そこに有る記述を見ると、どうもモンスターと普通の生き物って狂暴か否かとかその程度しか違いないように見えるんです。人食いザメとか。
何が困ってるって、死体はどうなるのって設定が決まらなくて困ってる。
全部消えるって事にすると、この世界の人達はお肉も食べれず皮の服も着れない事になってしまう。
……もう、消えるのはタームだけって事にしちまおうかな……
一応人夫として短期で働いてるが、これ用心棒みたいなのも並行して押し付けられてる気がする。
あの酒場での一件はそれなりに知れ渡っているらしく、トラブルがあると現場に行かされるのである。
と言うか、本当にいざこざ多いよね。
主な業務は荷物の積み下ろしになるんだけど、血の気の多い奴が外から来ると大体トラブルになってる気がする。何で君たちは常にケンカを売って歩くんですか??
酒場で絡まれた理由が良く分かるよ。俺もアレと同類に見られてたんだ。そりゃあ、何かやらかす前に
……それでもやるのはヤだけどね。なんだよこの蛮族vs蛮族の縄張り争いみたいな構図。
「ぐぎゃあああああああっ!!!!!」
そして今日も悲鳴が響く。
とりあえずなんかこう、特殊な体術に見えるように腹パンと一緒に『ペイン』を流し込んでいる訳だけど。
とにかく俺の腹パンがヤバいって色々噂になっていて、近ごろじゃ『腹パンのジーク』とか呼ばれ始めていたりする。
……その名前で呼び始めた奴に腹パンかましたいんだけどダメ???
こうやって用心棒みたいな働きをすると、人夫長のおっちゃんは良くやってくれたと笑いながら追加手当をくれる。
用心棒は期間による定額が基本と言うお話なので、まあ使いやすくはあるんだろうと思う。通常の人夫代で使われ続けないだけ誠意は持ってくれているように思う。
相場は良く分からないが、なんか正当に使われているっぽいので文句も言いづらいし。
「――しかしなんでまた、こんな物騒かね」
足元でぶくぶく泡吹いてる大男を見下ろしながら、誰に言うともなく呟いた。
確か今日はこれで3回目だ。世の中こんなにバカが多いのか??
「場所柄荒くれが集まるってのもあるけどな。最近魔物が活発化してきてるから腕っこきの需要が高まってんのさ。暴威を示せば金が入ってくる世の中になりつつあんだよ、良くも悪くもな」
人夫長のおっちゃんが、俺の独り言を拾って答えてくれた。
「こういう状況になったら、弱ったトコに付け込んで戦争だって起こりやがる。そうでなくても好景気だと、バカもバカじゃないのもどんどん集まる。ワリを食うのは玄関口って訳だ」
「……ワリ食う前に離れようって思わないの?」
「生憎お駄賃が良いモンでなあ。儲かってるウチは辞めらんねーわな、はっはっは!」
そして今回も俺の手に追加手当がチャリンである。
とりあえず正当に支払われている報酬に目を落として、しかし俺の心中は随分複雑だった。
@ @ @
ヘクターとも顔を合わせる事はそれなりにあった。
香辛料の詰まった、とてもエスニックな匂いのするタルを担いでいる俺を見て、ヘクターが大爆笑かますのである。
「うはははははははっっっ!!おま、お前マジで荷運びやってんの!?!?」
こいつの笑いのツボは分からない。荷運びしてて悪いのか。
視線を戻してそのまま作業を続けたら「スネんなって~」とウザがらみしてくる。
本当、大変にウザい。
「仕事中」
「なんだよー、話すぐらい良いじゃんかよ怒ったのか?」
「ダメに決まってるだろ俺の休憩はまだまだ先だっつの」
「あれ結構まじめだわコイツ」
だってここの労働環境、普通に良いのである。
誰もかれも俺を盾にしようとしてこない。マウント取ろうともしてこない。
……まあ最初のころは一応あったのだが、何処からともなく沸いたバカに腹パン決めたら以降周りはおとなしくなった。
結局、弱きに怒鳴り強気に
同僚がそういう奴らというのはもう割り切っている。何なら追放されるずっと前から割り切ってるまである。
それに、人夫長はそんなでもないし。
「お前みたいな強い奴がよー。まじめな仕事をまじめにこなしてるとやっかまれるぜー?」
「何でだよ……」
「そりゃ、適度にサボれねえからさ。同僚に監視されてるように見えちまうからな。なのに強いから攻撃も出来ねえ」
「それこそなんでだよ。まじめにやるのが前提の契約だぞ。そんなんされる筋合いねえよ」
「……この辺がなんつーか、ボンボンだよなぁ……」
最近、なぜか皆して俺が良い所出の家出坊ちゃんだと勘違いしてる気がする。
平民だぞこちとら。
討伐隊に居た時だって貴族的な暮らしなんぞした事ないわ。
上司にバカにされて同僚には嫌な仕事押し付けられて皆から盾にされてタームに食われかけて、毎日毎日ドロドロになって帰りながら野菜やら肉一切れやらを適当に火を通してパンと一緒に齧って風呂入って寝る、そんな日々を繰り返してたんだぞ。
貴族がそんな生活しててたまるか。
ならなんで今もマジメに働いてるかって?
あのかつての同僚と同じ人間に堕ちろってか冗談じゃないわ。
……まあ、そのへん言っても分からんだろうから沈黙するだけだけども。
「ほら、マジで仕事の邪魔だからサッサと
「やれやれ、頭カチカチなこって……」
両手挙げて降参しながら数歩ヘクターが下がったところで、叫び声が聞こえる。
「サメだーっ!!」
同僚が叫びながら、こっちの方に向かって駆けて来ていた。
その奥の波止場に随分とデカい背びれが2体泳いでいる。
「あーあーあーあー、何に釣られて来たんだよこいつら……あ、おい」
俺は手早くタルを所定の位置に置くと、波止場に向かって駆けだした。
水棲モンスターだからと言って嘗めちゃいけない。こいつら普通に船の上に飛び出して色々被害出してくるのだ。
つまり、ヘクター以上に仕事の邪魔である。
大体、今日の積み荷はスパイスメインだぞ。放っておいたら店の飯がマズくなるか
……まあ、吸収してれば食べる必要ないだろと言われると弱いのだけども。
――気付けばヘクターが並走していた。
「……ほっといて良いんだぞ?金が出る訳じゃない」
「ツレない事は言いっこなしだろ!」
バシャン、と食い意地の張ったサメが一匹こっちに向かって飛び出して来た。
迎撃しようと思ったが、ヘクターが笑いながら加速して背負った大剣を抜き放つ。
「うぉぉらよっ、とおっ!!」
交差法気味に叩き込んだ遠心力を付けた斬撃は、硬い骨を物ともせずにサメの巨体を両断せしめた。
目測、全長3メートル。
あの質量を丸ごと両断するのはかなり難しい筈だが、いとも簡単にやってのけた。
二つに分かれるサメの間でどんなモンだと剣を担ぎ笑ってみせるヘクターである。
「……」
さて、もう一匹。そいつは未だに海から出てこない。
『ペイン』を浴びせて追っ払っても良かったが……ヘクターへの返礼の気持ちもあったのかもしれない。
――俺は自然と、左目に宿る『死神の目』を解放させていた。
波止場や波と言った障害物を超えて、サメの内側に燃える赤い『魂』をハッキリと捉えた。
あの頃のように傷をつける必要も無かった。
ただ、見えているこの魂に向かって手を伸ばせば事足りるのだ。
――『ソウルスティール』
魂から直接奪い取ってしまえば、耐性も抵抗も意味をなさない。
障害物すら透過できるからガードする事すら出来ない。
手の中に飛び込んできた命を握り潰す。
人食いザメはその瞬間に絶命し、プカリと水面に力なく浮かんだ。
パンパンと埃を払うように手を叩く。
一丁上がりだ。
「……人間だけじゃなくモンスターまでバカがいるのか、ここは」
「待て待て待て待て待てオイ、なんだ今のッ!?なんなんだ今のッッ!?」
ヘクターがものすごい勢いで詰め寄ってくる。
やっぱ見せたのは失敗だったかと後悔した。本当、大変にメンドクサイ。
「……隠し芸だよ、ほっとけ」
「いやいやいやいやいや!!済ますなよお前!!今のを隠し芸で済ますな!!」
なお、人夫長に引き攣られはしたものの、今回も追加手当を貰えた。
とりあえずそれを二つに分けて、端数分多めの額をヘクターに渡してやった。
それでもコイツはうるさかった。
幻影クジンシーのつけてる左目の仮面も、吸収によって得た物と言う事にしました。
障害物を超えて生き物の魂を直接見る事が出来る『死神の目』です。
それによって『ライフスティール』が『ソウルスティール』に強化された……的な。
つまり、お披露目会ですね今回のは。
先の展開まだ全然決まってないからそれまではこうやってグダグダして時間稼ぐと思うぶっちゃけ。
所で、ちょっと前に感想で七英雄のそれぞれの
フロム調で末尾に乗せてやろうかって返したんですが、面白そうなんでマジでやってみようと思います。
アイテム名、『戒めの金貨』と『結束のグラス』はそのままパクります(コラ
第1回はクジンシー。
『戒めの金貨』
七英雄の一人、クジンシーが持つ
使うと人間性が回復する
かつて彼を蔑んだ者たちは、彼がゆるぎない功績を立てると
今までの行いが無かったかのようにすり寄り、金貨を一枚送った
この金貨は、クジンシーにとっての反面教師である
決してあのような汚物にはなるまいと、自らを戒めるための