新宿はがんばる   作:のーばでぃ

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 歴戦王レ=ダウをぜひとも冷凍カジキでシバきたい。
だからがんばって作ったよ。デンセツのじっちゃんが、仕事した後に「不足などあろうものか」ってドヤ顔してた。
そのエピソードだけで面白いのズルくないか。


品川のよもやまばなし

 つまるところ、ワグナスはゆるーく召集を掛けたかったという訳だ。

特にクジンシー(オレ)に会うために新聞使って居場所をバラまいて置きたかったとか。

 

「真面目に大神官らの痕跡を探してくれてそうなのは、ノエルたちとお前ぐらいかなと思ったのでな。なので、早い内にこの情報は渡しておきたかった。

まさかテミウスがレースの開催者で、ジークがレースに参加していたというのは全く想像していなかったが。聞けば居場所を伝える媒体にするための『新聞』と言う文化もテミウスが火付け役なんだとか?

―― あの時、最初からクーデターに踏み切ってたら、もしかしてずいぶん面白い世の中になっていたのかもなあ」

 

「やめて下さいよ。確かにそう考えた事もありましたが、今にして思えば例えそうなっていたとして、気苦労だらけでまともに何一つ進まなかっただろう事が目に見えてるんですから。

―― 新しく国を興した方がよほど早いと思えるレベルで腐ってましたからね、あそこは」

 

 そんな話と共に渡されたのが、2枚の地図だった。

コウメイが興味深そうに横からそれを眺めている。

 

「これ……『今』と『昔』の地図か」

 

 同じ縮尺で作られていて、重ねてみると丁度『今』の下に『過去』の様相が見えるようになっていた。

 

「過去の方の地図は、あくまで私の頭の中にあるものだから精度はそこまで期待できないがね」

 

「いや期待できないって……丘とか川とか細かい所めっちゃ書かれてるんだけど」

 

「私は元軍の総司令官だぞ?戦略的な地形情報は基本的にすべて頭に入れてるんだ。それがこういった形で出ているだけに過ぎない」

 

「一応俺も中身見てすり合わせたが、別に修正点も無かったな……ずっと昔のこんな情報を普通に覚えてたのは、もしかしたら灯火(トーチ)による作用だったのかもしれないが」

 

 こんなのは基本知識だとワグナスとノエルは嘯いているが、王城に同じ事が出来た奴は絶対いなかったと思う。賭けて良い。

 

「今の地図は実際に私が方々飛び回って測量したものだ。これまでの時間の大半をここに費やしたな。後はモンスターの分布調査とかもやってたが」

 

「ジークさんと似たような事されてたんですね……しかしこれは凄い。サラマットのさらに南東まで幅広く記載されているではありませんか。

西側のジークさんの調査記録と合わせたら物凄い事になりますよコレ」

 

 コウメイの言うように、この地図はアバロンで出回っている地図よりさらに描画エリアが東に延びている。

東の方で噂になっていた人面鳥と言うのはこう言う事だったのだなと納得した。

 

 ワグナスが楽しそうに笑っている。

 

「ほう、ジークも同じ事をやっていたと。その資料は非常に興味深いな。

―― 私はここから東側を拠点にしていたから、どうしても調査範囲は東寄りになった。これに西の情報が加わったらと思うと少しワクワクしているよ。内容はまとめてたりするのか?」

 

「あ、私まとめてます」

 

「素晴らしいじゃないか」

 

 なんかこの場でとてもヤベー地図成立の片鱗が見え始めている。

こういうの、完全律の頒布では必要不可欠だからな、ボクオーン(テミウス)がめっちゃ食いついて見てる。

 

 ……しかし俺としては、そう言う情報も気にはなるが、もっと気になる物があった。

ペラペラと『今』と『昔』の図を交互に見つつ、口にする。

 

「ワグナス……見つけたのか。()()()()の痕跡」

 

 それはナゼールよりずっと東。

今は険しい山脈の奥に位置している場所。

 

 ―― かつては「旧市街」と呼ばれていた王国の一画が、『今』の地図にもハッキリと明記されていた。

 

「『指を掛けた』……と、言った所か。現状はまだ地図を起こしただけで、当時の施設に探りはまだ入れていない。どうせ元旧市街を探っても、王城と繋がる何かが出てくる可能性は普通に考えて相当低いだろうしな。

探すべきは次元転移装置そのものか、それに繋がるシステムの方だ」

 

 ……まあ、それもそうか。

 

 例えば何か間違って、当時から生きている人がいたとして。

その人達に王城の事を問うのは、例えばかつて討伐隊に入る前の俺に王城の事情を問うようなものだ。

神官貴族どもはもう逃げちゃったのだから、残ってるのは事情を知らない一般市民だけ。

有力な情報が出て来る筈が無い。

 

 それでもこの時代まで生きていたのであれば、『同化の法』を許される程度には裕福だったって事でもあるが……結局捨てられた人達だしな。望みは薄い。

 

「無論、地図作成がてら空から探してはいたのだが、それらしいものは見つけ出せなかった。

そもそも地形が大幅に変わるほどの時代を超えているからな。大地に沈んだか風化したか……まあ、空からのアプローチの限界という奴だ。

最近になって、別途地上を探っていたノエルたちが何かみつけたのだったか?」

 

 話を振られたノエルとロックブーケが、苦渋に満ちた表情を作る。

それは、よく知っている顔だった。

……まるで、教授に振り回される俺とコウメイの顔がこんな感じである。

 

「ああ……テレルテバにどうも俺達の時代由来だったくさい塔が残っているのを見つけたのと……あと、メルー砂漠に『蜃気楼に消える湖と古代文明』の噂があってな。今はそれを探ってるんだが……場所が場所なもので、なかなか難しくてな」

 

「モチベーションがね……続かないのよ。

カラッカラに乾いた広大な砂の大地を、照り付ける太陽の熱気を耐えながら歩いて、歩いて、歩いて、歩いて。

ようやっと見つけたと思ったら目の前で消えやがるのよアレ

……思わずその辺蠢いていた変にデカい蛇を感電黒焦げにしてたわね」

 

 特に罪もないモンスターさんを理不尽な暴力が襲っていたようだ。

 

「アレは、蜃気楼などと言う生易しいものじゃあ決して無かった。たぶんアレは何らかの幻惑装置によるものだろう。つまり、俺達の時代由来の物である可能性が非常に高い。

……高いんだが、それはそれとして、もう心が折れたのでしばらくアレには関わりたくない」

 

 だから当面は全部忘れてブラブラする事に決めたと、ノエルたちは遠い目をして言った。

大丈夫だよ、別に急ぐわけで無し。君らを責めるような人間はここには居ないから。

 

 ―― いやもうマジで、ノエルがこうなるって相当だぞ??

 

「お兄様はね……テレルテバでちょっとショックな事があって、随分落ち込んでるのもあって。悪いんだけど、私たちしばらくは普通にバカンスさせて頂くわ」

 

「いや別に悪かないぞ?ゆっくり休んでくれよ、ホントに。スービエやダンターグだって好き勝手やってんだからさ。

……ワグナス、別に急がなきゃいけない理由ないだろ?」

 

「もちろんだとも。と言うか、私はちゃんとその話は聞いていたからな。何も問題はないさ。

……うん?ダンターグには会ったのか?彼だけ居場所が分からなくてな……」

 

「会ったよ。ナゼールの南らへんから大氷海付近かな?強いモンスター探して練り歩いてた。

今じゃ更にでっかくなってクソでかい角が生えてる……3年くらい前だったな」

 

 もしかしたらもう、あの辺りの強いモンスターは軒並み平らげられてるかもわからんね。

 

「相変わらずだな……この地図なんだが、スービエとダンターグの分もあるから、悪いんだがスービエの分はそちらで渡しておいてくれないか?ダンターグの方は私が向かって渡しておこう」

 

「そうだな。会うとしたら俺かテミウスだもんな。わかった、会ったら渡しておくよ」

 

 ダンターグにはコンパスも付けてあげると喜ぶよと申し添えておく。

 

 それまでグレープフルーツのジュースをストローでチューチュー飲んでいたウィンディが、目をぱちぱちしながらワグナスに聞いた。

 

「……ワグナス様、次の行き先はナゼールですか?」

 

「ふむ。あっちは気候が厳しいからな……私一人で行くつもりだったが。もしついてくるなら、防寒しっかりしていないと辛いぞ?」

 

「……って言うかワグナス様、聞き方悪くなっちゃいますけど、結局その子なんなんです?レースでコンビ組んでいたとは聞きましたが」

 

 ロックブーケが口を挟んだ。

なんてったってイーリスだしな。確かに馴れ初めは気になる。

……まあ、ロックブーケとしては女の子という所の方が気になってるかもしれないけども。

 

「……ふむ。『なんなの』、か。

そうだな、外の世界に憧れつつも何をすれば良いかわからない少女と、とりあえず依頼されて連れ出しつつも今の世はあまり知らない保護者、と言った所か?」

 

 そういう関係を何と呼ぶのかと聞かれると困るが。

ワグナスはそう言って肩を竦めた。

 

 ウィンディが語り始める。

 

「私ね……チカパ山で生まれてチカパ山で育って。外の世界の事全く知らなかったんです。

チカパ山って翼を持たない人たちにはとても険しい山で、旅人さんが来るのも少なくて。外のお話に触れる機会すらなかったから、どんな所なんだろうってずっと考えてました」

 

「……でも、一人で外に出るのは踏ん切りがつかなくて」

 

「イーリス族はとても珍しいから、外の人達に捕まったらとてもヒドイ目に遭うなんて脅し文句も聞いた事はあったし、何より外に出て何かやってる自分が全然想像できなかったんです。

何があるのかも全然知らなかったから、何もせずに訳も分からずに結局そのまま帰って来ちゃう気がして」

 

「……でもね」

 

「ある時、険しいチカパ山を登って、やって来た人がいたんです。ヒラヒラした装いに、緑色の不思議な帽子をかぶった方。

吟遊詩人をされてるのだと、教えてくれました」

 

 

…………。

 

…………。

 

…………すごく、心当たりがある。

 

 

「その方は、『巷で噂の人面鳥』を探していたそうです。今、外の世界ではそんな噂があるって教えてくれました。

他にも英雄の詩とか、物語とか、色々教えて下さったんですよ!」

 

「二日ほど滞在されて、その方は去って行かれましたけど。

―― でも私、おかげで見つけられたんです。

そうだ、外の世界で『噂の人面鳥』を見てみようって。そう言う目標があるなら、きっと外への冒険にも意味があるって」

 

「だから私、思いつく限りの準備を整えて、さあ行くぞって思い切って(ねぐら)を出たんです。

そしたら――」

 

 

 

―― なんか普通に、(ねぐら)の外で噂の人面鳥(ワグナス様)が翼を休めてました

 

「新手のギャグか何か??」

 

そう、私の大冒険は一歩外に出ただけで終わってしまったのです……っ!!

 

「考えてみれば罪深い話ですね。いたいけな少女の決意を一歩目で叩き折るとは」

 

「これ私のせいかなあ……??」

 

 ワグナスってそういうトコあるよね。(ウイスキーの件を思い出しながら)

 

 ちなみにワグナスとしては、そもそもこんなトコに人が住んでるとか普通に考えてなかったそうです。そりゃそうだ。

いきなりノソッと目の前にイーリスが出てきて、ワグナスの方もびっくりした事だろう。

 

「でも、ワグナス様からも昔の話とかいっぱい聞けました!詩人さんがお話してた七英雄の方だっていうのもびっくりしました!」

 

「……一人で俗世に降りないで正解でしたね。悪意のある人間に簡単に騙されそうです」

 

「それどういう意味かな??」

 

 別に嘘はついてないだろう失礼なとワグナスは口を尖らすが、この場合「自分が七英雄です」と言う方も言う方だし、信じる方も信じる方だと思う。

 

「まあそんな流れでワグナス様と出会って大冒険の機会がスカされてしまったんですが、ある時ワグナス様がレースの話を持って来まして」

 

「私の方も地図の整理が出来たのでな。

……で、まじめに探してくれているメンツが見当違いな場所を探り続けてたら流石に悪いだろうと、この地図を渡す方法を考えていた所でこのレースを知ったと言う訳だ。

まあ、これできっかけが掴めなくとも、ウィンディのいい思い出にはなりそうだし……と思っていたら事態が斜め上に吹っ飛んで今に至った訳だ」

 

 そうね。すごい吹っ飛び方してたよね。

俺らなんて物理的に吹っ飛んだしね。

 

「それで優勝か……良い思い出になったかな?」

 

「はい!とっても!!」

 

 まるで孫を見るようなノエルの言葉に、ウィンディが元気よく答えた。

 

 ロックブーケはと言えば、とりあえず目線を少し逸らして溜息をつく。

見るからに完全な子供ポジに収まっているので、ヤキモキしていたような関係では無いと納得したのだろうか。

 

「しかし、『空を行けば楽勝ではないか』なんてノリだったが……蓋を開ければとんでもない。見た目はともかく、数字上は随分接戦だったな。考えがずいぶん甘かったよ」

 

「キャラバン・クライン強かったですねえ……あと、ジークさん達がゴールしてたらアレ確実に持ってかれてました」

 

「不幸なマシントラブルだったな」

 

不幸なマシントラブルだったらホントに良かったんですけどね……!

 

 コウメイが顔を寄せて、「あれ、やっぱり遠隔操作だったと思います?」と半ば確信しきった事を聞く。

 

 タイミング的にそれしかありえないだろ。技術的にもあり得ないけど。

何なんだよあの教授はホント。人間性は天才と引き換えってか?

頼むから天は二物を与えててくれよ。

ワグナスとかコウメイみたいなちゃんとした成功例居るんだからさあ!

 

「ちなみにテミウス、ホントに次を考えてみないか?ティファール以降で開眼したあの形はもっと発展性があると思うんだ私は!」

 

 味を占めたらしい。

賞金がどうのと言うよりも、発展性のある何かにのめり込むのがとても楽しかったらしい。

 

「……次やるとするなら、コース変えてコンテナ3つからを最低ラインにしますかね多分」

 

 少しぶすっとしながら、ボクオーン(テミウス)が言った。

 

「ええー……?『チカパの風』に不利じゃないですかぁー!」

 

「いい言葉を教えてあげましょう。『PLUS ULTRA(さらに向こうへ)』です。

……同じようなのを擦り続けてトップを張れるような発展のない催しは、私が許しません」

 

「ははは、お前らしいな」

 

 なんかいい話みたいな方向に流れているのだが、俺達としてはかなり複雑な心境である。

 

「次……次があったら、また参加させられるんでしょうか……?開催、せめてあと4年は負かりませんか……」

 

「もうテストの度に命張るような毎日はイヤだ……!

頼むから! 考古学を! させてくれよ……ッッ!!

 

 賞金が賞金だったし、持ち込んだ車が車だったから誰も聞かないけども。

答えたって誰が信じると言うのだろう。

 

 

 ―― あのレースに参加したのは、『それが考古学の授業だったから』だなんて……!

 

 




 情報の共有は回想で賄うと言ったな。

 ……アレは嘘、じゃなかった筈なのになんで書いてるんだ……??????

 ちなみにハオラーンはイーリスの事を唄っていません。
それよりも人面鳥の方がインパクトの方がデカかったのと、ホントにほのぼの生きている彼女たちの生活を壊してしまうかもなマネは、流石に憚れるくらいの倫理観は持っていたようです。

 ――なお、その気遣いは我らが新宿には全く向けられない模様。
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