私は宇宙人   作:蒲鉾三田

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原作のテンポ感重視vs描写盛りたい星人

  \\\\FIGHT!////

そんな感じで没を量産させていました


第十五話 非日常が日常

 

 朝食を終えて満足した招き猫姿のターボババアは、早朝の涼しい空気とぬくぬくした日光の心地良さに畳で二度寝を決め込んでいる。

 朝の支度に追われる桃たちは、そんなのんべんだらりとしたターボババアを横目に羨ましく思えど、時間というものは待ちはしない。

 

 例え昨日が非日常のオンパレードで、異能者である桃たちを付け狙う宇宙人セルポと、学校で命懸けの水泳大会を繰り広げたり。

 その戦いでアクロバティックさらさらから受け継いだ力で変身できるようになった白鳥 愛羅と、妖怪の呪いを解く方法を探すクリオネの宇宙人を家に招いたかと思えば。

 うっかり桃がクリオネ星人から感染した呪いを通してやって来た猿夢を、悪夢の中でブッ倒した──などという波乱万丈を成し遂げた翌日だったとしても。

 

 日常というものは、いつも通り始まるのである。

 

「婆ちゃん歯ブラシ! 新しいやつどこ!」

「そこら辺に入ってんだろ」

『食器棚の左から2番目の引き出しですね』

「おーサンキュー!」

 

 シンクの中で泡立った水がまるで魔法のように独りでに皿を洗い、洗浄している。

 適当に答える星子の横で、浮遊していたクリオネ姿の宇宙人がキッチンへ顔を出した桃にテレパシーを送った。

 

 目的のものを見つけた桃が、トースターの焦げついた内側まで洗い始めたクリオネ星人に礼を言って、廊下を引き返す途中。桃の眉がキュッと吊り上がる。

 そして朝の冷たい廊下に、桃の全力ダッシュの音が響き渡った。

 

 キッチンでクリオネ星人と何事かを話していた星子が「床に穴があくだろーが!」とデカい声で注意をしようが、桃の足音は止まらない。

 そして、隙あらばオカルンにモーションをかける愛羅の足へ、桃は歯ブラシ2本を両手に「ジェアッ!!」とフライングクロスチョップを決めたのであった。

 

 

 忙しない支度をどうにか終えて、登校までの時間も間に合いそう。

 そんな折にオカルンが、忘れ物がないか学生鞄代わりのリュックを漁る途中で「あっ」と声を上げた。

 

「そうだ、クリオネさん。名前とか聞いてませんでしたよね」

「そうじゃん! なんて名前?」

 

 確かに! と靴を履きかけた桃が振り返る。

 星子と共に見送りにやって来たクリオネ星人が、愛羅にテディベアのようにハグされつつ。名前を聞かれ半透明の触角をピンと立てた。

 

『大変申し遅れました。私はヒ・ロネクォリィミ と申します』

 

 そうしてぺこりと頭と触角を下げる…クリオネ星人。オカルンが宇宙人語に目を煌めかせ、桃と愛羅はあまりの聞き取れなさに困惑した。

 

「ぴぽぺぷ?」

「ぴゅお…何とかじゃね?」

「人間では出せない音域と言いますか、そもそもテレパシー主体の言語のようですからね! ジブンら地球人には発音が困難なのかもしれません!」

「でもそれじゃあ私たち、名前を呼べないわ」

 

 宇宙人に傾倒するオタクなオカルンが早口で自分の見解を喋りたくる。

 愛羅に触角をこねくり回されているクリオネ星人へ、オカルンは眼鏡をカチャつかせながら熱烈な視線を浴びせた。

 

 クリオネ星人の発した音は人間の耳には、例えるならモールス信号や、健康診断で受ける聴力検査じみた音に聴こえる言語だったが。愛羅の言う通り、人間が音を模倣しても喉を痛めそうだ。

 

「無理に呼ぶ必要はねえだろ。海坊主に渾名でも付けりゃいい」

『声帯式言語的には、“ヒ・ロネクォリィミ” の発音で通じます』

(なげ)え! じゃ、 “ヒロ” で」

『それで構いません』

 

 従順に頷いて見せたクリオネ改めヒロが、不意にピタリとその頷きの途中で不自然に動きを止めた。

 

「どうしたの? ヒロ」

『では、くれぐれも “ライムズ星人” の情報を外部に漏らさぬよう』

「なんだなんだ」

 

 唐突に約束事の釘を刺したヒロが、愛羅の腕から溶けたスライムのように形を変えて抜け出し、桃たちの前で周りの景色に溶け込んでいく。

 光の加減で違和感のあった輪郭がシャボンが割れるようにふつりと消え失せれば、あっという間に何処にいるのか分からなくなってしまった。

 

 桃やオカルンが隠れてしまったヒロに訝しむ間もなく、玄関チャイムが鳴り響く。

 どうやらヒロはその透視じみた視界で、客人が来るのを察知し事前に隠れたようであった。

 

「おいモモ、玄関開けろ」

「ほーい」

「こんな朝早くに人?」

「来客ですか?」

 

 星子に促された桃が足先に靴をつっかけ横着しながら、玄関扉をなんの躊躇いもなく開け放つも、目の前にいた予想だにしない人物に驚愕の声を上げた。

 

「ジジ!?」

「モモ!」

 

 扉の前に立っていたスラリと背の高い美丈夫は、桃が出てきたことに嬉しそうに破顔して、人好きのする笑顔をパッとその精悍な顔に浮かべてみせる。

 

「え!? なんでジジが、てかその服うちの学校の制服じゃん!?」

 

「よお、来たか。お()えの母親からは聞いてるぜ」

「どちら様ですか?」

「あいつはな。モモの幼馴染(・・・)で、初恋相手(・・・・)だ」

 

 星子の爆弾発言に、桃に淡い恋心を寄せるオカルンが衝撃のあまり息を飲みたじろぐ。

 見るからにスポーツマンで、背も高くて、誠実そうなイケメンで。そんな人が綾瀬さんの初恋相手だなんて、きっと彼は硬派な男に違いない──と、オカルンが思ったところで。

 

「久しぶりじゃんモモ〜! 驚いた顔もキャワウィ〜ね〜! とりあえず、ハグしとく?」

「ウザってえ、なにこいつ」

 

 顔の良いイケメンが軟派な言葉を投げかけ、桃の言葉に「ウザってえいただきましたフゥ〜!!」と奇声を上げる。そして激しい動きで朝からテンションの高い奇行を繰り出した。

 その印象の落差にオカルンと愛羅はドン引きだ。

 

「ジジ、悪かったな。本当なら昨日の晩に来てもらうつもりだったんだが。急な仕事が入っちまってよ」

 

 星子の言葉に、その急な仕事が昨日の騒動であることに気がついた桃が「うっ」と閉口した。

 

「いえいえ、オレも押しかけちゃってますんで! 相変わらずおばちゃん美人っすねー! 学校行く前に荷物先置いちゃっていいすか!」

「おいおい天才かよ。ここに置いとけ、後で運んどいてやる」

「え。ちょっとどゆこと!?」

 

 突然訪れた久しぶりに会った幼馴染が、家に荷物を置いていくおかしな事態に、星子から何も知らされていなかった桃が思わず声を上げる。

 

「あ? 決まってんだろ。今日から一緒に暮らすんだよ」

 

 当たり前のことのように宣った星子の言葉は、桃とオカルンと愛羅を驚愕の渦へと叩き込んだ。

 嵐のようにやって来たジジは、今日から綾瀬家の新たな一員となるらしい。

 

 一難去ってまた一難。波乱万丈というものは、休むということをどうやら知らないようであった。

 

 

 

 □

 

 

 

 桃がジジを質問攻めにし、オカルンが思わぬ恋の強敵に悶々と思い悩み、愛羅が桃とジジの関係を怪しみながら学校へ向かう一方で。

 

 静かになった家の中では、ジジの荷物を運び終えた星子が猿夢を相手に大立ち回りと夜更かしした休息がてら、タバコ片手にぶらりと窓辺へ立ち寄っていた。

 換気のために庭に直通の掃き出し窓に手をかけた彼女は、ふと窓の外に気配を感じて視線を向ける。

 

「ん? おいヒロ、居ねえと思ったら外に出てやがったのか。無闇にぶらつくと危ねーぞ」

『星子様。ご心配下さりありがとうございます』

 

 ずんぐりむっくりしたミミズクにも見える半透明の人影が、星子が開けた窓の外に浮いている。

 先程ジジが来る前に文字通り姿を消したヒロが、目もないのに星子を見上げるように頭を持ち上げ、柔らかそうな質感のヒレを動かした。

 

『ですがご安心を。それは私の分体です』

『星子様の言う私はあなたの後ろにおります』

 

 外にいたヒロがヒレで指す方へ星子が中途半端に口を開いたまま振り返れば、廊下の斜め後ろに星子を見上げるようにして、頭部と触角を傾けるヒロがいる。

 前にも海坊主、後ろにも海坊主。

 声色に変化もない上に、頭の中に直接声が響くせいでどっちがどっちの声を出しているのか、てんで見当がつかない。

 

今朝方(けさがた)生みました、仕事用の分体です。先程この家に到着致しました』

「おう」

 

 猿夢の呪いもなくなりコアの負担を気にする必要がなくなったライムズ星人は、宇宙船に積んでいた備蓄を使用し、シャコパンチにより爆散して減った分体の数を元に戻していたのである。

 

 星子は内心で魂消(たまげ)ながらも2人に増えたヒロに、そういう事もあるか、と長年の経験からすんなり飲み込みよっこいせとあぐらをかいた。

 そんな彼女の両隣に、半透明のそっくり同じライムズ星人が2人、浮遊するのをやめてちょんと律儀に体を足のように折り曲げ座る。

 

「流石に人間の格好じゃねえと働けねえが、お()えらどうすんだ」

『その通り。ですので』

『こうします』

 

 考えがあるのか聞く星子に、ヒロは行動でもって答えを示した。

 バチャリと同時にゲル状の体を崩したヒロが渦を巻いて形を変え、半透明な人型へと変貌する。

 そして体内に浮く青いコアが微弱に揺らぎ、ゲル体の表面が構造色のように淡く鮮やかに豹変されれば。その擬態の力で、宇宙クリオネの姿から人の姿へと化けてみせた。

 

 光をよく反射するビー玉のような、異様に澄んだ瞳。

 波のようにうねる癖毛に、暗い深海を映した髪色。

 その髪と比例してよく目立つ肌は、まるで蒼ざめた病気の月だ。

 

 どちらも小学校高学年辺りのこじんまりとした身長で、性差の区別もつかないようなそっくり同じ顔。

 片側の分体の前髪は長く、目元を隠して見た目で区別が付きやすいようにされていた。

 

 要素を切り抜けば一見不気味に見えるものの、顔つきがどこか柔らかな雰囲気で庇護欲を唆る…と言えば聞こえがいいが。

 悪く言えばサッカーボールか何かが飛んでこれば避けられなさそうな、垂れた目に下がり眉の間の抜けた顔をしていた。

 

 ガラス細工みたいな目をパチクリと瞬かせ、とろんと垂れた目尻と眉で些か無表情の冷たさが緩和された子供たちが、廊下に座りこんだまま星子を見上げる。

 

『これで問題ありません』

 

 星子は子供に化けたヒロたちを見下ろし、眉を寄せた。

 

「化けられるのは分かったがよ。なんでそんなエアロビみてえなピチピチの服着てやがる」

 

『いえ、これは服を再現した模様ですね』

「すっぽんぽんじゃねーか!!」

『そうとも言います』

『元よりそうです』

 

 安心できないそのスタイルに、星子は裸族2名を両脇に抱え上げ奥へ引っ込んだ。現行犯であった。

 腹に腕を回され手足をぶらつかせるヒロたちは、首根っこを掴まれた子猫のようにされるがままである。

 

 

「働くには見た目が若すぎやしねえか」

『星子様もとてもお若く見えますが』

「なにぃ? じゃあ仕方ねえな」

 

 星子は桃の部屋からTシャツを出し、バンザイをさせたヒロたちに着せる。

 星子は、近所の古着屋にでも行くか、と履かせてやった短パンが床にストンと落ちるヒロの姿を見て思った。

 

『身長は多少ですが可変が可能です』

『仕事用の私の身長を上げましょう』

 

 双子のように並び手を繋いだヒロたちの片方が縮み、もう片方が伸びる。

 

「あんま変わってねーぞ」

『人間には低身長の成体も存在します。つまり私もまかり通ります』

 

 前髪で目を隠した分体が背丈を伸ばすも、精々が中学生サイズ。縮んだ方は10かそこらの子供にしか見えず、よりちんちくりんになってしまった。

 

 それでもやる気に満ち溢れているヒロに対し、星子は働くのを止めるつもりはない。

 畳の部屋の修理代だけでいいと言ったのに、正当な報酬を受け取らないならその残り分まで桃たちに渡す、と言ってヒロが脅したのだ。

 

 後先考えない学生に大金など持たせられず、ダイレクトに感情が伝わるせいでヒロに曲げる気がないのも星子には分かってしまった。

 だから彼女は渋々報酬を受け取ってやることにしたのである。

 

「思ってる感情が素直に伝わるってのも厄介なもんだ」

『はい。あなた方のおかげで、我々はこうして生きております』

『星子様にはお世話になります。できる限りの恩をお返し致します』

「背中が痒くなってきたぜ」

『慣れてください』

 

 子供がカタツムリのツノをつついて遊ぶような、胃の腑が擽られるような感覚が、皮膚から体温が伝わるように言葉と共に星子の脳に響く。

 温度のない声色と、“慣れろ” という突き放すような言葉とは裏腹に、星子の頭の中に届く感情はコロコロと思いの波を変えていた。

 

 ヒロが星子へ感謝を伝える度に頭の中に届くのは、鮮烈な暖かさ。明るい感情、好意的なそれは、感謝の気持ちの表れ。

 エネルギッシュで純粋な子供が浴びせる眼差しのようなそれに、星子はどうにもむず痒くなって、煙草を咥えうなじを指の腹で掻いた。

 

 

 

 □

 

 

 

 今日もまた、突如現れた動く人体模型を全力疾走で追いかけるだとかいう平凡な日常とは言い難い経験をした学生たちが、妖怪に宇宙人何でもござれな桃の家へとやって来る。

 

 オカルンとジジを引き連れ、小脇に花という名前のボロになった女性型人体模型を抱えた桃が、自宅の玄関扉に手をかける──前に。

 まるで自動ドアのように、横開きの玄関扉がガラガラと音を立てて開かれた。

 

 勝手に開いた玄関にギョッとして桃が手を引けば、開いた扉の向こうから小さな子供がひょっこりと顔を出し、座敷わらしのように桃たちを見上げる。

 

「おかえり」

 

 癖のついた青い髪に、キラキラと光を反射する目をしたおっとり顔の見知らぬ子供が、人体模型を連れて帰ってきた桃たちを出迎えた。

 

「え、誰この子」

「綾瀬さんも知らないんですか?」

「オレとオカルン以外にもモモんちに来てる子がいるー! 初めまして!」

 

「…」

「ありゃ、怖がらせちゃったかな」

 

 しゃがみこんで懐っこく話しかけてくるジジに対して扉の影にそっと身を隠し、人見知りをしたのか黙りこくってシトシトと瞬きした子供が、桃へ視線を向ける。

 

『桃、オカルン、おかえりなさい。その人体模型はなんですか』

 

「えっ」「まさか…!」

 

「なになに? やっぱ知ってる子だった? 君のおなまえなんてーの? オレはジジと申しまぁーす!」

 

「……ヒロ」

『私へのお土産ですか』

 

 引っ込み思案な子供から零れるジジへのちいちゃな自己紹介の声と、桃とオカルンにだけ向けられたらしい無機質なテレパシーが同時に耳と頭に届くせいで、桃は脳みそがバグりそうになった。

 学校から帰って来たら、家に居候をすることになっていた宇宙人が、人間そっくりに化けて出迎えに出てきたのだ。

 

 桃は驚きであんぐりと口を開け、オカルンは宇宙人が人間に化けて潜伏する事実に対して質問攻めにしたい気持ちを、ジジがいる手前どうにか抑え込み。それでもふうふう言いながら、興奮のあまり顔を真っ赤にして髪を逆立てた。

 

 

 

 □

 

 

 

「お願いします!! 彼女をこの家に置かせてください!!」

「テメェんちに置けやぁ」

「無理です!! これ許容できるの綾瀬さんちくらいしかないですから!!」

 

「おばさんの寛大な心に頼るしかないんス!! おねしゃス!!」

「「おねしゃす!!」」

 

 オカルンたちが星子さんを拝み倒す傍ら。私は女性の形をした古い人体模型の横で体育座りをキープしつつ、身綺麗になりトルソーのように服を着せられた興味深い生きた人体模型を念視でまじまじと観察した。

 

 花という名前のこの女性型の人体模型は、古くなり粗大ゴミとして捨てられたところを、花に想いを寄せる太郎という男性型の人体模型が真昼間に学校を抜け出してまで助け出そうとしたらしい。

 しかし学校の化学科室にいる太郎に花をかくまえる場所はなく。あわや駆け落ちのような宛のない逃避行寸前となったところを、可哀想に思ったオカルンたちが居場所の提供のため花を連れて来たのだという。

 

「飯にするから机出せ」

「オカルンも食べてくでしょ」

「あ、はい。いただきます!」

 

 懐が宇宙より広大な星子さんが花を家に置くことを承諾し、太郎も夜中に学校を抜け出して逢い引きに来るようで。これにて一件落着! 私にジジに花と、なんか急に家に人が増えたな。

 ターボババアに猫じゃらしを振ったジジがドロップキックで無礼打ちされる横で、夕飯の机を出す邪魔にならないよう私はご飯が必要ないらしい花を引っ張って、部屋の隅に引きずっていった。

 

 動く人体模型って分類として物質憑依型の妖怪? それともアニミズム的な付喪神?

 自我が生まれる前の物質としての記憶は保持されるのか、気になるところである。自我持ってるのに捨てられるってトイ・ストーリーじゃんね。

 そりゃ呪いの人形もポコポコ生まれますわ。コワイねェ〜〜。

 

 そうそう、私の仕事の話だが。日中に星子さんから、警備会社の施設警備員の仕事を紹介してもらった。

 なんでも施設警備の依頼は派遣される際に、夜間警備中に出る(・・)施設に出くわすこともあるせいで離職率が高く、万年人員不足なのだとか。

 

 星子さんの伝手で異能(・・)の存在を知る人の元、私の分体がお世話になっている。私は重力の都合上、緊急時だろうがどう頑張っても軽いランニング程度の速さでしか動けない。

 なので特定の対応が難しい代わりに霊へ落ち着いた対応が可能なことと、透視(・・)を使える人材であることを売り文句に取り繋いでもらった。

 

 警備会社に寮もあるし、色んな施設に行けるしで、とても良い仕事先を紹介してもらったと思う。

 既に分体も新任研修の触りを受けさせてもらったところだ。全く星子さんには頭が上がらなさすぎる。

 

 桃を取り合いディフェンスで牽制し合うオカルンとジジに「さわぐんじゃねえ!! ホコリが舞うだろがい!!」と一喝した星子さんが、オカルンとジジがコメツキバッタのように土下座するのを、呆れた顔で眺める桃に言う。

 

「モモ、週末ジジの家に泊まるんだからパンツとか用意しとけよ」

「はぁ!? ちょ、ババア!! なんでうちがジジんちに泊まることになってんだ!! 除霊は婆ちゃんの仕事だろ!?」

 

 初耳だったらしい桃が、異議あり! とばかりに机をぶっ叩いて星子さんを指差し抗議する。

 

「ワシはやらねーぞ。言ってんだろ、ワシの能力は神越市内でしか使えねぇ。今回の依頼はモモが引き受けるぜ」

 

 星子さんから聴いたのだが。ジジはどうやら引越し先の家が呪われていたらしく、両親が入院する事態にまで発展してしまっているそうな。それで星子さんを頼ってやって来たんだとか。

 

「なにそれ!! 聞いてねぇわ!!」

「ちょ待ー!! 今おばちゃんのこと婆ちゃん(・・・・)って言った!?」

 

「あ、綾瀬さんが、ジジさんの家に…泊まる…!?」

 

 怒涛の勢いで情報が放流され、混乱する場の中で私は食卓に茶碗を運びながらワクワクしていた。

 星子さんから許可を貰い、私も桃たちの遠征に同行しても良いことになっているのだ。情報の宝庫であろう新しい妖怪案件に、遠足の前の日のように浮き足立ってしまう。

 星子さんが桃に任せる程度の妖怪なのだから、そう危険な案件じゃないのだろう。

 

 呪いの家に行くのが待ち遠しいな!

 





綾瀬家での星子さんとヒロの擬態のやり取りは、原作単行本おまけページ意識。

話の順番的には、桃たち視点でヒロの擬態姿をお披露目後におまけページが入る(妄想)。
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