新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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 この話を書くにあたり出陣メンバーを軽く調べてみたんですが、猟兵女のテレーズってヴィクトールとデキてたという設定があるらしいっすね。
 私の中でテレーズと言えば、ニコニコ動画において毎年正月にヒドイ帝国をおっぱいにブン投げて暴れまくるおまんじゅうの事だったんですが、へーそうかそうか君ヴィクトールとデキてたんだ。
 ならテレまんじゅうは流石に使えんけど、恋仲はそのまま使おうかな……


おわりのはじまり(中編)

 玉座に座り腕を組むヴィクトールの表情は、いつものそれとは違い随分と険しかった。

その心中がとても良く分かるジェラールは、いやな予感を振り払うように首を振る。

 

「……父上は、もしかして弱気になっているのだろうか。あんな怪しい話を保険にするなんて」

 

 ヴィクトールの心中が漏れた。

ジェラールが返す。

 

「どうだろう……ダメで元々、程度の気持ちだったのかも。

ただ……これがもし本当であるならば、あの女の中身はもっと年を経た『何か』なのかもしれない」

 

「なに?……そうか、あの女の言う『伝承法』とやらで中身が受け継がれ続けているのなら、そう言う事もあり得るのか。

はるか昔から受け継がれてきた魔導士の当代という訳だ。

 

……遥か昔……

 

……まさか、七英雄の生まれた時代から、ずっと……?」

 

 口にしたそれが荒唐無稽すぎて、「さすがに無いな」とヴィクトールが吐き捨てた。

そもそも『伝承法』自体が眉唾以前の代物だ。

……しかし、それでも行き掛けに見せた父レオンの表情が、妙に頭にへばりつく。

 

「きっと大丈夫だよ、兄さん。アバロンの選りすぐりのメンバーなんだ。

本当だったとしても、『伝承法』の出る幕なんてないさ」

 

「……ああ、そうだな」

 

 そう言って、ヴィクトールは玉座に深く座り直す。

 

 言わずと知れた武帝レオンをはじめとして。

大剣で右に出る者のいない流れの傭兵ヘクター。

剣・槍を使いこなし、ヴィクトールの稽古相手をも務めた技巧派軽装歩兵ジェイムズ。

遠近サポートに回復術までこなす、オールラウンダーの猟兵隊隊長テレーズ。

そして全ての攻撃を打ち落とし、全ての攻撃を受け止めてみせる歩く要塞、重装歩兵ベア。

 

 ――彼らを前に、止められるものなどあるものか。

例えそれが、音に聞く七英雄であってさえ。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 

 ボクオーンの開放体は、モンスターのそれに近くはあるものの、他の異形系メンバーと比べれば比較的小型と言える。

まるで容易にへし折れてしまいそうな華奢な手足。

ツノを携え髭を蓄え眼窩も暗いが、その顔に威圧感は無く。

緑の衣を纏う体はまるでマッチ棒のようにヒョロヒョロとしている。

 

 しかし、彼はこの開放体を気に入っていた。

容姿で侮り無策で間合い(テリトリー)に入り込んでくる輩はそのまま彼にとってのカモに化けるのだ。

 

 後は単純に、小回りが利く。

人の世で人に交じって活動しても、容姿以外の不便な部分は見当たらない。トゲトゲした巨体だとそうはいかないのだ。

 

 ――だからこそ、『一人二役』のもう一つの顔として便利に働く。

北バレンヌの様子が凪ぎ、そろそろ南バレンヌへの進出が見え始めたため運河要塞の状況を見に来たボクオーンは、開放体のままだった。

つまり、『ボクオーン』として視察を進めている。

 

 対応するヴァイカーは周辺の状況や運河を通る荷の種類や頻度、麻薬の浸透具合と言った情報を資料化してプレゼンしていた。

 

「ふむ……大体北ロンギットには噛めたようだな」

 

 この姿では、性格や口調も少し変わる。

それも一人二役に都合が良いので、敢えて矯正せずにいる。

 

「は。そろそろ輸送と情報の規格化に着手し始めて良い頃かと。

しかし大々的に行うと流石にアバロンに勘づかれますので……」

 

「うむ、匙加減が難しい所だ。……さらに新しく会社を作って、そちらで運用する方法もアリだが……そろそろ武装商船団とか言う奴らに飴を与えても良かろうて」

 

「開発中のコンテナ船ですね。しかしある意味、余計な手間を掛けているようにも見える手法です。その価値を理解できるかどうか……」

 

「向こうにも数字が分かる頭を持つものは居よう。プレゼン次第というだけだ。

しかし……情報商材の方はまだ彼らには扱えぬだろうの」

 

「恥ずかしながら、こちらは私もまだ持て余しております……今少し研究の時間が頂ければと」

 

「うむ、要は浸透すればよいのだ。バラバラに扱う事になっても当面は構わん。

だが、まあ……大体2年ほどで形にはして欲しい所だ。『アレ』にもそう約束してしまったしな」

 

 ヴァイカーが不意に沈黙した。

ボクオーンが口にした『アレ』が何なのか、容易に想像がついたのだ。

 

 ――そして、自分に知らされていなかったもう一つの事実にも。

 

「……ボクオーン様。

いえ、おそらく……()()()()殿()

 

 顔を上げたボクオーンの暗い眼窩が、何処か暗く見えるヴァイカーの顔を映した。

 

「ふむ……クジンシーが開放体を見せたか」

 

 特に気にする様子もなくボクオーンが言う。

周りに誰かが居たら流石に咎めたが、ヴァイカーはいくら何でもそこまでバカではない。

 

 だが。

 

「私は……信用できないでしょうか?」

 

 縋るように顔を上げるヴァイカーに、ボクオーンは思わず妙な頭痛を覚えた。

 

「なんか、良く分からん拗らせかたしとるな貴様……

何が気に入らぬ。一人二役を黙っていた事か?

貴様に言っても言わなくともさして変わらぬ機密事項なら、信用の有無に関わらず言わん方が良いと言う勘定は想像出来ている筈だが」

 

「しかし……あの小物は知っておりました」

 

 気に入らないというか、本当に拗ねているらしい。

なんでこんな事になっているのかボクオーンは真剣に分からない。

 

「……初対面の奴にまで小物と評されるのかアレは。

……まあ、そこは普通に諦めよ。そもそもどれだけの付き合いだと思っておるか」

 

 七英雄を名乗る前からの付き合いである。

 

「そも、アレがなぜ七英雄を名乗れているのか。……お情けか何かで入れて貰ったような、学も能力も無い男です!」

 

 ボクオーンはそれを聞いて思わず目を細めた。

それは、クジンシーが嫌いな『その他大勢』達と全く同じ物言いであったからだ。

王城のころから彼は嫌われ者だった。

いくら何でも、それを現代まで引きずらなくても良いのにと思う。

だからあの小物ムーブ辞めろといつも言っているのだが、直りゃしないのだあの小物は。

 

「……低能力が気に食わぬか?」

 

 ボクオーンは少しばかり、フォローしてやろうと思った。

 

「貴様、クジンシーの開放体を見たのだな?」

 

「は。無駄に図体の大きい、手と頭のある赤い蛇のようなモノでした」

 

「という事は。()()()()()()()()()()()()()()()()()という訳だ」

 

「?……はい。その通りですが」

 

 首を傾げるヴァイカーである。

 

「――という事は、だ。ヴァイカー。もうアレは貴様の『魂の姿』を覚えたハズだから、この要塞の外に居るままにして貴様の心の臓を止められるぞ?何なら私すらもな」

 

「……は……?」

 

 あまりに斜め上なセリフが出てきてヴァイカーは固まった。

 

 『死神の目』

クジンシーがそう呼んでいる、魂を捕らえる悪魔の目。

人間形態では意図して開放しない限り魂は見えないが、開放体では常時解放だ。ヴァイカーの魂の姿も覚えただろう。

 

 そしてあの目は、その気になれば物体すら透過して魂を捕らえる事が出来る。

実際どれほどの射程があるのかまでは詳しく知らないが、弓矢で射れる範囲ほどは対応できるとボクオーンは聞いた事がある。

 

 要塞の外から魂を見て、それが誰か識別出来たらピンポイントで生命力を簒奪して終了だ。

回避も防御も出来ない。

無法も良いとこなのだ、あの『ソウルスティール』は。

識別の必要すらないなら、要塞内にいる魂を無差別に刈り取って行く事だって出来る。

 

「さらに言うと……私が一人二役するのに使っている『天秤』。あの基礎理論を発想したのもアレだ。この『完全律』は前々から私が考えていた宿願ではあるが、この『天秤』についてはアレが居なければこの世に生まれる事も無かっただろうな。

……ククッ……そもそもアレが居なければ、我ら皆クィーンにやられてとっくの昔に肉団子か」

 

 ああ、要所要所で重要な働きはしていたのだ。低能力は低能力なりに。

ボクオーンはちゃんとクジンシーを評価しているつもりだ。

 

「のう、ヴァイカー。確かに私も低能力者は嫌いだ。虫唾すら走る。

……だがそれは、それらが大体にして怠惰であり、それでもなお当然の権利のように余所の資源を簒奪しようとするからだ。自らの努力も無しに、敗北主義のごとき身勝手な理屈を掲げてな。

アレは、クジンシーは、確かに低能力者だったが怠惰では無かったぞ?貴様から見たアレは怠惰であったか?」

 

 ヴァイカーの脳裏にクジンシーの姿が、声がよみがえる。

 

 

《俺がもしかして緩衝できるなら喜んで骨折るし、そうでなくても手伝いたいって思うじゃん》

 

《……俺さ、そもそもボクオーンがここに要塞作って何をしたいのかとか、そう言うのぜんぜん聞いてないし解ってないんだよ。だから、まずはとにかく話がしたいんだ》

 

 

「……いいえ。少なくとも、怠惰では、怠惰のままで居ようとは、しておりませんでした」

 

「ヴァイカー、貴様の考えまではとやかく言うつもりは全くない。主義主張は勝手にしていれば良い。

……だが、一方的に見下し続けておると()()()()()()()()()()恥をかくぞ?あるいは、恥だけで済めばよいが。

例え低能力者でも、怠惰でさえなければ、いずれ低能力者(そう)では無くなるのだからな。……それでも、いつまで経っても行動が小物のままなのは理解に苦しむが」

 

 そう語るボクオーンの姿には、どこか仲間に掛ける気安さのような……そんな『信頼』や『実感』が見えた気がして、ヴァイカーは「……はい」と答えて視線を伏せた。

 

 

 

 ……そんな折である。

ふと、外の方から喧騒が届いて来た。

ドタドタと駆けてくる足音の後に、扉が開く。

 

「ヴァイカー様!火急にて失礼いたします!」

 

「ム……何事か?」

 

「敵襲です!現在門前にて交戦中ですが……勢いが止まりません!」

 

 ヴァイカーが一瞬、ボクオーンと顔を合わせた。

このタイミングは偶然なのだろうか……よりによって首魁、ボクオーンがここにいるタイミングで?

 

「――敵の数は?相手が何者かは分かっているか?」

 

「は!敵の数はわずか五名、されどその力はこちらの戦力を物ともしておりません!

 

……相手はバレンヌ帝国、武帝レオンを含んだ精鋭部隊です!!

 

 

そしてちょうどその時、強固な運河要塞の正門が破られたのである。

 

 




 感想返しにもいくつか書いたけど、今週は感想返しも執筆も不定期になると思います。

 さて、ついにやって来ちゃいましたバレンヌ精鋭部隊vs運河要塞(ボクオーン付)

 なお、突入ついては「妙な奴が出入りしている」というタレコミを仕入れた上で敢行しているのでタイミングは狙われていた設定。
何ならこれで首魁に届くやもと画策していた訳だけど、実際帝国からしてみれば最悪のタイミングです。レオン時代に運河要塞正門突破ボクオーン付なんてクソゲーというレベルではない。
状況再現でも使わない限り正門すら突破できる筈がない。

 ……でも出来ちゃうんだよなぁ!物語補正入ってるから!!




 でも、それが良かったのかどうかは全く別の話なワケで。
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