私は宇宙人   作:蒲鉾三田

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第十八話 全部同じじゃないですか!

 

 部屋の底が──否。

 ()が開いた。

 

 その瞬間、感じたのは酷い腐臭だった。

 生きた知的生命のそれとは違う。腐敗し、溶けきって、混濁した肉の成れの果てのような臭い。

 鍋に大勢の人を入れて溶かし、沸騰させ、重い不浄だけが沈殿し取り残されたような、煮凝りのカスが異臭を放っている。地獄の釜の蓋が開けばこんな臭いもするだろうか。

 

 つまりここに居続けるのは命に関わるぞと、ビンビン本能が訴え掛けてるってことなんスねぇ。

 猿夢の時もまあ酷かったが、うーんこの臭い…ヤバいっていうレベルじゃねーぞ!

 殺意と害意と悪意のカスの濃厚マリアージュや〜!

 

 私は重力に身を任せながら、落下地点の危ういジジを空中で桃の傍に押しやる。この星だとライムズ星人は浮遊するより、落下した方が早いです。

 無事にジジとオカルンを掴みバリアを展開する桃を確認し、私は()()()()に靴の爪先から音もなく降り立った。

 

「いっつ〜!! オカルン、ジジも大丈夫!?」

 

「なんとか…」

「モモ、ありがと〜! 助かったぁ!」

 

 子供たちは互いを守りあった団子状態のまま首を動かし、無事を確認し合う。

 

 いやぁ…ジジ家の封印壁越しに影響を与えてるのが神か悪霊か分からなかったが…どっちもありそ〜。

 体内でコアが悪臭に捩れる。1秒もここにいたくない、臭いからして悪霊も神域に同居してますわコレ。

 ただ、鬼頭家も生贄を捧げる度に部屋の封印を解いて悪霊とバトるわけじゃなかろう。だからまだ悪霊自体は封印されてる、はず。

 

 さぁて、状況確認だ。

 

 念視を広げ、ザッと視回せば。ジジの家の下に潜んでいた広大な空間には、様々な建築様式の家が上下左右もなく無秩序に積み上がっていた。

 まるでゴミ箱に大量のドールハウスを雑に放り込んだような混沌とした穴蔵。貝塚ならぬ家塚だ、迷い込んだ私たちがちっぽけなアリに見える。

 

 正しく異空間。

 人の立ち入ってはいけない領域だとひと目でわかる異様さだった。遥か上空にある落ちてきた穴が僅かな光を降り注がせている。

 私は地下を俯瞰しつつ、鬼頭家の頑丈さに呆れ果てていた。

 

 巻き添いになった鬼頭家は数十メートルの高さから生身で落ちたにも関わらず、なんと死人ゼロである。呻いちゃいるが誰一人首や足の骨を折った者がいない。どういうこっちゃねん。

 スピる*1と人間はやたら頑丈になるのかもしれない。それか人外とセックスってるか。カルトだからなぁ、してそうだなぁ。

 

「ちょっとマジかよ!! どーやって戻るんだよこれ!!」

 

 桃が上空数十メートルにある穴、唯一の出入口を見上げて言う。

 私は子供たちに進言した。

 

『問題ありません。忠告します、この場から動かずに』

 

「動かずにって。こんなところに居ても仕方ないですよ!」

「一刻も早く外に出ないとヤベェだろ!」

「ねえ下見て下! ヤバいよこれ!!」

『動かないでください』

 

 オカルンと桃がキョロキョロ歩くわ、ジジが屋根に這いつくばって家の下を覗き込むわでこっちの話を聞いちゃいない。

 そんでもってジジが下を指さすものだから、桃とオカルンまで屋根に腹這いになって覗き込んだ。

 こらー! 動くなって言ってんの!! 気持ちは分かるけど!

 

 ジジが指さす先を見て、桃とオカルンが眼下に見えるシルエットに絶句した。

 暗闇の奥底から家々を押し潰し、這い上がり。僅かな光に浮かび上がるはこの土地の神。

 

 大蛇様と呼ばれる、大きな大きな──ワーム(ミミズ)だ。

 

 胴回りは人間が5人手を繋いで届くかどうかの太さ。その体長、凡そ数千メートル。

 うお、でっか。誰だよ人里に巨大生物はいないとか言ったの、私だよ。

 

 巨大なワームは何層にもなった牙と歯を開け、口周りの触手じみた髭を広げた。そうして重そうな鎌首をこちらにもたげている。

 ヒューッ! 見ろよ奴の胴体を…車より太くビルよりも長いぜ!! バカじゃねぇの。蛇じゃねーじゃねえか!

 

「大蛇様!! よくぞおいでになられました!! 我々鬼頭家は大蛇様の使者です!!」

 

 リーダーのババアが蛇の構えを取り、声高らかに神へ宣言する。

 その横で鬼頭家の男たちが同じような構えを取りながら「初めて見た」とヒソヒソ言葉を交わしあっていた。

 

()()()ってこの土地の伝説の!?」

「ヤバ!! 迷信じゃなかったの!?」

 

 大蛇と呼ぶに相応しい体躯をくねらせ、神は鬼頭家の方を向く。

 

「ありゃ()()()()だな」

「くらがりってなに!? あれ知ってんの!?」

「モンゴリアンデスワームだ!!」

 

 桃の鞄から顔を出したターボババアが興味深い名称を出したものの、それを説明するより先にオカルンが眼鏡を抑えながら声を上げた。

 

「ゴビ砂漠に生息しているといわれている “巨大食人ミミズ” のUMAです!! でも言われている話では体長1.5mから2mくらいで、こんなでかいデスワームは聞いたことがありません!!」

 

 一見すると スペースミニョコン にサイズは近いが。

 いやワーム類なんて、それこそ土壌さえあれば他の惑星に似たようなのが星の数ほどいる。しかし地球の重力下でこの大きさ…明らかに異常だ。

 

『それはどこからの情報でしょう』

「ジブンの愛読書、ポーです」

 

 オカルンが眼鏡を白光りさせる。

 へー! オカルンが電車で持ってたあのオカルトに偏ったゴシップ誌か。物凄く胡散臭かったんでスルーしてたわ。

 

 ターボババアが言っていたくらがりとやらも気になるし、恐らく名称別の同一存在か近縁種だろう。

 ゴシップも伝承と同じ扱いをしてよさそうだ。ツチノコ神社みたくカスの嘘が混ざっている可能性もあるが。

 

『その情報誌に興味が湧きました。帰宅後にお借りしても』

「いいですよ! ジブンの集めたやつの中でもオススメのを今度持ってきますね!!」

「オカルン、俺も! 見たい見たい!」

「やっとる場合か!」

 

 生き生きと目を輝かせるオカルンにジジも便乗し、桃が突っ込む。

 2人とも鬼頭家に暴力を振るわれ痛ましい姿だが、精神面は元気そうだ。強い子たちである。

 

「てか、それじゃあ鬼頭家(あいつら)が200年の間生贄を捧げてたのって、ミミズのUMA!?」

 

『養殖するとこれほどまで巨大になるのですね』

「いや養殖て」

 

 ワームが触手じみた髭をうねらせる。

 

「さあ大蛇様!! あの4人をおめし上がりください!!」

「オイ!! ざけんなクソババア!!」

 

 鬼頭家のババアを筆頭に、男たちが儀式的に円を描いて歩き回っているのだけど。

 

『ところで。地球のワームは意志伝達が可能ですか』

 

 放つ臭いから知性を感じないのだが。

 神様にもなるとワームも意思疎通できんの?

 

 そう疑問に思った次の瞬間。

 ワームが男たちのいる場所にその巨大な口を開け突っ込んだ。

 

「食われてんじゃん!」

 

 ダメみたいですね。

 あー、なんでワームが大蛇って言われてるか分かったわ。頭まで見たやつは食われて死ぬから、生きて帰ったやつは胴体しか見てないんだ。

 悪態を吐く鬼頭家のババアと、生き残りの男がバタバタと音を立て逃げ出す。

 

 私は鬼頭家を追うワームを念視で追い、分析した。

 凄まじい勢いで家の内部をのたくり進んでいるが、壁材を破壊しぶちまける等していない。

 

 よく視れば潜り込む接触部から大量の砂を撒き散らしている。

 先ほど部屋の床を砂に変えた力の本来の使い方だろう。通り抜ける箇所を砂化させ、その中を泳ぐように移動しているのだ。

 

「どーすんのコレ!! こんなの絶対倒せないっしょ!!」

「これは確かにヤバいわ」

 

 桃たちの焦りが膨れ上がる。

 

STOP

 

「うわ!」

「うっさ! なに!?」

「頭がぁ」

 

 動き出そうとした桃たちを、私は強く念話で押し留めた。

 

『動かないでください、と。初めに忠告いたしました』

 

 擬態の顔を向ければ、桃たちは汗を垂らしながらも静止する。よしよし、いい子だ。

 ワームを指差し、私は念話を紡いだ。

 

『ワームは盲目ですが、代わりに他の感覚器官が発達しています』

 

 指差す先で、ワームは逃げ回る鬼頭家を正確に追い、大口を開いて突進している。

 ワーム類は適応力が高い。

 別種が多すぎて何ができて何ができないのか、見た目から判別するのは困難だ。

 

『オカルン、このワームに関する情報は他にありますか』

「え…はい! モンゴリアンデスワームは特徴として、雷撃と毒液を吹きかけて相手を弱らせます!」

 

 オカルンが私を真っ直ぐ見つめ、緊張した面持ちで答えた。

 

「それから、太陽光が弱点です! 地底人や地底獣UMAは()()()()しているため、紫外線を浴びれない体らしいです!!」

『Good』

 

「オカルンすげー!!」

「やるじゃんオカルン!!」

「い、いやぁ…」

 

 桃とジジがはやし立てれば、照れ顔を隠そうとオカルンが背を丸め縮こまった。

 いいね、その情報が()()()()()()()は置いておいて。伝聞とは伝わるほどに大袈裟になるものだが、傾向が知れたのは上々だ。

 宇宙にはもっと恐ろしいことをしてくるワームもいるからな。環境由来のゲロビとか。

 

「オレたちの声には反応してないみたいだね」

「足音には反応しているみたいです、つまりデスワームは家に響く振動でジブンたちを感知してるんですよ。物音を立てないよう動きましょう」

 

 熱感知とかエコロケーションとかはないらしい──にしては、この妙な音は一体何なのか。

 私は念聴を調節した。

 私にはジジの家の中に入ってから聞こえ続けていた音が、今や煩わしいほどこの空間を満たしているのが聴こえている。

 

 星子さんはジジの両親が入院したと言っていたので、ワームの発するこの音が人体には有害とみた。

 落ちてからこの音がより鮮明に聴こえる以上、この空間に長居は得策じゃないな。

 

『まず初めに。ここからの脱出プランの提示をします』

「やれんのか、オイ!」

 

 私は遥か上空の、天井に空いた穴を指差した。

 

『私は浮遊が可能ですが、あなた方の体重を持ち上げるにはパワー不足です』

「でしょうね」

「ヒロちゃん、オレたち持ち上げる気なの!?」

 

『ですので、私を増やしましょう。しかし分裂には相応の栄養を必要とします』

 

 そして家の山でとぐろを巻き、締め上げているワームの体を指差す。

 

『ここに巨大ワームがいますね』

 

 ちゃんとした神を手にかけるのは憚られるが。こいつは知性も神聖さもなく、単にデカくて人を食う珍しいだけの害獣である。

 別に、アレを食べてしまっても構わんのだろう?

 

『オカルンの()()による切断を試みましょう。部位が大きい程、あなた方が助かります』

 

「おっしゃ! ジジはここにいて、ウチがサポートする」

 

 桃が真っ先に決断した。

 オカルンはその言葉に霊力でマスクを形作り、その身を変貌させながら彼女を見る。

 桃は中腰のすり足でオカルンに近づき、屈んだ彼の背におぶさった。

 

「行くよ、オカルン!!」

「あーやだやだ…」

「2人とも、かっくいー!」

 

 ロケットスタートでオカルンが飛び出す。

 踏み込んで飛び散った瓦に反応し、屋根にワームがかぶりついた。

 巨体が家内にのたくり潜って、至近距離で駅のホームを電車が通過するような風圧と砂が飛び散る。ジジが顔を庇った。

 

 桃はオカルンを足で挟み、超能力をバンジーの紐のように使う。

 そうして家の壁面にある、ワームが開けた穴の中に飛び込んだ。

 

 

 そこまでは良かった。

 

 

 意気揚々と飛び出した桃とオカルンが、その勢いのまま床に投げ出される。

 2人は擦り傷を拵えながら床を転がり、蹲って頭を抱えた。ん? え、どうした!? 着地に失敗した!?

 

『ワームが来ます。立って下さい』

 

 応答がない。

 私はワームの位置を確認しつつ焦った。

 

「え、何!? 何がどうなってるの!?」

『桃、オカルン』

 

 口から唾液を零したオカルンがふらりと立ち上がる。

 

 安堵したのも束の間。

 何故か変身を解いた彼は突然絶叫し、壁に頭をぶつけ始めた。叩きつけられた額から血が飛び散って、壁が赤く染まる。

 なになになにしてんの!?

 

 明らかな異常事態。

 私は破損した屋根瓦をゲル体を伸ばして弾き落とし、屋根から飛び降りた。

 意図を汲んだジジが立て続けに屋根材を投げたり蹴り飛ばしてワームを誘導しにかかったが。常に音を鳴らし続けているオカルンのせいでそれも微々たる効果だ。

 桃はまだ頭を抱え蹲っている。

 

 私は家の内部に突入した。

 すぐ側にいたオカルンの膝関節を狙い、ゲル体の腕を伸ばして思い切り押し倒す。

 振動を抑えるためゲル体を敷いて彼を受け止めれば、先程まで頭があった場所をワームが凄まじい速度で通り抜けた。砂がダムの放水のように飛び散る。

 首から上が無くなるところだ!

 

 私はゲル体を振りほどこうと暴れるオカルンに念話を向けた。

 

『オカルン、どうかしましたか』

 

「離せぇえ!! 死なせてくれぇえ!!」

『どうかしているようです』

 

 ダメだ、話が通じない。

 この空間に充満する臭いのせいで分からなかったが、近くに来て分かった。この子、ガチで死にたがってる! ど、どうしよ。

 ターボババアが桃のリュックから顔を出し、私に向けて怒鳴った。

 

「テメェも似たようなの使ってんだろボンクラ!

念波(ねんぱ)” だ! あのミミズが念波を出して、家にいる人間を自殺させようとしてやがる」

『なるほど。ジジの家で異音を察知はしていましたが、耐性のある私では認識できませんでした』

 

 うっわこの音、脳波を乱して荒らしてるのか!!

 

 日常で感情の送受信を行うライムズ星人は、種族的な精神抵抗力が恐らく高い。

 きっとこの子たちは家の中で反響し、増幅した念波に脳波を乱されている。耐性あると気付けない事もあるんだね!

 

「邪魔するなぁあ!!」

 

 オカルンが私を押し退け、床に散らばった飾り皿の破片を手に取る。

 そして自分の喉に振りかぶった。

 あ、ちょ。やめないか!

 

「ううう」

 

 皿の破片にゲル体を纏わせガードするも、オカルンの体自体を拘束したゲル体は直ぐに千切られてしまう。

 桃までふらふら寄ってきて皿の破片を手に取るものだから、オカルンと桃が自害しないよう、私はもはや人の原型を留めず必死に鋭利な破片にゲル体を纏わりつかせた。

 

「死なせて…!」

「うあああ!」

 

 ええい、全身ぷよぷよのライムズ星人が筋力で人間に勝とうなんておこがましいよなぁ!? 分かったら大人しくしろオラ!!

 私は2人の自害を抑えつつ、もみくちゃになりながら自殺念波を相殺する妨害念波の調整を開始した。

 やったことないが理論上できる! てかできなきゃやべえ!!

 

 ジジはこちらの様子を認識したのか、決死の表情で屋根の上を駆けた。

 ワームが足音に反応し、ジジを追う。

 

 彼はワームの追突を掻い潜りながら壁面を危険を冒して跳び、走り、道とも言えぬ絶壁を渡ってやって来た。

 助けてほしいけどワームは連れて来ちゃダメェ!!

 

「モモ! オカルン! やめろ!! なにやってんだよ!!」

「さっさとこのボケ共を止めろ! ワシまでミミズに食われる!」

 

『念波の妨害を試みま────』

 

 念話を流用し、試行錯誤していたその時。

 

 桃が超能力でオカルンごと私を床に叩きつけ、抑え込んだ。

 

「あああああ!」

『──! ───!?』

 

 は、離して! ぐぇえ苦し…ッ、桃ちゃん力、強い、ね…!! いやぁ助けてぇ!!!

 桃の超能力で抑え込まれ、念視も念話も、とにかく全ての念がギュウギュウに圧縮して封じ込められる。分体同士の存在を繋ぐシグナルすらもだ。

 

 光のない深海で圧し潰されるような錯覚。

 己を守る情報が一切遮断された恐怖。

 呼吸さえ潰れ、感覚総てが圧迫の苦痛に飽和する。

 

 私は立ち所に錯乱した。

 

 あっあっ! 苦し、視えない聴こえない何も解らな…! 誰かぁ!! いっそ、ひと思いに殺してぇ!!!

 

 力の差があるにも関わらず、半狂乱で無駄な抵抗をする中──突如、私は解放された。

 私は即座に念をぶち撒け、止められていた情報取得と呼吸をする。ひ、ひぃ、し、死ぬ。

 だと言うのに視界は移動し続ける壁を映し、私とオカルンは空を飛んで、いや、落ちて…??

 さ、さっきまでいた廊下と桃は!?

 

 消えた圧迫感と閉塞感。錯乱した思考と状況を把握しようとする思念が合わさり、混沌と化す。

 しかしどうにか現状を把握しようと、精神負荷でオーバーフローしかけたコアをブン回した。

 

 高速移動する壁。

 パイプのような閉鎖空間。

 

 落下する私とオカルン。

 

 粘着質に橋をかける液体。

 壁は生命エネルギーで満ち、外が透視できない。

 

 私は現状を理解した。

 桃に床に叩きつけられた振動。ワームがそれに反応し、私はオカルンと共に食われたのだ。

 

 しめた! 桃から離れられた!!

 だが今度は桃がフリーだ、このままじゃ彼女が自殺してしまう。もう忙しいったら!

 私は未だ様子のおかしいオカルンをワームの肉壁にグイと押し付けた。

 

 砂と体液が混ざったと(おぼ)しき粘液はオカルンを絡め取る。落下は止まった、ジェットコースター並にのたくり進むワームの安全バーだ。

 私はオカルンの頭部にしがみつきながら、コアにかかった重苦しい慣性に脳内中指を立て、構築していた妨害念波を展開した。

 

 バブルのように張り巡らせた念波がオカルンの頭を防御する。

 

「っ! ヒロさん、スイマセン!!」

 

 よし、成功。

 

『オカルン、変身を。ワームの体内を破り、飛び出して下さい。よろしいですね』

「はい! ──あー、ジブン何回食われるんだよぉ…ベタベタするしよぉ…萎えるぜ…」

 

 正気を取り戻したオカルンが変身する。

 トリモチのようにへばりつく上半身はそのままに、下半身を持ち上げスタンバイ。その格好でいいの?

 

「ヒロちゃん、頭から降りててね」

 

 オカルンが全身に力を張り巡らせる。

 次の瞬間、至近距離で爆発が起きたかのような衝撃が走った。

 

 大穴の空いたワームは、花の茎が折れるようにしてブラリと千切れかけの首を垂らす。

 私はオカルンがどこに行ったか視ようとして、その大穴から視えた光景に思わずコアを縮こまらせた。

 

 なんか、ブリーフ1枚で眼力ヤバい悪霊が外にいるんですけど!!

 

*1
スピリチュアルに傾倒する、の略である

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