新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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ノエル「ワグナス!!ついに作者の筆が失速したぞ!」
ワグナス「作者め……3日に一度なら無理なく進められるとか言っておきながら!」
ノエル「……実験的な発言ではあった。あれを詰問の根拠にはできまい……」
ボクオーン「わかっておったろうにのうワグナス」
ワグナス「ボクオーン」
ボクオーン「もともとクジンシーにのみ焦点を当てる筈だったこの小説において、未来の話の整合性をつけるためわしにも焦点を当ててしまい、風呂敷を広げざるを得なくなったのだ。ノリで書いていた作者の頭で整合性などつけられるものか」
ノエル「では、このまま失速がエタに変わるのを黙ってみていろと言うのか!」
ボクオーン「そうじゃ。それが何を書いても完結まで駆け抜けた事のないクソ作者に書かれたキャラの一生だ」
ワグナス「Pixivの小説を見て、こういう書き方なら完結させられるかもしれないと息巻いておいてか――」
ロックブーケ「ノエルお兄様!風呂敷の閉じ方を知らない作者がまた話を広げようとしているわ!!」
ノエル「よし!」
ボクオーン「行くのか?」
ワグナス「……あいつは理解しないぞ?」
ノエル「続きはダンターグが壊しちゃいました、って言わせるだけさ」


無理だった。
たたみきれない。
もう、ひろげる、しか

……ダンターグ……



恵比寿は価値が分からない

 人間、数千年も生きれば『吸収の法』を使っていようといまいと大体価値観は変わるものである。

例えば10年後、自分がどんな考え方をしているのか、どんな生活をしているのか想像できる者は比較的少ないのでなかろうか。

10年でそれなのだから、数千年もかければ何をかいわんや。

 

 しかし、クジンシーの見出した『灯火(トーチ)』は10年前の、千年前の価値観を想起する事が出来る。

重要なのは、例えばそれはゲームのセーブ&ロードのようなものとは似て非なる点だ。

『あの時の気持ち』を鮮明に思い出すことは出来るが、かといって『そうあれかし』と決めるのはあくまで自分自身。灯火(トーチ)はあくまで灯台の光に過ぎない。

 

 例えば長い時を経て、信じていた物が、頼りとしていた物が、つまりは『価値観』が、捨て去るべきものだと判断したならば――灯台の光から少し外れて進む船のように、『そうあれかし』と決める事が出来る。

灯火(トーチ)にはずっと記録されたままだが、今の自分からは捨てる事が出来る訳だ。

『捨て去り方』をちょっと小賢しくすれば、本性解放と言う手札にだってする事が出来る。

 

 ……まあ色々言ったが、なぜか灯火(トーチ)の存在が無くとも大神官はきっと何千年たってもああいう感じなんだろうなあという不思議な信頼はある……

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 スービエの場合、『物』に対する価値観が永い時を経て消えている事を自覚していた。

それは例えば自身の『誇り高き魚鱗』の様に、『誇り』や『記憶』のトロフィーとして以上の価値に意味を見い出せなくなったと言えば良いのか。

 

 さもありなん、大神官により人の営みから弾かれ、そこには異世界がらみの云々があったとしても、一言『異常』で括れるような地をさ迷っていたのだ。数千年。

 

 ――『仲間』と『歴史』。

いささか抽象的な言い方ではあるが、結局最後にモノを言ったのはそれだった。

不要とまでは言わないが、カタチのある物品など、長い時間の中で一時浮かんで消える泡沫のような物だ。

 

 ……スービエのみならず、七英雄全員俗世から切り離したような達観した思考はどこかに持っている物である。

もともとそう云う思考をしていたケがあったのは否定できないが。

 

 

 さて、それが何を示すかと言うと。

 

 

 ――スービエが気分でサルベージした財宝類は、それを見つけるまでの『歴史』を証明したトロフィーとして以上の価値は無いため、テキトーに人にくれてやったりしても何ら痛痒は無いのである。

それは例えば、嵐にあって遭難したのを助けたついでに結構な量をブン投げたそれも例外では無いのだ。

 

 

「――クソッ!!覚えていろよ貴様ら!!俺のバックには、あの七英雄のスービエが居るんだ!!」

 

 

 ギャロンと名乗ったその捕らえた海賊は、いかにも小物くさいセリフで吠えた。

それがどうにも現状とちぐはぐに思えて、エンリケは怪訝な顔で睨むのだ。

 

 ――ハッキリ言えば、エンリケがたまたま護衛隊に入っていなければ敗北もあり得た状況だった。

民間船団が航路を横切る事はそれなりにあるし、敵船が積んでいた砲は射程も長い最新のやつだった。

第一撃を渡していたら随分危うかったと思う。

敵船団の速力と風向きを計算して、丁字有利を取られて致命的になるギリギリ手前で鼻先に砲撃を入れられたのがほぼ勝因と言っていい。

 

 それはつまり、交差航路に向かってただ直進する『だけ』の船団を早々に敵認定したエンリケの判断の賜物と言って良いだろう。もちろん一発目から誤射ではなかった。

普通はもう少し慎重に確認したいと思うものだ。

 

 さて、それなりに手札(カード)が揃っていた敵船、特別優秀でもないが別に無能でも無かった指揮……しかしマニュアル通りのコンビネーションしか出来ない練度、そして捕まえた船団長と思われる人物がどうも雑魚に見えて仕方がない。

 

 ――つまりは多分、新興海賊(ルーキー)

しかし装備が見合っていない。最新砲を積んだ船が3隻だぞ?

しかもこんな、背中がちっちゃそーな奴を長として荒れくれが集まるものか?

 

 男が口にした「スービエがバックにいる」と言うのはワリと信ぴょう性があるように思えるのだ。

 

 ギャロンが何かに気付いたように叫ぶ。

 

「――居るんでしょスービエ様!?見ているんでしょう!?助けて!!助けて下さいスービエ様ああああッッッ!!」

 

「……あ?」

 

 ギャロンが見ている方向に視線を向けてみれば、海の上に何かが浮いていた。

それは小船の様にも見えるし、今まさに扱っている1つのコンテナにも見える。

距離があってエンリケには見えなかったが、その船には曳航用のロープが括りつけられている筈である。

 

 ……なんだアレ。いつからあった?

その疑問は、直後の声に塗りつぶされた。

 

 

 

……流石にお前、それは無いんじゃあないか?

 

 

 

 ――全く意識していない所からの声。

全身の毛が危機感で逆立ち、反射的に大きく飛びのいて声の方向を確認する。

抜いた手斧の向こう側に居たのは。

 

「な……なんだお前はッッ!?!?!?」

 

 その声は、エンリケと同じ反応が出来た数名の部下の内の1人。

だが、その場にいた全員の心境を代弁していた。

 

 3mほどはあるだろうか。

腕を組んでこちらを見下ろす、青い長髪と青白い肌の漢であった。

刺青を入れた引き締まった筋肉質の美丈夫ではあるが、しかし明らかに人間ではない。

下半身が二本の足ではなく、蛸の様な触手になっていた。

 

 何より肝が冷えたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()

どうやらその柔軟かつ自在な触手は、無音による移動も容易いらしい。

こいつが一体いつからいたのか、エンリケは全く分からなかった。

 

「す……スービエさまぁっ!お助けくださいっっ!!」

 

 ……こいつが、スービエ?

幼い頃から聞く伝説の七英雄の名に、しかし明らかにモンスターと言えるような容姿に、思考が一瞬理解を放棄する。

 

 そして名を呼ばれた当人の表情は、目に見えて歪んでいた。

 

「……ギャロン。俺は確かにお前を助けたが、お前を部下にした覚えもお前の世話役になった覚えもないぞ?

何より、海の上で力に訴えて力で負けたのだ。それが全てではないか」

 

「そ、そんな……ッ!?!?」

 

 ギャロンが慄いている。

 

 一応、海の道理は解る奴らしいとエンリケは感じた。

そして見た目に反して結構理性的だ。服着てないのに。

手斧を持つ手を降ろしながら、それでも臨戦態勢は解かずに睨みつける。

 

「――俺の船に何の用だい?」

 

「すまんな。実はさしたる用も無いんだ。

ただ、たまたま陸地を目指していたらたまたま見た奴の船と気配を見つけて、しかも俺の視界でおっぱじめた。おまけに相手は良く分からない船を護衛した船団と来た。

……こういう展開を目にしたら、運命みたいなモノに呼ばれていると。そう思ってしまうタチでな」

 

 臨戦態勢を取り続けているエンリケ達に対し、そんな物は涼風だとでも言う様に余裕を見せるその姿。

穏やかに口角すら上げて見せるのである。

 

 ――覚えがあった。

まるで、ナイフを突きつけられながらも「それが?」と全く意に介さなかった、テミウス(あの男)と。

 

 スービエの目が細められる。

 

「……そう、さしたる用はない。無かったんだ。しかしやはり、俺は呼ばれ、導かれている様だ」

 

「ああ……?」

 

 疑問の声に返すように、スービエがエンリケの襟を指し示す。

そこにはリーブラが発行している、天秤の意匠をしたピンバッジが付いていた。

 

「『完全なる天秤』……まさかこのような形で拝めるとはな。どのような繋がりかは知らないが、お前はどうやら私の仲間と関係があるらしい」

 

 リーブラのトップは、ボクオーンである。いや、リーブラの……と言う言い方は正しくないかもしれないが。

とにかくそこが発行している意匠は、この男にも所縁のある物品らしい。

 

 渇いた喉が、ごくりと唾を飲み下した。

 

「あんた……本当にスービエなのか」

 

「そうだとも。七英雄がモンスターの如くなのが意外だったかな?

……生憎俺らからしてみれば、人間もモンスターもさして大きな違いが無いのでね。

 

――さて、勝手ながら同行させて頂こうか。

なに、同船までは及ばない。ギャロンに貰った『カバン』もまだ使ってはいるのでね……自分で泳いで付いて行くとも。

行きがけの駄賃だ、襲ってくるモンスターの方は俺が追っ払ってやろう」

 

 返答を聞かずにスービエは、するすると触手を器用に使って船から()()()行った。

そう、()()()()()()のではなく()()()行ったとしか表現が出来ない。

船体をするする伝って、着水の水音や飛沫も大して立てず、何の気負いもなしに、まるで自分の部屋に戻るかのように。

 

「……化け物か」

 

 見た目でそれは、解っている筈である。

潮風が首を伝う汗を冷たくしていた。

 

「お頭……」

 

「連れてくしかねえだろ。アレに砲撃入れても倒せる気がしねえ。……『カバン』とやらは壊せるかもしれないがな」

 

 見れば、先ほどの浮いていた小さな船の近くでスービエが首だけ出して笑っている。

 

「それに……どうも俺達の敵でもなさそうだ。いくらか()()はするかも知れねえけどな」

 

 自分たちの及ばない所でコロコロと転がされているような、そんな得体のしれない居心地の悪さを感じて、エンリケはピンバッジをいじりながら苦々しく歯噛みした。

 

 ギャロンの首でも刎ねれば、多少でも気晴らしにはなるのだろうか……?

 




 ロンギット通商連合が出来てから、ロンギット海の輸送を取り仕切っていた武装商船団の地位が相対的に低下してしまったのがギャロンの悲劇。
このため武装商船団を乗っ取るのではなく、コンテナ護衛団を一度任務失敗に追い込み、そこに自分達が参入して輸送周りの権利を乗っ取ってしまおうと言うマッチポンプ計画だったがあえなく失敗に終わる。

 最後まで引っ込めてりゃ良いのに襲撃直前に海賊旗を出したのは、あくまで襲ったのは海賊であって自分達とは違うよという言い訳に使うため。

 それでも武装商船団は感付いてヘイトを向けてくるだろうが、任務失敗で無くした地位と周りの買収によって、発言力のある自分たちと嚙みついてくるかつての栄光に縋りつく者たちと言う構図を造り出し、それを潰す事で最終的に通商の発言権を盤石にしようと言う、割と小物らしからぬ計画を立てていました。

 敗因、エンリケ。

 ――って言うのを作中で説明しなきゃイケナイのに出来る気がしなかった。
だって私バカだもん。


 ……それじゃあ、後は頼んだぜ……ダンターグ……!
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