惑星ホクシーズで採掘しまくってたらいつの間にか10日消えていた……
何を言っているのか分からねーと思うが(ry
貰ったコメもほったらかしだお……ゆるゆる返しますすみません。
――まさか再び、この店に来る事があろうとは全く思っていなかった。
しかも今回はジークを伴わず、一人でだ。
モーベルムにある件のレストランを見上げながら、現実感なさげにそんな思考が過っていた。
「やあ、お待ちしていました」
通された部屋には既に、テミウスがドリンクを口にしながら待っていた。
拱手を取りながら挨拶する。
「こんにちはテミウスさん。お招き頂きましてありがとうございます」
「いえ、ぜひ会いたいと呼んだのはこちらの方です。応えて頂きありがとうございます」
理由は解かっていた。
ヴィクトール運河の制圧から端を発するロンギット海の動きと目的。それを自分なりにまとめて論文にしたため、ジーク経由で彼に渡したからだ。
それに対してテミウスがどう言う評価をしたのかは聞いていない。しかし彼の表情は目に見えて機嫌が良く、どうやら随分目を引けたというのは確かなようだった。
こちらとしてはなかなか恐縮しきりである。
機嫌の良いまま彼が言う。
「―― いやあ、素晴らしい着眼点でした。やはり外からの意見と云うものは大変に貴重だ。ある種、私と同じ方向を向いている方のそれは特に。
レースからこっち、どうも素晴らしい縁ばかりやってくる気がします。以前の私がそれだけ蒙昧だったのかもしれませんが」
論文の内容はこうだ。
―― 運河要塞発足前後を見ると、明らかにロンギット海に大きな経済圏が樹立しているのは誰の目にも明らかである。
地政学上、ロンギット海とオレオン海はヴィクトール運河と言うか細い糸でつながっているだけで、仮にこれを分断した場合、バレンヌ、カンバーランド、ヤウダ、いずれにも属さないロンギットと言うエリアが出来上がる。
特徴としてこれらは海で繋がっており、仮に海運状況を向上させる事が出来れば、潜在的に大きな経済圏をロンギット海周辺に作成する事が出来るようになる。
かつては武装商船団一強で彼らがそれを手にしようとしていたのかもしれないが、今は彼らすらも巻き込んでロンギット通商連合という巨大な群体が出来上がった。
そしてそれは運河要塞解放後に『規格』と言う形で世界各地に広がって行った。
彼らを縛るものは法律ではなく、利益である。
利益で繋がっているが故に、そこにルールが樹立している。
もし国と云うものが人を集め、法律を制定し、それを治める事と言うのであれば、ロンギット通商連合は利益という概念を軸に国を造り出しているとも取る事が出来る。
バレンヌ、カンバーランド、ヤウダいずれにも属さない『経済圏』と言う名の国。
それが目的、あるいはその一端であるとしたならば、ヴィクトール運河を制圧した理由は見えてくる。
ロンギット通商連合の基盤を早々に作り上げ、既存の『国』からの干渉を排除する為だ。
その『国』がもはや、他の『国』の影響を受けても揺るがないほどに成熟するまで。
斯くしてそれは成り、今や各国に『経済圏』と言う国が浸透しつつある。
まるで武力を伴わない侵略だ。
そのまま『経済圏』は侵略を続け、『世界征服』を成し遂げるだろう……そんな勢いが確かについている。
―― しかし、ここで疑問がある。
敢えて既存の単語に当てはめ、この『国』を指して『ロンギット通商連合』と呼ぶが……この国には王が居ない事だ。
国の舵取りをするべき政府が存在しない。
あるいはリーブラを指して王とする声も上がるかもしれないが、立場上リーブラはあくまでロンギット通商連合を構成する群体のひとつであって、この国を仕切る立場という訳ではない。
リーブラがあくまで突出しているのは、技術的・商業的に邁進し続けさらにそれを規格化して共有しているからであって、例えば一国の王が臣に命を下すようにリーブラがそれを行っても、他の者たちが同調しなければならない義務は存在しない。
(義理や利益で協力する事はあるかもしれないが)
一般に、国は民を治める為に領地を以て
ロンギット通商連合では、生産業は利益で行われ、防衛すら『自警』や『傭兵』と言う名の利益で回っている。
利益は国が制定した法律ではないが、利益のもとに国の仕組みが回っているのである。
―― ゆえにこそ。
これはある種の『腐らず、長く続く国づくり』という視点で見ることは出来ないだろうか。
利益は人では無いのだから、死にも腐りも変わりもしないのだ。
懸念点はある。
現時点で知る限り、『経済圏』と言う形で国とした前例を自分は知らない。おそらくこの世界の誰もが知らない。完全に未知の世界なのだ。
未知すぎて、この先どうなるかが読めない。考察できる材料がない。
俗にいう『悪徳商人』と呼べるものたちが利益を独占して台頭を始めるのか?
しかし現在、そうはなっていない。
容易に情報が飛び交っているからである。
これがパイの取り合いだとして、誰かを敵に回すような事を行ったら、それを種に
ゆえにこそ、まっとうなやり方で邁進するのが最善であると『リーブラ』が身を以て示し続けている。
そして誰かが成功したやり方なら、パイが消える前に追従して自分もそのパイを取りたいのだ。
―― 例えば悪徳を手段として、目に見えた大きな利益を持ち続けている者があるとするなら、他の者はパイを得るためにその者と同じく悪徳を手段とするだろう。
しかしそうなっていない。
単純に悪徳を手段にする者たちが頼みとする暴力で、リーブラに勝ててないからである。
ある種それは、
そう、そうなっていない……が、しかしこの先そうならないと言う理由も無いように思える。
テミウスと言う要素が頭に居る限りこの図式は崩れないだろう。
しかしそれは賢王が治める国と同じで、テミウスが消えれば反転も普通にあり得てしまう。
そしてそれにテミウスが気付いていない筈が無い。
しかし現時点で、自分はその要素の種に辿り着く事は出来ていない ――
「―― ええ、ええ。大変に素晴らしい考察でした。『完全律』にまで辿り着いてはいないものの、要点を的確に押さえた上で『国無き国』と言う概念に言及している……ここまで考察できるほどの材料など無かったでしょうに」
「いえ、この間貴方にお会いした時の所感は大いに考察に盛り込んでいますよ。それでも私は……『完全律』、ですか?根幹の部分に辿り着けていないのです」
テミウスが笑いながらドリンクに口をつける。
「そりゃあね。流れは作っていますが、まだまだ足りない物が多いのですから。現状から推理するのは無理がありますとも。
……さて、今私の中には二つの相反する気持ちでいっぱいです。
私の目指す『完全律』の概要をあなたに話し、その協力や研究を依頼するべきか。
それとも根幹を話さないまま、『腐らず長く続く国づくり』を研究テーマとする貴方を支援し、『完全律』と共存、または別の道が見えるのかどうかを探るか。
いやあ、本当に悩ましい」
下手な先入観を与えてあなたの発想を曇らせてしまうのは実に勿体ないですし、と随分過分な評価を受けているようだった。
「……しかし、ひとつ解せないのです。あなたはアバロン大学の生徒で、なればこそ私はアバロンの仇敵にすら見える筈でしょう?
貴方が手掛けた論文には、そう言った私の行った負の部分に対する言及があまりにも淡白かつフラットだ。
前回の会合で、それほどまで私に毒が無いと見えたのですか?」
「……どうでしょう。例えばあの中で誰かが覇を唱えるなら、あなたもそれを支える事を選ぶ……そんな選択をしそうだな、とは思いましたが」
口にして、内心苦笑した。
それは、きっと自分も同じだろう事に気付いたからだ。
もしジークが、クジンシーが、覇を唱えたならば。
きっと自分はそれを支える選択をするかも知れないと。
「人と人が争うのはもはや常です。どちらが正義だなんて主張が出来るほど、私はまだ物事を知りません。……もちろん、それでも確たる外道の類と言うものはありますが、バレンヌとあなたの間にあるものはそんな単純な白黒で納められる物に感じなかったのがひとつ。
あともうひとつは……ジークさんが、その『完全律』を知っていて、かつ同調しているようにも見えたから、でしょうか」
論文を渡したジークが、とても嬉しそうに、楽しそうにしていた顔を覚えている。
そしてテミウスと二人で話すように勧めたのも彼だった。
「……あなた、本当に大学卒業したらリーブラに来ませんか?好待遇を約束しますよ?」
「ははは……
それはきっと、金では無いのだろうなと思う。
とても共感したようにテミウスが笑った。
「これは実に手厳しいセリフだ。……まあ、まだ可能性はあると受け取っておきましょう。
―― おや、料理も来たようです。もちろんお代の心配は要りません、どうぞご遠慮なく」
「いただきます」
@ @ @
出て来た海鮮を中心としたフルコースは、見て楽しく、食べて美味な、ロンギット海を代表する様なラインナップだった。
ウニとホタテのジュレ、エビのビスク、タイのポワレと、どれもこれも知らない物ばかりだ。
それらに舌鼓を打ちつつ、会話も加速していく。
主にジークの話になった。
過去の彼の逸話を聞いたりもする。
「……うだつの上がらない会社員、ですか」
「あくまで聞く所によれば、ですが。そも、私も討伐隊参加は後半の方でしたから……その時には既にクジンシーが籍を置いてましたし。当時の彼の事をそこまで知ってるわけでは無いのです。
でも彼、確かに低能ではありましたが地頭は別に悪く無いんですよね。
今ではどーせ、高圧的な上司に委縮しまくって色々能力を出せなかったんだろうと解釈しています。負の同調をそもそも嫌がる人間ですし、そこも後押ししたのだろうと」
「ああー……とても容易に想像できます。あの自信の無さもそこが根幹ですかもしかして」
「その後入った場所も上澄みだらけだったってのもあるんでしょうけどね。三つ子の魂じゃあるまいし、そのまま固まってる現状がもはや私には理解できませんよ本当に。
ともすれば、今では七英雄最強を嘯いても納得は出来る力は持ってますから。地力じゃないからって本人は否定してますけど」
「へえ、そうなんですか?何かジークさんもテミウスさんも、互いに同じ事を言われますねえ」
「……まあ、アレの評価は結局、『自分がどん底』が大前提ですから。そこだけは話半分で聞いても問題ないでしょう。結局持ち上げるしか口にしません」
「ハハハ、私も覚えがありますねそれ」
本人が聞けば「ちゃんとクソはクソだって言ってる」と口を尖らすだろう会話だ。
そう言う話では無いのだと、きっと彼は一生気付かない。
「―― クジンシーの論文は見ましたか?」
「ええ、いの一番に。突き詰めれば結局、『利益』が背骨になりそうな辺りが私の論文と相似してて面白かったんですよねえ。一緒に研究してた部分もありましたし、もしかしたら似てしまったのかもしれませんが」
「『突き詰めれば真理は結局、ひとつの所に逢着する』……もしかしたら、そう言う話なのかもしれませんよ?」
テミウスが面白そうに口角を上げた。
―― バレンヌが1000年も長く続いたその理由について。
ジークはその疑問に、一応の決着をつけたらしい。
非常に興味深く読ませて頂いた論文だった。
大雑把に言うと、歴代皇帝の取った方針に一貫性があり、それを守り続けているからこその帝国歴だと言うのだ。
「――『君臨すれども統治せず、されど手は差し伸べる』でしたか。なかなか粋に纏めた物です」
政治的な影響力と言う視点で見たら実は、バレンヌが直接舵取りをしていたのはアバロンと言う小さい領土だけであり、それ以外の国にはほぼ自治を任せていたような物だったのだと。
モンスターなどのトラブルや困りごとには手を差し伸べてその地域の発展を手伝い、交流を促すために交易や技術を提供し、その見返りとして税を徴収する。
人の興亡は繰り返すものだから、例えばその地域が困っている間は帝国は領土を拡大でき、その恩と実益が残っている間はそこから税を徴収でき、それが無くなれば切れて行く。
他国から侵略を受けたわけでは無いから、かつてバレンヌとなっていた場所に別の国の名前が座っている訳ではない。
だからかつてバレンヌとされていた広大な領土の中に現在、国は小さくまとまった3つしか無い。
バレンヌの王城がこれをノウハウとして意識してやっているのかは分からないが、結局のところバレンヌは
そして今また、皇帝陛下は各地に足を運びその問題を解決し、再び必要とされ始めている。
だからバレンヌが滅びる時が来るとすれば、それはアバロンすら必要とされなくなった時なのだという。
そして、それを指してきっと人は『滅亡』と言う単語を使う事はないだろう。
それはある種の隆盛の証なのだからと。
「いくつか疑問点やアラは浮かびますが、とても面白い着眼点でした。要は『領土拡大』とは名ばかりの『同盟締結』に近い訳ですね。こういう時、各地と決めごとが衝突して税収すらもままならなくなりそうですが、いきなり国のトップが赴く事でその辺りもうまく緩衝しているのかもしれません。
……隆盛しているバレンヌの皇帝にはなりたくないですね。忙殺される未来しか浮かびません」
「だからこそ、一度は北バレンヌしか残らなかったのかもしれませんね。皇帝陛下とて人間です、出来る事には限界がある。バレンヌはきっと、ある種それを
王城の中に入った訳ではないのでこの辺りの方針や空気感は解からないが、あるいはそこまで的を外してはいないのではと思う。
もしそうならば大変面白い話だ。
王城をアレルギー的に嫌う人間が、こんな論文を書けるほどに王城を理解していると言う事になる。
「―― バレンヌは、外様の私から見ても素晴らしい国です。ともすればその政治形態は、私の目指す『完全律』に似た物があるのかもしれないと、思うようになりました」
「……」
テミウスがカトラリーを置く。
「……コウメイさん、私はね。ある種自分の探求心の為に『完全律』へと向かっています。
ロンギット海と言う絶好の場所があり、小規模の国が3つしか無いという絶好の時代であり、ゆえにこそ完全律を敷ける道のりが見えてしまった。だからこそ実行に踏み切ったのです。
ハハハ、これでバレンヌがバレンヌでなければ完璧でした」
「――『完全律』はまだ完全ではありません。おそらく、私が見えていない瑕疵がある。それを見極める為にも実験的に敷く……そう言った側面があるのです。
『完全律』は性質上、『国』と言う要素とは相容れません。ゆえにこそ、その過程において反発もあるでしょう」
「その結果、反発のナイフが私の胸を貫き『完全律』が頓挫したとしても……私はそれを受け入れるつもりでいます。何故なら、そうなったなら結局、『完全律』とはその程度であったという証明に他ならないからです。
世が本当に『完全律』を望むなら、例えそうなったとしても『完全律』は続いていくし、そうでないなら消えて行く……そうでしょう?」
―― それは、ある種の殉教者にも見えた。
そしてある種の、扇動者にも見えた。
「……反発への抵抗は、しないのですか?」
「もちろんしますよ。目指しているのは本気なんですから。しなければただの無気力無責任じゃあないですか」
「本来これに他の仲間を巻き込むつもりはありませんでした。しかしクジンシーは手伝ってくれました。……そしてその結果、私は彼からかけがえのない友をこの手で奪ってしまった」
「……」
―― 大剣のヘクター。
ヴィクトール運河攻略時に失った、アバロンの傭兵にしてジークの友だった男。
流石にその名を聞いた事はあった。
とても気持ちの良い人間だったと、ジークは後述していた。
テミウスの顔には苦渋が浮かんでいる。
「……こういうのも、『反発』のひとつと定義しておきましょうか。『完全律』の是非が問われているという事なのでしょう。
既に賽は振られているのです。私は
―― あとは結果が全て教えてくれます」
顔を上げる。
「―― 決めましたよ、コウメイさん。貴方には『完全律』は伝えない事にします。
ぜひともアバロンで、あるいはそれ以外のどこかで。あなた自身のテーマを完成させてください。そしてそれを見せて欲しい。私はそれを全力で応援しましょう。
『完全律』に同調すれば、そのせいで出来なくなる事もあるでしょう。あるいは私が切り捨てた『国』と言う要素が必要になる時が来るかもしれません。
そんな時、あなたの思考が制限されてしまう事を私は望みません」
「その結果、あなたが私の前に立ちはだかるような事態になってしまったならば……そうですね」
「まあ……手加減ぐらいはしてあげますよ」
……複雑そうに笑うテミウスに、「お手柔らかにお願いします」と同じく苦笑を返すしか出来なかった。
今日(25/05/28)からワイルズもアプデが入って、素手でモンスターを駆逐できるようになるのだったか……
また、時間が溶けて行くなぁ。