新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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本作がランキングに乗ったようです。
ようやっと燻っていた火種が燃え始めてくれましたありがとうございます。
これでロマサガ小説がより多くの人の目に触れ、そして皆が書きだし、より上質なロマサガ小説がランキングを席巻し、私が自給自足する必要が無くなるって寸法よ……!
既にリベサガ小説がひとつ生まれたのを確認しております。

――次は君の番だ!



山手線は立ち向かう

ワグナスは重く感じてきた剣を握り直す。

詰みに近くなった現状を俯瞰して、こめかみに冷や汗が流れたのを自覚した。

 

水術奥義『クイックタイム』は、もし使えたのなら宮廷魔術師入りも余裕だろうと評価できるほどの大魔術だ。あまねく水に術力を通し、相対時間をズラして世界の時間を遅延させる。

王城にだって、これを使えるものは果たしているのかどうか。

ロックブーケがそれを使えるというのは本当に驚いた。そこに至るまでにどれほどの努力を積み重ねてきたのか想像に余りある。

しかもその理由が、私とノエルに並びたかったからと言うのがまた心を打った。

 

破却され、術力のほとんどを消費してしまった彼女が絶望と無力感で顔を歪ませるが、責めるような気持ちは毛ほども無い。さすがにこの事態は想定外が過ぎた。

相手も『クイックタイム』を使ってくるならまだしも、まさか破却するような方法が存在していたとは。

むしろ術力の温存を考え、これほどの大魔術を今まで安易に使わなかった彼女の判断力を褒めよう。強い力を得たならすぐさま使いたくなるのが人間だ。モンスターとの戦闘経験は少ない筈だが、彼女がこれまで先走り浮足立つ事が無かったのは大いに評価すべきだろう。

 

ちらりともう一人、重要な一手を担ってきた男を想う。

誰よりも力がない事を自覚しながらも、それでも自分の出来る事を探し続けた仲間を。

 

――ミスを発端とした味方の損耗。勝機の喪失。

彼はきっと、そのように考えているだろう。考えてしまっているだろう。

新兵によくある心理現象だ。例え誰もが『そう』考えていなくとも、本人は『そう』思ってしまう。

戦いの場に完璧などなく、正解などなく、あるのはただ結果だけであり、必要なのは『それでも』と諦めない覚悟なのだ。

そもそもあれをミスなどとは思わないが、それでも自分がミスをしたと信じるのならば、『それでも』と勝ち筋を探し続けなければならない。

 

本来はリーダーである自分が指示を出し、その状態でも動けるように導いてやらねばならない。

それを満足にできない自分の無力が恨めしい。

 

――しかし、こんな窮地でも胸を張り、笑って見せるというのが司令官の仕事だ。

動揺が声に出ないように努めながらそれでも勝機を口にした。

 

「こうなったらもう、単発の飽和攻撃しかないだろうな。クィーンはもう2度と地上に墜ちないと豪語しているし確かに可能性は小さいが、一応活路は残っている。

……クィーンの(はね)を狙うぞ。私とノエルで随分痛めつけてやったんだ。随分ダメージは入っているだろうし、そうでなくとも動きに精彩を欠くはずだ」

 

使えるのは私の『太陽光線』、ノエルの『カマイタチ』、そしてスービエの『ウォーターガン』くらいか。何とかして叩き落さなくてはならない。

天の術力を迸らせ、幾重にも熱線を放った。

――クィーンの巨体を支える(はね)はやたらに頑丈だ。だが……必ず限界はある!

 

「堕とした後の余力も残しつつ……か。難しいが、やらなくてはな!!」

「術だけで戦うのは苦手なんだがな……ッ!」

 

ノエルとスービエが私に合わせて無数の弾幕を放った。

術力を纏った剣閃が空を駆け、打ち出された水流が飛沫を上げてクィーンに迫る。

熱線とカマイタチと水流の弾幕乱舞だ。

 

「このような……攻撃などでッッ!!堕とせると、思うなあああああッッッ!!」

 

――当たる。効いている。

放たれる3種の弾幕は、いかに縦横無尽に飛び回るクィーンとて被弾を許した。

やはり先ほどのダメージが顕著に出ているのだ。その動きは精彩を欠き、クィーンの消耗も確かに見て取れる。

 

……しかし。しかしなのだ。

 

地下にあってなお広い、この部屋の巨大さが恨めしい。

地の利はやはりクィーンにあった。

広さがあるという事は、それだけ追い込めずにクィーンの回避を許すという事だ。

 

そして飛び回りながらも、クィーンの瘴気を纏った爪の軌跡が幾重にも飛来してくる。

 

「――ッッッ、あまり長くは持ちませんよ!!」

 

ボクオーンの金剛盾が爪を阻む。

彼の技量も合わさり鉄壁の防御を誇るが、これも消費が激しい術だ。

 

ダンターグがやけくそ気味にブンブンと騎槍(ランス)を振り回していた。

苛立ちを怒声に変えてさらに叫ぶ。

 

「チクショウがァッッッ!!全然飛ばねえッッッ!!おいノエル、テメエのそれ(カマイタチ)は一体どうやってやがるんだ!!」

「力任せに振り回すのでは駄目だ!空に裂け目を作り、術力を使って振り飛ばすんだ!!」

「出来ねえんだよおおおお!!」

 

ロックブーケが剣を構え、しかし何もできずに打ち震えている。

 

「術力が……術力さえ残っていれば、私も援護できたのに……ッ!!」

 

クィーンの行動が的確過ぎた。

ダンターグが完封され、消耗を強制され、実際に戦える人間を限定する事で数の理を覆されている。

「タームの知能は、軍略においては人間の上を行く」――ノエルの言だ。

私はその言葉が示す意味を、軽んじていたのだろうか……?

 

手が足りない。術力が足りない。

せめて後、一手があれば。

 

――無いものを探し続けるなど、司令官失格だな。

自分の思考に苦笑して、一か八か自爆覚悟の範囲攻撃に勝機を見出そうと思った、その時――

 

 

――瘴気を纏った昏い爪が、空に向かって振り抜かれた。

 

 

弾幕に紛れて放たれたそれにクィーンが被弾を許す。

 

「ノーマークだっただろ……?こんなにゴチャゴチャしてたら、いくら空に居るっつってもワザワザ気は使わんよな」

 

クィーンの視線が、みんなの視線が、『そこ』に向けられた。

――驚愕する。

空を睨みつけるクジンシー。その左手が、『爪』を振り抜いた左手が、クィーンと同じ色の甲殻に覆われていた。

 

「きさま……貴様……ッッッ!!わらわの、わらわの腕を!!」

「手癖が悪いと言っただろ……こちとらゴミな塵芥(ちりあくた)だぞ」

 

クィーンが脱皮する前。

猛攻撃にて切断したその腕を、『吸収の法』で取り込んだクジンシーの姿だった。

 

<力を、変化を望んでそれを受け入れれば、体もかくあるように変化する>

 

クジンシーが示唆していた事だ。

よりによってここで、自らの体を以て、証明して見せたのだ。

力を求め、覚悟を以て、異形の左腕を受け入れて見せたのだ。

 

「紫じゃなくて金色になるんだな……『中身が入ってた』からか?『使い方』の方はあんたが使ってる所も、()()()()()()、十分過ぎるほど教えて貰えたよ」

「どこまでも……ッッ!!どこまでも不敬を重ねおるか貴様あああああッッッ!!!!」

「みんな構えててくれよ。引き摺り下ろすからさ……()()()()()()()()()()()()

 

そして再びそれに向けられるクジンシーの手には、もう随分と見た『冥』の予兆が。

 

「安心しろ、ちょぴっとだけだ。俺も相当限界だからさ……

貰うのは……()()()()()()()()()()()()()()()だ……!!」

「や、やめ……ッ」

 

 

「――『ライフスティール』ッッッ!!!」

 

 

クィーンの(はね)が千切れ飛ぶ。

死と恐怖を撒き散らすクィーンの顔に、同じ恐怖の表情が張り付いたまま。

 

見上げたダンターグが呟いた。

 

「その『根性』は尊敬してやる。上出来だぜクジンシー!」

 

――ウオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

部屋全体を揺るがさんとばかりにその雄叫びが響き渡った。

落下してきた巨体の勢いをそのままに、渾身の力を以て振り降ろされた騎槍(ランス)がクィーンを地面にめり込ませる。

 

ノエルが駆ける。

 

「もう絶対に逃がさん……クジンシーが繋いだ最後の勝機!!」

 

全ての力をここで使い切らんと、無呼吸による全力攻撃を嵐のように叩き込む。

全身を切り刻んでいくその乱撃にクィーンが溜まらず叫びをあげた。

 

逆側からスービエが突き込んだ。

 

「お前はもう、ここで終われ!!」

 

体を回転させながら一瞬の内に斬り払い突き抉るその様相は、さながらで自身の体で作る破壊の大渦。

しかして要所を的確に貫く王城無双の槍の冴えは、クィーンから動く力を奪って行く。

 

ロックブーケが後に続く。

 

「術力が無くったってね……できる事はあるのよ!!」

 

瞬間、無数の突きが襲い掛かった。

体を丸めて耐えんとするクィーンのガードの隙間を、体重を乗せた剣筋が針の穴を通すように突き進んで破壊した。

 

「――私の全術力を差し上げましょう。どうぞ、ご遠慮なく」

 

掲げたボクオーンの術杖(ワンド)の先に、水に包まれた巨大な月が浮かんでいる。

大質量の物理攻撃。地術の真骨頂をさらに発展させたかのような合成術が、クイーンの体を容赦なく押しつぶす。

 

そして。

 

そして……!

 

「受けろクィーン。これはお前が塵芥(ちりあくた)と呼び蔑み弄んだ、人間が齎す報復の一撃だ!!」

 

全ての術力を剣に這わせ、紅蓮の光が(ほとばし)る。

その刃の軌跡がまるで無数の蝶のようにきらめき、弔い十字のごとく広がった。

『天』の術力を超圧縮し、渾身の剣撃と共に解放するその技こそ――

 

 

「――『ロザリオインペール』ッッッ!!!」

 

 

開放された術力が破壊を伴い吹き上がる。

猛攻撃に限界を迎え、千切れ飛んだクィーンの断末魔と共に。

 

 

@ @ @

 

 

「何が……報復の一撃だ……

……世界の敵は我らだと思っておるのだろう?モンスターを殺しつくせば、それで世界は平和になると。

……確かめに帰るが良い。私もお前達と変わりは……しない……」

 

消滅していくクィーンを見届け、図らず片膝をついた。

正真正銘、全身全霊の一撃を放ったのだ。とてつもない脱力感が襲い掛かる。

 

……だが。

 

「勝、った……ついに……クィーンを討滅した……!」

 

辺り一帯から消えていく瘴気が、紛れもない勝利を実感させた。

見渡せば、仲間たちも自分と同じような状態だった。

全身全霊による猛攻で、しばらく動けなくなっている。

 

特にクジンシーがひどかった。

 

「ご‥‥‥ごめ……ちょっと、休ませてくれ……」

 

バッタリと大地に倒れ込む彼の姿を見てしかし、それを咎めるものは誰もいなかった。

文句なしの大金星だろう。

……だがそれ以上に、異形となったその左手が痛々しい。

 

「クジンシー……その左手は……」

「ういぅ……まあ、仕方ないだろ、これは……。それに、俺の役目だ。『誰よりも先に吸収し、誰よりも先に変化する』」

 

大地に体を預けながら力なく左手を浮かせる。

 

「それにまあ……この見た目なら、ちょっと変な籠手つけてるだけの様にも、見えるしな……てか、ごめん……なんかもう、嘆いたり強がったりする元気も無いぃ……」

 

ぺちょ、っと浮いた手が地面に落ちた。

 

「ねむい……おなかすいた……のどかわいた……クソ眠い……なんじだいま……」

 

俗っぽい単語の羅列を口から漏らすその様子に、ボクオーンが懐を漁って懐中時計を開く。

 

「……もうすぐ夜明けですね。いや、長い一日でした。正直、このメンツが揃ってなおここまで苦戦するとは」

「ここから更に帰る作業がありますわ。……今私どんな匂いしちゃってるのかしら……お風呂入りたい……」

 

空気が緩む。

クィーンを倒したとはいえ敵陣だ。他のタームがどうなったかは分からないが、それでも依然警戒は続けなければならない状況だ。

……しかしそれでも、さすがに自分も緩んでしまう。

 

瞠目した。

 

「本当はこう言うのは、戻ってから言うべき事ではあるんだがな。

――みんな、ありがとう。

誰か一人でも欠けていたら、おそらくこの勝利は無かっただろう。私は最高の仲間に恵まれた」

 

 

――目標達成、損耗無し。

この日、人類はタームに勝利した。

 




Q. タームって死んだら消えちゃってたけどさ、脱皮前に落とした腕って消えずに残ってるもんなの?
A. それはFFというにはあまりにも進化しすぎていた。3とか4とか、あれくらいのファンタジーが好きだった(目逸らし)

地獄爪殺法の牽制を経て、ライフスティール・ぶちかまし・無月散水・天衣無縫・乱れ突き・ウォータームーン・ロザリオインペールの7連携でした。相手は死ぬ。

実はロックブーケにはファイナルストライク使わせようかなと思ったんですけど、蠱惑の小剣破壊するのもどうかなって思って乱れ突きに留めました。ファイナルレターじゃないあたりに剣の腕の限界が出てる感じ。

原作クジンシーは地獄爪殺法なんて使わないんだけど、話の都合で盛りました。ごめんなさい。
変化した左手は人間形態クジンシーがつけてる籠手みたいなイメージです。
そういう形で帳尻合わせてます。

以上、ドレッドクィーン戦何とか絞り出してみました。
割と説得力ある感じで倒せたんじゃないかなって思ってます……思って良い?
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