道筋作ったは良いものの、そこまでのイベント全部書こうとする。じゃないと目的地まで行けないから。
で、そうやって力尽きて書く気力もなくなる。
――逆に考えるんだ。
飛ばしても良いやと、ダイジェストで良いやと考えるんだ。
ランキングに乗っている、圧縮うまい人たちは皆そうやっているじゃあないか。
何なら道筋を最後まで書かずに全く別の話が始まってすらいる時もあるじゃあないか。
……と言う事で、時計の針を進める練習です。
流石にバレンヌ皇帝と言えど、その皇帝が建てたアバロン大学と言えど、個人の答案用紙を持って来させるなんてことは出来ない。しない。
そう言う『皇帝だからOK』という考え方は『誇り』を食らう猛毒である事をジェラールは、
――が、流石に酒場の中で大っぴらに行われた暴露で、致命的になったいくつかの問題の情報を人経由で小耳に挟むのはアリだ。
コンプライアンスどころの話では無い。大人数の酒の肴にされているのである。
本人の真っ白に燃え尽きながらえぐえぐ涙ぐんでる姿が見える見える。
「まあ、うん、人の不幸を笑うのはどうかと思うけど、このシチュエーションではねえ」
酒場の丁稚をやってるジークが、実はアバロンの『
なお、アバロン大学の入試問題は点数だけではなく、回答の正否や正答も教えてくれる超絶親切仕様である。
@ @ @
《アバロン帝国大学入試問題》
問. アバロン及びカンバーランドではオレオン海を挟んでなお同一の建築様式を継承している。これは両国がかねてより国交があった事を示唆しているが、オレオン式と呼ばれるこの建築様式はカンバーランド側が祖と見られている*2。これはなぜか。
クジンシー「え……え、そうなの?普通に分かんねえ……でもなんか書かなきゃ……!」
回答. 造船・操船技術はカンバーランド側が優れており、その関係でカンバーランド側の建築技師が渡航しやすかったから。
↓
不正解
正答. ソーモンの建築様式にオレオン式が見られない為。
※アバロン側から波及したのであれば、アバロンと陸続きで連絡しやすいソーモンの建築様式もこれに準ずるはずである。
そのため、カンバーランド側の文化がソーモンを超えアバロンに渡った際に建築様式も伝搬したというのが通説となっている。
クジンシー「……ムズすぎねえ……?」
考え方は良いと思うけど。ちなみに実際は、バレンヌの方が優れていたみたいだよ」
それだけ移動技術が発展しやすい土壌もあった訳ですね」
問. かつてバレンヌ帝国が栄華を誇った時代、通貨である『クラウン』も同様に浸透し、その後バレンヌが衰退した今日でも『クラウン』は使用され続けている。
この『クラウン』は元々何を指す物であったか答えよ。
クジンシー「……」(ジトッ)
解答. Clown(道化)を語源とする
↓
不正解
正答. 『王冠』を指す*3
※バレンヌの権力の象徴させるため、貨幣にもこれを用いた。
クジンシー「……ふん」(プイッ)
なんだか背景を想像してしまう回答だよ」
問. 今や兵科としても重要な位置にある魔術師だが、かつてはその初歩である『ある技術』の確立が難しく、その数を揃える事が出来なかった。*4
その技術とは何か。
クジンシー「あー、コレかあ。わかるわかる。俺も苦労したようん」
解答. 術力の体外運用
↓
不正解
正答. 術力の励起
※バレンヌがかつて他の地域に先駆けこの手法を確立した事が、その領土拡大の一因を担ったともされている。
クジンシー「あっれえー??」
これ完全に術師の下で学んだ人間の回答ですよ」
問. 七英雄として語られる古代の人物の中で、唯一女性である人物の名前を答えなさい。*5
1. Rocfouguet(ロックフーゲ)
2. Rocbou.QUET(ロックブー=ケ)
3. Rocpouquet(ロックプーケ)
クジンシー「正解が無いだと……!?どうすんだコレ……音が同じ『ロックブー=ケ』って答えれば良いのかコレ……!?」
回答. 2. Rocbou.QUET(ロックブー=ケ)
↓
不正解
正答. Rocbouquet(ロックブーケ)
※筆記する事。設問には選択して答えよとの指定はされていない。
クジンシー「あ゛あ゛あ゛あ゛ああああっっ!!!(発狂)」
これはやり方がヒドイよねえ」
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何がムカつくって、客の奴らも揃って俺が残念会と称して帰って来た俺の答案を肴に飲みまくっている事である。
そんなに人の努力が無に帰する瞬間が面白いかちくせう。
特に、南の方から帰って来たクソ詩人の顔がやたらうざい。
ホントいいかげん殴って良いんじゃないかと真剣に検討するくらいにうざい。
俺、こいつの顔見る度にいつも殴ること考えてる気すらする。
「まあまあジークさんwwww
それでも半分以上は点数取れてるんですからwwww
次こそは合格できますってwwwwww
ほらカンパーイwwww」
スゲエよ、口から吐いているセリフは凄くまともで気を使ってくれてるのに、その様相で全てを台無しにしてるの逆にスゲエよ。
「しっかし……初めてまじまじ見るけど、良い問題作るよなあ。
正答と解説も添えてくれるから受験受けるだけで頭が良くなるよコレは。過去問配らないのが惜しくてで仕方ないな」
「数が揃ってないんじゃないかなまだ。10年ぐらい経ったら過去問集って形でなんか出るかもな」
エールを入れながら答案を読みつつお客さんがなんか好き勝手言ってる。
「……それ、ちゃんと取っとくんだからあんまり汚すなよな」
「「「はーい!」」」
お前らさ。返事は素直で大きく大変よろしいが、その正当用紙の端っこに既にエールのシミがついているのを俺は見逃してないからな。
「オレも届かなかったんだよなぁ……大学の神対応で図書室とか自習室とか使えるけどさ。やっぱ塾とか欲しいなって思うの贅沢かなぁ」
「フォーファーであらかじめ勉強して来いって事なんじゃないのか」
「お金ばっかり飛んでくよォ~……」
なんか、客に俺と同じく受験して敗れた人が混じってますね。
……って言うか。
「フォーファー?……確か、カンバーランドの港町、だっけか?」
「そうそう、交易と学問の町だよ。重商主義政策*6を取ってるから頭のイイ人が必要でさ。それもあって」
「ちょっと前まで学校と言えばフォーファーだったもんな」
「つか、アバロン大学がフォーファーをパクってるまである。面積とか設備とか絶対対抗したよなアレ」
「わかる」
「あ、ジークさん、『スーパージーク割り』ふたつオナシャス!」
「……その名前で呼ぶのやめたら注文通してやる」
「えー、良いじゃないっすか『スーパージーク割り』www」
ハオラーンめ、本当のホンキで余計な事ばっかりやりやがる。
竜の穴で満足していれば良かったものを。
――帰って来たクソ詩人の言う事には、ティファールでは『ジーク割り』が『果実水割り』で提供されていて、『ジーク割り』の名称を使っているのはいくつかの常連さんだけであったそうな。
酒場のマスターにその名前で注文すると、少し気まずそうな顔をされるという。鉱夫となると特に。
……まあ、後は引いてると思ったよ。
そして、その気まずくなっている空気をハオラーンがせっせせっせと掘り返したらしい。
愉快な顔でめっちゃ楽しそうに暴れ回るヤツの顔が目に浮かぶ。
何なら今、全く同じ顔をしていやがる。
瞬く間に特定しやがってからに……もはや別の名前考えとくべきだろうか。
今度どっか行ったら『シン』って名前の方を名乗るべきだろうか。
ちなみに『スーパージーク割り』はマスターのオリジナルアレンジである。
いつの間にかあった『ガソジン*7』とか言う機械を使って炭酸の溶け込んだ水を作り、これと柑橘果汁とウィスキーを混ぜて提供する*8。
作成に手間がかかるので割り増しだが現在アバロンのブームになっている。
ブームになっていやがるのだ。
このブームになっている『スーパージーク割り』を俺本人が作って提供するのだ。なんだこれ最悪の羞恥プレイか??
最近ハオラーンはこればっかり飲んでいるが、その理由は絶対味だけではない。そのうざい笑顔が物語っている。
ちなみに俺はキライだ。ゲップすると鼻に来てヒドイ目に合う。
なんでこれがブームになっているか理解に苦しむ。嫌がらせか何かか??
「炭酸水、やっぱ色々使えるよねぇ。ジーク君の負担にもなってるしさ、やっぱもうちょっとこう……大量に何とかできる仕組みを考えたいね。
ジーク君さあ、大学受かったらその知識でなんか考えてみてよ」
「大学入ったら出て来るモンなのかそれ??湯冷まし水だってバカになんねーだろうに……」
「温度とかもさ。術とか使って氷水くらい冷やす事が出来たら、きっとさらに捗るんだけどなぁ……」
「……まあ、冷たい水は俺も気軽に欲しいなぁ」
なんか考えられないだろうか、と思ってしまうあたりがマスターの恐ろしい所だ。
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――そんなこんなで行われた『残念会』だが。
結局来年も取り行われる事になり、やっと俺が合格出来たのは3年目になってからだった。
キング・クリムゾン!!
時間を消し飛ばした!!ハオラーンの旅路は消し飛び、後には暴れ回った後のすっげえ良い空気を吸っているハオラーンだけが残るッッ!!
……あれ??なんかおかしいな?
私が飛ばしたかった時間はこれだったか……?