新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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運河要塞のヴァイカー君、リベサガでは固有キャラに昇格してたんすね。
動画見つけてみましたけど、ボクオーンへの忠誠心を感じる良いキャラになってました。
ハゲで目に傷っぽいのあるけど理知的な所も感じます。

いいよぉ~、そう言うキャラいると導入しやすいし、動かしやすいからキミ、すごく良いよぉ~。
じゃあヴァイカー君、目線こっちに投げて自己紹介から行ってみよっか……



新宿はわからない

「ヴァイカーだ」

 

 連れて行かれたその先に、威圧感のある男が佇んでいた。

右腰にメイスを下げ、左腕に大きめのガーターを携え、黒い武骨な鎧に身を包んでいる。

剃り上げた頭にも目が行くが、両目についた傷がひときわ目を引いた。

昨日俺に絡んで来たスキンヘッドなんかよりもよほど格上感がある。

 

「俺は……ジークだ」

 

「聞いているとも。『腹パンのジーク』……酒場では随分な自己紹介をしたそうではないか?」

 

 その呼び方にとてもゲンナリした。

そろそろアレか。名前とか変えなきゃダメなのか。

 

「ふむ、『腹パン』はお嫌いかね?」

 

「好きだと思う??ホントに??」

 

 俺の質問を受けて、ヴァイカーの視線が値踏みするように細められる。

 

「ならばもう一つの方を名乗れば良いではないか……そうだろう?

――アバロンの『影の盾(シャドウガード)よ」

 

「ねえちょっと待って絶対またなんか変な尾ひれ付いてるでしょ初めて聞いたぞそのルビ」

 

 ――ジャキッ

 

 周りに立っていた奴らがそれぞれ武器を武器を取った。

それを見回して、思わず気が遠くなるのを自覚する。

 

 これ……これ、アレか。

マフィアが尋問するヤツだ。

いきなり攻撃してこないあたり、俺のアクションを見極める気はあるらしいけども。

 

 ――グルルルル……

 

 低い唸り声を上げながら、ヴァイカーの後ろにあった檻から赤く、大きなトカゲがのっしのっしと這い出てきた。

そのままヴァイカーの隣に侍り、瞳孔が絞られた爬虫類の目で餌でも見るように俺をねめつける。

 

 ヴァイカーが腰をおろして、鱗に覆われたその背を撫でた。

 

「――紹介しよう、パイロレクス*1のキャサリン*2だ。()()()()()()()()()()()ので、いささかグルメになってしまった。

もう一体いるのだが……彼*3はどうやらおねむのようだね。だが流石に、血の匂いを嗅げば凛々しい姿を見せに来てくれると思うよ。

――その時、キミにまだ意識が残っていればの話だが」

 

 とてもねっとりした口調でそう語るヴァイカーの姿はもう、間違いなくマフィアだった。

キャサリンがもう待ちきれないとばかりにフンフンと鼻息を荒らし、その度に小さく火が吹き出ている。

 

「――本題と行こう。この運河要塞に何用かな?」

 

 凍えるような殺気が部屋の中に充満している。

変な事を言えばそのまま死、と言う事なのだろう。

……とは言っても、俺としては正直に言う他無いんだけども。

 

「ボクオーンと、話がしたくてさ」

 

ビシッ!と間髪入れず、眼前にヴァイカーの持つメイスが付きつけられた。

 

「言葉に気をつけろよ小僧……ボクオーン『様』だ。貴様の様な木っ端が軽視して良い方ではない。話がしたいだと……?狡辛(こすから)く七英雄の名に擦り寄りでも来たか俗物が……!!」

 

 ヴァイカーの顔は怒りに満ちていた。

突きつけられたそれをぼんやりと見つめながら、後を続ける。

 

「……擦り寄る、か。

正直さ、俺もどうしたいってある訳じゃあないんだよ……確かにアバロンで友達出来たし。酒場で丁稚やるの、それなりに楽しかったけど。

そんなのもちろん、他の皆にもあるだろうワケで……立場変わっちゃうのも仕方ないよ。

それでもさ。

俺がもしかして緩衝できるなら喜んで骨折るし、そうでなくても手伝いたいって思うじゃん。ヘクターに剣向けるような状況になるの辛いけど、どっちか取れって言われたら俺はボクオーンの方取るよ」

 

 ――ゴガッ!

 

 メイスの強打を頬に受け、少しばかりよろめいた。

結構、力入ってたな。これは脅しとかによるものじゃなかったらしい。

思った以上に俺にダメージが無いのが見えて、ヴァイカーが目を見開いている。

しかしすぐさま驚愕を消し、眉根を寄せて俺を睨みつけるのだ。

 

「ボクオーン『様』だ!さっきからどこの視点で口を開いているつもりだ貴様……!」

 

「落ち着きなよ。

……あんたがさ。七英雄の名前とか力とか、そう言うのでボクオーンに従っている訳じゃないのは何となく解かるよ」

 

「なにをッッ!!」

 

「だってそうだったら、あんなの置いてないでしょ」

 

 俺が指さしたのはヴァイカーの傍の棚。

大事そうに飾ってあった、黄金の天秤だった。

 

 いつだったか見た事がある、ボクオーンの『オリジン』。

その支柱には歯車と剣が意匠として組み込まれている。

 

 七英雄なら誰しもが持つ道標。

ボクオーンのそれは、本来存在しないものなのだそうだ。

しかしボクオーンはそれを目指し続けるがゆえに、それは『灯火(トーチ)』として機能し続けているのだと。

 

「……知っているのか。あの天秤が、何なのかを」

 

「うん……いやまあ正確には、それを見せて貰った事はあるけども。天秤の意味する所は教えて貰えなかったんだよな。「あなたには意味の無い物です」って。

……でも、あの天秤がもともと存在するモノじゃないのは知ってる。

ボクオーンが作ったのを受け取ったんだろ?

あいつは、力だの名だのに擦り寄って来た奴に、そう言う配慮する奴じゃないからさ」

 

「……」

 

 『様』をつけろと訂正するメイスは飛んでこなかった。

ヴァイカーは俺を睨みつけたまま、しばらく沈黙を守っていた。

 

 やがてメイスを降ろし、手を振って周りを囲んでいた奴らを下がらせる。

彼らは困惑した表情を浮かべるがしかし、特に何を言う事も無く素直に部屋から引いて行った。

 

 ――バタム、と扉が閉まる音が響く。

 

「……貴様、ボクオーン様の何なのだ」

 

「仲間だよ。……今だって、そうだ」

 

 そう言い切った。

……もしかしたら向こうはそう思っていないかもしれないと、少し頭を過ったりもしたけれど。

 

(あかし)を見せろ」

 

「……(あかし)?」

 

「ボクオーン様の仲間だという(あかし)をだ!!」

 

 まるで意地を張るように、信じたくないとでも言いたげにヴァイカーが声を荒らげる。

 

 ――考える。

そもそも第3者に解かるような(あかし)なんて持って居る訳では無いけれど。

 

「決定的な証拠とは言えないけど……『誠意』レベルで良いのであれば」

 

 俺は右手に幻体の灯火(トーチ)の金貨を造り出し、それを親指で高々と弾いた。

 

 

 

――『本性解放(リバース)

 

 

 

 金貨にヒビが入り、砕け散った。

『疑似的な灯火(トーチ)の破壊』をトリガーにして、俺の体が吸収してきたモンスターのそれに置き換わっていく。

 

 額には二本の角が生え、足は消えて蛇のごとき尾になり、体は赤く、そして巨大に膨れて行く。

『冥』の瘴気が体を覆い、触れた空間に陽炎の様なゆがみを生み出していた。

 

 ……誰だってこの姿を見て、俺を人間だとは思わないだろう。

俺の姿を見たキャサリンが、「キュウキュウ」と小さく声を上げて後ずさりをしている。

 

……これで良いか?

 

 その声はくぐもり、しかし何かに反響するように怪しく響いていた。

ヴァイカーが息を飲んで俺の体を見上げている。

 

「それが……それが、お前の真の姿か」

 

……そうでもあり、そうでないとも言える。

詳しく説明できる気がしない……解釈は任せよう

 

 『自らの在り方』を定める灯火(トーチ)を破壊する事で、内包していたモンスターの体を表に出した状態がこれだ。

正体と言えばそうだが、じゃあ人の体が偽物なのかと突っ込まれても口ごもるしかないし。

もう、見た奴が適当に判断すれば良いと思う。

 

 この状態になったばかりだと精神的に少し不安定になる。

意識の中に灯火(トーチ)を浮かべる事で正常を保つ事も出来るのだが、例えばヤジロベエをつつくのと同じで、一度揺れると安定するまで少し苦労するからあまり頻繁に使わないのだ。

デカいからあちこちぶつかって不便だし……

 

 ここは人様の執務室であるからして。

何か壊したり変な事しない内に、俺はもう一度灯火(トーチ)を眼前に浮かべて人間の形に体を戻した。

 

 ……この状態でも左目や左手みたいな『人と違う部分』が出来るのは仲間内でも俺だけだが、これはこれで便利なので特に対策していない。

 

「……『腹パンのジーク』……『ジーク』……まさか!七英雄の『クジンシー』か!?」

 

「そうなんだけど、『腹パン』のトコ忘れて貰う訳にはいかんすか」

 

 どうせ無駄なんだろうなぁ、と思いながらそれでも懇願せずにはいられなかった。

案の定、ヴァイカーはそんなこと気にすら留めていないのである。

 

「アバロンを守る盾が七英雄の一人だったとはな。……ボクオーン様を止めに来たか」

 

「だから違うって!話をしたいだけなんだって!……俺さ、そもそもボクオーンがここに要塞作って何をしたいのかとか、そう言うのぜんぜん聞いてないし解ってないんだよ。だから、まずはとにかく話がしたいんだ」

 

 こっちの話は届いてくれたようで、ヴァイカーは唸るように瞠目する。

そして天秤のある棚に近づくと、俺達七英雄が灯火(トーチ)に向かってそうするように、ヴァイカーは天秤をじっと見つめた。

 

「ボクオーン様は深謀遠慮を秘めたお方。いかな七英雄の一人と言えど、貴様の様に学が無さそうで暗そうで覇気の無さそうな人間に、そのお考えを理解出来よう筈がない」

 

「……すごいディスるじゃんか……どうせ、その通りだよぅ」

 

「否定しろたわけ。そもそも貴様、この天秤が如何なるものなのか聞いていないと言っていたが、考察の一つぐらいはしたのか?」

 

 ……え、あれ、なんか俺怒られてる……?

びくびくしながら首を横に振る。

そもそも、存在しないものにエピソードなんてある筈も無いし。

 

 これ見よがしに「チィッ!!」と舌打ちされるのである。

とてもこわい。

俺にとって、マフィアちっくに囲まれるより、こういう考えとか仕事に対してダメ出しされることの方がずっとこわいのだ。

思わずおなかのあたりが痛くなってくるのだ。

 

「良いか。この歯車は『正確に動き続ける仕組み』を意味し、この剣は『例外のない執行』を意味するのだ。そして黄金とは、いつまで経っても錆びず、常に輝き続ける不変にして至高の象徴とされる。

――この天秤はつまり、『完全なる律』を現しているのだ!!」

 

 まるで神に仕える神官のように、その身心を伝える説法のように、ヴァイカーは両手を広げて声を上げた。

 

「……。

 

……あの……その……えと……

 

……ハイ」

 

 そして響く、ものすごい勢いの「チイイイイイィッッッッ!!!!!」である。

とてもとてもこわい。

目の端に涙が浮かんで来たような気がする。

 

「……この天秤が、ボクオーン様にとって魔術的に重要な意味を持っている事は存じている。しかしながらもはや、この天秤は()()()()()()()()()()()()()()()()

計画は困難極まりなく、そして果てしない。現状はまだスタートラインにすら辿り着けていない。ともすれば私の代で完遂する事も難しいかもしれないが……それでもいずれ、この天秤が(あまね)くに掲げられる日はきっと来る!」

 

「いや、あの……その目的と計画のとこが知りたいんだけども」

 

貴様の様な目先の実利しか見えぬものに理解出来る筈が無かろうがあっっ!!

 

「んぴいいいっっ!!」

 

 肩が竦んで跳ね上がる。

帰りたい。なんかもう、とても帰りたい。ってか、逃げたい。

 

 ヴァイカーがそんな俺を見て「ええい、このようなものがボクオーン様と肩を並べられるなどと……!」とメチャクチャ憤っている。

 

 これ、アレだ。

討伐隊に入った当時のロックブーケが俺に向かって当たり散らしてたのと同じやつだ。

俺ぜったい悪くないよ何でいちいち俺にあたるんだ。

 

「……ひとつだけ教えてやる」

 

 イライラをそのままに、吐き捨てるようにヴァイカーが言った。

 

「見る者が見れば、ボクオーン様が国の樹立を狙ってるようにすら見えるだろう。

だが……完全なる天秤には、そんな物は要らないのだ!

神官も、貴族も……国でさえも!

『完全律』が成れば、そんな下衆の様な概念はこの世から消えて無くなるのだ……!」

 

 ヴァイカーが何を言っているのか、俺にはついに理解できなかった。

だが彼にとって、それこそがボクオーンを信仰し、身を賭してその意思を完遂するに足るものなんだと言う事だけは何となく見て取れた。

 

「……あとは、自分で聞くが良い。貴様の脳みそで理解出来るとは思わぬがな。

――マイルズへ行け。今ならまだ、いらっしゃる筈だ」

 

 それがどうやら、俺の次の目的地らしかった。

 

*1
SFC版爬虫・両棲系Lv9のモンスター。ほぼ他のファンタジー作品におけるサラマンダーの認識で差し支えない。SFC版運河要塞の実質ボスと言えるほど強い。

*2
6歳、メス。とてもヤンチャざかり。……ご待望の女キャラですよ(ニッコリ)

*3
リザードのモートン。5歳、オス。ごめんね、キャシー(愛称)はもう、彼のものなんだ……




 きっと今頃は、オアイーブがレオン帝に突撃掛けて追い返されてを繰り返している時期です。
今ボクオーンとか名乗ってる奴の意図を読み切るために各地の情報集めたり体制作ったりでクソ忙しいんだよ空気読めお前。

 セリフの前後にも空行開ける書き方を見たので、今度はそれも導入してみる。
スマホとかで見るなら、むしろこう言うのの方が見やすいのかもしれんすね。
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