マジで寝る間も削ってアレばっかやってました。
何なんだあの沼っぷりは……要素が多すぎて150時間やってもまだ中盤だぞオイ。
まあその分バグも多いんだけど。
気付けば1か月溶けてました。
しかもこの上、Steamでサマーセールだとう……っ!?
―― ぼくはついてゆけるだろうか。
時間が次々と溶けて行く世界のスピードに。
サバンナを南下すると、メルーと呼ばれる厳しい地が広がっている。
強い日差しと渇いた砂、そして無限に続くと思えるような終わりのない砂丘平原。
おまけに危ないモンスターだってしっかり居る。
歩くだけで体力を奪う過酷な場所だが、しかしそんな地でも屈強に生きている人たちがいる。
そこには両手では足りない数の、その地で生きて行くための様々な工夫や経験が伝承され、今なおそれは積み上げられ続けている。
日差しを防ぐのみならず、巻き方によって暑さ寒さを抑止し、発汗を抑え砂よけの効果すら持たせた独特な被り物ターバン。
二重構造にして間に砂を詰めた壺に水を含ませることで、気化熱により温度を下げる機能を持つジーアポット。
そう言った発明品だけにとどまらず、水の見つけ方や砂漠の歩き方など、その所作のひとつひとつが高度に洗練されている。
サバイバル術には自信があるが、最終的には『吸収の法』に頼ってしまう自分達では、彼らを前にしたら流石に道を譲るだろうなとノエルは思う。
『吸収の法』が無くとも……ましてや、『同化の法』が無くとも。
どんな過酷な環境であっても、伝え、受け継ぎ、生きて行けるだけの強さが人にはあるのだ。
王城の件を探りながらも、ノエルはそんな『現代の工夫と文化』を学ぶのが存外楽しかった。
なんだかんだ東側をメインに探索を続けていたのは、そう言う側面もあったからだ。
ロックブーケも同じく東側をメインに探索をしていて、一緒にいる事もあれば暫く分かれたりもしていた。
彼女は彼女で、サラマットの薬草や伝承、文化に中々興味をそそられているらしい。*1
互いに成果をまとめる時間はなかなか楽しく、そしてやはり探すならば東だなとつくづく思った向きもあった。
どうも東の地は、あくまで『比較的』と言う枕こそつくが、王城時代の遺物や文化の影が色濃く残っているように見えるのだ。
―― そんな放浪と調査の旅路の中で、ノエルは一匹のモンスターと出会う。
丁度ロックブーケとは別行動をとっていた、一人の旅路のさなかだった。
@ @ @
すべてではないが、モンスターにも知恵を持つものがいる、と言うのはわりと常識である。
例えばゲットーと呼ばれるウサギの亜人種は種族ぐるみで知能が高く、道具を扱い社会性をも持っている。ゴブリンなんかもその典型か。
中には人語を解するものだっている。*2
変わり種なんかになると、人間からモンスターに変じたなんて例もある。*3
知恵がついたモンスターは、なんかレベルが高そうで手ごわそうというイメージがある。
その知恵でもって他のモンスターより抜きんでて、ある種のリーダー格になっているイメージだ。
実はそんなことはあまりなく、どちらかと言うと『こす狡い』と言う方向に倒れているので、困難からは逃げて他者を盾にして楽と悦を取るために力が低い、そんな奴の方が多い。
―― つまりはまあ、人間と大して変わらない訳だ。
知恵があっても意識が高くないと大体そうなる。
特にノエルは、そんなグループの中から必死になって抜け出して、ついには自分たちと肩を並べた人間を知っている。
だからこそ大切なのは、能力だとか人間だとかモンスターであるとかそう言うのではなく、『かくありたい』と思い続ける意識にこそあるのだと信じているのだ。
だからこそ、その意思を示す物には手を差し伸べたい。
果たして、人はそう言う考えを指して『甘さ』と括るのだろうか……?
メルー東。サラマットに差し掛かるような箇所は流石に砂以外の景色も見えて、小さな湿地帯となっている地域もある。
その一画には、モンスターと呼ばれるほど獰猛でも凶悪でもない河馬の小さな群れが生息していたりする。
時に、大河馬と呼ばれるモンスターがいる。*4
本来草食動物である河馬が、縄張り争いに負けるなどの理由からか獣の死肉を口にし始め、モンスターの死肉へとステップアップし、ついにはその瘴気で暴走し、食性を忘れ人や動物を襲うようになる……らしい。
元々雑食に耐えうる胃腸なのだろうか。
上記の例ではその個体数は極めて小さいように思えるのだが、それでもそれなりの数が確認されている。
果たしてモンスターと果てたそれに倣ったものが多かったのか、あるいは子でも成したのか。
―― で、そうなった者は本来の同族ですら躊躇なく襲うようになる。
ノエルがその騒動に通り掛かった時、既に河馬の群れはほぼ全滅していて、まるでなぶるように殺戮をしていた大河馬が、残った者に牙を向けていた。
あらかじめダメージを与えて逃げれなくしていた辺り、確信犯だろう。
血を流しながらのたのたとその場を離れようとする小さな河馬に、今しがた絶命した別の河馬を咥えて投げつける。
―― もはやその光景は、自然の理の範疇を超えている。
「……醜いな」
言葉通り、手を出したのは見るに堪えなかったからだ。
まるで悪徳に転んだ人間のような真似をする大河馬が、本当に人間の弱者を嗤いながら襲っているような、そんな光景を思わせるほどに。
「―― 力が理であり権利であるのならば、貴様もこの扱いには文句はあるまい」
下衆風情に、表道具は用いぬ。
まるでそう言わんばかりに、ノエルは大河馬の頭蓋を一撃で殴り割った。
文句が無いどころか、どうせ相手が自分より強いと判れば途端に手のひらを返すような輩だと見切った上での行動だった。
本当に、人のそれを思い出させて嫌になる。
無論、そんな人間だけではない事も分かってはいるのだが。
―― そして、去り際。
怪我した体を押したまま、ノエルに着いて来ようとした個体が居た。
生きるのに必死なのはわかるが、その後の面倒まで見るつもりはないぞ ――
理解出来ないだろうなと思いつつも、そう口にして無視して去ろうとも思ったのだが。
その個体が自らを見上げるその『目』が。
弱者が強者に『縋る』ような物ではなく、誰かを利用して生き残るような『媚びる』ような物でもなく。
自らの非力を認め、しかしそこから抜け出したいと願う『立ち向かう』目だったから。
―― ノエルはその目に、かつて同じ目をしていた仲間の事を想い出してしまったのだ。
ノエルは無言で踵を返し、砂漠に向けて歩き出す。
その個体は、ケガをしたまま歯を食いしばり、小さく呻きつつノエルの後に続いていった。
心なしか少し、速度を落としたノエルの歩みに。
ケガを理由に足を止めるのも自由。
それでも歯を食いしばって着いてくるのも自由。
ノエルはただひたすらに背中を見せ続けた。
―― そして厳しい砂漠の環境とケガに耐えられず、意識を失い倒れ伏したころ。
「……倒れるその瞬間まで、意地を通して見せたな」
ノエルはその個体に『吸収の法』を施した。
その命を繋ぐために、吸収材料としていくばくかの自らの血を用いて。
@ @ @
「―― 元の所に返して来てくださいな」
「いや、流石に犬猫と同じ扱いはひどいと思うのだが」
ロックブーケの第一声はひどかった。
「お兄様、ご存じありませんの? 河馬って大食いで獰猛で糞がすごいって聞きますわよ? 生き物を飼うって、そう言うのを何とかしながら最後まで責任を持たないといけませんの」
「捨て猫を拾って来た子供への説教か??
いや、お前と合流するまでにすでに幾分か過ごしているからな??
知能が高いから社会性は理解しているし、食べ物も俺が用意する時もあるにはあるが、基本的に自分で何とかしてみせてるからな??」
「……。
……それ、確実に河馬から変わり始めていますわね」
「……まあ、な」
砂漠に適応し、道中のモンスター戦にも普通に参加を始めている。
まるであの頃のクジンシーの道のりを歩いているな、とノエルは思う。
それもそのはず、既に何回か『吸収の法』を施していた。
と言っても、死体ひとつ取り込ませるのではなく、血や肉の一部を合わせる程度のものだが。
戦い方自体も学んで行っている。
まだ体に変化はないが、戦力だけ見ればすでに群れをほぼ壊滅させた大河馬とも戦えるだろう。
「……お兄様。お兄様はきっと、この河馬とあの馬鹿を重ねているのだとは思いますけども」
「……」
図星である。
「いくらこの河馬とあの馬鹿が、字面も見た目もまったく似ていたとしても ――」
「あの、流石にそれはヒドすぎると、」
「―― それでもやっぱり、人と獣は違うものですわよ?」
……。
きっぱりと言い切るロックブーケに、ノエルはしばし沈黙した。
そうなのだろうか、と心の底で火花のように思ってしまったのもあった。
王城の連中が弱者を嗤う様と。
盗賊連中が善良な民を
あの大河馬が壊滅した群れを弄ぶ様が、重なって見えて仕方がなかったから。
「……確かに、違うのかもしれない……」
ノエルは絞り出すように口にする。
チラと思った事とは逆の事を。
「……でもな。やはり俺は、意思を示すものは尊重したいんだ」
そこだけは、しっかりと言えた。
相手が誰だって変わらない。
それが自分であり、そして誇りなのだと信じたい。
ロックブーケはしばし瞠目すると、軽くため息をついた。
「……わかりました。お兄様がそうおっしゃるのならば、私もこの件についてはこれ以上踏み込みません。
―― でも、糞の処理はしっかりとよろしくお願いしますわね」
「だから犬猫じゃないってば!!」
@ @ @
元々、ノエルはその河馬に名前はつけていなかった。
呼ぶときは「おい」とか「お前」のような二人称代名詞で事足りたし、そもそも『名前』と言うのは人間だけが使っている独特の文化だ。
獣にそう言った概念が無いならば、無理に人間に寄せない方がストレスが無いだろうと言う考えだった。
もし必要となるなら、本人(?)が望むか作るかしてくるだろうと。
かくして河馬はさらに進化を遂げ、呪法すら操る力を得るとともに人語を口にするまでに至った。
本人が望む、「かくあるべし」と言う姿にその体を変じた上で。
―― 河馬の大きな口の中に、人の顔が生えたのである。
ロックブーケはもちろん、あまりの絵面にノエルもドン引きだった。
……で、本人がこれぞ節目であろうとばかりに自分で名付け、名乗ったわけだ。
「『河馬人間』‥‥‥って、お前それで本当にそれで良いのか」
「おれを指す最も的確な名前だと自負しています」
「……いや、まあ……うん。その通りだとは思うけども」
こういった感覚的なギャップは、もはやどうしようもないのだろうなと思う。
余談ながら、その後も「おい」や「お前」は適度に多用されて行く事になる。
―― そして結局、決定的だったのはその『感覚的なギャップ』の部分だったのだろう。
もはやどうしようもなかったが故に、『それ』は起こるべくして起こったのだと言える。
なにげにタイトルに採用していなかった上野さん。
これで山手線コンプリートとなります。良かったネ!
ちなみに時系列では、SBRレース後にモーベルムのレストランで新宿達と会食する前の話となっています。
この後の展開は……まあ、想像がつく人沢山いるんだろうなぁ。
SFC原作では、河馬人間は悪人の体が奇病で変じてああなったと言う設定がありますが、リベサガでは人間の顔を持つ河馬として説明されているそうです。
本作では後者で設定しています。