……だって全てに於いてキミが事態悪化させてんだもん。
キミが素直に死んでるエンドの方が明らかに救いがあるぞこのゲーム。
キミの気持ちすっげえ解かるけども。
いやあ堪能しました
主人公の立ち位置といい出てくる情報といい纏め方といい、この構成力は本当に肖りたいものです。
ボスを倒した後の4つのセリフだけで、ボスの想いや人生きっちり語って見せるのホント凄い。
……で?モンハンワイルズが来月??
その前に完結しねえとたぶんエタるぞこの小説……
ルドン高原を超え、ナゼール海峡を越えてラストダンジョンまでの旅路を終えたクジンシーが、なぜかルドン高原ではなくトバの方から戻って来た。
いくつかのおみやげも伴って。
話を聞くと、これまた随分と色々あった旅路だったらしい。
人の居ない場所への旅路はどうだったかと聞いてみたら、「結局、何処にでも人は居たよ」と返された。
特に、思ってもみなかった顔に出会ったそうで。
「ほお……ダンターグがナゼールに。なに、そんなにモンスターが強くて獰猛なんですかあの辺り」
「個体数少な目だけどレベルは高めって感じだったかなぁ……環境が環境だから弱肉強食感より強いのかも。移動すりゃ良いのにねえ……
……そうやって必死こいて弱肉強食の
別れた時には、ダンターグの髪の毛が二本のドでかい角に生え変わってさらに大きくなっていたらしい。
持ってた
しかしダンターグ、ダンターグか。
アレがどうにかなる所は逆立ちしたって想像できなかったが、まあそれは置いても元気そうで何よりだ。
ダンターグが拠点にしているなら、特別強いモンスターは次々と淘汰されて行くのだろう。
依頼すれば交易の護衛に……は、無理か。
スービエと並んで、マジメに仕事してる光景が浮かばない。
アレ等は本質、社会性が理解できるだけの野性である。理解した社会性に応じるかどうかは本人の気分次第だ。
ダンターグの歩いた後を利用できるかも程度に考えておいた方が無難か。
そのような意図の全くない旅路だった筈だが、それでもクジンシーの齎してくれた情報はかなり価値の高い物だった。
特にナゼールの育む『ムー』という畜産は十分目玉を張れるポテンシャルがある。
肉、骨、毛皮にミルクに油と利用できない所が無く、そして質も高い。
土産に貰ったムーの干し肉はなかなか良いものだった。
だが何より、そもそもそのサイゴ族の村と、バレンヌ南下キャラバン終着地点のトバで、交易実績があったと言う情報が強かった。
ルートが無いと思われていた場所に、実績のあるルートが通っていたのだ。
元々かなり細々とした交易であり、トバ側もサイゴ族への救済の意識が多少なりともあった物だった為、ナゼールの物品がトバから外に出てこなかったのである。
だからロンギットにはムーが全く流通しなかった。
しかも近ごろはそのルート近くにモンスターが根を張ってしまったため行き来するのも難しくなってしまったらしい。
――で、例のごとくこの男。
「帰りがけにモンスターを一掃してルート開拓をしてきたと……」
「うん。で、再開した交易ルートの護衛としてトバまで。おかげでお土産持って来れた。
こうなるんなら、
スービエが喜ぶかもと確保した海風貝の貝殻*1を弄びながらクジンシーが独り言ちる。
この男、近ごろ息をするように英雄ムーブかましてるけど、なんでいつまで経っても小物が抜けないのか本当に本当に不思議で仕方がない。
「……まあともかく、当初の予定だった宝石も無事に処分できたようで。大変お疲れ様でした。
もろもろのレポートや情報、すべて合わせて10000クラウンで買取しますよ」
「うん、ありが……は!?!?いちまん!?!?」
「実際、今回の情報はそのぐらい価値があると思いますよ。なにも知らずにナゼールに手を伸ばしてたら随分な損害を被っていたでしょう。
……そんな中で、トバとの実績付きルートが見つかったのは値千金です」
本心だった。
身内相手ゆえの色付きどんぶり勘定も多少含んではいるが、それでも内訳は1000クラウン前後みたいな物だと思う。
「あとは陸路の安全かつ効率的な輸送方法が発明出来れば良いんですが……まだどうにも出来ないんですよねえ。
それがうまく行けばステップから東の方にも手を伸ばせるのですけど」
「あれ、いつだったか鉱山で使うトロッコの仕組みを、陸路に活用できないか考えてるって言ってなかった?」
「どう考えてもモンスターの存在がネックになってしまって、その方向立ち消えしたんですよ……ポテンシャルはあると思うんですけどね。
今は実験的に、『陸を進む武装艦』って言うコンセプトでステップで開発を行ってるんですが、技術的に行けてもコストがどうも辛くなっています。一応形にはなりそうですが、アレそのまま量産は難しいですね……」
動力もコンテナ船と同じく、人力をカラクリや術で増幅した機関*2をそのまま使っているが、浮力がある海ならともかく、起伏もある地上を進むなら体積当たりの出力にどうも不安が出て来る。
「空飛ぶ乗り物が出来ればなあ」
「いやあ……載積量稼げますかねそれ。熱気球だって荷物積んだら随分キツいですし」
やはり地上は、難しいものだ。
「――でもまあ、あなたやロンギット通商連合のおかげで、ロンギット海における下地は随分整いました。情報商材も運用を始めていますし……ここからは地上の開拓に力を入れていく事になると思います。
約束の2年まであと3か月ほどありますが、あなたと約束した2年、もう解禁しても構いませんよ。ルドンに居るのは少し気まずいのでしょう?」
「……良いのか?」
クジンシーが目を見開いた。
情報商材を扱い始めたおかげで、北バレンヌからルドンまでかけて随分情報が手に入りやすくなった。
アバロンではついに大学が建設され、その門戸を開いているとの事だ。
クジンシーの当初の希望が叶えられる時期になったのである。
……嘘かホントか、ジェラール帝が大学の入学人数を上げるための客寄せパンダとしてその大学に入学したなんて話まで聞く。
――ジェラール帝。
この2年……いや、ジェラール帝に代替わりしたあの時から、アバロンはだんだんとやり辛い相手になって来た。
元が武辺一辺倒とまでは言わないが武力に偏った部分が大きかった為、その動きもある程度読みやすかった訳だが。
ロンギットの動きを見て、なかなか鋭い一手を打って来ているのである。
(傭兵派遣業……あれはもう止められませんね。
黄金律としても理念に沿っている。海で起こっている流れを察知して、
やっている事は武装商船団の陸版と言ったところか。
キャラバンを支援しつつ護衛を強化し、そしてそのまま傭兵を各地に派遣。
武のノウハウを与え、土地と商売のノウハウを得て、そのままアバロンに吸収する。
レオン帝の頃には考えられなかった手だ。
どうやらジェラール帝はこれまでの皇帝と違い、経済の視点から世界地図を見れる人物らしい。
しかしそれでいて、レオン帝まであった武辺や能力も据え置き。
――先帝2人の死で覚醒したか。
なるほど、アバロンは盤石であった。坊やが突然
これのおかげで、カンバーランドの経済的意味が随分変わった。
そして、クジンシーがナゼールに行ってる間にさらに楔の一手も打って来ている。
「クジンシー……あなたには伝えて置かなければいけませんね」
「え……?」
……失ったものを想って、静かに瞠目した。
「あなたがナゼールに行ってる間に、運河要塞がジェラール帝によって奪還されました。
……これにより、ヴァイカーが命を落としています」
「……え……?」
……得難い人材だった。右腕と言って良いほどに。
情報商材の確立が間に合ったから、これですべき事は終わったとでも言いたかったのだろうか。
最後は、皇帝を迎え討とうとして討ち死にしたそうだ。
危うくなったら逃げろと言い含めてあったのにも関わらず。
(……なぜ立ち向かったんです、ヴァイカー……)
――未だに、その部分だけが解らなかった。
@ @ @
アバロンには『裏』の酒場が存在する。
帝国の強い光に隠れて蠢く暗い影。
非合法な事に手を染めて、しかし心には光を燃やし続ける者たちが身を寄せる場所。
「皇帝さん……随分ここで飲むのが板について来たわね」
カウンターを挟んだその向かいで、ジェラール帝がワインに口をつけている。
「バレなきゃ良いのさ」
「わるい皇帝さんだわ」
墓場の地下に位置するここ、シーフギルドの隠れ家は、間違っても皇帝陛下が来て良い場所では無かった。
しかし運河要塞攻略の一件があってから、ジェラール帝は割と頻繁にここに通っている。
別のテーブルで、顔を合わせるキャットとジェラール帝を流し見ながら、男が二人エールを煽っていた。
「キャットはいつからバーテンを始めたんだかねえ……」
「メスの顔しやがって」
明らかにあの一画だけ空気が違う。
そして悲しい事に、こちらは男による手酌である。
「――なんだ皇帝さん、また来てるのか」
入口から、少年とも青年とも取れるような男が呆れたように声をあげつつ入ってきた。
ジェラールがワイングラスを軽く掲げながらにこやかに返す。
「やあスパロー、お疲れさま。これで役者は揃ったかな?」
「あの話は断った筈なんだけどな」
「うん、だから別の形で考えて来たんだ。ちょっとお話ししようよ」
「フットワーク軽すぎだろウチの皇帝サマはよ……」
スパローは頭を押さえながら、それでも仕方なくジェラール帝の隣に腰を降ろした。
@ @ @
――少し前、アバロンで泥棒騒ぎが日常化していた時期があった。
被害にあったのはどうも後ろ暗い事をやってる噂がある場所ばかり。
それゆえに、アバロンの月夜を駆ける義賊が居るのだと人々が面白おかしく囃し立てた。
とある詩人とかが特に。そりゃもうめっちゃ笑顔で擦りまくっていた。
真に取り締まるべきは後ろ暗い事をやっている奴らの方であるが、それはそれとして義賊の存在に興味を覚えたジェラールは、アバロンの夜道をなんと無しに散策するようになった。
――そして、泥棒帰りのキャットと出会う。
追いかけた先でキャットがモンスターに絡まれ、ジェラールは彼女を助け出した。
それがシーフギルドとの付き合いの始まりだ。
命を救ってくれた礼だと、キャットは困難極まる運河要塞の調査員として名乗りを上げ、そしてみごと運河要塞の裏口を発見して見せた。
運河要塞の攻略が成功したのは彼女のおかげと言っても過言ではない。
彼らはアバロンの裏でしか生きて行けない者たちだ。
しかしそれ故に裏側に精通し、その能力も一線を画すほど高い。
――だからこそ、ジェラール帝は今日もここに足を運ぶのだ。
……まあ、正直キャットの顔を見に来ているというのも間違っていなかったりはする。
するのだが……本命は別にちゃんとあるのだ。
「『
「シーフギルドを召し上げる案は却下されたしね。手っ取り早く別枠作るから、人員を提供してくれないかって相談だ」
「活動内容は?」
「たぶん、諜報と工作」
「つまりスパイね」
「その表現が合う内容なのかも含めて、必要なシステムの構築から参画して欲しい。
バレンヌが経済圏を作って各国に影響を持てるようにしないと……このままだとバレンヌはたぶん、武力以外の場所から潰される。
――君たちの力が必要なんだ」
――バレンヌ32代目皇帝、ジェラール。
歴代で最も柔軟で、かつ最も多く、そして大きな功績を上げた皇帝と評価する歴史家もいる。
今はそんな彼の、灼熱の全盛期であった。
これで『ロンギットの天秤』編が終了しました。
次からは新章開始です。
ジェラールはシーフギルドと連携して運河要塞を攻略し、南バレンヌを解放。
この折にヴァイカーが逝きました。
ヴァイカーが立ち向かったのは完全にボクオーンの想定外でした。
秘密の通路の存在は把握して居たにも拘らず、なぜ彼は死ぬ事になったのか。
ヴァイカーは彼の命に背いてでも、自身を『ボクオーン』として誤認させた状態で死ぬつもりだった……と言う事もありますが、要塞攻略戦の最中に、皇帝の動きから『伝承法』の存在に勘づき始め、情報を集めようとして引き際を誤ったというのもあったりします。
その情報を伝える事は叶わなかった模様。
……って言うのを本編で説明したかったんだけど、ダンターグが勢い余って壊しちゃいました(目逸らし)