キャプテン・オリマー、海に出る   作:仮置き太郎

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読むにあたっての注意点⚠️

・見切り発車作品のため突然終わります。

・ゲーム上でのピクミンは、1日約15分(ピクミン4)となっていますが、ここでのオリマーは特に気にせず24時間を1日として過ごしています。

・OP世界の人とオリマーは言語の壁により、直接話せない・急に視点が変わる、という読者のストレスを考えない仕様となっています。

・クロスオーバーが苦手な方は、今すぐブラウザバックをお願いいたします。



キャプテン・オリマー、海に出る

作業日八日目

 ルーイくん脱走事件が無事解決したことは、大変喜ばしいことなのだが、ルーイくんが食べてしまった果物を回収できた訳ではない。このままでは、社長のイヤミルートへは待った無し……何とか回避できないものだろうか?(そもそもマイナスが出た時点で、イヤミは止まらないだろうが)。

 そんな時、果物の神は私たちに微笑んだのだ! 空からの探知を続けていると、偶然にも巨大な果物の反応が見られる場所を発見した。

 ドルフィン初号機のパーツの反応も見られたため、まさに一石二鳥だ。その分探索しなければいけないエリアは広いが、一ヶ月間、社長のイヤミを聞かねばならない事よりも幾分マシだろう。

_____キャプテン・オリマー

 

 

 

 じとりとした湿気は洞穴の窮屈さを肌で感じさせ、微かに感じられるドブ臭さに思わず顔を顰める__と言うのはただの情景説明でしかなく、私の想像に過ぎないのだが。

 冒険家としてその場の空気を身をもって体験できないことは、残念で仕方がない。故郷にない地形を見るたびに、私はそう感じてしまう。

 

「テンテンチャッピーが“カワスベール”を飲み込んでいるとは……」

 

 羽ピクミンたちの独特な鳴き声が響くこの洞窟で、私はまだ見ぬ原生生物の力に感心していた。明るい黄色から香る甘い匂いには、思わず齧り付いてしまう心がわからなくも無いのだが、丸呑みしてしまうとは……よほどお腹が空いていたのか。

 

「お、りまー……るーい!」

「ああ、ルーイくんの容態も心配だな。早く回収して、戻ろう」

 

 アルフ君たちと過ごしていたこともあってか、ピクミンたちの言語能力はそれなりに鍛えられているようだ(少なくとも名前の理解はできている)。このまま言葉を教えれば、ピクミン内での自立も可能なのだろうか……?

 

 その時だろう、私が宝に目が眩んだのは__私は残りの青ピクミンに呼びかけて、回収地点まで戻ろうと、鳴き声が聞こえる方へと視線を動かした。

 

「こ、これは……!」

 

 ダイヤ型の変わった薄い物体は、丸く透明なガラスの中で揺れ、洞窟に差し込む日差しを反射する。黄金に輝く土台もまた、魅惑的で。言わずもがなPNF-404(ココ)の“お宝”であった。

 青ピクミンたちが、回収地点まで運ぼうと躍起になるのも頷ける。おそらく“何か”を指し示し続けるソレに興味を持たない者などいないだろう。

 

「!!」

 

 ガラス部分を叩いたり、それなりに“お宝”を楽しんでいた時だった。

 ぐらりと、地面が揺れた。地下に潜む原生生物が暴れ始めたような、嫌な考えが頭によぎる。「ここから離れた方がいい」そう考えた私は、安定しない地面を蹴り上げて、ホイッスルに息を__

 

 大きな揺れに合わせて、重心がずれる。ホイッスルを鳴らすことなく、私は地面に叩きつけられ、意識を手放した。

 

 

**

 

 

 全身に感じる痛みで目が覚めた。長い間眠りについていたのか、なかなか定まらない焦点に何度か瞬きを繰り返す。

 寝ぼけていても、ココがあの洞窟でないことぐらい嫌でもわかった。ココにある植物やら暖かい照明があの君の悪い洞窟にあれば、猛獣が潜もうと少しは気が和らいだはずである。

 

「……全く、ココが何処だか」

 

 立ち上がって周りを見渡せるほどには、草も短く……よく手入れが施されているようだった。何かしらの生物による誘拐か__間近で起きた嫌な記憶もあるのだが、その可能性も捨てきれない。

 

 不幸中の幸いと言えるのは、今、目の前に転がっている“オニヨン”と“初号機(未完成)”が無事である事だろう。特に“オニヨン”はかなりタフなようで、突けばすぐに根を張って、ピクミンたちを呼び出してくれた。

 それはそうと、なぜコレらがココにあるのかは何も検討がつかないが。

 

「__回収地点からかなり離れたようだ」

 

  潜む敵が何であろうと地形を見なければ脱出の糸口は掴めない、とは分かっているものの、肝心なデータがない。現地への通信も試みたが、接続できそうな電波が見つけられなかった。

 これでは、日没のタイミングに星をでる手段が無い。__死に物狂いで、ドルフィン初号機を直すしかないだろう。

 

「周りの探索を進める以外に、やれることはないな……」

「んーん、おりまー!」

「戦闘も考えて、赤ピクミンと岩ピクミンにしようか」

 

 オニヨンの中で待機していたピクミンも、何かしらの問題が起きたことはわかったらしい。安心したように、こちらへ駆け寄って来るピクミンたちの姿は、自身の心優しい子供たちを思い出させる。……早く、この状況から抜け出さなければ。

 

 この時点よりも前に気づくべきだった。もし原生生物による誘拐であれば、ここは原生生物の暮らす住処である可能性を。

 やたらと騒ぐピクミンたちの異常性を。

 身を包んだ、大きな影の正体を。

 疑問に思うべきだった。

 

「なんだ、……!?」

 

 今まで目の前にしてきた原生生物とは比べ物にならないほどの大きさを持った“その生物”は、見上げていなければ全身を見ることはできず、足の大きささえも私たちの大きさを優に超えている。

 驚くべきはその生物が二足歩行で___私たち()の姿に酷似していたことだろう。

 

「……____?」

 

 足を曲げて、こちらを怪しむような、警戒するような仕草をした後に、その生物は空気を震わせた。口と思われる部分を動かしているのは、私たちとのコミュニケーションを図ろうとしているのだろうか?

 だが、音波()の大きさ、言語も全く違うため、こちらが理解するのはとても難しい。その生物も理解されるとは思っていないらしく、すぐにこちらへの目線を外した。

 

(ルーイくんとも連絡が取れない、初号機も動かない……最悪だ……!)

 

 この規格外に大きな生物から逃げ出すのは、今のタイミングしか無いだろう。

 しかし、ここには壊れたドルフィン初号機が置かれている……下手に動いて初号機を無くせば、いよいよ身の安全の確保が難しい。

 

「___、_____」

 

 その生物が何かを発した直後、私とピクミンは透明の何か(部屋)に閉じ込められた。

 

 

**

 

 

 “魚人島”を出航した麦わらの一味__彼らは偉大なる航路(グランドライン)の後半に差し掛かり、“新世界”に向けて上昇を始めていた。

 まあ、後半に入ったといえど船での生活に大した変化はない。強いて言うなれば、“遊び”にかける力の度合いが大きく増したことだろうか。

 

「急げ、ウソップーー!!」

「待て待てお前、敵は巨大魚。やわなロープじゃ負けちまう!!」

 

 巨大生物を目の前にして、意気揚々と楽しむ麦わらの青年__ルフィはともかくとして、ウソップを乗り気になって“深海魚釣り”を楽しんでいることは珍しい(釣りだったこともあるかもしれないが)。

 そんな青年たちが騒ぐ甲板を眺めて笑いをこぼしたのは、先ほどまで船内にいたロビンであった。

 

「あら、楽しそうね」

「ししし! 行きはよ、魚人島が楽しみで思い付かなかったけど。今回は“深海魚”釣って海上に出れば、サンジに料理してもらえるんだろ!?」

「コーラに合う味だといいがなァ__ってその瓶は一体どっから持って来た? 変な生き(もん)もいるようだが……」

 

 楽しそうに体を揺らすフランキーが首を傾げたのは、ロビンには珍しく、本でもない中くらいの瓶が片手に握られていたからだろう。

 よく見てみれば、瓶の中には自分たちの小指よりも小さな生物がワタワタと動き回っている。

 

「どこで入り込んだかは分からないけれど……()ではないことは確かね」

「スーパー小せェ生き物じゃねェか。船を二年も空けてりゃァ、何かしらの生物が住み着いてても可笑しかねェがな」

「ええ、でも大きな揺れも多かったこの航海で、海中に放り出されていなかったのは不思議だわ」

「今まで船内にいたのかもしれねェが……誰も気づかなかったってのは……」

 

 冷静にモノを見るところは、やはり人生経験の差というものか、それともただ“偉大なる航路(グランドライン)”の異常性に慣れてしまっただけなのか。

 小さな生物側の方が捕まったことに大きな焦りを感じているようで、必死になってガラスを叩いている。

 

「魚人島にいそうな生物でもねェんだろ?」

「魚人や人魚たちに混じって、“小人”が住んでる可能性は捨て切れないけれど……海中生活には合わない体のようだし」

「よく見りゃ、潜水服着てんじゃァねェか! 他の全身赤とグレーは着てねェ……人かも分からねェな」

 

 人か否か、捕まえた張本人であるロビンですら、すぐに答えは出ないのが事実であった。二足歩行でよく見れば人型、全長五センチメートルにも満たない体はこちらを怯えてちょこまかと動き回る。

 潜水服で身を包む生き物は一匹しかおらず、その他の生き物は“ただ二足歩行が可能な何かしら”と言ったほうが正しいだろう。

 

「言葉が通じれば良かったのだけれど……」

「__!」

「そもそも、体の大きさが合わねェからなァ。混乱を鎮めるのも一苦労だぜ、こりゃ」

 

 顎を撫でながら、興味深げに観察するフランキーは、一番興味を示しそうなルフィに声をかけようと顔を上げた。ロビンもまた、彼らの深海魚釣りの成果を見ようと、瓶から視線をあげたのだ。

 

「デカ海ヘビ!?」

「ギャーー!!」

「よし! 近づけ、あれも食うぞ!!」

「もう船で引けねェよ!!」

「……待って、あれはまさか……」

「ん?」

 

 目の前に広がる白い線に、驚きで目を見開いたのも無理はない。大きな音を立てて渦巻くソレは、普段の航海で目にする魚とは大きさも、発する音のスケールも違うのである。

 

「“白い龍(ホワイト・ストローム)”!!!」

 

 優雅に海を泳ごうが、群れから離れてしまおうが、その龍には聞こえちゃいない。轟音と共に海底を渦巻き、彼らの乗る船を飲み込む隙を伺う様に海底の流れを変えていく。固い骨で覆われた深海魚も、ゆったりと姿を変える海月すらも、無差別に容赦なく襲われる。

 

 それが、彼らに死を招こうとも。“新世界”へと誘うのだ。

 

 

 

**

 

 

 

 

 視界(世界)が回り、慣れない酔いと嘔吐(えず)きに思わず咳き込む。突然、大きく揺れだした地面や困惑の色を見せる巨大な原生生物、空いっぱいに広がった白い渦……(洞窟から脱出でもしたのか?)

 爆音の中で長時間転がされていたこともあってか、耳鳴りは止まらず、微かに聞こえる原生生物たちの騒ぎ声を頼りに、目を凝らすしかない。

 

(最後に見えたのは、何かの手……? 地面から無数に生えていた気がする……)

 

 吐き気を無理やり飲み込んで、大きな揺れでもびくともしなかった“透明な部屋”から外を見渡す。部屋の大半はここの主であろう、原生生物によって覆い隠されてしまっているため、何も見えないが、隙間からチラチラと映り込む、黒いナニカは一体……

 

「__♪」

「んー!」

 

 突然、透明な壁越しに軽やかな音色が響く。ピクミンたちはキャッキャと騒ぎだし、小さな歌声に合わせて鳴き声をあげている。

 “音楽”なんていつぶりだろうか。家族をカラオケへ誘おうとも嫌な顔をされ、会社の仕事だと言われて頷いてみれば、宝探しに駆り出される。最近は“音楽”に耳を傾けて、余裕ある一日を過ごせた試しがない。

 

「__♪……」

「__!! ____?」

「____! ____」

「服文化、言語能力……ここまで技術が発展しているというのに、初めてPNF-404(ここ)で見る生物……特定の場所にしか住まないのか……?」

 

 原生生物の一匹(私たちのような星人であれば、“一人”かもしれない)が、黒いナニカへ笑みを浮かべて喋りかけている。その返答かは分からないが、低く大きな鳴き声が辺りにこだました。

 刹那、突然部屋ごと横へとスライドし、体が壁に押し付けられる。歌っていたピクミンたちも驚いた様で、ピタリと歌うのをやめてしまった。

 

「!? 手が伸びるのか……!」

「__、____?」

「____、____……」

 

 揺れた原因は、乱雑にこの“透明な部屋”の受け渡しが行われたからだった。……もう少し丁寧に扱って欲しいものだ。例えば、そう、アメニュウドウを見習って__いや、やめておこう。

 見た目以上に伸びる腕に、未知の生物への関心と恐怖が渦巻く。ピクミン(心強い仲間)がいるといえど、相手は今までの原生生物の何十倍もある。

 相手がそう願えば、私たちを捻り潰す事など容易い__下手な危害は加えていないつもりだが、話し合いの結果によっては始末される可能性はあるのが怖いところだ……

 

(……逃げることも視野に入れなければ)

 

 初号機を無くしてしまう、などと気にしている場合ではない。こちらを覗き込む大きな瞳に冷や汗が垂れ、周りを取り囲む巨大な原生生物の視線に唾を飲み込む。

 まさに“絶体絶命”の状態だった。

 

 流石の神も私たちを哀れんだのか、すぐに転機がやってきた。

 “透明な部屋”が大きく回転し、唯一の出口である頭上の穴から私たちは放り出された。正しくは、私たちを抱えていた(手が伸びる)個体が、偶然か必然か部屋をひっくり返したのだ。

 

「__!! ______!」

 

 私たちを解放した本人は、体を出来るだけ屈めて、しきりに私たちへ何かを語りかけてくるが、理解はできなかった。

 唯一理解できたのは、この目の前の生物以外は私たちの解放に全くもって賛成ではなかったことだろう。分かりやすく、「ギャー」や「うわー」に近い絶叫が辺りに響いた。

 

「……“突撃”!!」

 

 願ってもない解放に加えて、ちょっとした混乱状態。これほどまでの脱出チャンスが、今後来るとは考えづらい。私たちを解放してくれた、手が伸びる原生生物には悪いのだがここは少し協力してもらいたい。丸い瞳を輝かせる彼に笛を構え、ピクミンたちへ向けて命令を下した。

 

 自分の弱点は自分が一番よくわかっている。そうなれば人型の弱点もなんとなくは読める……と思う。

 どんなに強く逞しくとも、そこを叩けば目に涙を浮かばせ、かの有名なベンケイの弱点と呼ばれたその場所。位置としては、ピクミンを投げるのにうってつけである。

 

「__〜〜!!」

「ッ! “退散”ー!!」

 

 痛みに耐える様な仕草はなかったものの、流石の原生生物でも驚きはした様で、手で箇所をさすっている。

 チャンスができたのだ。

 

「____!!」

「____、_____!」

(一匹が少し止まったくらいでは、やはりダメか)

 

 振り返った私は対面した巨大な原生生物、数体を前に息を呑んだ。五十匹程度のいつもよりかは少ない隊列で、ピクミンたちを組んでいるとはいえど、“数体いる原生生物の目”を掻い潜って逃げ出すことは至難の業である。

 逸れぬ様に笛を鳴らし続け、走り続けるしかない。たとえ無理だとわかっていようとも、その脱走方法しか思いつかなかった。

 

『__オリマーさん!! ご無事で何より!』

 

 足を踏み出して、広大な大地を駆け抜けようとしたその時だった。聞きなれた電子音が鼓膜を刺激し、騒がしいほどにガタガタと揺れる船体が目についた。

 ドルフィン初号機__あの船体を見て、これほどまでに安心感を得たのは、今まで一度もないだろう。

 

 まあ、ドルフィン初号機の船体と言っても、“探査ポッド”部分だけなのだが。

 

『起動に成功したと思ったら、社長でもない巨大生物がいたものですからビックリしましたよ! いやはや、オリマーさんも変わったところを探索しますよねェ……』

「……」

『ちょっと不満そうな顔ですね、でも間違ったことは言ってないでしょう? 現にほら、周りに巨大な原生生物がウヨウヨ……絶体絶命ジャナイデスカッ!?」

 

 ちょっとした安心感というものは、ものの数秒で崩れ去り、騒ぎ立てる機械に思わず顔を顰める。元々社長の所有物だったこともあってか、人を少しイラつかせる言動は止まることを知らない。

 必死になって逃げている私を他所に、並走している探索ポッドはいくらか余裕そうに見えるのがまた憎らしいところだ。

 

「……“リペアTYPEネジ(お直しロボット)”はまだ発見できてないはず__」

『あ、私が直っていることに疑問をお持ちですか? フフン、これはお話が長くなりますよ……この私の船体(ボディ)を直した“救世主”……!!』

「……」

『今から貴方を捕まえる相手の方(原生生物)です』

「え」

 

 突然告げられた“誘拐予告”に、口元が引き攣る。案の定、すぐに辺りを大きな影が覆い尽くした。『彼らも“お話”を所望しておられたので!』という言葉に苛立ちを覚えても、時すでに遅し。

 探索ポットのエンジン音が勢いよく離れ、ピクミンたちは情けなく鳴き声をあげる。

 

 策があるやら、案外いい原生生物やら知らないが、初号機に皮肉一つを言っても別に悪くはないだろう。

 

「機械も自分が一番(・・)可愛いのか……!!」

『ちょっと、私がわざとやったみたいじゃないですか!! チガイマスヨ、タマタマデス!』

 

 一際大きく、目を引く様なカラーリングが施された原生生物の周りを飛び回る初号機には、説得力のかけらもない。

 彼らとの会話が可能であるならば、是非とも仲介役になってほしいものだが……そういう事でもないのだろう。

 “機械の恩返し”など想像さえ難しいが、返そうと思うところは初号機らしいというか……本当に迷惑この上ない話だが。

 

『ルーイさんとの連絡が取れない今、ここでは身の安全を優先すべきですよ、オリマーさん! 彼らも悪い方達じゃないんです!!」

 

 いい顔ができるタイプの悪人が、一番タチの悪いことを知らないのか。そんなことを聞く間もなく、大きな影に飲み込まれるのだ。

 

**

 

 目立つカラーリングが施された原生生物__フランキーは、プチ混乱を招いた小さな生物に感心していた。

 恐らく、小さな生物の方が混乱しているであろう状況下で、しっかりとした統率をとって尚且つ刃向かう意志を見せた。“新世界では普通”と言われてしまえば頷くしかないのだが、偉大なる航路(グランドライン)の前半の海出身であるフランキーからすれば、この生物の本能(イカれ具合)には驚かされるのだ。

 

「この玩具みてェな“ロケット”の持ち主で間違いはなさそうだな……」

 

 フランキーの手に収められた子供の玩具のようなロケットは、金切り声のような音声を発し続けている。小さな生物たちが入れられた金魚鉢の横に置いてしまえば、そんな音も消えたので恐らく大した意味はないのだろう。

 

 それはそうと、このロケットの完成度の高さにはフランキーも驚かざるをえなかった。自分たちから見て小さい玩具であることには変わりはないが、空へと飛び出せる時点で技術力の高さが窺える。

 もちろん船体下部から蒸気を漏らし、カタカタと小さな揺れで自立を保った“ロケット”にまで直せたのは、フランキーの技術力の高さ故、ベガパンクの設計図から培った知識故なのだが。

 まあ、精巧に作られた空を飛べる(・・・・・)ロケットであることに間違いはないだろう。

 

「解体して、もう一回中身を見るってのも__」

「あ!! やめろよ、フランキー! せっかく仲良くなれたのに!!」

「……おれから見りゃァ、あれは“ハグ”じゃなくて“不意打ち”みたいなもんだ、ルフィ」

 

 金魚鉢の上に布をかけて縄で縛っていれば、この生物たちを逃した張本人が、赤く腫れたたんこぶを頭に抱えてやって来た。脛に“不意打ち”を受けて尻餅をついたルフィをみて、船員(仲間)たちはたとえ相手が小さくとも警戒の目を解かなかったのだが、当の本人は不満そうであった。

 

「痛くねェ“フイウチ”……? おれは喋りてェだけだ!!」

「……相手は言葉が通じねェ“小人”ときた。どうせなら、“小人”の調子が落ち着いてから“話し合い”をした方がいいだろ?」

「……ちぇ」

 

 ここであっさり諦めるタイプの人間ではないルフィだが、こっ酷く彼らに叱られた様で“今”手を出すのはやめることにしたらしい。

 

「ルフィ! 光が見えてきたぞ!!」

 

 騒ぎ出したウソップたちの声に、目を輝かせ急いで船首へと向かうルフィの背中を見送って、空を見上げた。

 シャボンの膜が差し込む光を反射して、“新世界”へと歩み始めた海賊(ルーキー)たちを誘い込む。その光が、歓迎かはたまた忌避かは天のみぞ知ることである。

 

 クジラたちが海上に出るぞと勢いづき、海上が新たなる客だとうねり出す。彼らが二年で溜め込んだ技術や力が、今か今かと心を騒がせた。

 そして今、彼らは“新世界”へと踏み出した。

 

「ウォォォ〜〜!! “新世界”〜〜!!!」

 

 ビクリと震えた小さな生き物は、開けた空に息をつく。彼らは、この海を越えて“故郷”へと帰れるのだろうか。

 

 

**

 

 

「オリマー……センパイ」

 

 キャプテン・オリマー共に、ホコタテ運送会社の社員であるルーイは、突然通信のなくなったオリマーの行方を心配していた__というわけでもなく、目の前の光景に唾を飲み込んだ。

 ドルフィン初号機探索用に用意された“簡易探索ポッド”から放り出されたルーイの足元に広がっていたのは、柔らかい土でもサラサラした砂でもなく、甘い匂いを漂わせたメレンゲクッキーであった。

 

 今まで原生生物たちを調理して味わっていたとはいえど、調理前から齧りたい……とまで考えることはなかったルーイにとって、魅惑の代物であった。原生生物を食べたときの様な食べ応えはないが、“調理せずにそのまま”イケるデザートなんざルーイが喜ばないはずもない。

 

「こ、こんな地形……今まで……」

 

 この地面のメレンゲだけではない、至る所が“食べられるスイーツ”であった。大きな柱の様なものは固いクッキー、壁のようなものはスポンジケーキ……ルーイが外と中とを阻むこのガラスを、これほどまでに忌々しく感じたのは初めてだろう。

 とりあえず、手に抱えられるほどだけスイーツを抱え込み、ルーイは[[rb:探索ポッド > 回収地点]]へと急いだ。

 

 オリマーのことなど、今気にすることではないだろう。

 

 

 

 

*以下、人物紹介

(オリマーらが名付けた生物名称を【】、人物名を())

 

【イセイジン】(ワンピース世界の人間たち全体)

彼らはホコタテ星人やコッパイ星人のように、体の形状が進化した種のようだ。今まで出会った現世生物にはこのような個体を見たことがない。ある程度発達した技術を見るに、彼らは他の星から移住してきたのだろうか? 彼らを“イセイジン”と名付けてしまおう。

 

 

【キャプテン】(ルフィ)

 私たち(ピクミン含め)を目にすると、喉を震わせて大きな音波を発する。ピクミンへの命令が通らなくなることもあるため、十分な注意が必要な個体である。果たしてこの行動は、防衛本能によるものなのだろうか? ……この音波によって他の個体が集まる所を考えれば、ただのコミュニケーションともとれる。現に、音波に合わせてホイッスルを鳴らせば、満足そうにしていた(私たちの感情表現となんら変わりはないようだ)。

彼らの習慣として、大きな音波が出せるものがリーダーになるようだ。その気づきともなったこの個体を“キャプテン”と名付けよう。

 

【マザー】(ゾロ)

 母なる大地(緑)を頭に生やしているので、“マザー”と呼ぶことにしよう。

 

【ながっぱな】(ウソップ)

 他個体よりも[[rb:鼻背 > びはい]]が伸びた個体。嗅覚が優れている訳でもないらしく、なぜ伸びたのかは不明。“ながっぱな”と呼ぶことにする。

 

【ゴハン】(サンジ)

 この個体の手に渡った原生生物は、美味しい料理に変えられてしまう! ……ルーイくんが出会えば趣味の合いそうな生物だ。[[rb:自ら食品を加工する > このような]]個体をルーイくんはよく“ゴハン”と呼んでいたが、確かに料理人も平たく言えば“ゴハン”かもしれない……?

 

【ツラノカワスキ】(ナミ)

 “ツラノカワ(※1)”を自ら育てる個体。しかし、バナナウオ科に似た生物(大きすぎて近くからの判別は不可)なども積極的に捕食していることから草食ではないようだ。“ツラノカワスキ”と呼ぶことにする。

(※1:ピクミン2で登場したお宝、蜜柑と非常に酷似している果物)

 

【ケブカイココロ】(チョッパー)

 “イセイジン”と全く異なる体の性質、見た目を持つ。自分の身に危険を感じた時、自由に体を変形させる(大きすぎて詳しい事はよく分からない)。頭に持つ大きなツノが特徴であるが、身を守るためではないようだ。“イセイジン”と並び知能が高く、治療、回復が出来ることを駆使し、“イセイジン”と共生関係にあるようだ。“ケブカイココロ”と名付けよう。

 

【ヤドリヌシ】(ロビン)

 一定面積のある場所であれば、腕のような“子”を産むことが可能。オニヨンの様に母体を担う存在なのかは不明。“子”となる前の種子はまだ発見できていないため、今後の研究に期待するしかないだろう。半動物半植物の生物であれば、ピクミンと何かしらの関係を持つ可能性もある。“ヤドリヌシ”と呼ぶことにする。

 

【キュウセイシュ】(フランキー)

 半生物半機械の哺乳類の究極進化系。指先にデウススパイラルチャンバー加速器(※2)に似た物が仕組まれており、そこからBB弾を発射する。わざわざ“イセイジン”と共生関係におく必要があるかは分からないが、コチャッピーのように“イセイジン”に擬態している他の生物なのかもしれない。名前は考えていたのだが、私の提案した名前を初号機が図鑑に加えないため、初号機提案の“キュウセイシュ”とする。

(※2:ピクミン2に登場したタマコキンの内部に付けられた加速器)

 

【スカルキング】(ブルック)

 肉体は持たず、骨が剥き出しになっている。剥き出した骨は非常に硬く、回復能力も極めて高い。なぜ生命活動が続けられているのか、謎に包まれている。“スカルキング”と名付けよう。

 




 なんやかんやで色々旅して、オリマーとウソップがイラストでの会話を試みたり、初号機がワンピース世界の言語をちょっと喋れるようになったり、オニヨンが調理されそうになったり、ルーイがビックマムの“図鑑”に貼り付けられたり、ドレスローザでリペアTYPEネジ(お直しロボット)を発見したりします。
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