新宿はがんばる   作:のーばでぃ

72 / 74
 『ラダーン祭り』とはラダーンを慕った者たちが開いたからこそ壮大な美談になるのであって、例えばラダーン自らが闘争を満たすために開いたのであれば、それはもはや、ただの大迷惑なのである。



災禍:ダンターグ

 

 ―― バレンヌタイムス ○○○○年△△月□□日 号

 

 クライン・カンパニー 世界初の運搬用飛行装置を開発!!

設計主任はソーモンの発明家ヒラガ3世。金属で構成した外殻の内側に空気より軽い水素を詰めた袋を多数配置し、回転羽で風を起こして前進する。

ヒラガ博士はいわゆる『教授クライシス』事件より出回った『魔導エンジン』の力であれば空を飛ぶ機械を作れると確信して研究を続けており、この研究にクライン・カンパニーが投資を行って本機が実現した ――

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ―― 大開拓時代。人は今の世をそう呼ぶだろう。

『教授クライシス』事件から世界が変わった。世の中が加速した。

 

 火付け役となった人間が誰だかは未だにわかっていない。

その設計図が第一回SBRレースにおいて前半猛威を振るった異色チーム『大大大天才教授』の駆る車であった事から、その関係者が下手人である可能性が強いとされている。

しかし謎の『教授』は行方不明、助手の『コウメイ』は死亡確認済み、もう一人の助手『ジーク』はアバロンから姿を消して同じく行方不明とされている。

しかし設計図に記載されている開発者『教授』の二文字から、このオーパーツじみた技術の拡散は『教授クライシス』と呼ばれていた。

 

 多少荒れた地面程度であれば、難なく走れる車が作られ始めた。

車の通れる道を均す事業が出来上がり始めた。

効率的な輸送方法が加速的に開発され始め、ついにその技術は空にも手を伸ばし始めた。

 

 ―― そして。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 空気を直接振動させるような、そんな独特な音だった。

 

「……あ?」

 

 珍しく比較的おとなしい空に、大きく浮かぶ楕円体の物体。

見たことのない明らかな人工物。目を引くには十分過ぎたそれを見上げて「なんだありゃあ」とダンターグが困惑の声を上げる。

 

 その体は筋肉流々として赤黒く、頭には巨大な二本の角が生えていた。

両肩には無数の突起が角のように伸び、下半身はまるで象のような四本の足が氷の大地を踏みしめている。

 

 何よりその巨体である。

この世のどんな巨大な生物を眺めても、アレには敵わないだろう……そう思わせるような威容であった。

 

 そして両手には、その(サイズ)に見合う盾と突撃槍(ランス)が携えられていた。ここ数十年の試行錯誤でやっと完成した、幻体による一品である。

 

 

 一目見てわかる。

これは、とんでもなくクソヤバいモンスターだと。

 

 

 開拓と宣伝のために空の冒険を続けていたヒンデンブルグ号は、凍った大地を進むそれを見て「うあぁぁぁぁ……ク、クソヤバい化け物が氷海を練り歩いてる!?」と慄いていた。

上空からでも一発でわかるその巨体と威容、なんならその傍らに頭を串刺しにされて大穴が開けられた哀れな海竜の死骸まで横たわっている。

しかもその化け物がバッチシこちらを見ている。

 

 ―― ヒンデンブルグ号の不幸は二つ。

 

 ひとつは、ダンターグと遭遇してしまったこと。

そしてもうひとつは、空のモンスターに対抗するために()()()()()()()()()()

 

 

―― しゅっ、主砲用意!!目標眼下にいる巨大モンスター!

 

 

 雉も鳴かずば撃たれまいに。

まして、鳴くための声帯がついていたのがいけなかった。

さすれば黙って逃げる事も思いついていただろうに。

 

 高高度から撃ち下ろされる対中型鳥獣モンスター迎撃用カルバリン砲の砲弾をその体に受けて、ダンターグが「……ほう?」と口角を上げる。

 

 上空にいる標的相手に何も出来ない。そんなダンターグは、最早いなかった。

 

 まるで巨大なバリスタのように上体を引き絞り、万力のごとき力で同じく巨大な突撃槍(ランス)を振り被る。

次の瞬間、爆発音のような衝撃すら伴ってその突撃槍(ランス)が解き放たれた*1

 

 音の壁をも超えんとばかりに絶望的な速度で放たれた死の矢がヒンデンブルグ号を容易く貫き、水素を詰めていた袋が衝撃と摩擦熱で燃え上がり爆発。

空で紙を燃やしたかのように火を上げ分解していくヒンデンブルグ号を見て、「なんだ脆いな、つまんねえ」とダンターグは吐き捨て踵を返し、意識を先ほど倒した海竜に向けた。

 

 ……生存者は、いなかったと言う。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ―― バレンヌタイムス ○○○○年□□月△△日 号

 

 ナゼールに潜む脅威!巨大な四つ足の鬼、その正体とは?

かつてより『赤い巨象が氷海を彷徨っている』とナゼールに住む人達の間で噂になっていたモンスターがいる。

曰く、燃える髪とか赤黒い肌とか、伝聞が伝聞を呼び一種の都市伝説のようになっていた話だが、ここ最近の技術の発展によりナゼールに進出した人間が増えた事で、その話の真偽がだんだん分かってきた。

発見率の少なさや生息地の厳しさに起因して現時点においても様々な姿で語られているその怪物であるが、幸運なことに(あるいは不幸なことに)我がバレンヌタイムスはその姿を目撃する事に成功した。以下がそのスケッチである。

 

 ~中略~

 

 世には竜という巨大で獰猛で危険なモンスター種がいるが、そのモンスターは竜よりもさらに巨大で獰猛で危険に見える。あまつさえその巨体に見合った盾と突撃槍(ランス)まで備えている。

到底、人類がどうにかできるような相手には見えなかった、と言うのが目撃した特派員の所感である。

このモンスターがふと気まぐれでナゼールを北上する気にならない事を祈るばかりだ。

 

 先の通りこの特派員はこの地を飛んでいた『ヒンデンブルグ号』墜落の調査のために訪れていた訳だが、激しい損傷を受けて堕ちていた『ヒンデンブルグ号』とこのモンスター、その関連性について考える事は果たして的外れた事なのだろうか ――

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「ほほう……中々うまく書けてるじゃねえか」

 

 新聞に書かれている内容とそのスケッチを見て、ダンターグは上機嫌だ。

まあこういう反応になるだろうなと思っていたクジンシーは、あまりにもその通りな反応に半ば呆れ気味だった。

 

「バレンヌタイムスは、バレンヌの秘密諜報機関の一部だって噂を持ってる新聞社だ。

ホントかどうかはわからないけど、『対処しなければならないほど危険なモンスター』と判断されたら討伐隊が組まれる可能性がある」

 

「そうだろうな。ワグナス達がやられたんだろう?よほど強い奴らに違いねえ……楽しみだ!」

 

 ダンターグの目線が『ナゼールを北上する気にならないことを祈る』のあたりを読み返した。

つまりナゼールを北上すればOKという事だな把握した、と筋肉で出来たダンターグの脳が導き出す。

バレンヌタイムスは泣いていい。

 

 しかし、クジンシーの表情は憂鬱だった。

 

「……俺、やだよ。みんな一人でバレンヌと戦ってみんな死んでった。ダンターグも居なくなるのか……?」

 

 漏れた本音がまるで幼子のようで、思わず苦笑が飛び出てくる。

 

「人生ってのは突き詰めれば、結局()()じゃあねえか。満足の上で死ねるならそれは大往生と一緒だろう?お前のように考えられちまうのは、俺にとっちゃあ的外れもいいとこだ」

 

「ダンターグ……」

 

「そういや『血の誓い』が見えて来た訳か。元々どこかにケンカを売るのを想定した誓約だったろうが。既定路線だぜ、この状況は」

 

「……え?」

 

 軽く言ったダンターグの言葉に、思わずクジンシーが声を上げる。

 

 ―― 『血の誓い』

ワグナスの用意した七英雄の最終セーフティだ。

 

 七英雄はみな、本体から離れ幻体で活動している。

故に幻体が殺されても長い時間が経てば復活できるが……本体が殺されたらそうはいかない。

故に6人の幻体が殺されたら最後の一人は例えそのとき何をしていようとも最優先で本体の守護に動かなければならない。

……そう言う誓約であるが。

 

「誰かにケンカを売るのを想定していた、ってのは?」

 

「いやこの誓約、セーフティーにするなら最初から破綻していただろうが。

ケンカ売る前提じゃなけりゃあ成り立たねえ……なんだお前、気づいていなかったのか?」

 

 ダンターグの言にクジンシーはちょっと考えてみるのだが、頭の中には「?」しか浮かんでこないのである。

呆れたようにダンターグが言う。

 

「……良いか、考えてみろ。俺たちは幻体だから、幻体が生きてようと死んでようと本体やられたら終わりだ。そして本体は無防備だ。そこに意識が宿ってないんだから」

 

「うん。だからこその『血の誓い』だろ?守らなきゃって」

 

「だったら『最後の一人になったら』なんて条件付けるべきじゃあねえだろーが。

ローテするなり代役立てるなりして『常時』守らなきゃダメだろ。違うか?」

 

「……あ」

 

 言われて気付く。

確かにこのやり方は、最終セーフティとするなら破綻していた。

最も警戒すべき『七英雄の本体を直接狙っている存在』に対しては無防備なままなのである。

この誓約が機能するとしたら、それは『誰かが七英雄を追っていて幻影を撃破し続けている』という状況でしかありえない。

 

 そして大神官がこの地を離れて随分な時が経っている昨今、そんな状況になるとしたら『七英雄が世界にケンカを売った』ぐらいしかありえないと言う訳か。

 

 いや、あるいは大神官が離れ際に『七英雄は害悪なので殺すべし』と喧伝していて、それが世界の常識となっていた場合も当てはまりそうだ。どちらかというとワグナスが想定していたのはこちらなのでは?

 

 本体は最後の要塞(ラストダンジョン)に隠されている。

本当はここからさらに守護役を持ってくるなりローテを決めるなりしたかったが、そんな人材都合よく出てきたりはしないし、ローテもまじめにやるやつ少なそうだし、久々のシャバを堪能できない奴が居るのはあまりにもあんまりだ。

だからこの点については諦めた、という事なのかもしれない。

 

 何にせよ、この『血の誓い』が発動する状況は随分特殊なケースのように思えた。

ダンターグはその事実を、『世界にケンカを売ることを想定したため』と解釈したわけだ。

 

「どうせやるならハデに行くのが良いな。

バレンヌだけじゃねえ……世界中の強え奴を相手に力比べだ!俺は自分が最強であると、最強になると信じて力を付けて来たが……それを証明できる場所が出来るって訳だ。

クククッ……盛大な戦祭りだぜコレは……!!

 

 心の底から滾っている様子を見せるダンターグを見て、もはや引き攣るしかできなかった。

ここまで来たら止めるのは無理である。

非常にハタ迷惑な『ダンターグ・フェスティバル』の開催が確定してしまったのである。

死人が出るとかそういう話が些事になってしまったのである。

 

 しかもそのダンターグ、ご機嫌のままとんでもない事を言い出す。

 

「丁度良い、お前も参加しろクジンシー!いっちょもんでやる!!」

 

「はあっ!?!?ちょっ……待って、俺に敵に回れって言ってんの!?!?このシチュで!?!?

よりによって皆が倒れて行くのを見ていた俺に向かって!?!?」

 

捨て置けそんな(こま)けえ(こた)ぁ!!

クジンシー(プラス)世界中の猛者チーム VS このダンターグだ!!はっはあ、どう考えてもドデカい祭りになるしかねえな!!

しかも相手がお前となりゃあ俺も安心してリミッター外せるぜ、やり過ぎだと思ったらソウルスティールでも使えば良いんだからな!!

で、最終的に残った方が『血の誓い』を履行する……おいおい万全の布陣じゃねえかよ」

 

こいつ最悪過ぎる!?!?

絶対『血の誓い』の履行者になりたくないだけだろ!?!?頼むからワグナスとかノエルがいる時にやってくれよそう言うのはさぁっ!?!?」

 

「もういないんだから仕方ねーじゃねえか。

難しく考えてるんじゃあねえよ、せっかく無為に死んでもリカバーできる環境なんだぞ?

男ならド派手に散ってナンボだろうが。

あと『血の誓い』は任せた。ぜったい暇を持て余すだろうし」

 

ここまで最悪なセリフ聞いたことないよぉっっ!?!?

 

 魂の叫びだった。

しかし本人にとってはどこ吹く風であった。

とてもウキウキした様子でランスをブンブン振り回している。

 

 そして、ふと。

 

「おう、3年ぐらいなら準備期間与えてやる。普通に考えて、俺がこのまま北上したらどうあっても奇襲になっちまうからな。

どうにかして世界が俺の迎撃態勢を取れるように動いてみろ。

俺の目標は……そうだな、そのままアバロンでいいか。3年後、ナゼールを超えてアバロンに向かい始める事にする。

 

期待してるぜ、()()()()

 

 ―― 本来ならば。

 

 人的損耗を想うのならば、この場でソウルスティールを敢行するべきだったのだろう。

踵を返すダンターグに向けて、一瞬『死神の目』を開き掛けた。

 

 ……しかし、楽しそうに、とても楽しそうにしているダンターグである。

本当に、最悪だった。

自分にそう言う事は出来ないと見切った上でやっているのであるコイツは。

 

 

「……俺も、同罪だな」

 

 

 結局クジンシーは、ダンターグに対抗するために奔走する事に決める。

アバロンに住んでいた友達はみな逝ってしまった。

しかし、それが無くともアバロンは良い町だった。

良い町だったのだ。

 

 この場でダンターグを殺す事は出来ない。

だからと言って、アバロンの為に何もしないと言う選択をすることも出来なかった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ―― バレンヌタイムス ○○○○年◇◇月▽▽日 号

 

 藪をつついた結果の終末。タイムリミットはあと3年。

ナゼールの怪物について最悪の情報が寄稿された。

怪物と接触し、そして終末を呼び寄せてしまった人間がいたと言う事実を我々はお知らせしなければならない。

 

 その怪物は、なんと人語を解せるのだと言う。そして近年、その怪物を目撃していた者が多く出ていたように、その怪物もまた我々を見つめていた。

そしてついに、その怪物は我々に興味を持ってしまったのだ!

その怪物が明らかな人工物である盾と突撃槍(ランス)を携えていたと言う時点で、我々はこの事態を想像するべきだった。

 

 接触に成功した情報提供者は、己が生存と引き換えに怪物から挑戦状を受け取った。受け取ってしまった。

曰く、『これより3年の後、怪物はナゼールをまっすぐ北上する。これは人類に対する挑戦である。持てる力のすべてを結集し、止めて見せろ』と。

 

 我が社は、荒唐無稽な寄稿であると笑い飛ばしたかった。

寄稿された原稿と一緒に、まるで飴細工のごとく物凄い力で丸められた短剣が添えられていなければ。

寄稿内容を検分する前に情報提供者を特定、あるいは拘束する仕組みを作らなかった事を後悔しているほどである(もっとも、後悔した今になってもなお、それをやって村八分にされる勇気を我が社は持っていないのだが)

 

 現在、バレンヌタイムスは別ルートでこの情報の真偽を検証中である。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「―― ほう……3年待たずにやってくるだけはある。貴様らバレンヌの斥侯か?

クク……ならばこの情報を元に対策を立てて俺に挑んでくるのだろう?なかなか滾らせてくれるじゃねえか……!

俺は今機嫌が良い。生かして帰してやる。せいぜい対策を立て、もっともっと強くなれ!」

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「―― あれは、もはや『化け物』だのと言う陳腐な表現で収まるレベルじゃあない」

 

 現皇帝ロビンの所感は、『バレンヌタイムス』によって世界各地に拡散された。

アバロンの皇帝を含めた精鋭部隊の敗走、その情報と共に。

 

 バレンヌがこの醜聞の流布に容易く踏み切ったのは、もはやバレンヌだけで対抗できる相手ではないと言う判断からだった。

 

 『バレンヌでも無理だった。あと3年足らずで、終末が来る』

世界中にそういった『危機感』を持たせる必要があったのだ。

世界の力を一つにする為に。

 

 そして皇帝が持ち帰ったその情報により、各地の新聞社はその化け物の呼称を統一するに至る。

 

 

 ―― 『終末の鬼神』ダンターグ、と。

 

 

 

(……スクラップしといてあげるか。なんかめっちゃ好きそうな展開になってるし)

 

 この上なく疲れた顔をしながらも、それでもなんだかんだで気に入りそうな記事を見たら取っといてあげてる苦労人が、世界のどこかにいたそうな。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 子の出来が良すぎると、親バカは反転してバカ親になるらしい。

祖父のジェラール1世がそうだったそうだ。

 

「―― その気持ち、今になってなんか解る気がするわ。

良い物よね、自慢できる子供がいるって」

 

 母が複雑そうに笑う。

 

「……でも、今はその優秀さが憎い」

 

 プロパガンダや親の欲目が含まれているかは、その評価を受ける側としては判断のしようがない。しかしその文句は知る限り最上のものだった。

 

 レオンの天術、ヴィクトールの武、ジェラールの知恵、キャットの洞察、ビーバーの機転、そしてロビンの技。まさにそれらを一身に受け継いでいると。

 

 ……だからこそ、ダンターグ戦では最前列で戦う事になるだろう。

 

「私もかつては前線に出たがってたわ。パパの干渉が鬱陶しくて、パパが居なくても功績を立ててやるんだー、ってね」

 

「そして実際に多大な功績を立て続けた」

 

「割に合わない功績をね。そして引き換えに倍するほどの大切な物を失い続けた」

 

 息子の言を即座に否定するその言葉に、謙遜は微塵も入っていなかった。

 

「あなたは皇帝を期待され、そしてあなた自身もそれを目指してくれた。それはとても誇らしいわ。……ママも私も皇帝(それ)からは逃げちゃってたもの。だからあなたが強く望まない限りは、政務や帝王学については宰相さんの方針に任せてた。

……でもただ一つ、何度も言い聞かせてた事があったわね」

 

「――『七英雄には手を出すな』」

 

「そうよ……その通り」

 

 ダンッ!!と壁を殴りつけ、ビーバーが震える声で吐き捨てる。

 

「……その通り、だったのよ……ッッ!!」

 

 終末の鬼神、ダンターグ。

……あれは、ダメだ。

戦うのを避けろとかどうとかいう話ではもう、無くなっている。

()()()()()()()()()()()()()

 

「もはやバレンヌは七英雄と戦う運命が定められている……そう思ってすらしまいそう。*2

確かにバレンヌが、私が、舵取りを誤ってしまったが故の衝突もあった。あったけど……なんだってこんな……ッ!!*3

 

 慟哭するビーバーの肩を抱きながら、ロビンが口を開く。

 

「ジェラール。こうなった以上、いよいよお前に伝承する日が来てしまった」

 

「ああ。覚悟はできてるよ、父さん」

 

「……本当はな。お前に伝承するのは、もっとずっと後にしたかった」

 

 続く父の言葉を聞いて、ジェラールの目じりが寂しそうに下がる。

 

「……僕が20になった時、父さんに伝承をねだったよね。でも父さんは、頑として認めてくれなかった」

 

「そうだな」

 

「意地悪してるのかなんて、どこかで考えたこともある。力が足りないのかと我武者羅になった事もあった。

―― 世界を回って、色々知った。人々の活気も、思惑も、闇の世界も、色々。

……見識が足りなかったんだと、納得した。きっと伝承して得る知識と自分で得る知識では、随分とした隔たりがあるのだろうと」

 

「……」

 

「……父さん。僕はまだ、相応しくないかな?」

 

 ロビンは神妙な心持ちで瞠目する。

立派に、本当に立派に育ってくれたと思う。

町民上がりの自分の息子にしちゃ、トンビが鷹にもほどがある。

それが嬉しくも、寂しくもあった。

 

「わかった……今こそ話そう。伝承法の、知られざる罠を」

 

 まっすぐにジェラールの目を見つめる。

 

「伝承法は、歴々の力と、技と、記憶を伝承する秘儀だ。しかしそこに恐ろしさが潜んでいた」

 

「恐ろしさ……」

 

「そうだ……『記憶を伝承する』のだ。それがどういう事かわかるか?」

 

 ごくりとつばを飲み込んだ。

 

 ……考えたことが、無いわけではなかった。

人を形作るのがそれまでの経験や記憶であるならば。

それは例えば、代を重ねるごとに伝承者の人格を侵食してしまうのでは無いかと。

 

「それは、つまり……」

 

「そう、つまり……

 

 

思い出そうと思えばバッチシ思い出せてしまうんだよ。

俺がビーバーとおセッセしてるとこ

 

 

…………

 

 

…………

 

 

…………は????

 

「いや、なんつーか……俺やビーバーが伝承した時は既にお前こさえてたけどもさ。

あんときは俺もビーバーも伝承する気全く無かったものだから割とはっちゃけてたって言うか……

 

イヤな、ギリギリ……ギリギリきわどいトコではあったがそこまでアブノーマルではなかったハズだと思うのだけども!なんつーか女って30代が一番性欲強いっていうかまあ俺もなんだけどスイッチ入ったらビーバーも結構ドスケbゴシャッ!!

 

 「ギア゛ア゛ア゛アア゛アア゛アッッッ!?!?!?」と汚い高音の悲鳴が木霊した。

今の容赦ない踏みつけは絶対足の甲の骨を持って行ったと主張しながらロビンがうずくまって痙攣する。*4

なおこの男、皇帝であった。

 

 ジェラールが引き攣った。

 

「おい……おいちょっと待てまさかそれだけ?僕に性生活知られたくなかったからってだけ!?!?

僕のこの7年間の努力と葛藤はいったい何だったわけ!?!?」

 

「こっちとしても複雑なのよ、悪かったとは思うけど!!

ジ、ジェラールも自分の子供に伝承する事になったら解るわよ!!

……可能であれば自分の子供以外に伝承する事をオススメするけど。あるいは死に際とか」

 

 照れ隠しに夫に『生命の水』を叩きつけてそっぽを向くビーバーである。

 

「―― そんな訳で、約束してお願いだから。

伝承しても思い出そうとしない事。

うっかり思い出したとしても、それをネタにしたり私たちに悟らせたりしない事」

 

「ガチな顔でなんて情けない約束迫るんだよ母さん……ッッ!!」

 

「ええいうるさいっ!!これは絶対自分の子に伝承した人間が共通して陥る問題の筈だわっ!!

私の時だってママのアレな姿思い出せちゃってメッチャメチャ気マズかったもん!!しかもパパ視点よ!?!?ママがすっごいメスの顔してたのよ!?」

 

「その点レオン帝はうまくやったよな。伝承した時には既にあの世におさらばだもん、こんな葛藤とは無縁だわ……ジェラールお前知ってた?ヴィクトール帝って帝国猟兵のテレーズ隊長とデキてたんだぜ?」

 

最悪だよコイツらッッ!?!?

 

「いやお前そうは言うけどさ。お前アレだぞ?伝承された中に入ってためくるめく夜の記憶に充てられて、それをオカズにイタしちゃったとするじゃん?

その記憶は次の伝承者にバッチリ引き継がれるからな??っつか、何なら伝承前のアレやソレやの記憶も引き継ぎ項目に入るからな??

プライバシーへの配慮が皆無なんだよこの術。うっかり性格落ち着く前の子供に伝承されるハメになったらどう悪影響するかわからんぞマジで」

 

 うぐぅ、と思わずジェラールはたじろいだ。

自分とて健康な一般男子である。15歳ぐらいの、お猿さんだった頃の知られたくないアレやソレやは覚えがあった。

 

「そう考えたらパパが色々オープンにしてたのって、コレのせいで開き直ってたからなのかもしれないわね。あれならプライバシー流出しても既に認識されてる事だから、誰に対してもダメージ少なかったもの」

 

「むっつりスケベよりオープンスケベの方がメリットあるんだなぁこの術……ジェラール今からキャラ変えるか?ちょうど同じ名前だし」

 

リアクションに困りすぎる案件いきなり顔面に叩きつけないで貰えます……??

 

 なんかこう、伝承の為に決めていた覚悟がガラガラと崩れ落ちて行くのを自覚する。

歴代の伝承者が決めていた覚悟ってもっとこう、『バレンヌのために!!』って感じだったんじゃないのか。

ちょっとこれヒド過ぎないか。

 

 ……そしてそう言えばこれ、もう「伝承しなくてはならない」から始まった話だった事を思い出した。

 

「……で、いつ伝承する?ジェラールが決めて良いぞ」

 

 脱力した空気のまま、そんな事を聞かれる訳である。

あまりにもあんまりな話に、ジェラールは結局、日和(ひよ)った。

 

「…………。

 

……もちょっと後にする。Xデイまでまだ時間あるし……」

 

「おー、回しとけ回しとけ。その間でも鍛錬は十分できる」

 

 ジェラールのその回答を聞いて、ビーバーが、わずかな期待を込めて口にする。

 

「……なんなら、伝承しなくてもいいんじゃない……?」

 

 それは、言葉通りの意味ではない。

ダンターグから逃げてしまえと言っているのだ。

今のジェラールはまだ皇帝ではなく、ダンターグと相対する責任はない。

むしろ皇家であるのだから、その血を残すためにも逃げると言うのは立派な理由になる筈である。

 

「いやあ、さすがにそれは無いかな」

 

 ジェラールは、そこだけは即答した。

『バレンヌのために』と決めていた覚悟は、確かに本物だったのだから。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「えー、ダンターグの驚異的な点は、単純なその巨大さと力、そして耐久とされています。そこらの武器や術による攻撃ではびくともしないし、たとえダメージが通っても相対的に小さな傷にしかならないそうで……

要は、絵本の物語の中にいる怪獣が相手と言う事ですね。

攻撃方法も尻尾による薙ぎ払いや突進、後は突撃槍(ランス)による攻撃といった物理が主のようで」

 

「物語に出てくる怪獣ですか、なるほど……口から炎を吐かないのはある意味救いですかな」

 

「しかし『ヒンデンブルグ号』を落としたのがダンターグであるなら、高高度に届く遠距離攻撃を持っている事は十分に考えられます。

―― 我が社の推測としては、突撃槍(ランス)を投げたのではないかと。

バレンヌよりこれまでの七英雄の情報が公開されているのですが、ノエル、ロックブーケは幻体による武器を用いたと言います。

あの突撃槍(ランス)も幻体であるなら、投げてしまってもまた作れば良いわけですし」

 

「確かにありそうな話ですな。普通に考えて、大人数人分ありそうなほどの巨大な突撃槍(ランス)など、作れる人間はおらんでしょうし」

 

「一体重さがどれほどあるのか想像もできません。そんなものが高高度に届く勢いで投げられるわけですから……ダンターグ戦においては防御を固めても気休め、攻撃に当たらない事と的を分散する事が肝要であると結論します。

さらに『ヒンデンブルグ号』は中型カルバリン砲を備えていた筈で、それを撃ち下ろしてもなおダメージを与えられなかったと考えるなら、ダメージを与えるにはそれを大きく超える威力が要求されます。

―― これらを加味した上でXデイに間に合わせられる兵器……という事で設計したのがこちらになります」

 

「…………ちょっとキミィ。なんなんだねコレは。

既存のカルバリン砲を車輪のついた樽に埋めただけのように見えるのだが?」

 

「既存の工場ラインはそのまま使う必要がありました。なにせ今から別のラインを作ってXデイに間に合わせる資本は当社にはありません。

ご指摘通り、カルバリン砲をコンクリートの入った樽に埋めて耐久力を無理やり向上させ、車輪を付けて移動が容易に出来るようにしています。これでも数発撃ったら限度ですね。

 

実は特殊なのは砲弾の方でして……従来の鉄球ではなく、円錐状の徹甲弾頭と撃ち出すための火薬を詰めた薬莢を一体にした特殊砲弾になります。

砲の先端から装填し、術力を励起させて発射させるものです。その為、砲手には術力を励起できる技術が要求されます。

 

―― その代わり威力は折り紙付きですよ。

試射では中に砂を詰めたロンギット通商規格のコンテナを2つぶち抜きました。射程もその分上がっています」

 

「……ほう」

 

「ご覧の作りのため命中精度はありませんが、ダンターグほど巨大であればそこまで精度は要らないのではないかと。

問題としては、砲弾がずいぶん重いこと。装填には砲の固定と弾の装填で3人必要でしょうね。

また、先ほども言ったとおり数発で砲が限界を迎えます。

3発までは保証しますが、4発目からは防御術掛けながら撃つべきで、7発目はもはやその状態でも撃つべきではありません」

 

「防御術者による最大6発の使い捨てか。本来であれば耐久の低さを指摘したいところではあるが、この造りであれば……」

 

「はい、短い期間で大量生産が可能になります。既存のカルバリン砲の改造すら容易です。

口径が大きい砲に関しては、さらに命中精度が下がりますが砲弾に布でも巻いて口径を合わせて頂ければ何とか撃てます。

 

また、我が社では木炭か何かを携行し、一発撃つごとに印をつけて発射数を管理、そして3発撃ったら砲を捨てて逃げる運用を提案します。

そもそもダンターグが6発も撃たせてくれるとは思えませんから」

 

「道理だな。そして逃げた先に砲と弾が転がっていれば、発射数を見て別の人間が再利用できると……良いのではないかな?術力の励起訓練だって2ヶ月あれば足りるだろう。運用方法を訓練しても3か月か。付け焼刃集めても十分間に合う。

採用しよう、キーン君。バックアップ体制はこちらで整える。至急量産を始めてくれたまえ。

何か特記すべき事はあるかな?」

 

「バレンヌへのライセンス確認をお願いいたします。装薬にはあそこの火薬技術が必須です」

 

「そうだろうな、術力励起による発破だ。とはいえこの緊急時、帝国もそこまでライセンス料を要求する事はあるまい。むしろ素材集めが急務だな……クズ魔石と硝石か。

うむ、こちらは任せたまえ。なんとしてでも搔き集める」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

…………

 

 

 

…………

 

 

 

「ノーラさん、GOサイン出ました!!

素材は順次手配してくれるそうです!!納入数は1000発!!」

 

「でかしたキーン!!……1000発か、大盤振る舞いだね。

はっは、剣や斧を打ってた頃が懐かしいが……今はまず、この窮地を乗り切って見せますか!!

早速取り掛かるよ皆!!」

 

「「「「「「はいっっ!!」」」」」」

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「―― ならぬッッ!ならぬぞセキシュウサイッッ!!

そなたはこの地の重要な護りじゃ!!

そもそも、ダンターグの進路はアバロンだと言う話ではないか!!それより遠い東にあるこの地に災禍が及ぶ道理はなく、もとより我がヤウダは貿易鎖国をしている身……バレンヌを助ける義理すらない!!」

 

「……恐れながら申し上げます、アト王様。

アバロンを蹂躙したダンターグが、その後東に進路を進めない保証はどこにもありませぬ。

かの者が戦いを求め彷徨うのであれば、その災禍は必ずや我が国に及びまする!!」

 

「フン……ならばバレンヌ亡き後にそれを考えれば良いのじゃ。何故我が国が他国の為に同調せねばならん」

 

「それではダンターグを倒す機を失いまする。世界中で協力している今でしか、災禍を除ける可能性は無いのですぞ!!」

 

「……ならば問うぞセキシュウサイ。おぬしが行ってなんとなる?

ヤウダの剣は天下無双、しかしそれは人間相手が前提じゃ。

相手は山のごとき巨大な怪物。清流剣や無刀取りが、かの怪物に通づると思うのか?」

 

「それは……っ、」

 

「言いたくはないが。我が国に相手できるのは、人かそこらのモンスターまでじゃ。

山のごとき怪物相手にできるノウハウは何もない。参加してもせいぜい役立つは囮か雑用ぐらいの物であろう。

それで無駄に命を散らすのか?割に合わぬにも程がある。

―― 命令じゃ。此度の件は捨て置け。参加する事まかりならぬ!」

 

「……、はは……っ!」

 

 

 

…………

 

 

 

…………

 

 

 

「……駄目であった。アト王様は此度の件、放置を決定なされた」

 

「なんと愚かな……対岸の火事で済む話だとお考えなのですか!?」

 

「いいや、アト王様の言にも一理ある。確かに我々が協力した所で、何が出来るかと問われてしまっては……」

 

「しかしそれでは、座して終末を待てと言っているようなものではありませんか!

それは……それでは士道を旨としてきた我が矜持は何だったのか!」

 

「……ジュウベイ、そなたの胸中はもっともだ。しかしそれでもなお、己を殺して主君に仕えなければならぬ時もある」

 

「……おじいさま、あなたの心中もお察しいたします。ヤウダにその人ありと言われたほどの武を、この窮地において役立たず扱いされるなど」

 

「言うなジュウベイ。それでも私は、ヤウダに仕える護りなのだ。アト王様の護りなのだ」

 

「は。しかし、私は違いますれば」

 

「……ジュウベイ?」

 

「おじいさま。ヤウダ新陰流氏族、柳生十兵衛三厳(やぎゅう じゅうべい みつよし)!!

……これよりただのジュウベイとなりて、バレンヌと共に剣を取り終末に挑みたく候!!

ついては拙者を勘当して頂きたく!!」

 

「ジュウベイ!そなたは……ッ!!」

 

「同じ覚悟の者も数人おりますれば、彼らと共に行く所存。

例えお許し頂けなくとも、ジュウベイは必ず押し通りまする。

―― おじいさまの無念もこの剣に込め、必ずやダンターグに届かせて見せます!!」

 

「……。たわけもの……ッ!

かような志を口にされて、どうして私が勘当など出来ようか……ッ!!」

 

「我らが武功上げて見せれば、アト王様の手のひらもくるりと容易く翻りましょうぞ。

勝報、ご期待あれ!」

 

「……もはや何も言うまい。しかしジュウベイ、ヤウダを立つのは明日にせよ」

 

「は?」

 

「合戦となれば四方膳が必要であろうが。

当家で振舞うゆえ、同じ覚悟を持つものとやらも呼ぶがよい。

……もちろん、アト王様にはバレぬようにな?」

 

「は……ははっ!!かたじけのうございます!!」

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「クジンシーさん……ダンターグさんを倒すために色々動いてるみたい。

ワグナス様と同じように、仲間を大切にする人だったから……きっと凄く辛いだろうに」

 

「凄いよウィンディ。まるで世界中がひとつの生き物になって、声を上げているみたい。

輸送依頼が引っ切り無しに飛んでくるの。

……ねえ、私たちはこれで良いのかな。ワグナス様の事を裏切っている気がして……私、なんか複雑だよ」

 

「ごめんね、クラウディア……正直、私もわからないんだ。ワグナス様ならどうするだろうって考えたりするけれど……今回ばかりは、本当にわからないの。

 

でも……でもね?

この仕事ずいぶんやって来て。世界には色んな人がいて、私たちには理解できない価値観もたくさんあるんだなって学んだんだ。

ダンターグさんは、世界を相手にして戦う事を心から望んでる。クジンシーさんはそれを見て、辛いけれど手伝おうって思ってる。

 

だったら……私も、それを手伝おうって思ったの。

そしてそれは結局、今まで出会ってきた人たちの助けにもなるから」

 

「……うん。あのね……あのね、ウィンディ。

アバロンから依頼が来てるの。Xデイに、伝令係やってくれないかって。イーリスは何よりも速いからって。

私、アバロンってあまり好きじゃなかったんだ……だけど、だけどね?」

 

「大丈夫、わかってるよクラウディア。

―― 行っておいで。

だってワグナス様は、私たちが自分で考えられるように、自分で世界を見つめられるように、この会社を立ち上げたんだもの。

自分で考えた結果の行動だったら、誰にも咎められる事なんてないよ」

 

「……うん!ありがとうウィンディ!」

 

「でもクラウディア……気を付けてね。きっと、死なないで……!」

 

「うふふ、大丈夫!!私は誰も追いつけないほど早いんだからっ!

ダンターグさんの攻撃だって、きっと私には追いつけないよ!!」

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ―― 世界中が、動いた。

終末の鬼神を乗り越えるために。

ダンターグが望んだとおりに。

 

 

 ……そして。

 

 

@ @ @

 

 

 

 ダンターグからしてみれば、手のひらに置いてもまだ足りないほどの小さなスクラップブックだ。人間サイズで普通の冊子も、この巨体を前にしたらどうしてもそうなる。

 

 相対的に小さすぎて字とか読めるのか?と思うのだが、特に問題はないらしい。

 

「クック……ああ、いいなあ。本当に世界中が動いていやがる。

―― 感謝するぜクジンシー。本当に、心の底から感謝する」

 

「……ボクオーンが、地盤を作ってくれた。アバロンが追認してくれた。俺はただ、一石を投じただけだよ。……後はダンターグが丸めてくれた短剣とかね」

 

「ハッハ、丸めた短剣投げ込むだけでここまでデカい祭りになってくれるんだ。本当に、感謝してもし切れないな。

……この、黒く塗りつぶしてある所は俺の情報や対策についてなんだろ?」

 

「そうだよ。……事前にそう言うの知っちゃうの、嫌いだろ?」

 

「パーフェクトだぜクジンシー」

 

 ダンターグは口角を上げて、丁寧にそのスクラップブックを閉じた。

 

 ……いよいよだ。

 

「お前もお前で、勿論なんか用意してくれてんだろう?」

 

「用意したけど……そんな大層なの期待するなよ。俺そんなに金がある訳でも才がある訳でもないんだから」

 

「はっはっは!お前のそれ系の発言は話半分に聞いとかなきゃな!」

 

「なんだいそりゃあ」

 

 ブスくれたクジンシーを一瞥して、ダンターグは空を見上げた。

珍しく晴れた空模様だった。

旅立ちには良い日だ、とダンターグは思う。

 

BGM:七英雄バトル

https://www.youtube.com/watch?v=OzWs8hmykd4

 

「―― 行くか。一世一代の大ゲンカだ」

 

「……ダンターグ」

 

「おう」

 

「……今まで、ありがとう」

 

「ああ!こちらこそだ!……加減するなよクジンシー!!」

 

「さすがに、アンタ相手にそりゃ無理だ」

 

 

 そして二人は互いに背を向けた。

これから、殺しあうために。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ルドンを超えた平原に、終末を迎撃せんと戦士たちが集まっている。

まばらに散らばるいくつもの大砲。

見た事も無い装束を纏う各地の戦士。

空に浮かぶ小さな気球。

翼のある少女たちがまばらに空を駆けまわる。

 

 

 それらすべてを一瞥して、ダンターグは高々と吠えた。

 

 

 

 

 

 勇者たちよ、祭りを始めるぞ!

 

 

 戦祭りだ!

 

 

 ―― ダンターグ祭りだ!!

 

 

 

 


 

 

 

 

*1
『プラズマスラスト』の『プラズマ』の部分は、あくまで雷属性の攻撃の事を指しているのであって、断じて投げたランスの先端が摩擦熱でプラズマ化するようなイカれた現象の事を指しているのではない……ハズである。

*2
その通りです

*3
いや、だって1話がさぁ……

*4
『踏みつけ』はシティシーフ(女)の固有技能である。

全体重を乗せ対象を踏みつけ、使用時のHPが多いほど強力なダメージを与えるとされる。




 壮大なレイドバトルの開始を以て、ダンターグ編は幕を閉じます。

 ……戦闘描写?これ私に処理できると思いか……?
この時点でもう1万5千文字行ってるねんぞ……?
ここから戦闘とか言ったら絶対プラス1万字とか行ってしまうので第二の劇場版が勃発してしまいます。
もう体力キビシイんですユルシテ……

 ……ので、キャラに触れながら断片的に。


>ロンギット通商&アビスリーグ
技術的な面からダンターグ打倒を模索。
最終的には使い捨て巨大徹甲弾発射砲の開発と量産に成功し、重要なダメージソースを担った。
他、救急所の設置、物資の集積配布、おおざっぱな作戦の伝達など、バックアップ体制を構築して見せた。


>ジェラール2世
ダンターグ相手にパーティを率いて近接と言う無謀を敢行。
砲の装填時間を稼ぐ役割を買って出る。
時々巨大徹甲弾がかすめるも、その勇猛さは衰えなかったらしい。
天術による目つぶし、攪乱、囮と重要な役割を父ロビンとこなし切って見せた。
五体満足で生存。


>イーストガード
アバロン近接組と共に、ヤウダの誇る無双の剣を示して見せた。
攻撃において近接は足元で囮を、砲は胴体より上を狙う事でフレンドリファイアを最小限にする作戦であったが、何をとち狂ったか何名かはダンターグの体を駆けのぼり、清流剣を顔面に叩き込む有様であったとか。

「―― 構わぬ!!我らごと撃ち放ちませいっ!!」

「たかが鉄砲(てつはう)ごときなにするものぞっ!!神風纏う我らにかような物、当たりはせんっっ!!」

 ……ヤウダは島津ではなかったハズなのだが。


>クラウディア
希望したほかのイーリスと共に、伝令周りや負傷者の回収で活躍する。
フレンドリファイア対策として方々にミサイルガードをかけて回ったりしたが、実際どこまで効果があったかはあまり良く分かっていない。
人が藁のように死んでいくのを目の当たりにしても、彼女たちは歯を食いしばって頑張った。


>クジンシー
紙袋をかぶって参戦。
そのいで立ちに思わずダンターグが腹筋を引きつらせスタンすると言う珍事を引き起こした。
その姿から、ジェラール2世に影の盾(シャドウガード)のジークであると看破され、サインをねだられるも即座に拒否するシーンがあったりする。

対ダンターグ用の攻撃としてつるはしを用意。
剣では全然通らないダンターグの皮膚をティファール仕込みのつるはしで穿ち、傷口からポイゾナスブロウを流し込むと言う戦法で地味にダンターグの体力を削っていった。
近接を担う中で、ジェラール2世と連携するシーンもあったようだ。


>どこかの詩人
もう大フィーバーだよね。







>ダンターグ
ついにソウルスティールが振るわれる事態にはならなかった。
全霊を掛けた戦祭りに満足し、戦士たちを讃えながら逝ったと云う。


 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。