新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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色々情報頂けまして、ありがとうございました。
大分固まりました。
とりあえず頑張ってみたけど、ゲーム内で出来るかどうか、効果があるかどうか周りを考察するのは勘弁してね。



山手線vs女王

「さて……まずは軽く撫ぜてやろうか」

 

クィーンがこれ見よがしに、手に持つ杖を振りかぶった。

王冠を被ったドクロをあしらったその杖は殴る為のそれではなさそうに見えるが、そんなものは関係ないとばかりに力任せに振り降ろす。

迎え撃つのはダンターグ。

頭のおかしい剛腕でその一撃をはじき返す。

 

「……ああ?」

 

何か違和感があったかのような声が上がる。

視界の端で、ボクオーンが彼に手を向けているのが分かった。

 

「『金剛力』です!前衛任せましたよ!!」

「なるほどな。ならば遠慮なく……ぶちかますッッ!!!」

 

馬に乗って行うよりも強いという頭のおかしい突撃(チャージ)にボクオーンからのバフが乗る。さらに頭がおかしくなったその一撃は、クィーンの巨体にも負けていなかった。

クィーンの巨体が部屋と繋がっているからか、それを受け止められたと同時に部屋全体が揺れたような衝撃が走る。

 

「うぅぉおおおおらああああああああああああああああああ!!!!」

 

――ドゴンッッッ!!!

 

そして咆哮と共に飛ぶ強烈な追撃。

ハンマーもかくやとばかりに振り降ろされる巨大な騎槍(ランス)がクィーンの顔に直撃した。

 

……いや、直撃していない。クィーンの腕が差し込まれている。ガードが間に合っていたようだ。

攻防に使えそうなクィーンの腕は6本ある。アレを抜いて直撃させるのは随分と骨が折れるだろう。何より、今のダンターグの一撃を受けてへし折れてないほどあの腕は強靭だ。

――しかし。

 

「そのツラに一撃入れたかったんだよ……これはお前が弄んできた人達の分だっ!!」

 

ダンターグをカバーするように動いていたスービエの一撃。

ダンターグの力任せのそれとは違う強い回転を加えた技巧の見える突進はしかし、やはりクィーンの腕に打ち払われた。

 

「女王の寵愛を退けるとは不敬な……うろちょろとまるでハエの様じゃ。

――『動くな』!!」

 

掲げられたその杖から、まるで怨念に物理的な力を伴わせたような、そんな波動が(ほとばし)る。

それは体を突き抜けると同時に、まるで心臓をわし掴みにされたような感覚に陥った。

 

――体が、動かない!?

 

視線で何とか状況を把握しようと足掻く。

視界に写る中で今の影響を受けたのは俺を含めてスービエとボクオーン。

クィーンの杖のドクロ、その相貌が怪しく光り俺たちを睨みつけている。

まるで蛇に睨まれた蛙のように動けない。

 

「――ッッ、っしゃらくせえええええあああああああああッッッ!!!」

「合わせられるかノエル!!」

「無論っ!!」

 

今の影響を躱したダンターグ、ワグナス、ノエル。

人知を超えたアタッカーの猛攻が縦横無尽に吹き荒れた。

この間にこっちをやられるとマズい。それをさせないためのゴリ押しだ。

クィーンがうっとおしそうに捌いている。

 

グイッ、と誰かに襟首をつかまれて投げ飛ばされた。

同じく動けなくなっているボクオーンと衝突し――

間髪入れずにバシャンと頭から術力で出来た水がぶっかかる。

 

「ブハッ!?え、なになになになにっっ!?……あれ、動ける」

「『元気の水』ですか……こんな乱暴な運用初めて見ました」

「火急につき失礼しましたわ」

 

ロックブーケだった。

位置的に遠かったスービエには遠隔で術を掛けている。

硬直から立ち直ったスービエが礼に手を挙げ、そのまま3人の猛攻に参加した。

 

まるで嵐だった。

ダンターグが力任せに騎槍(ランス)を串刺し叩きつけ、その両側面からワグナスとノエルの連撃がまるで呼吸を合わせるかのように放たれる。

そしてスービエは縦横無尽に動き回りながら槍の一撃を見舞っていた。

さすがのクィーンも手数に押され始めているように見える。

 

――考える。

 

「……ボクオーン。『金剛力』って言ったっけ?タイミング見て頼めるか?」

「はあッ!?アンタあれに加わる気!?身の程知らずも大概にしなさいよ!!?」

 

ロックブーケの叫びを尻目に、俺は剣を持った手をトントンと左手で指差すジェスチャーをする。

ボクオーンは一発でわかってくれた。

 

「――なるほど、度胸は買いましょう……好きに仕掛けてください、勝手に合わせます。ただ、当面はチャンス来ませんよ?」

「ああ、わかってる――けど、その時は必ず来る筈だ」

「アンタ一体何をやる気……え、待って!?」

 

視界の先には、怒りの表情で攻撃を受けつつ、しかしそれを物ともせずに術力を漲らせるクィーンの姿。

 

「――うっとおしいわああああああああああッッッ!!」

 

地面が大きく波打った。

砂やら岩やらガレキやらが大量に渦巻き、まるで大波のように押し寄せる。

逃げ道なんてどこにもない。

それは、広範囲かつ大質量の暴力だった。

 

「――いかんっ!」

 

瞬間、黄金に輝く光が壁のように展開される。

大波はその壁に阻まれ一瞬停滞するも、さすがにその質量には耐えられず俺たちの体にぶち当たり押し流していく。

いや、大波じゃない。これはもはや雪崩だ。

全身を走るダメージがデカくて叫び声すら出せなかった。

 

――しかし、相対するクィーンはその結果を見て不満げだ。

 

「天術……『光の壁』か。今のタイミングでわらわの『デブリスフロー』に差し込めるとは生意気な。どこまでも不敬な奴らよ」

 

ワグナスの天術が守ってくれていたらしい。

あの減衰が無かったら今ので死んでいた未来が見える。

 

うめき声を上げつつ全身に活を入れた。

――早急に抜け出せ。早急にだ。埋まってれば死ぬぞ。

力いっぱい藻掻く。運は良かったようで、それだけで地面の上に戻ることは出来た。

 

見回せばちょうど、ダンターグが雄たけびを上げてガレキの海から飛び出し、スービエと共に仕掛け始めている。

そして傍には焦ったようにうごうごと蠢く地面。混乱して上がどちらか解っていないのだろう。

掘り出してやる。

ロックブーケだった。

助かったと緩んだ表情が露骨に歪むが、とりあえずは気にしないでおいてやる。

 

「……他は?」

「多分あの辺……ゴボッ」

 

指さした方向ではちょうど、ボクオーンとワグナスが地上に脱出している所が見えた。

所で、喋ってる所に水ぶっかけるのやめて貰えますか。回復術なのはわかるんだけど。

そして見回したロックブーケの顔色が変わる。

 

「え……お兄様は?ノエルお兄様はどこ!?」

「ぬ?……ッッ!!」

 

彼女の叫びがクィーンに届いていた。

瞬間、クィーンの足元からノエルが飛び出し一太刀を浴びせようとするも、すんでの所で防がれる。

 

「惜しい……奇襲失敗か」

「小癪な真似を……!!」

「なに、せっかく死角を沢山作ってくれたのだから活用しなくてはな?」

 

……今の、ロックブーケが騒がなければ入ってたな。

彼女のそれを理解しているようで表情が歪んでいた。

 

「ええい馬鹿の一つ覚えのように……離れろ!!」

 

クィーンが一喝して紫色の霧を噴き出した。

――明らかに毒だ。

近接していたメンバーが一瞬で飛び退き、霧の範囲外で改めて陣形を組みなおす。

 

「お兄様……申し訳ありません!」

「気にするな、切り替えて行こう。それに……この距離は、お前の距離だろう?」

「!……ええ、その通りです!!」

 

ロックブーケが右手を掲げた。

まばゆい光りが迸る。

上層でタームの群れに見せたあの『召雷』――しかしあの時よりも数段凄まじい、見れば目を痛めるほどの強力な雷の嵐だ。

 

「ぐああああああッッッ!?」

「指定範囲巻き込み型、威力追求した私の全力の『召雷』よ!!」

「合わせよう!!」

 

ワグナスが追従する。

クィーンの四方八方から熱線の槍が突き刺さる。

これまた、タームに見せてくれた時のものより数段凄まじい威力だった。

雷と熱線の合わせ掛けで、もはや毒霧が蒸発している。

 

近づけば手数で押され、離れれば高威力の術法が飛んでくる。

さぞかしクィーンはうっとおしく感じているだろう。

 

「ボクオーンはアレに乗らないのか?」

「いえ、私は――」

 

『冥』の気配。

間合いが離れているにも拘らず、クィーンがその爪を振りかざす。

強烈な怖気(おぞけ)と共に振り抜かれたその攻撃が――

 

――ガギンッッ!!

 

「――私は、こういう役目がありますので」

「……すげ」

 

ボクオーンが翳した術杖(ワンド)の先。分厚く頑丈そうな光の盾がクィーンの爪を受け止めていた。

 

「……ふむ。今ぐらいのであれば『金剛盾』でも間に合いますね。かの女王は、いささか以上に雑な攻撃が好みのようですよ」

「しかし近接だとあの硬い腕が本当に邪魔だな……落とすか」

「そうだな。ダンターグ、どれ落とすかはお前が決めて良いぞ」

「へッ……どーれーにーしーよ―うーかーな、っとおっ!!」

 

獰猛な笑みを浮かべて近接組が駆けて行く。

ダンターグを筆頭に、スービエ、ノエル、ワグナスが物理の嵐を浴びせに行く。

ここで初めて、クィーンの表情に焦りが浮かんだように見えた。

 

――行ける、と思った。

 

ボクオーンに目線を合わせてから俺も動き始める。

そして体に纏わる術法の光……地術のそれでは無かった。

まるで霧に隠れたように俺の体が霞んでいる――これは、水術か。

驚いて視線を上げれば、ムスッとしたようにそっぽを向くロックブーケ。

 

……自分の顔に笑みが浮かんでるのに気づいたのは、走り出した後だった。

 

「――良し、コイツだ!さっきからちょうど目の前でブンブンとうっとおしかったからなあッッッ!!」

 

ダンターグの雄たけびが響く。

バフで強化されたそれが獰猛な勢いで突撃していく。

普通のタームであったならば触れただけでバラバラに吹っ飛んで行きそうなそれが、ただ一点を目がけて急襲する。

受け止めた方も溜まった物では無いだろう。

――さらに後ろから、3人の暴威がなだれ込んでくるのだから。

 

「「「オオオオオオオオッッッッ!!!!」」」

「や、やめよ貴様ら……ウグッ!?」

 

突如、顔面を襲った風の乱流。

気付けばロックブーケがクィーンに指剣を向けていた。

風の術法『ウィンドカッター』だ。

 

――そして、その隙を4人は見逃さない。

 

「まずはひとおぉぉぉつッッッ!!」

 

ザグンッ!!とクィーンの腕が切断された。

重そうな音を立てて地面に落ちた腕から、体液が飛び散っていた。

 

「き、貴様らああよくもわらわの玉体を、っぐああ!!!?」

「叫ぶ暇があるのか?さすが女王、余裕だな」

「さっきは防がれたんでな……改めて入れさせて貰うぞ、お前が弄んできた人達の分を!!」

 

連撃が始まる。

6本の腕が5本に減る。それで引き起こされる防御の減少、そして何より『意識の齟齬』。

いきなり発生した体の喪失感は、腕と言う盾の喪失以上にクィーンから精細さを奪ったのだ。

まるで赤子のように体を丸めて耐えたとしても、百戦錬磨な英雄たちはその隙間を的確に抉って行く。

 

「アア嗚呼ああああああッッッ!!!」

 

ブアアッ!!と2度目の毒霧が広がる。

再び4人が距離を取った。

……()()()()()()()()()()()()()、息を止めて耐え凌ぐ。

 

なぜなら、ここで来るだろうから。

 

「もうよい!!もう十分だ!!貴様ら塵芥(ちりあくた)にはもったいない代物だが……ここまでわらわを怒らせた褒美だ!!

影も残さずに消えゆくがよい!!」

 

クィーンがドクロの杖を振りかざす。

そして――

 

――バシィッ!!

 

「あ……?」

 

『金剛力』付きの力で手から弾かれ、奪われたその杖を呆然と見つめた。

毒の霧に侵されながら、俺はクィーンに笑ってやる。

 

「手癖悪いんだぜ?塵芥(ちりあくた)はよ……塵芥(オレ)が言うんだから間違いない」

「き、っさまああぁああアアアッッッッ!!!」

 

怒り任せにぶん殴られ、俺の体は吹っ飛んだ。

ベキベキと明らかに鳴ってはいけない音が聞こえたがそれでもドクロの杖は離さない。

もはやボロクズとなった俺は、しかしそのままボクオーンの足元に転がりつく。

 

「よくやりましたクジンシー、毒に侵されてもやり切るとは」

 

ボクオーンがドクロの杖を掲げた。

一瞥して使い方が分かったのだろうか、俺達の動きを止めて見せたあの衝撃が迸る。

 

――しかし、クィーンには効果がない。

 

「――どこまでも不敬だぞ貴様ら!!そんなものが女王たる私に通じると思うか!!」

 

クィーンが叫ぶ。

だが、それでもボクオーンの笑みは揺るがない。

 

……ふと、月光のような柔らかい光が俺の体を包み込んだ。

体が癒え、毒が消えて行くのが分かる。

痛みとしびれが淡雪のように溶けて消えていく最中で、俺に天術を掛けてくれたワグナスが言った。

 

「――よく見て置けクジンシー。この一撃は、間違いなくお前のものだ」

 

ボクオーンの掲げる杖に光が集まって行く。

クィーンの顔色が、目に見えて変わった。

 

「なかなか長いこと魔力を溜め込んでいたようですね……なるほど、貴方にはもったいない代物ですが。

――影も残さず消えゆきなさい」

「や、やめっ!!」

 

 

「――『シャッタースタッフ』」

 

 

瞬間、杖から膨大な力が溢れ出て、光と共にクィーンを飲み込んだ。

部屋全体を揺るがす衝撃の余波が、恐ろしい津波となって体を突き抜けて行く。

回避も防御もやりようがない破壊の暴威。

直撃したクイーンが断末の叫びをあげる。

 

そして、ドクロの杖がガラスのように砕け散った。

 

「――杖の破壊と引き換えに、杖に込められていた魔力を全開放する術師の奥の手です。……勉強になりましたね?」

 

いやあ人の杖でコレやるのはとても気持ちが良いですねえ。それが強力な杖だったりすると特に。

そう語るボクオーンの表情は、とても晴れ晴れとしていた。

 

 

 

「――せっかく優しく殺してやろうと思っておったのに……」

 

 

 

土煙の舞うその奥から、クィーンの声が聞こえてくる。

紫色の体がまるで、昆虫が脱皮するかのように割れた。

 

中から出てきたのは黄金の体。

タームが蟻を連想するなら、クィーンのそれはまるで女王蜂のようだった。

羽を振動させ、宙に浮かびながら俺たちを見下ろすのだ。

 

 

「――こうなっては、手加減もできぬ。生命の限界を超えた真の力……見せつけてくれるわ!!」

 

 

それは、恐怖の第二ラウンドの始まりだった。

 

 




なんとか前半戦終了。
ここからが本当の地獄だ……!
クィーン戦は次回で収めたいけど収まるかな??

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