたポケットと俺の手を見て冤罪が晴らされたら、みんな『俺は悪くない』みたいな顔して散って行ったよ。医者行ったけど自費だったなあ」

 

――因果応報って奴なのかね。

さすがにそこまでは口にはしなかったが。

最後が内側からタームに食われて終わり……っという訳ではないか。耳が腐ってた所を見るに、それより先にもう死んでいたように思える。

ただどちらにせよ、まともな終わりでは無かったろう。

 

「朗報だ。寄生している状態であれば、タームへの攻撃を無しに『ライフスティール』が届いた。アレが慌てて出て来たのは、寄生したままでは抵抗できなかったからだろう。それでも一度ライン繋げちまえばこっちのモンだ。出てきた奴はソルジャー*2とかよりも弱いらしいし、そのまま確殺まで持ってける。

これってつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事だろ?

……じゃあこれは、俺の仕事だ」

 

あんたが、無理してやる必要は無いよ。

そう言って俺はワグナスに笑いかける。

 

――ありがたいね。このメンツの中にあって、俺でも出来る事がある。

 

 

@ @ @

 

 

民間人に寄生させてパーティの精神を攻撃する……と言う悪辣な手段は随分クィーン肝いりの作戦だったようで、その後も何度か続くのである。

立ち塞がり、助けを求める声の数だけ『生贄』とされた者たちを強制的に認識させられる。

 

「たす……タスケ……ウギイイイイイイー!!!」

「ヤメテ……シにたくなアオアァァアアアア!」

「イヤァ‥…イヤァァ……ウググアアアア!!!」

 

その全てからタームが(おぞ)ましく飛び出し。

俺は、そのすべてを『ライフスティール』で屠って行った。

出会う度にだんだん空気が凍って行くのが分かる。

女子供が出て来た時には、胸糞悪そうな舌打ちが誰かから飛び出たりもした。

……タームの出てこなかった『生き残り』はただの一人もいなかった。

 

「……クジンシー」

 

悲痛な声でワグナスが声を上げる。

 

「……軍の行動においてはな。その行動責任はすべて上官にあると教えられるんだ。たとえその剣が人に向けられたとして、その責任は兵ではなく上官が持たなければならない。兵は責任を負ってはならない。

――今だってそうだ。このターム侵攻は、私の立案によるものだ」

「だから責任はワグナスのものだって?無理すんな、そもそも軍事行動じゃないだろコレ。俺ら全員無法者のハズだ。っつか、そんな責任なんてのも無いよこの場には。

――別にそんなダメージ受けちゃいないよ、深刻に考えすぎてる」

 

「クジンシー。平気な奴はな。……そんな顔を、しない」

 

……ワグナスの言う顔が、どんなものかが分からない。

だが、ワグナスから見る俺の顔は随分ひどいもののようだ。

 

「見間違いだ」

 

切って捨てた。

俺としては、そもそもそうするしか出来ない。

 

「ただ……ただ、そうだな。少し……少し、考えたよ。

知ってる顔がチラチラいた。本当にただ知ってるだけで、別に絡みとかある訳じゃなかったんだけど。変なクレーマーだったり、出先の担当者だったり、なんか悪態つかれた奴だったり、あんま良い記憶ないけどさ。

意外なほど、俺の行動範囲の近くに居た奴だった。

知らない内に消えてた。知らない内に『こう』なってた。俺の近くで。俺の行動範囲内で。それでも俺の周りは不気味な機械みたいに、何もなかったかのように、くるくる歯車回してたよ。

これ、べつに神官貴族絡んでないんだぜ?()()()()()()()()()()()()()()

……俺らの命って、何なのかなってさ。本当にちょっと考えただけだ」

 

『そう』なるようにタームが調整していたのか。

それとも俺がそれだけその歯車から外れていただけか。

……あるいは、そもそも人間はそういうものなのか。

何にせよ気が滅入る答えしか出てこないのだろう。

 

「行こう」

 

――なるほど、精神攻撃という点ではクィーンの目論見は随分通用している。

しかし、それは足を止めるまでには至らなかったけども。

 

 

@ @ @

 

 

周りの景色が「いよいよ」という様相になってからは、もう寄生された人間は出てこなかった。

『冥』の気が随分強い。タームの気配すら薄くなっている。代わりに、どこからか脈動する音が聞こえてくる。

壁に触手……いや、血管か?生物的な嫌悪を思わせる血管が奔っている。

 

「……どうやら、辿り着いたようだな」

「ああ……ようやくだ。ようやく!!……この日が来るまでに、我らは時間をかけ過ぎた」

「さんざん胸糞の悪い思いをさせてくれやがったからな……!この手で八つ裂きにしてやる……!!」

 

立っているだけで、巨大な力をひしひしと感じる。

しかしそれを上回る怒気と戦意が、俺の周りに満ちていた。

 

そこで待っていたのは、とてもタームと同種には見えない紫色の巨大な異形。

人と昆虫が融合したような、そんな見た目だ。

そして特筆すべきは巨大な腹。紫色に奔る血管は、来るときに見た壁を這うそれと同じもの。それがびっしりと天井まで伸び、一つの巨大な空間を形成している。

それがあまりにも大きすぎて、あるいは体が壁に埋まっているようにも見えた。

 

――『それ』が人の顔で(おぞ)ましい笑顔を浮かべて、(あざけ)る。

 

「うふふふふふふ。いよいよ我が元まで参ったか。そなた達のために凝らした趣向は気に入って頂けたかな?必死に助けを呼ぶ声を、一体いくつ斬ってきたのかのう……?」

「てめえ……」

「……みんなとっくに死んでたよ。随分慌てて演技指導したんだな?どいつもこいつもダイコンだった。……背伸びすんなよ、アリが人のマネなんて出来る訳ないだろ?アンタも必死に人のマネをしたいようだがね」

 

クィーンの視線が俺を突き刺す。

 

「おっと、随分と矮小なモノが混ざっていたので気付かなかったわ。……急かずとも良い。心配はいらぬ。おぬしのような塵芥(ちりあくた)でも、わらわは等しく()でようぞ?

――全ての人間に、女王に仕える快楽をやろう。まずは貴様らからだ。この身に抱かれ、我が臣下として生まれ変わるがいい」

 

ワグナスが吠える。

 

「ああ、確かに思い知った。思い知らされたとも。だから我々はここに立っているのだ。

――次はお前が思い知れクィーン!!お前がいったい、何を(もてあそ)んだのかを……!!!」

 

 

――決戦が、始まる。

 

*1
ライトボール

*2
タームソルジャー。剣と盾を持った戦闘タイプのターム




Q. これクジンシーはWP尽きてない?
A. 映画のエイリアンってこれ以上続編作るべきじゃないよね(目逸らし)

次回、ドレッドクィーン戦……になるか?
私、ロマサガはSFC版だけでリベサガもそうだけどリマスターもやってないのよ。ちょっと前に知ったかカマしちゃったけどさ、正直な話こいつのスペックや挙動、設定に至るまで全然知らねーんですけど。何の思い入れもねーぞコイツに。クイックタイム返ししか知らんとすら言っても良い。

大百科とかWikiとか実況動画の情報だけでなんとか出来るだろうか……
出来なかったら全カットして逃げるかもしれにゅ。。。
もし何とかした場合、おそらく奥義捏造乱舞Ver3百花繚乱が吹き荒れる筈です。

地球のみんな―ッ!オラにコイツ相手で苦労したりエピソードとか思い入れのあったシーンとかを分けてくれーッ!!(露骨な感想稼ぎ)
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