個人的にはクロスタグに求めている作品はこういうんじゃないよなと思ってるので『クロスオーバー?』って感じにハテナつけて誤魔化そうかなと思ってたんです。
でも、タグ入力フィールドに「ハテナつけて曖昧にすんなボケ」って書かれてたので、「見透かされている……!?」と戦慄しながら観念してハテナつけるのはやめました。
逆に考えるんだ。
『クロスオーバー』タグを付けたのであれば、もはや制限されることは無いのだから、
ある日『破壊するもの』が鼻くそほじりながらやって来て世界ぶっ壊して完結とかやっても別に許されると考えるんだ……!
所で『破壊するもの』とダンターグってどっちが強いっすかね?
……え、ダンターグ?
そう……
葛藤はあった。
そもそも、リーブラは技術的にも最先端を行っているという強固な自負があったのだ。
そのリーブラの技術力をもってしても『地上戦艦』という答えぐらいしか出てこなかったのだから、技術コンペとかやってもそんな優秀な回答が出て来る確率は低いだろうと思っていた。
しかしもはや思考が凝り固まっていて、発想する頭を増やすでもしないと自力で抜け出せる気がしなかったのだ。
そんな気晴らしにマイルズを散歩しつつ、しかし頭の中は地上輸送の方法を考えてしまって全然気晴らしになっていなかった時の事。
道端に、一人の酔っぱらいが酒瓶片手に座り込んでブツブツと呟いているのを見かけた。
相当酒が回っているようで、なかなか度数が高い酒のラベルを貼ったビンの中身は残りが1/4ほどになっており、酒気がずいぶん濃く漂っていた。
――まあ、よくいる浮浪者ですか。
そう切って捨てて通り過ぎようとしたのだが、ふとその男の口にしている内容が、馬による長距離レースのプロモーションとそのスポンサー探しという、浮浪者に似つかわしくない内容だったのに気付いた。
改めて男の身なりをよく見てみると、所々擦り切れてボロボロではあるが、結構いいブランドの服である事にも気付いた。
少なくとも、『よくいる』浮浪者ではないらしい。
なんとなく、興味がわいて聞いてみたのである。
「……レースでお金が稼げるのですか?」
男は酒で朦朧とした顔で顔を上げた。
「……『評価』は『力』だ。
人が注目すればそれは『評価』に繋がり、『力』に変わる。『力』があれば、それを金に変える方法なんていくらでも出て来るさ。
集まった人相手に商売しても良いし、広告も出せる。何なら賭けの対象にだって出来る……そちらをやるのは、オレはあまり好きじゃアないがな。
長距離レースは前例が無いし、何より『夢』があるハズだ……!
きっと、みんな注目するハズだ……!」
視線はぶれ、何なら頭もふらふらと揺れ動き、滑舌も『まさに酔っ払い』という感じではあった。しかし語っている内容は、今抱えている案件に使えそうだと思った。
――『評価』は『力』。なるほど気に入った。
そしてその技術の知名度があるなら……例えば『地上戦艦』のような反発も抑えられる目があるかもしれない。
もうひとつ聞く。
「それは、『馬』でなくてはなりませんか?」
「んああ?……必要なのは『ロマン』であり、『開拓する精神』だ。
それがあれば必ずしも『馬』じゃなくても良いが……オレは『馬』がやりたいよォーッ……個人的な理由だが。『馬』で長距離を駆けたい……駆けるのが見たい……」
「では、『馬』も入れましょう。その可能性もまだ、あるいはあるかもしれませんし」
「……ああ?」
「その話、詰めてみましょうか。
私は技術を『開拓』したい。あなたは『ロマン』を追いたい。微妙に噛み合っていませんが、両方ともあなたが語った必要な要素です。
……その酒の匂いを落として頭の中がクリアになった頃に、海運事務所に来て『テミウス』を訪ねなさい。格好については、そのボロでも妥協してあげますよ」
――これが、Steel Boots Run レース発足のきっかけだった。
男はなかなか優秀で、こちらの意図と目的を汲んだ上でこの企画の舵取りを行い、そしてここまで漕ぎつけて見せた。
自分としてはここから技術を発展させる、もしくはその切っ掛けを呼び込むのが主目的ではあるが、当初想像していたよりも人が集まり、注目が集まり、既に経済効果がバカに出来ないレベルになっている。
この時点で「やって良かった」と思えるほどに十分な様相となっていた。
時期も良かったのだと思う。いや、『下地が出来ていた』と表現するべきか。
前もってロンギットで情報商材を扱い広めていた事がここで生きたのだ。
既に何社も生まれている情報商材を扱う会社――『新聞社』は、何も働きかけなくても、こぞってSBRレースの事を広めてくれた。
彼らの為に企画担当が記者会見を開き対応している。
……ヴァイカーにもこの成果を見せてやれていれば、とチラと思う。
どうしようもない感傷だと、軽く首を振ってその想いを払った。
会見の様子が聞こえてくる。
「――このレースはリーブラの出来レースとの意見もありますが?」
「キッパリ違うと言わせて貰う!
確かにリーブラからも1チーム出場するが、これはこの大会が用意する『技術の最低期待ライン』だ。
従来通りの馬で構成したキャラバンで普通にゴールされる者ばかりが出て来るのは断じて『開拓』ではない!
このレースは『開拓への挑戦』を強く強く要求する。
出場者の皆様には是非、このリーブラチームを抜いて優勝賞金を掴み取って頂きたい!」
「リーブラを超えてゴールするものが現れなければ、このレースは失敗という事でしょうか?
そうなれば出資者たちは当然怒るでしょうし、何より信用の失墜になる。
そうなった時、あなたはどうされますか?」
「消されるかも……
……
……なんちゃって。
ハハ……
ゴホン
『失敗』というのは……いいかよく聞けッ!
真の『失敗』とはっ!
開拓の心を忘れ!困難に挑戦する事に
このレースに失敗なんか存在しないッ!
存在するのは冒険者だけだッ!
この Steel Boots Run レースは、世界中の誰もが体験した事のない競技大会となるだろうッ!!」
拍手が巻き起こる。
その沸き様を俯瞰して眺めながら、自身も拍手して頷いた。
――中々良い拾い物をしたものだ。
内心、ああはいっても実際は失敗に対して戦々恐々としていたりするようだし、その考えは杞憂だと教えてやるつもりも無いけども。
ぜひ最後まで気を引き締めて臨んで頂きたい。
@ @ @
そして、当日。
レース開始時点に最も近く、それ故にレース運用の拠点に選ばれ、かつ通行の中継地点ともなっているソーモンの賑わい方は半端では無かった。
今この瞬間、最も金の集まる街と言っても過言ではないだろう。
ロンギット通商連合が数倍に増員して業務に取り組みまだ足りないほどの大わらわ。
商材にしていた仮設テントや仮設トイレの為の簡易建設キットは大活躍し、コンテナ船が無ければ物量に押しつぶされてこの町は阿鼻叫喚となっていただろう。
本当に下地が出来ていて良かったと冷や汗しきりだ。
運営は全て人に任せているが、それでも自らもまた視察にと精力的に歩いていた。
今ここで起こっている需要と供給は、全て
そして『技術発展』の祭典の為か、町には様々な発明品も溢れていた。
まだ明確な結果が出ている訳でも無いのに、今まで悩んでいた事が全て泡雪のように溶けて行っているような、まるで春の日差しの中にいるがごとき気分を味わう。
やはり、物事は一人で悩むものではないな。
満足さに口元が緩むのを覚えながら見渡すと、思ってもみなかった人物が参加しているのが目に入りビシリと石化してしまった。
「あなた……あなた、なんでここに居るんですか……
――ワグナス」
――空に浮かぶ巨体。
青い長髪を靡かせた上半身だけが人の形をしており、その両手足は鳥の翼に変わっている。
全体的なシルエットを見たら、まるで巨大な蝶のようだった。
よく知る、七英雄のリーダーであるワグナスの開放体であった。
つかなにやってんの。
マジで何やってんの。
ちなみにめっちゃめちゃ注目を浴びていた。
当然である。みんなしてアレは何だと超ざわついている。
そんなものだから、ワグナスと呼んだ名前の部分は彼にのみ届くような小声だったりする。
彼が笑って見下ろした。
「久しいな……テミウス、と名乗っているのだったか。
面白い大会を開いてくれたじゃないか、
ああ、私の方は普通に呼んでくれて構わない。別に偽名は使っていないのでね」
参加するんですかアンタ。
隣に付き添っていた翼人が、丁寧に頭を下げて言った。
「あなたがこのレースの開催者の方ですか。初めまして、イーリスのウィンディと申します。
この大会には『チカパの風』というチーム名で参加させて頂いています。
どうぞよろしくお願いします!」
「イーリス‥‥‥ですか。実在していたとは……いや失礼、はじめてこの目で見たものですから。
ロンギット通商連合のテミウスと申します。どうぞ、良しなに」
「いえいえ。テミウス様には500万クラウンも融通して頂く事になる訳ですから。とても楽しみにしております、ウフフ」
目がとてもギラギラしている。
やる気十分でいるらしい。
「しかしワグナス……こんな所で顔を合わせるとは欠片も考えていませんでしたよ。
なぜ参加を?このお嬢さん関係ですか?」
「無いという訳ではないがな……戯れと言われても否定はしないさ。
風の噂に、お前が陸路の運送に悩んでいるという話をこのレースの事と一緒に聞いたものでね。
ひさびさの顔合わせがてら、私なりの回答として参加してみたんだ。
今回はやらないが、
……つまり、有翼モンスターを仕込んだ上での空輸を提案している訳か。
物量をカバーするにはいささか力不足な感はあるが。
「こたびはこのワグナス、世にもビックリ珍しい
大会が終わってひと段落着いたら飲もうじゃないか。
私が奢ろう。何せ500万クラウンも入る予定があるからな!」
このリーダー、クッソノリノリである。
「開放体になるといくつかネジが吹っ飛ぶの、治ってませんねあなた……」
「うん?ちゃんとこの通り胸は隠しているぞ?ウィンディもうるさかったしな」
「ブラの話は誰もしてねえんですよ」
どーだとばかりにサラシのような布を巻いた胸を張って強調するワグナスに思わず頭痛を覚える。
この男、なぜか開放体になると体が女性になるのである。
見た目モンスターであるからこそ、ある意味どうにかなっているが、これでもうちょっと人間的なシルエットだったらもはや裸にサラシ巻いているだけのタダのヤベー奴である。
開放体だと意識しなければ性格や口調が変わるのは大体みな同じなのだが、ワグナスはずっと責任ある立場に収まってた事による反動がそうさせるのか、開放体になるとどうも奔放になる癖があった。
ノエルが昔、「まあスービエのいとこだしな……」と口にしていたのを聞いてものすごく納得してしまった時の事を思い出す。
てか、イーリスに注意されなかったら胸モロ出しのまま参加するつもりだったんかお前。
つか、このイーリスもイーリスだぞ。ほぼビキニみたいな肌面積のままこの街を歩いてる。
羞恥心とか無いのだろうか?
「……ワグナスはもはやどうしようもないですが……ウィンディさん、あなたはちょっと服とか買って肌面積下げた方が良いと思いますね」
ウィンディがウッと頬を染めておずおず言った。
「や、やっぱそうなんですかね……?こっち来てからなんか、皆さんの視線がちょっといやらしくて……」
そらそーだろうよ。
……まあ、自覚は出来ているようで何よりである。
でも、今更そう言う隠すような仕草しても煽ってるようにしか見えないからね?
「……ともあれ、懐かしい顔に会えて良かったです。
多忙につきそろそろ離れなければなりませんが、健闘をお祈りしていますよ。
既に勝った気でいるようですが……これはルールのある、しかも長距離のレースです。足を掬われないようにご注意を」
「――ふっ、空に居る我々の足を掬える物ならぜひやって見せて欲しいものだな。大いに楽しませて貰うよ」
「はいっ!優勝は私たち『チカパの風』が頂きますっ!!」
@ @ @
あーびっくりした。クッソびっくりした。
なんで行き成り
しかも優勝ガチで狙いに来てるし。
いやまあ、楽しんでいるみたいだったからそれはそれで良かったんだけど。
しかし頭の中では「何でいるお前」の連呼がずっと続きっぱなしだった。
これ、下手したらダンターグが参加してたとか言うオチも有り得ていたのだろうか。
アレが参加したらもはや事故にしかならないのだが。
周りを見渡して、その姿が無いのを見てホッとする。
遠目に目立っているのはワグナスだけだ。
もしダンターグが居たら、探そうとせずとも目に入る筈である。
もし次があるとしたらルールブックに『ダンターグ禁止』と明記しておくべきだろうか。
そんなアホな事を考えてみたりする。
……しかしそうか。ワグナスが来たのか。
あの言い方だと『完全律』の輸送の役割を担ってくれると言うよりも、回答のひとつとして提示しに来ただけなのだろうけども。
もしあのチームが優勝するのであれば、モンスターに空路を行かせることを真剣に検討しても良いかもしれないなと思う。
レースが始まる前なのに、既に思いもよらなかった展開が出て来て少し楽しくなったりした。
レースが終わったらワグナスと飲む、か。
アバロンにはクジンシーも居るし、運が良かったらスービエも捕まるかもしれない。
ひさびさに杯を交わして近況を語り合うのも楽しそうだと思う。
――そんなことを考えていると、何やら拡声器を使って増幅したような変な音楽と共に、『ブロロロロロ』という振動を伴った機械音が聞こえてくる。
目を向ければ、鉄で出来た馬車の荷台のような物が、自力で走っているのが目に留まった。
それも、かなりのスピードで。
「……なんと」
思わず目を剝く。
伴っている音楽は良く分からないがしかし、それがトンでもない技術力によって作られている物が一目見ただけで良くわかる。
特に、注目すべきは動力。
人力ではない。そんなスペースは見て取れないし、何よりそんな出力の動きではない。
この振動を伴った機械音が、その動力によるものなのだろうか。
「これは……本当に面白いレースになって来そうですね……!」
少なくともワグナスの一人勝ちにはならないだろう。
しかもアレは、自分が欲していた純粋な『技術』によるものだ。
在野にもちゃんと、尊敬すべき技術者が居たのだと小躍りしたくなってくる。
――皆の注目を浴びながら、それがキキッと音を立てて停止した。
中から出て来たのは、メチャクチャテンション高く「Foooooooooooo!!!!」と声をあげて両手を掲げる金髪の女。
……そして、顔を真っ赤にしながらおずおずと降りてくる東の装いをした男と、これまた良く知っている顔がまたひとつ。
「チクショウ何なんだよこの羞恥プレイは……!?みんなしてこっち見てるんだよ!?」
「し、知らないフリを……手遅れだと判っていても知らないフリを貫き通しましょう。私は岩、私は岩……」
――本当に、どうなるんだこのレース。
ふたたび頭の中では「何でいるお前」の連呼が響き始めた。
何故か付けられてたスピーカーによる大音量で『教授のテーマ』を垂れ流しながら走ってたらしいですよ。相変わらず未来に生きてんなコイツ。
原作では敵対していたワグナスとイーリスがタッグを組んでまさかの参戦。
一体どういう経緯なのかは聞かないでください。今から考えるから。
もはや空気がパンパンの風船、あるいは爆発寸前のTNTという様相を呈してきましたSBRレース。
そこまで長くは続かない予定ではあるんですけどね、予定では。
……え?企画担当の男は誰か?
さあー?皆目見当がつかないなぁーッ?(目逸らし)