やっぱ戦闘シーンとか書いちゃダメなんだよ私は。変に文字数多くなるもの。
3000文字前後の文章にいろんなものをギュッと詰め込める、ランキング上位にいる人たちがマジで凄いと思う。
そういう人たちを意識して、努めてライトに書いてみる。
――最悪のお荷物になっている事は分かっていた。
ワグナスを斬った剣を見下ろして、罪悪感で死にたくなった。
空を舞うクィーンの姿を見て、何も出来る事が無くて絶望した。
……そんなとき、クィーンの腕が目に入って「これしかない」と思ったんだ。
人ではなくなるかも知れないとか、心が侵食されてしまうかもしれないとか、そう言った恐怖は考えている暇がなかった。
皆痛ましそうに俺を見るけど、別に「この身に代えても」みたいに考えてた訳じゃないんだ。
「これならいける」以外の考えが、あの場に
――ああでも、「後悔は後からすれば良い」とは思ったかな。
そして今、正しく後悔している。
もっともその理由は、この人で無くなった左手によるものじゃあ無かったけれど。
@ @ @
フラフラになりながら道のりを歩く。
納得できないのはあの小休止で全員、スタスタ歩けるほどに回復している事だ。
……いや、小休止直後は俺もちゃんと歩けはしたんだけど、城下町までの道のりでその回復した分も燃料切れを起こしたのだ。
「おかしい……お前ら……絶対、体力おかしい……」
「ははは、走り込みがまだ足りないな。その内お前もこのぐらいになれるさ」
走り込み。まあ、足りないのは理解する。
だからノエルとダンターグが何ともないのはまだわかる。ワグナスはもう、ワグナスだからで納得はする。スービエもそれっぽいし。
だが。
「ウソだ……絶対、ウソだ……ロックブーケとボクオーンが、平気な顔、してるもん……絶対なんか、タネあるだろ……!」
「言いがかりね」
「ええ、まったく」
あからさまにスッとぼけるのである。
声色がもう、物凄くワザとらしいのである。
「あのな……今の、俺にはな……お前らが纏ってる、水術の、気配程度なら、なんとか感じる事できるんだぞ……!」
「カン違いね」
「嘆かわしい事です」
「ホンットこいつらはよう……ッッ!!」
ワグナスが堪えきれずにプククと肩を震わせていた。
何これ、俺なんか弄られポジに入ってないか?
やられる方は溜まったモンじゃないんですが??
「……張り詰めた感じが、抜けたな。ワグナス」
「おかげさまでな。随分いい空気を吸ってる気がするよ」
開放されたように笑っている。
……押し寄せるタームに司令官の重圧。
あまりの超人っぷりに忘れていたけど、この二つの要素だけで俺だったら胃が溶け落ちてる自信がある。
ずっとキツかったんだろうな。
そう言えば、あまり笑った所は見た事が無かった。
……やっと、笑えたのか。
ワグナスが、クィーンを倒したときに口にしたセリフを思い出す。
「私は最高の仲間に恵まれた」……こうやって、肩の力を抜いて笑ってくれる程度に気安くはなってくれたようだ。
……俺も、このメンツの中にいるときは結構肩の力が抜けてる気がしている。
弄られるのは勘弁して欲しいし、絶対酒はもう飲まないけども。
――だって、みんな人間なんだ。自分より弱い盾を探して、マウントを取る事に必死になってるアイツらの様な奴らとは違う。
ここにいる奴はみんな、アイツらとは真逆の位置を歩いている。みんなクセがめちゃくちゃ強いけど、でもみんなしっかり人間なんだ。
……約一名、気に食わない奴はいるっちゃいるが。
まあ、うん……それでもな。
ライフスティール完成できたのはロックブーケのおかげだし、言い方キツイけどマウント取って悦に入って人を盾にするような事は全然しなかったし。第一印象よりかは随分変わったのは自覚している。
それに、普通にスゴいやつだ。
一体どれほどの努力を積み重ねて来たんだろうか――そうつくづく思わせる物をロックブーケは持っている。
……第一印象で、人を判断し過ぎていたのだろうか、俺は。
実は周りが見えてなかっただけなんだろうか。
ただ見切りが早かっただけで、実は他の人達も『そう』だったんだろうか。
攻撃されるのがイヤで、関わる事から逃げていたと言われればその通りだ。
だけどこんな風に、印象が変わってくることがあるなら……もすこし、立ち止まって触れてみても良いのかもしれないと思う。
ここにいるとそんな風に感じてくる。
――そんな考えは、ほどなく吹き飛んだけれども。
歓声が響く。
「見事、女王アリを打ち取った、救世主のご帰還だ!」
「七人のヒーローだね!」
「ああ、俺たちの……七英雄だ」
「七英雄!――おお、七英雄よ!」
城下町に入った途端に出迎えたのは、たくさんの歓声と拍手だった。
生まれて初めて味わったそれに、どう対応すれば良いのかわからない。
(――何なんだこいつら……?)
ロックブーケが手を振って応えている。……同じ事をやれば良いのか?
とてもそんな気になれない。
知っている顔がある。
知っている顔があるのだ。
「――ありがとうございます!これで息子の仇を打つ事が出来ました……グスッ、」
北区で万引きやってた親子の、母親の方がワグナスに向かって礼を言っている。
「七英雄に栄光あれ!!」
かつて俺をしこたまぶん殴ってきた『正義の味方』が、盛大に歓声を上げている。
向こうでは俺に嫌な仕事押し付けて来てた前の同僚が、手を鳴らして叫んでいた。
あっちにはあのパワハラクソ上司が喋ってるのが見える。
自慢しているのだ。「私の部下でしてね。ぜんぜん使えないヤツでしたが、ここまで育てるのに苦労したものです――」
……なんだこれ。
アイツら、ちゃんと俺の姿を認識している。
認識した上で、何の罪悪感も抵抗もなく、疑問すら持たずに称賛の声を上げている。
まるで何もなかったかのように。至極当然のことのように。
……ナンダコレ。
王城の兵士たちだってそうだ。
あれほど俺を攻撃してた奴らが、今は「自分の同僚なんだぜアイツ」みたいな顔で笑っている。
俺たちを称える声が、グニャグニャとしたタチの悪いノイズに聞こえる。
拍手をする奴らがみんな、得体のしれない化け物のように見える。
それは何の罪もない筈の、親に寄り添う子供でさえも。
ここに居たくなかった。
頭がおかしくなりそうだ。
でもこんなの、どうすれば良いんだ。
思わず後ずさった俺に「ああ、クジンシー君」と声が掛かった。
まるで仮面のような笑みを付けた『ダレカ』が近寄ってきて、俺の手を取り握手する。
まるで元々親しかったかのように。自分は味方だとでもアピールするように。
「君が出した辞表はこう言う事だったんだね。わが社としても誇り高いよ。……ああ、君の辞表は受理していない。休職扱いになってるからね。事が終わったら、いつでも安心して戻って来ておいで。
――君の活躍に対して手当てが出ているよ。遠慮なく受け取ってくれたまえ」
にこやかに。
ひたすらひたすらにこやかに。
目の前の『ダレカ』が笑っていた。
硬質の感触。
俺の手には――1枚の金貨が乗っていた。
……ナンダ、コレ。
俺は、こいつらの為に戦った事になってるのか……?
あの道のりは、あの戦いは、こいつらの為にやった事になっているのか……?
この左手を含めた俺の選択は、こいつらの為にあったのか……?
こいつらの中で、こいつらがして来た俺に対する扱いや嘲笑は、まったく無かった事になっているのか……??
《も少し立ち止まって触れてみても――》
無理だ。そんなの、出来る訳がない。
真っ白になった頭で俺は、ただ金貨を手に立ち尽くすしか出来なかった。
歓声は、俺の衝撃など関係もなく続いている。
@ @ @
『人間になりたい』
『このシステムから抜け出して人間になりたい』
今までどうすればそうなれるか、全然解らなくてただ変わろうともがいてた。
今は……今はなんとなく解った気がしている。
――それはこの金貨とは、まったく正反対の方向に行く事だ。
後の『
本作のクジンシーの『オリジン』が固まった瞬間です。
これはある種の闇墜ちなんだろうか……?