新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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ノエルの灯火のテキストに一文追加しました。あれだとまだ国の為に戦ってるように見えちゃうし。
ノエルって、七英雄側の主人公みたいに設定されてるんですけど主張少な目だから、どうも流されてるタイプの人間に見えちゃうんですよね。
リベサガで描写がいろいろ追加されたみたいだけど、贅沢言うならもうちょっと七英雄それぞれの『オリジン』にも触れて欲しかったなぁ……
いや、リベサガエアプが何言ってんだって話ですが。
もしかして見当違いのこと言ってたりしてね。



新宿は詩を知る

アバロン。

北バレンヌ西端に構えるバレンヌ帝国の首都。

地図で見ると判るが立地がスゴイ。東は北方山脈に囲まれ、西は海が面している。

それでいて平地部分が狭い訳でもなく、街道だけ抑えれば後はそのまま天然の城塞都市と化す。

さすがは1000年もの歴史を持つ国。これだけ頑強ならそら滅びねえわ。

 

「――ところが、そう言う訳でも無くてね」

 

キャラバンの人が俺の呟きを拾って解説してくれた。

 

「確かに北方山脈は天然の城壁だけど、その内側に敵がいないって訳では無いんだ。具体的にはモンスターだね。最近あちこちに巣が発見されていると言う話をよく聞く。

立地上、外の国が攻めてくるようなケースはあまりないのだけれど、アバロンとしては山脈内側の平定と維持に中々四苦八苦しているらしい。

だから、戦力は屈強だし傭兵も需要がある訳だね」

「へぇー……」

 

なかなか勉強になります。

 

「交易の観点から言っても、アバロンは終着点になるからね。海路と陸路が集約するソーモンよりはあまり発展しにくい土地なんだけども……それでも需要があるから栄えてはいるね」

「え?海に面してるし、港があるんじゃないのか?」

「漁業には使えるけど交易には使えないんだ。アバロン港を南下しても山脈だらけで有効な港がひとつもない。南バレンヌ西側の平野が唯一使えそうな海岸線なんだが、あそこはアバロンと違って街道を通す隙間もないほど山脈で囲まれているから内陸側と連絡できる道が一本もない。土地も肥沃とは言い難いし……開拓するうま味がちょっと思いつかないねえ。

それに漁業にしたって、交易で勝てるような何かが取れる訳で無し。なかなか困った海なんだよあそこは」

 

はーん、海があるだけで強いんだろうなと思ってたけど、別にそう言う訳じゃないんだな。

確かにアバロンのある海周辺を見てみるけども、地図上では南バレンヌを過ぎればもうルドン高原に入るし、そこから南は寒冷地。しかも険しい山脈が据え置きだ。

 

「……アバロンから西に向かって新天地、とか」

「ははは、夢のある話だ!航路見つかったらおじさんにも教えて欲しいね!」

「だよなぁ……」

 

誰か挑戦はしていそう。そして帰って来ていなさそう。

今度スービエと顔合わせでもしたら教えてあげようかなこの話。なんかこういうの好きそうな気がするあいつ。

 

 

@ @ @

 

 

「じゃあ、王城に行こうぜジーク」

「待て待て待て待て」

 

サムズアップして歯をキラリさせてるんじゃあないぞ。

 

「なぜにいきなり俺も王城に行く事になってんだよ。俺は神官や貴族と関わるつもりないぞ?」

「貴族はともかくなぜ神官……バレンヌは別に宗教国家じゃないからな?なんか変な思い出でもあったのかお前は」

 

おもくそあったよ。仲間ぐるみで。

口にはしないけども。

 

「アバロンは傭兵も含め兵力は全て王城管轄だぞ。護衛業だって王城が兵力出すんだからな。だから戦闘職やるなら必ず王城で登録が必須なんだよ。俺はそう聞いた」

「ええええ……なんだよそれ、早く言ってくれよ……なら良いよ俺は、市井で荷運びやってるよ。漁業の手伝いとかやってるよ」

「そこまで言うか」

 

ヘクターが見た事ない顔で引き攣っている。

いやでも、仕方ないだろ。

何だったら七英雄(おれら)全員同じ選択するまであるぞ。

イヤだぞ俺。難癖付けられてやってない事追及されて追放されるの。今ならどうとでもなるけど心が痛いじゃんか。

口にはしないけれども。

 

ただでさえ外様の分際で、訓練に交じってジツリキ足りなかったらバカにされたり嫌がらせされたりするんだろ。何でこの仕事やってるのキミみたいな感じで。

いざこざを腕立て100回の罰則に変えるの術で凌ぐのは別に良いんだけど、今の俺実体あるけど幻体だから訓練は身にならねーしやっぱり心は痛いんだよ。

決して口にはしないけれども。

 

ちなみに強要された場合、次の俺のセリフは「ソーモンかえりゅ」である。

アバロン発のキャラバン護衛が王城登録必須なのであれば、ノーギャラのままキャラバンに引っ付いて戻る構えである。

俺が本当に嫌だと思ってるのが良く分かったのか、ヘクターが「しょおおおがねえなあああ!」とガシガシ頭を掻きむしった。

 

「わかったわかった!……まあ、アバロンって町を良く知って、市井に流れてくる王城の雰囲気を察してから決めても良い話の筈だしな。その意味では、俺の方が性急過ぎだって事なのかも知れねえし。無理強いはしねえよ。

……その代わり、王城に来る気があったら必ず俺を通せよな!」

 

こくこく頷いた。

たぶんその日はこないだろうけども。

 

 

@ @ @

 

 

そして、俺はバーの丁稚に収まった。

 

アバロンのバーはソーモンよりも随分治安が良いし、何だったら子供がご飯食べに来るまであるので用心棒兼任と言う事は無い。

まあ、暴力的トラブルが発生したらちゃんと対応するつもりではあるけども。

主な業務内容は荷運び、仕込み手伝い、掃除、たまにウェイター。本当に丁稚の内容である。

俺でも黙々やってこなせる内容なのが実に良い。

 

……で、バーなんでやっぱり顔を合わせる訳である。

 

「――よ!」

「……いらっさいませ」

 

ちょっぴり噛んでしまったのはご愛敬。

 

「おや傭兵さん、ジーク君の知り合いかい?」

「ああ、ソーモンから一緒に来た友達(ダチ)だよ」

 

……。

……友達だったのか、俺ら。

 

固まってる俺の事は気にせずに、ヘクターはカウンターに座ってウィスキーを注文する。

 

「彼、まじめだし色々できるし凄い助かってるんだけど、なんか自信なさげなんだよねえ……元々何やってたんだい?」

「やー、ソーモンで荷運び兼用心棒やってたけど、それより前は俺も知らないんだよなぁ。あんまり語るヤツじゃなくってさ」

「へえ、用心棒。腕っぷしまであるとは恐れ入ったね」

「ソーモンじゃ『腹パンのジーク』で通ってたよ。殴られると、とてつもない悲鳴を上げるほどの激痛が走るらしい」

「そりゃ凄い」

 

あの……そう言うの、せめて俺が近くにいないトコでお願いできませんか。

後ここでも『腹パンのジーク』を広めるんじゃねえよ腹パンすっぞテメエ。

 

内心ツッコミ入れてた所に、トンでもない所からトンでもないボールが投げられるのだ。

 

「ほう……『腹パンのジーク』ですか。確かにソーモンでそんな話を聞きました。お噂はかねがね」

 

ポロロロン、と竪琴を弾いて、キザったい身のこなしで男が一人会話に入ってきた。

緑を基調とした服に身を包む、ヘクターとは別方向に派手な男だった。

大きく膨れた緑のカボチャみたいな帽子にとんがりがニョロっと生えている。

……その帽子どこで買ったの???

 

帽子も気になるが、もっと気になると言うか聞き捨てならない事がひとつ。

 

「……その噂、具体的にどこで聞いたの?もう鎮火するの不可能そう?」

「おや、武勇伝はお好みではありませんでしたか。あなたに腹パンを受けたと思しき方々がバーで集まってグチっておりましたよ。

――失礼、わたくしハオラーンと言う旅の詩人でございます。この手の話には目が無いもので」

「よし、よし分かった。その話広めたら今度は俺は『顔パンのジーク』になって、その最初の被害者あんたになると思うから」

「手遅れかと思われますがねえ……?」

 

ヘクター、とりあえずその爆笑を今すぐやめろそのウィスキー一気さすぞテメエ。

マスターまで一緒に笑っている。いい空気吸ってんじゃねえぞお前ら。

 

「――ご注文は?」

「赤ワインをお願い致します。それと、この地の魚の良い食べ方があればぜひ」

「お安い御用だ詩人さん。美味しかったらぜひ広めて欲しいね」

「おや、私は忖度できませんよ?」

 

軽い冗句を二人でコロコロまわしながら、垢ぬけた所が無いのがなんか、流石と思える。

二人とも『大人』って感じのやりとりだ。

 

「ソーモンには、俺の噂は響いていたかい、詩人さん?この大剣のヘクターの名は?」

 

ウィスキーの入ったグラスを掲げてヘクターが(うそぶく)く。

手元に来たワインをそのグラスに軽くぶつけながらしかし、ハオラーンは苦笑を返した。

 

「あいにく不勉強だったようで。いや汗顔の致す所です」

「ははは、ならアバロンでしっかり名を上げなきゃイケねえな。ジークに負けてはいられんね」

 

特に気に障った様子もなくヘクターが笑う。

……こいつ、器大きいし気風も良いから、俺より噂になってても良いんじゃないかとこっそり思うんだけども。

何よりハデだし。

 

「最近物騒になってきましたからねぇ。そこらかしこでキナ臭い話ばかり聞きます。ぜひともそんな世の中の不安を吹き飛ばす武勇を轟かせて欲しい所です」

「……やはり、モンスターが活発になっているのはここらだけじゃあ無いんだね」

「ええ、悲しい事に。こう言ったモンスターの盛衰は定期的に見られるものではありますが、今回はどうも根が深いようにも思えます」

「ここらの好景気だけが原因ではない、か」

 

マスターもハオラーンも、揃って大きな溜息をつくのである。

 

「伝説の『七英雄』が戻って来てくれれば……なんて、各地でよく聞くものですよ」

 

――ゾクリ、と。

いきなり背筋にツララを突き立てられたような悪寒を覚えた。

 

「……っ、『七英雄』……とは?」

 

聞き返した声は、震えてないと思いたい。

詩人が意外そうな顔を向けて俺に言うのだ。

 

「おや、ご存じない?まあ、古いおとぎ話ですから廃れる所もあるでしょうねえ……

ええ、なれば私の出番でございます。もはや聞きなれた方々も多いかと存じますが、何卒お耳を拝借」

 

ポロロロン、ポロロロン……と、奇麗な調べがバーに溶ける。

活気と酒気でザワついていた店内が、その歌を聴こうとまばらに静かになって行った。

 

 

――そして、竪琴に乗せて詩が語られる。

 

それは遥か昔の詩。

モンスターの脅威に追い込まれ、あわや滅亡の危機を迎えた民を前に、立ち上がった7人の英雄。

クジンシー、スービエ、ダンターグ、ノエル、ボクオーン、ロックブーケ、ワグナス。

彼らはモンスターを打倒し、世界を救った。

そして何処かに消えて行ったと云う。

 

そしてまた、いつの日か彼らは戻ってきて、再び世界を救うのだと云う――

 

 

――竪琴の音が止まると、店内が拍手に包まれた。

ハオラーンが立ち上がり帽子を脱いで返礼している。

 

周りに合わせて俺も乾いた拍手を返しはしたが、内心はもう『とんらん』状態だった。

――ここは、間違いなく元の世界なのだと。

あの王城のあった世界と、ワグナス達と共にタームのクィーンを討滅した世界と、確かに地続きの世界だったのだと。

 

……クジンシー名乗らなくてホントに良かった。めっちゃ有名になってんじゃねえかよ。

その思考すらも『とんらん』の内だ。

 

「――久々に聞いた詩だなあ。やはりどんなに名を上げても、『七英雄』には敵わねえ」

「おやおや、諦めるのは早いと思いますけどね」

「はっはっは!」

 

こっちは口の中が渇くぐらい動揺してるのに、ヘクターたちは呑気なものだ。

 

「……その、詩……出所、何処なんだろう?」

「はい?」

 

思わず聞いてしまっていた。

 

「あ、いや……その……武勇伝、好きなんだろ?ソーモンの俺の話を知ってたように、七英雄はどこにいたのかなって」

「ははあ、そう言った疑問を持たれたのは初めてですねえ。……私の子供の頃よりそのまた前から、ずっとずうっと語られるおとぎ話です。七英雄の出身なんて気にもした事ありませんでしたが……そうですね、もし私が旅の過程でその地を踏んでいたらと思うとワクワクしますねえ」

「七英雄ゆかりの地とか、やはり伝わってないのかい?」

「あいにく聞いた事もありません。ただ……遠い東の地には、古い遺跡がいくつも見つかっているという話を聞きます。それらがもし七英雄と同じ時代の物であったなら、とか考えるととてもロマンを感じますね」

 

……。

……遠い、東の地。

 

再び喧騒に包まれる店内の中で、俺の心中は随分深く静かに沈んでいた。

 

――そこに、求める答えはあるのだろうか。

遺跡があるという東の地に。

 





ハオラーンはただの吟遊詩人です。
ちょうど良い名前を持って来ただけであって、別にエロールなんて別名を持ってる人ではありません。……今の所は。何だったら今回限りのモブかも知れんし、うん。

資料として、こんな話を見ながら書いてました。
https://togetter.com/li/1493233

確かにアバロン、海が目の前にあるのに海路ないよねと思って目からウロコ。
って言うかアバロンに港の描写が無い。さすがにあの立地なんだから魚のひとつふたつは取ってると思いたいんだけどどうなのそのへん、リベサガでは。

今回のお話で地域的なのが解らなかった方は上記記事からワールドマップをご参照ください。
範囲広いから前回みたいに地図を書くのは辛かったんよ。。。



『完全なる天秤』

七英雄の一人、ボクオーンの持つ灯火(トーチ)
使うと人間性が回復する

支柱に剣と歯車の意匠がある、黄金の天秤
この天秤は現実には存在せず、しかしボクオーンが目指した物である

彼は律の深奥を求め、しかして現状に絶望した
故に今もその道を探り続けている

もう、うんざりなのだ
神官貴族の都合でその重きを変える天秤は
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