なんで、私はまた連日投稿しているのだろう。
――嗚呼、筆が、また――
トバ発の陸路キャラバンが最近、ゲテモノを扱い出した。
タコの干物である。
と言うか、タコとかイカとか、なんか『吸盤のついた触手を持ってる奴は見た目がキモいほどおいしい説』がまことしやかに語られ始め、最近のリーブラは海産物とその干物が名物になりつつあるそうで。
トバ発のキャラバンはリーブラに寄ってからティファールに来るので、ティファールではその恩恵をめっちゃ受け放題なのである。
「マスター、今日の肴は炙ったイカが良いな」
「……最近ウチの方向性がガラッと変わり始めた気がする……海産屋とか併設すべきなのか?」
「結局マスターが手を加えることに変わりは無いと思うぜー?」
こうなると酒の方にもひと工夫欲しい所だよなぁ、と頼んだ客がケラケラ好き勝手言っている。
余談だが、この酒場にはウィスキーと果汁と湯冷まし水を独自の配合で割った物*1が中々人気になっていたりする。
ウィスキーをマズそうにイッキする客を見かねて、マスターが飲みやすいように即席で作ってやったものだ。
その客は今、干しダコを炙って細く切った物*2をモゴモゴしながら、その酒を飲んでいた。
――あの時のような酷さはもう、大体鳴りを潜めていた。
「マスター、こっちも
「はいよ」
この注文が入る度に本人がぶすっとした顔になるが、こればっかりは最早仕方がない。
諦めて貰うしかないのだ。
とても分かりやすい謂れと、妙に秀逸な語呂が悪い。
本人はまだ抵抗して「いつものアレ」で注文をしてくるが、時間の問題だろう。
「そろそろ「いつものアレ」って言い方はやめてくれないかい?」と言ってやれば簡単に陥落する筈である。
まあ、まだ景気の悪い顔は続いているので当面は勘弁してやるかと心の広いマスターである。
「しかしジークはタコばかりだねえ。イカとかアジとかは良いのか?」
「ん……リーブラ行った時に生のタコ食べてさ。これとは随分違うんだけど、なんかタコに嵌っちまって。なんて言うか……味が濃いんだよな、干して炙ると」
「生ぁ!?生であんなの喰うのかよ!?」
「いや、最初は確かに勇気必要だったけど……くにゅくにゅした食感とほんのりとした甘みと吸盤の感触がスゴイ美味しくて」
「いやあ、勇気出してまでは食わんでしょうよ。干物だってこうやって細切りにして何モノか解らなくしてやっと食べる人が付いたのに」
「……ん……」
――ひさびさに会った仲間が、スゴイ自慢げに勧めてきた物だから。
流石にそのセリフが口から出て来ることは無かったが。
「……昆虫喰う時と同程度の勇気で何とかなったし、まあ」
「え……え、マジ?お前虫喰うのか??」
「あー、アレ行けちゃう系の人かぁ……まあ、モノによっては美味しいんだがね。芋虫系とかはホントに」
「ええー!?」
特に最近は、景気の悪い影を落としていたその姿を見かねた客が多かったのか、彼を絡めた会話が酒場によく響いていた。
「――そう言えばジーク、
マスターが何ともなしに声をかける。
話題にしているのはもちろん、彼が宝石鉱山を解放して以来ずっと掘り続けていた『何か』についてだ。
一体そこに何があるのか。それともただの幻想が見せるカン違いで、そこには何もないのか。
ティファールでは今、ちょっとした賭けが行われている向きもあった。
「ん……まあ多分、距離的に考えれば明日で出るような気はしてるけどな」
おおおおっ!?と酒場が途端に盛り上がる。
「……だけど、本当にそれが何なのか分からないんだよ。良いものなのか悪い物なのか……もしかしたら危険物かも知れないんだよな。だからなんか、安全策考えてから掘るべきかもって」
「鉱山の人間に安全策たぁナンセンスな話だなぁ」
違いない、と周りが沸いた。
「――大体、安全策って具体的にどんなんだよ?」
「え?……いや、どんなんだろうな。掘りだす時には離れてて貰うとか?」
「それ、お前の安全はどうなるんだよ」
「ええ?……いやあ、俺ならどうとでもなるんじゃないかと」
「おめえが大丈夫なら俺らも大丈夫だろ!」
また沸いた酒場の楽観的な空気に、渦中の本人は居心地悪げに口をムニムニ言わせながらぎこちなく笑うしかなかった。
@ @ @
渦中の男が酒場を去ると、その背を見送ってまた別の一団も席を立つ。
近ごろ積極的に、彼に声を掛けていた一団だった。
「ありがとよ、マスター」
彼らが渡した金額は、明らかに飲食代としては多すぎるものだった。
悪意の香る笑みと共に渡されたそれを全く不思議に思わず数えながら、その一団の背を見送って小さく嘆息する。
「――ほんと、素直過ぎるのも困りものだな」
ここは何より、宝石鉱山だと言うのに。
@ @ @
――自分は未だに、立ち直れても、立ち直れているように見えてもいないのだろうか。
最近妙にやさしい周りの面々に正直動揺を隠せない。
ともすれば自分、マスコットみたいな扱いされてないだろうかとか思う。
ヘクターの事は、引き摺ってはいるのかもしれないけど仕方ない事だと思う事にした。
2年が明けたら、真っ先にヘクターのお墓に行こう。
どちらにしろ、そうする以上の事は出来ないじゃないかと思う。
だからとにかく、ひたすらつるはしを振るっているのだ。
未だにあの良く分からない気配に向かって掘り進んでいるが、一直線に行っているのが幸いしてか、そろそろ手が届きそうなとこまで来た。
採掘道中、普通に宝石が出て来るのも助かった。
おかげで財布が空になってボクオーンに泣きつくような事もない。
……いや、別に空になっても泣きつかないけど。リーブラ行けば仕事あるし。
海に関わる人足がダメだってんなら、トバまで運び屋やっても良かったし。
その辺の相談はするかもだけど、別にそれは泣きついたって事にはならないだろうし。
ボクオーンはボクオーンで、なんかイキナリ急に生えてきたスービエ相手に頭を抱えていたようで。
どこまで情報渡すか迷ってたんだろうな。
俺はそのあたりの機微とかよー解からんから、普通に近況の世間話した。
勧めてくれたタコはビビったけどうまかったし、ドはまりした。
あと、アバロンの西の海の話をしたりとかした。
ボクオーンは悩んでたみたいだけど、スービエが完全律に協力するとは思えないんだよな……
物語なんかでよくある、フラッと寄ってってはお土産渡してフラッと去って行く風来坊のオジサンポジだぞアレ。
定職につけるような人間には思えないんだけど。
……ああ、だからせめて邪魔にならない最低限の情報を渡そうとしてるのかな?
で、そのラインを悩んでいると。
その気になればちゃんと頭は回せるもんなスービエは。そこに意味を見出すかどうかはまた別の話ではあっても。
今どうなってるのかは知らない。
未検証だけど、
俺だってボクオーンとそんな頻繁に会ってる訳じゃないし。
まあ、スービエはまた大海原に適当に戻ったんじゃないかな。
――思考がズレた。
それで結局、明日どうしよう。
一度、ボクオーンに相談した方が良いのだろうか。
でもさすがにもう時間が無さ過ぎる。もっと前に気付くべきだった。
つまり、どう転んでも場当たり的な対応しか出来そうにない。
掘らずに保留をお願いしてまわるのは、流石に無理があるんだろうなぁ……
悩むぐらいなら、早々にもうソウルスティールしてしまうか?
しかしそれは取り返しのつかない処置だ。何を相手にするのかすら判らずにやるのは気持ちが悪すぎる。
……結局、誰よりも早く確認して、奪っちゃマズそうなもの以外だった場合はソウルスティール前提でいようか。
奪っちゃマズそうなものって例えば何なんだって言われたらすんごい困るけども。
明日はちょっと、早めに起きようか。
それが功を成すかどうかは正直無いとは思うけど。
何事も無ければ良い。自分の杞憂であれば。
少しだけ不安を胸に秘めながら、そのまま目を閉じまどろみに落ちた。
@ @ @
――そして、翌日。
いつもより早めに鉱山に辿り着いた時点で。
6名。既に死人が出る事態となっていた。
宝石鉱山での活動がそろそろ終わろうとしている訳ですが。
ホントは、クジンシーにドゥカティ・ブルースならぬティファール・ブルースを口ずさみながらつるはし振るって欲しくてルドンに向かわせたんだよね。
鉱山のおっちゃんに教えて貰いながらって感じで。
気付いたら、差し込む所が無くなっちまったよ……
《ティファール・ブルース》
み~んなで 掘るだ
ど~んどん 掘るだ
そ~れが 俺達
ティ~ファール 生まれ
レ~ルに トロッコ
ラ~ンプに つるはし
し~っかり やるから
ど~なるな かあちゃん
クジンシー「……これ、働いた売り上げ全部かあちゃんに奪われちゃう
鉱夫のおっちゃん「人生ってのはナ、お利口にはなんねえ方が楽しく生きられるってもんダ。特に男はナ」
……歌の元ネタ、きっとマイナーではない事を信じたい。