新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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文字の装飾に手を出してみた。
……私にはまだ、荷が重いかもしれない。


新宿はねむれない

アバロンではこんな詩が唄われている。

 

――アバロンに英雄あり。

比類なき戦帝レオンに、雄々しき皇太子ヴィクトール。

二天の剣は一分の隙も無く、麗しきアバロンを守り切る。

 

――アバロンに影の盾あり。

その姿は誰にも見えず、誰にも聞こえず。

しかして確かに存在し、アバロンに仇なすモノを刺し貫く。

 

おお、堅牢なるアバロンに永久(とわ)の栄光あれ。

 

 

……ちなみに、唄ってるのはハオラーンである。

 

「……英雄と盾の動詞逆じゃねえか。盾が刺してどうすんだよ」

「そう言う、互いを補ってる感を強めるエスプリの効いた表現なんですよ説明させないでください恥ずかしい。

あ、影の盾さんちーっすwww」

「最近、もうそろそろそのツラに一発入れても許されるんじゃないかって本気で思えて来てんだが」

「それでも一発入れないであげてるあたりがジーク君だよねえ」

 

各々好き勝手言いやがるのである。

本当に好き勝手言いやがるのである。

 

ヘクターが真昼間からウィスキーを傾けて言った。

 

「言っとくけどな、レオン帝は既に認知済みだぞ。王城貴族と関わりたくないって頑ななお前の事を気遣ってくれてるだけだからな」

「何で俺が関わりたくないトコまで知ってるんですか?」

「めっちゃ喋った」

「顔パンしたいヤツ多すぎなんだよなこのバーはよお!」

「貴族の策謀を受けて潰されて追放されたって話を聞いたら、「あー……」ってなってた」

「何でその話浸透してるんだよ!?」

「私がめっちゃ喋ってますね」

「ア゛ア゛嗚呼あああ゛ああアアああ゛あ゛ああ!!!!!!」

 

俺そろそろキレて暴れても許されんじゃないのか!?

 

「……この辺の戦略情報マップ作って無償で王城に渡したり、休みの度に一人でモンスター間引いてたりしたら、そりゃあねえ」

「国に邪険にされた身でありながら、我々を助けてくれるその心意気と恩にはぜひ報いたいのだがなあ、ってレオン帝がグチってた。なんか良い方法ないだろうかって結構相談来る」

「そもっそも何で俺だってバレてんだよ!?アレェ!?俺絶対ここで(こぼ)してたりして無いよな!?!?」

「コイツバレてないつもりだったらしいぞウケる」

「そして今マヌケが確定しましたね」

「んああアアああア゛ア゛嗚呼あああ゛!!!!!!」

 

もう慟哭しか出てこない。

俺もうそろそろアバロン離れようかな。

でも北東のアレがホントアレだし……3年頑張って何とか『霧がくれ』的な事は出来るようになったし……

アレを何とかしたらマジで余所行こうかな本当に。

 

「あ」とヘクターが両手を叩いて、

 

「学校作って貰うとか良いんじゃねえかな。この辺ワリと平定されて来たし、そもそも計画自体はあった訳だしよ」

「なるほど、誰にとっても嬉しい話だねえ。ジーク君も、何かここを離れにくくなりそうだし」

 

なんで余所行こうかなって真剣に考え始めた瞬間にこんな話が出て来るんだよ!?

しかもなによ「離れにくくなりそうだし」って!?そんなヒドイ確信犯ある!?

 

「っつか、ハオラーン(おまえ)もいつまでアバロンに居るんだよ……時々3か月くらい離れはするけどあっさり帰ってきたりしてさ」

「いやあ、インスピレーションが無くなったらだいたい次に流れたりするんですけど、ここにいるとジーク君がとても面白くて」

 

今『俺が』っつった????

 

「よその町行って君の話を唄うのですが、なかなか評判良いですよ。もう最近は君の話を唄うためによそに行ってるまでありますね」

「はああっ!?

 

おまっ、おまっっっ……

 

はああああああああっっっ!?!?!?

 

それはおよそ人類が思いつく限り最もタチの悪い嫌がらせだぞホントマジで!

 

俺がもはや抗議の声も出せないくらいパクパクしているのを脇に、なんか竪琴を取りでしてポロロロロンとかやり始めるのである。

 

 

――民を守ると心に誓い、王の元へと馳せ参じ。

鍛えに鍛えた術と技、まさに守護神もかくやのいでたち。

しかしてそれを妬むは老害、あはれ貴族の贄となり、国を追われる若き英雄。

 

遠きアバロンに流れ着くも、正義の心は未だ消えず

清貧のままに暮らしながら、それでも彼は剣を取る

 

黄金の籠手は正義のあかし、仮面の左目なにを見る

おおアバロンの盾よ幸いなれ!

 

 

ふっざけんなアああアアもはやどこの誰だそれは!?!?!?

美化どころの話じゃないぞオイイイイイ!?」

「とっても評判が良かったですよ。ほら」

 

ハオラーンが促した先でヒューヒューと囃し立てながら手を叩く客の群れ。

フザけんな。マジでふざけんな。

おもっくそ特定されてんじゃねえか。

つか最悪だコイツ。容姿まで唄の中に含みやがった。

個人情報への配慮が欠片も見当たらない。

 

「――個人情報?面白い概念ですね。ハハッ!」

 

許されるんじゃないかこれ??

『ペイン』無しなら本気でグーパンしてももう許されるんじゃないかこれ??

 

「おかげで客足ずいぶん伸びてて有り難い限りだよねえ。まあ、ジーク君にそのあたり聞くのは無しって言うのが暗黙の了解になってるけどさ。

そもそもお客さん、こう言った私たちの会話を遠巻きに眺めてる方が面白いと思ってるトコあるし」

「悲しみが……!悲しみが、止まらない……ッ!!」

 

その後、マスターがこう言うやり取りやら各地への唄を期待して、ハオラーンに定額報酬を払っている事を聞き俺は目の前が真っ暗になった。

味方がどこにもいないのである。

 

 

@ @ @

 

 

――夜。

バーの営業終了まで居座り続けたヘクターが、ちょっと歩かないかと珍しい誘い方をしてきた。

 

この時間になると、町はもう殆ど人気が無くなる。

とても静かになったアバロンを、とてとてヘクターの後ろに続いて歩く。

 

「学校の件さ。一応本気で進言してみるつもりなんだよ俺。そもそも本気で計画が進んでたのは小耳に挟んでいたし、最後の一押しにはなる筈だぜ」

「……マジメに気にしてたわけ??レオン帝も??」

「お前の功績がそこまで強いって事だ。定期的に無償で情報が更新されるモンスター情報マップだぞ。しかも悪魔やらゾンビやらは積極的に討伐してくれてる。アバロンが兵を出してやってる事を、市井の人間が一人でやってちゃそらそうなるわな」

「……王城の顔潰してるって事だぞ。それ」

「あいにくそう言う考え方しないお人なんだよなあ、レオン帝って方は」

 

ヘクターは随分とこの国の皇帝を気に入っている。

腕が達者で戦に関しては厳しいが、大きな器を持ち常にアバロンの発展を考えている。

司令官としても優秀で、迷いなく剣を預けられる人だと、いつか言っていたのを覚えている。

 

足を止めた。

 

「……で、作るとしたらここらになるらしい。この森切り開いて開発するんだと。もしかしたら人足募集出るかもな。人も集まって来てるし」

「もう作る事確定してんじゃないか」

「そう、計画だけは出来てんだよ。いつやろうかってのが全然決まってなかっただけで」

 

人足は……やっても良いけど、普通にバーで安定してるしどうしようかな。

ぼんやりそんなことを考えるあたり、なんか間違って来てる気もしてるが。

 

「凄いよな、ジークは。王城の外に居ながらにしてコレだもんな。俺も、レオン帝に気に入られちゃいるが……これほどの名を上げるには如何すりゃ良いか」

 

……一瞬その顔に出たのは、劣等感か。

昔から良く知っている。

ヘクターが口にするそれは、俺がずっと持ち続けている物だ。

 

「……ヘクターは、怒って良いと思う。全部ハオラーンが悪いだろ」

 

心の底から本心だった。

なんならヘクターの勇猛こそ喧伝して欲しい物だ。

そのヘクターがケラケラ笑ってる。

 

「いんや?そこについては俺は納得しているぜ。……あれはうん、唄にしなきゃダメだろ。あっはっは!」

 

俺は本気で勘弁して欲しいんだけど。

 

「それにさ。相手が相手だ、抗議する気も起きねえって。

 

 

……そうだろ?七英雄のクジンシー殿

 

 

――呼吸が、止まった。

体が硬直していう事を聞かなくなる。

呆然と立ち尽くす俺を見て、ヘクターが「正解」とからかうように苦笑した。

 

「なん……なん、で」

「あ?いや、カマかけた」

 

続くまさかの返答に、全身が引き攣ってしまう。

自分で認めてしまった。

苦笑じゃ押さえきれなくなって、ヘクターが腹抱えて笑っている。

 

「お前、流石にちょっとどうかと思うぜそれ。言っちゃなんだが学のない脳筋傭兵だぞ俺は。手玉に取られんのはダメだろ」

 

何か言いたいが、口がパクパク動くだけで言葉が何も出てこなかった。

 

「『シン』と『ジーク』でどっちがカッコいいか、か。安直過ぎだよなー。まあ、それ聞くだけじゃあ連想は出来ねえし、良い偽名だとは思うぜ、うん。

……安心しなって。たぶん気付いてんの俺だけさ。()()()()()()()()()()()()()()()()、オレだけのハズだしな。ジークが良いと思うまで誰かに言うつもりもないさ。めっちゃ言いたいけど。

……つか、七英雄の詩を聞いた時の反応とか、いっぱいボロ出してたしなあ……俺が何も言わなくてもバレそうな気さえするぞ。ほんとに隠したいならほんとに気を付けとけよお前」

 

ひとしきり笑ってから、ヘクターがまじめな顔で向き直る。

 

「本題なんだけどさ……お前がアバロンに来た本当の理由、教えてくれないか。すごく大事な事なんだ」

 

ヘクターが、しっかり俺の目を見て、そう言った。

その真剣さに思わず戸惑いながら視線を泳がせる。

……でも、誠実に応えたいと、そう思った。

 

「俺、別に嘘ついてないんだ。古い歴史を探しに来た……アバロンが一番古いから。そこは間違ってない」

「……なんの為に?」

「復讐」

 

ヘクターが少し、息をのんだのが分かる。

 

「嵌められて、異世界に追放されたんだ。……で、何とかして帰って来た。だから今はその復讐のために動いてる」

「それが……アバロンなのか?」

「いやあ、ないない」

 

そこはきっぱり否定してあげた。

たぶん、ヘクターが心配してるのはそう言う事なんだろう。

 

「ええと、幾つか説明しないと良くわかんないよなコレ……

当時、人類滅亡レベルの異常気象が目の前に控えていたんだ。それに対する王城の回答が、『他の次元に逃げる事』だった。俺達はその別次元に逃げるための装置で、さらに別の次元に追放されたわけ。

――必死こいて帰って来てみたら異常気象の名残はどこにも無く、しかし七英雄の詩だけは残ってた。だからここは、異常気象を乗り越えた後の世界のハズなんだ。……そしてだからこそ、かつての王城に居た連中はとっくに逃げた後のハズだ。

俺は、今踏んでるこの地が当時のどこに当たるかも知らない。だから歴史が古いアバロンで昔の記録を調べて、まずは当時の国がどこにあったかを調べたかった。最終的に、逃げた奴らに辿り着くために」

「……そう言う事だったのか……」

 

ヘクターは、普通に信じているらしかった。

俺の言葉を何一つ疑っていないらしい。

 

「つまり七英雄の目的は、かつての王たちがどこに行ったか探る事なんだな?」

「……どうなんだろうな」

 

ちょっと曖昧にへらっと笑う。

 

「大神官がクーデター起こして王を殺したから、俺達が追ってるのは正確には大神官な訳だけど……復讐を考えてるのはある意味ワグナスだけで、俺とノエル、ロックブーケはそれを手伝ってあげたいって感が強いとこはある。……いや、ノエルはもうちょっとわだかまりありそうだけど。

ダンターグは……なんかもうどこまでもダンターグだし、スービエは「手伝ってやるけどそれはそれで好きなように生きるわ」みたいなとこあるし。

ボクオーンは……どうなのかな。大神官というよりむしろ、王城の仕組み自体を憎んでたような節がある気がする。一応手伝ってはくれるけど、復讐心あるかって言うと……どうだろうな。

そもそも大神官と会った事あるのワグナスとノエルだけで、正直顔も知らんヤツ憎むのも何と言うか……続かないんだよ。

それでも俺が手伝ってるのは、ワグナスが復讐に拘るのが『仲間を傷つけられたから絶対に許せない!』って言う、俺達を基準とした理由からだったからだ。あの件で一番ワリ食ったのがワグナス自身だって事もあるけどな」

「……じゃあお前は、復讐とか別に良いのか?」

 

恐る恐るとヘクターが口にする。

……俺は、どういう表情をしていたか自分で分からなかった。

 

「――正直、関わりたくない。あんな汚物、見るのも嫌だ。

俺は王城も、あの国に生きる人たちもみんな、みんな大嫌いだ。だから正直、『勝手にしてろ』としか思ってない。死のうが生きようがどうでも良い。

……でも、仲間が望むなら話は別だ。だから俺はそのために動いてる」

 

――そうだ。

自分の目的は無いのかとか、人に言われて民を手に掛けるのかとか、仲間なら説得しろよとか、きっとこれを外から見たら言いたい放題言われる事だろう。

だが、そんな大儀だなんだはもう俺の心には何も響かない。

……仲間の力になりたい、それだけだ。

なぜなら七英雄(あそこ)こそが、俺が『人間』で居られる場所だったから。

 

ヘクターの目が苦渋と共に閉じられる。

 

「……俺が、本来ただの与太話と切って捨てるような話だった『お前が七英雄の一員説』を持ち上げたのには、明確な切っ掛けがある。

 

――ヴィクトール運河が、武力によって封鎖された。モンスターと武装集団による制圧だったらしい。

 

そしてその首魁として……七英雄の一人、ボクオーンの名前が挙がっているそうだ

 

 

@ @ @

 

 

『仲間のために戦う』――ああ、それに偽りは無い。

 

だが、だがしかし……

 

 

俺は、ヘクターと戦えるだろうか……?

 

 





動き始めました。
宝石鉱山で鉱夫もさせたかったんだけどな。
ちょっと持って行きにくくなっちゃったよね。

そして今回で七英雄の灯火(トーチ)もラストです。
ロックブーケの灯火(トーチ)に対してツッコミが薄かったのが随分意外でした。せっかくリベサガのアイテムそのまま持って来てたのに。
さすがにアレはちょっと苦しかっただろうか……『蠱惑』とは言わんもんな普通は……

最後のは誰が見ても、文句のひとつすら出て来る隙間もなく完璧にフロムのテキストであり、ダンターグを表現しています。
コイツだけどうするか悩んだけど、いやあ我ながら惚れ惚れするぐらい完全なテキストが作れたよね。








『ダンターグの剛体』

ダンターグとはダンターグである


 
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