だって多分、クジンシーは大神官が国政牛耳ってる事も知らんだろうし。下手したらワグナスとノエル以外のメンツにとっては会う機会も無い雲の上の奴だもの。
そうなると最終的に「なんか知らん奴になんかされた」ってなって読者の方が着いて行けなくなる。
でもまあ、こんだけ接点なければ「復讐はどうでも良いわ」って考える奴多いのも頷ける。
時に大神官くん、その性格でよくもまあ神に使える的な立場になれましたね……?
クィーン討伐は、かねてより私の宿願だった。
その為だけに軍に入り、総司令官と言う立場になったと言っても過言ではない。
人のいる場所には必ずタームが襲来してくる。
何千何万と言う民がその被害に晒されてきた。
……ろくでもない世界だが、せめて少しはマシになっても良いじゃないか。
明日食い殺されるかもしれないと、毎日を怯えて暮らすなんてあんまりじゃないか。
だから、タームが消えた先の世界を見たかったのだ。
しかし、そもそもの部分を勘違いしていた。
市井と王城はもはや別世界。王城が市井を自らの盾にし続ける限り王城にタームの脅威はなく、ゆえにクィーンを倒してもここが変わる事は無い。
タームが消えた先の世界を見たかったなら、クィーンを討滅した後に自分は軍をやめ、王城を離れるべきだったのだ。
……そう。
@ @ @
――うあぁぁぁぁっっ!!
響く悲鳴に駆けつけてみれば、そこには倒れ伏した王とそれを見下ろし慄く大神官の姿。
「こ、これは……!?大神官様、一体何が!?」
「モンスターだ……突然モンスターが表れ、国王様を!」
狼狽し訴える大神官の様子に、しかしどこかで冷めた思考で現状を見渡す。
「しかし、神殿にモンスターが侵入するなど、あり得ぬこと……」
この時点でおかしい部分はあった。
と言うか、「ああ、
乱れた形跡の無い現場。モンスターにやられたにしては外傷の見えない国王。もちろんどこにもモンスターの姿など無い。
何より、
「まだ何処かに潜んでいる。だが私は見ての通り、丸腰だ。ワグナス、そなたの剣を貸せ」
手を差し出し私の剣を求めてくる大神官。
これで大体やりたい事を察した。
――ああ、自分が邪魔になった訳だ。
そもそもここは国王を介抱し、兵を呼んで周りを固め、モンスターに警戒しながら安全な場所に避難する所じゃないのか。
この場で唯一戦える自分を丸腰にしてどうするつもりだ。護衛から剣を奪う貴人がどこにいる。
評議会の……いや、枢密院の意に反してクィーン討滅に踏み切ったのがよほど気に障ったらしい。
結果だけを見てみれば、評議会の決定を無視した上で何の損耗も無くクィーン討滅を成功させ、しかもそのメンバーの中で王兵と呼べるものはノエルのみ。他は友達*1と身内*2と外様*3でメンバーを固めて成し遂げた訳だ。今にしてみればなんてメンバーだと思う。
これでは枢密院も国王も面目丸潰れだろう。王城に英雄無しと市井では
で、国王とグルになって私を殺したくなったと。
クィーンを討滅すれば最早私は用済み。代わりに忠実な者を司令官に仕立てても問題はなく、そして私がいなくなれば七英雄も解体。
……随分と乱暴な処理をするものだ。
大神官が「早くせよ!」と催促してくる。
――丸腰の私ならば、大神官の手でも殺しうると。まあ嘗められたものだ。
そして、頭に過ってしまった。
殺されるつもりは無かったが、王城を追われるのは別に良いかもしれない……と。
その先にある、仲間たちとの未来が頭を過ってしまったのだ。
――そして、私は大神官に剣を差し出した。
差し出してしまった。
甘かったのだ。
大神官のドス黒さを、私はなおも甘く見積もっていたのだ。
「ぐあっ!」
よりにもよって、大神官は倒れ伏す国王に私の剣を突き立てた。
「な……!」
「ワグナスを捕らえよ!!」
まるでタイミングを見計らったように駆け付けた王兵に、大神官が指示を飛ばす。
「血迷われたか!?」
「血迷ったのは貴様であろう」
口角を上げながら大神官が筋書きを並べるのだ。
「モンスターとの同化……貴様は禁忌の術法に手を出した。その結果、巨大な力と引き換えに、自我は侵され、蝕まれた」
「……私を……陥れたな」
いや、謀ってたのは分かっていた。
しかし、ここまでやるか。
ここまでやるのか。
クーデターを起こし、その責を私に擦り付けるなどと……!
「国王様を貫いた、この剣が何よりの証拠……もはや、お前はワグナスではない。同化した怪物に意識を乗っ取られた殺人鬼だ。
そして、この事実を知った都の民は思うだろう。
――七英雄は人間ではない。タームを凌ぐ、恐ろしきモンスターと化したのだ、と!」
大神官が狙っていたのは、私の命と七英雄の解体などでは無かった。
自らが名実ともに完全なる王となること。
そして王城外に存在する、自分の思い通りにならない突出戦力を
――グラスをぶつけ合ったあの時の事が蘇る。
ターム討滅の為、私は率先して先を行き、他の者を導いてきた。
自分で選んだ孤独。友はいたが、肩を並べて戦う仲間はいなかった。
枢密院の身勝手に振り回され、現場との間で板挟みになり、それでも被害を少しでも食い止めんと奔走した日々。
……だからこそ。
あの仲間たちと意志を同じくして、肩を並べて戦い宿願を達したのは。
何よりも輝く宝物だったのだ。
――王国のためにではなく、我々の未来のために。
乾杯した時の私の言葉。
奪うと言うのか。
私だけではなく……私の仲間たちから、生きる場所までをも。
「――クィーンを倒した今、私の宿願は叶った」
チェックメイトだ。
私が取れる選択は、もうこれしかない。
「……良いだろう。私の命、貴様にくれてやる」
クーデターは私一人の独断とし、私一人処刑されることで仲間を守る。
「だが……覚えておけ。ノエルやスービエ……他の者たちに危害を加えた時は、その首と胴は離れる。
貴様がどこに身を隠そうとも、必ず見つけ出し……私が、この手で殺す!」
「連れて行け」
負け犬の遠吠え。そう思われたのだろう。
実際そうだった。
私は、その事実を嚙み締めるしかなかった。
――この時の私の判断は、まださらに甘かったのだ。
@ @ @
「ワグナスがクーデター起こして捕まったぁっ!?」
例のバーに集められて開口一番に伝えられたニュースは、寝耳に水どころの話では無かった。
国王はワグナスの剣で刺し貫かれ死亡。大神官が兵を率いてこれを抑え、連行させたらしい。
「そんな、何かの間違いですわ!?」
「まあ、間違いを
政権立て直す上であれほど邪魔なモンはいませんからねと吐き捨てるボクオーンの言い様にスービエが引き攣った。
「そこはクーデターその物を否定してあげようぜ……?」
「あんなとこ、クーデターの1つや2つ起こしたくもなるでしょうよ。もしワグナスがその話持ちかけて来たら私、もろ手を挙げて参加しますよ。あなただって王城に居たくないから出奔してたクチでしょ」
スービエはもはや目を逸らすしか出来ない。
……ただ、ちょっと不思議に思う事はあるのだ。
「ワグナスともあろうモンが、そんな簡単に嵌められるもんかね?それに大人しく捕まってすらいる。
剣が無くてもタームを熱線で穴だらけに出来る御仁だぞ?出てこようと思えば簡単に出てこられるだろ。何だったら術が使えなくても出てこれそうまである」
「……弱みでも握られましたか」
ボクオーンの溜息がバーに溶ける。
ニュースを伝えてくれたノエルは悲痛な顔で口を開いた。
「……ワグナスが出てこようとしていない。それが答えだと思う。あいつは、このまま処刑を受け入れるつもりなんだ。
――そして俺は、それを容認できない」
顔を上げる。
「ワグナスの意思を無視する。俺は、無視して助けに行くつもりだ。そしてそれは、王国の明確な反逆者になるのと同義だ。だから……」
「うっとおしいぞ。要らんだろそんな前置きは」
ダンターグがイライラしたように言う。
「で……今、助けに行くことを躊躇してる奴いるか?」
シンプルで、的を射ていた。
みんな同じ顔をしている。
手を上げる者は誰も居なかった。
「――今の生活も何もかも、失う事になるんだぞ!?」
「バカにしてんのか。判り切ってんだよそのぐらいは。その上で助けに行くってみんな肚決めてるんだろうが」
「そうなんですが……こういうの、ダンターグがまとめると凄い違和感ありますね」
そこは同意で手を上げたかったが、ぶん殴られそうなので止めて置いた。
「……で、処刑のタイミングで掻っ攫う感じだろ?いつ何処でやるかは分かってんのか?」
「いえ、一応ワグナスも貴人に分類されますから。現行法では裁判や手続きがあるから流石に現時点では判らないでしょう。どんなに早くても2週間は見積もって――」
「明後日、アラバカンの丘で執り行われるそうだ」
「何でもう決まってるんですか。もう終わりだよこの国」
しかも早くね?
有無を言わさず事を進める感がスゴイな。
「……じゃあ、決まりだな。それまではとりあえず、逃亡準備だけ軽くやっとくか。ちなみにノエル、その情報ブラフの可能性は?」
「軽く調べた。急ピッチで色々動いているから人員の動きも分かりやすい。本当にアラバカンの丘に動きがあるから、信憑性は高いと思う。
逃亡準備か……サグザーに挨拶は出来ないな。手紙だけでも残しておくか」
……逃亡準備か。
俺は……別にやる事何もないな。
ボクオーンが手を打って言う。
「そうだ!もうついでに、ワグナス助けた足で本当にクーデター起こしちゃいませんか?」
「ええ……?」
――結果、ワグナスが了承したらやると言う事になった。
……え、マジでやんの??この流れで??
最近おもしろ過ぎないか俺の人生。
七英雄の記憶フルバージョン
https://www.youtube.com/watch?v=2WedN-ja20Y
これ見ながら書いてます。毎度毎度お世話になってます。
たぶん私が一番この動画の再生数稼いでる。
それでも再生数18万だってさ。私一人が何回視聴しても物の数じゃないよね。ほんとスゴイ。
……なのに、何でリベサガ小説がもっと出てきたりしないのだろう。。。