「良いですか! 基本的に戦いは数です! しかし我々はわずか7名、翻ってタームの数は計り知れません。そのまま戦えばいくら個の戦闘力が高くても押し流されるでしょう。
――しかしここはタームの掘った巣穴の通路。奴らはその巨体のため、我々に取っては余裕の横幅でも奴らにとっては1体、良いとこ2体しか自由に動けません。そこを突きます。
我々は陣形を組み、一体に対して複数人で仕掛けます。タームの数が数百として、数百vs我ら7名で戦うのではなく、1体vs我ら7名を数百回行うのです。
さすればさした消耗もなく、タームの数を減らせましょう」
「っしゃあああああああああ!!!!」
言うが早いが、ダンターグが突っ込んで行った。
襲い掛かって来るタームの攻撃なんぞ知ったこっちゃねえとぶちかまし、一人で数匹を串刺しにしても尚止まらずに邁進して行く。
ランスが振り回される度にタームの体が千切れ飛び、紫の靄に変わって消えて行った。
――ボクオーンが、何かを悟ったスナギツネのような顔をしていた。
目の端に何か光ったような気さえする。
「いや、まあ、その……気にするな。お前はちゃんと正しい。一体に対し複数で当たるのは有効な戦術だ、ちゃんと心がけよう……うん」
ノエルのその慰めは、むしろ傷口を広げる類のそれに思えるけども。
「ダンターグ! 先攻は構わんがあまり離れすぎるなよ!」
「ふはははははは! ぬるい、ぬるいぞテメエら嗚呼ああああッッッ!!」
ワグナスの警告は果たして、ダンターグに届いたのだろうか。
スービエが何とも言えない表情で「……カバーに入るぞ」と駆けて行く。
彼は割と振り回すタイプに見えたが、それよりもブッ飛んだ振り回す奴がいたら、逆に自分からフォローに入るような一面もあるらしい。
ボクオーンが努めて深呼吸していた。
「……ええ、ええ。あのアホは無視しましょう。どうせそのうち疲れて失速します。クジンシー、ロックブーケ。あなた方の戦える距離は?」
「私は術法も収めてるわ。遠近共に戦えます」
「得物による近、中距離だ……俺は前衛に行くよ」
――あんまり
流石にそこまで口にしなかったが、あるいはその心の内はバレているかもしれない。
フレンドリファイアされても知った事かとすら思ってる。
「俺とクジンシーのペアで前衛に入ろう。ワグナス、問題ないな?」
「ああ、俯瞰とサポート、後方の警戒はこちらで行う」
つまりは、こういう形になった。
▲
▲ ●
← ★
◾️ ●
◾️
▲:ダンターグ&スービエ
■:ノエル&クジンシー
●:ボクオーン&ロックブーケ
★:ワグナス
前衛2人×2枚で突破力と流動性を確保。
中列、後列で俯瞰とサポート。
さらにダンターグの突出に合わせて、こんなふうにも変化させるわけだ。
■ ●
← ▲ ▲ ★
■ ●
▲:ダンターグ&スービエ
■:ノエル&クジンシー
●:ボクオーン&ロックブーケ
★:ワグナス
丁度今がこの形か。
突貫かつ大雑把に組んだにしては、結構良い形なんじゃないか?
俺はノエルのカバーを考えて動いていれば良い。
そうすればノエルが、俺たちペアが効果的に戦えるように引っ張ってくれる。
それにこの形なら、たとえバックアタックされたとしてもワグナスが反転すれば普通にカバー出来るしな。
――後の細かい運用は、戦いの中で考える。
@ @ @
タームの吸収は元々想定されていた。
ボクオーンは「今回の作戦目標はタームそのもの」と言ったが、これはタームを吸収して力を上げる、およびそこから情報を取得するというのも勘定に入っている。
ここはタームの巣だけあって、シャベル持ってる奴も剣を持ってる奴もわさわさいる。
俺は『吸収の法』の検体である。
その隙があれば積極的に吸収し、どうなるのかをこの身で推し量るのが役目だ。
剣を持っている奴を5体ほど吸収する頃には、俺の剣が多少手に馴染んできた気がした。
……単純に、戦闘経験を積めて来たという事なのかもしれないが。
「意識の変化は、自覚は無いなぁ‥‥‥体も別に、変な感じはしない」
「人を食べよう、という気には?」
「ないないないない!」
恐ろしい仮定を提示されて思わず狼狽してしまった。
しかしそうか、人食いのモンスターを吸収するなら、思考が人食いによっても何らおかしくはない訳か。
なんだろう、そうなったら最終的に血とか内臓が美味しそうに見えてくるのか?
……考えたら吐き気がしてきた。
「……私見なんだけど」
「うん?」
「こいつら多分、高度な意識は全然持ってねえよ。浸食される感全然しねえもん。生物のシステム的に動いてるだけだと思う」
「知能は見た目通り、という事か……しかし」
ノエルは経験から否定を口にする。
過去にクイーンを討つべく、スービエとダンターグを陽動に使ってノエル率いる赤竜隊が下層エリアへ突撃しようとした事があったらしい。
……その時は下層エリアへの道を全て塞がれ、クイーンへ辿り着く事も出来なかったそうだ。
「タームの知能は、軍略においては人間の上を行く。恐ろしいほどの統率、人間の知恵を欺く狡猾さ。それが確かにある事をあの時に感じた」
「……いえ。あるいはその話とクジンシーの所感は、矛盾しないという事かも知れません」
「ボクオーン?」
「なるほど、つまりこう言う事か。
『我々は常に、タームではなくクイーンを相手にしていた』」
「……??????」
ワグナスが口にした禅問答のような結論に、理解の意を示せたのはボクオーンだけだった。
怪訝な空気の中、「すまん言い方が突飛過ぎた」とワグナスが苦笑する。
「――つまり知能があるのはクイーンだけで、タームどもの行動はひたすらそれに従っているだけだという事だ。アリの行動学に照らして元々それは示唆されていたが、しかし我々が想定する以上にその仕組みは強く、タームは機械的なのかもしれない」
「……なるほど?」
ダンターグの横薙ぎがタームの頭を2体分破裂させる。
あれだけ暴れ回っておいて、その挙動には微塵も疲れを感じさせない。
「……で、もしそうだとして。それは俺たちにどう関係してくるんだ?」
‥‥‥。
こいつ、絶対話に飽きかけている。
「大いに関係してきますよダンターグ。つまり群体レベルで動くタームの戦略については大いに警戒すべきでも、個々で動くタームには変化する戦術に対応できる知能が無いと言う事になります。
……それが意味する所は、」
ボクオーンの
前列に居たターム3体が動きを止める。
『足がらめ』と呼ばれる大地の術法だ。タームの足が大地に沈み、その前進を縫い止めていた。
後方のタームは前列が詰まって前進できず、右往左往している。
……そして、その状態からタームは脱出できずにいる。
「……ああ? 詰まってる奴ぶっ殺すなり、術者に物投げるなりやりゃあ良いじゃねえかよこいつら」
「それをやる知能がないんですよ。だから特殊な戦術をされると対応出来ないんです。……なるほど、これは貴重なデータだ」
「あの……ボクオーン様? それでもタームは、幾つかの戦術にも対応してくると言う話を聞いたことがありますが。それ故、同じ戦術を使い続けて完封するのは難しいと」
「ええ、その通りですよロックブーケ。だから
思えば、前に俺が殺したあのターム。
口の中に岩突っ込んでやった訳だけど、対応が確かにお粗末だったのを思い出す。
俺を食うのが目的だったんなら先に俺を殺してから岩を取りゃあよかったのに、俺が態勢立て直してる間もずっと岩をカリカリしてたもんな。
普通、捕まえた獲物が逃げようとしたら何らかのアクション起こすだろうに。
「……なあ、アリってどうやってコミュニケーションを取るんだっけ?」
「一般に、フェロモンや触覚をぶつけるなどしてコミュニケーションを取っていると言われている。タームがそれに準ずるかは分からないが……未だに対応出来ていない所を見ると、リアルタイムでやり取りできる手段ではないと言う事だ」
――おそらく、今。
状況が進展せずに
それが意味する事は……
「これは……ワグナス!」
「ああ。このまま適当にタームを間引いたら、余力のあるうちに撤退するぞ。
そして次にぶつかる時……我々の手は、クイーンの首に届く!」
今までどうしようもなかったクイーンへの道。
その突破方法に、ついに光明が見えた瞬間だった。
奥義、捏造乱舞。
人間状態の七英雄のスペックもタームの生態も、描写されていないという事は何で味付けしても許されると言うこと……!
……リベンジオブザセブンエアプなので、もしかしたら描写されているのかもしれないけども。
もし描写されていたらその、ほら、その……
……みのがして♡