私は宇宙人   作:蒲鉾三田

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第二十二話 上は大水、下は大火事

 

 私は黒焦げになった巨大ワームを眺めた。

 近辺に生息しているのはこのワームだけなのだろうか。

 

 地球に長期滞在する以上、巨大生物は貴重な栄養源になる。人間パクパクワームはクソ不味いが、他は普通だろうし。オカルンの言っていた2mサイズとかその辺に群生してないかな。

 でもこいつは餌場を独占してた上に、目撃例が神やらUMA(未確認生物)扱いなら本来の生息域は地中深くか、残念。

 

「早くワシをこっから出せー! ウスノロ! ボケナス! 土手カボチャ!」

 

『失礼、どてかぼちゃとはなんでしょう』

「役たたずだって言ってんだよ!!」

『なるほど。ありがとうございます』

「クソだらぁが!」

 

 桃がワームの死亡確認をしている一方で、瓦礫の下に埋もれるターボババアを助けようと試みたのだが…ダメだこりゃ。

 人間1人運ぶだけでヘトヘトな私では荷が重い。誰か、男の人呼んで〜!

 

「ギャー! 動いたああ!!」

 

 私が瓦礫と格闘していると、桃が悲鳴を上げた。

 

 ワームの胴がブクリと膨れ、桃が慌てて逃げ帰ってくる。はい、おかえり。

 あのワームから戦意の匂いはしない。火傷の循環不全でショックを起こしたんだろう。

 あの全身火傷じゃ皮膚呼吸も出来ないし、そのうち死ぬから。こっち手伝ってね。

 

 デカい口が窄まって、ワームは最後に盛大に吐き戻した。

 ドボドボ落ちた粘液が捌け、ダマになった塊が…いや、違う。

 

「ゲホ、ゲホ!」

「オエっ」

「ああ!! 生きてる!! かあちゃん、オレ生きてるよ!!」

 

 汚ったない咳が重なり合い、その塊が生きた人間の集団で、ワームの最悪な置き土産であることに私は気がついた。

 大蛇様よぉ、その立派な歯は何のためについてるの? 人を食うためじゃろがい!! ぶっ殺しといてよ、役目でしょ!

 

「うお、生きてんじゃん。よかったねー!!」

 

 桃が能天気な声で言う。

 ワームから吐き戻された鬼頭家のババアは、憎しみを込めこちらを睨みあげた。

 

「テメェら、よくもやりやがったな…!!」

「あんた食ったのミミズだろ」

「ガッデム!!」

 

「よくも大蛇様をやったなってことだボケェ!!」

「食われてたのによく言うね」

 

 はい殺気。続々と起き上がる鬼頭家はこちらを亡き者にする構えである。

 密かに地面から水を手繰り寄せるも、あのフィジカル強者ババア相手は無理だ。ほんと最悪。ゲロ吐きワームめ、やってくれるぜ。

 

 この人数を相手に桃と2人で持ち堪えられるか?

 鬼頭家は全員ワームに食われていたようで、その全員がきっちり此処に揃い踏み。目の前で殺気ムンムンだ。このままじゃ袋叩きにされてしまう。

 

 救援は直に来るとはいえ、オカルンの方もすでに限界だった。

 彼は地下で呪いの家に閉じ込められ、邪視に殴殺されかけている。ああもう、上も下も! こんなのどうしろってんだ!

 星子さーん!! 早く来てくれーっ!!

 

「悪いけどあんたらにかまってる暇ねぇから。オカルン達を助けないと」

 

 桃が鬼頭家に背を向けたその時。

 ゴウと、山が大きく鳴いた。

 

「ちょっ、また地震!?」

 

 人が立てないほど地面が揺れ、地底から轟く音は収まるところか勢いを増していく。

 

「ヤバイ!! でかい!!」

「テメェらのせいだからな!! 全部テメェらがやっちまった!!」

「はぁ!?」

 

 大気を切り裂く周波数に私は即座に念視を遠方へと飛ばし、絶句した。

 

「ウソでしょ!?」

『Wow』

 

 火山が噴火している。

 山の頂きから真っ赤に光る熔岩が爆発的に噴出し、黒煙と共に天まで一気に駆け上がっているのが私にも視えた。

 

 200年の時を経た大噴火は赤く輝く熔岩をボトボトと山の斜面に落とす。

 熔岩はゆっくりと、だが確実に下に向かって押し寄せていた。

 

「だから言っただろうが!! オレらが供物を捧げてたおかげで、大蛇様は火山からこの土地を守ってくれてたんだよ!!」

 

 自然の唸りの中、目を血走らせた鬼頭家のババアが吼えた。

 

 噴煙の中を火山雷が蛇のように這う。

 雷鳴がまるで脅すように鳴った。

 熔岩の流動性は低そうだが、この規模の噴火だ。下の町は確実に被害を受けるだろう、すぐに逃げないとここもヤバい。

 

「だが、もう終わりさ!! 大蛇様はお亡くなりになられた!! テメェらのせいでな!!」

「マジっすか…」

 

「 “天昇る竜は虹をかけ、山の怒りは村を飲み込む!!” この村の言い伝えの通りだ!!」

 

 はて。

 私は頭部を傾けた。

 

 この事象に詳しいであろう語り部を前に、ムクムクと好奇心が膨らんで止まない。

 言い伝えに対する根拠がワームの実在だとして、実に面白いことがある。

 

「どう責任取ってくれんだコラァ!!」

 

 鬼頭家のババアが唾を吐き散らし、鬼の首を取ったように喚いて、

 

 

『1つ、疑問があるのですが』

 

 

 私はウキウキと念話を放った。

 皆が一斉に私を見る中、私はワームの行動をよくよく思い出す。

 

『警句の “竜” を “ワーム” とみなす解釈は()()していませんか』

 

 天昇る竜は虹をかけ、山の怒りは村を飲み込む。

 この警句は非常に象徴的で、些か回りくどい。だからこそ鬼頭家の解釈には歪さを感じるのだ。

 

 この言い伝えを、ワームが噴火の前に現れ虹をかける何かをすると仮定しよう。

 だが、虹を作るには水と太陽光が必要だ。

 

『ワームは太陽光に曝露されると死滅する特性を持ちます。故に、ワームは噴火前に物理的に虹をかけることはできません』

 

 予兆としての()()()()()()()()は先ほど見られなかった。

 つまり逆説的に、言い伝えは外に出たワームの存在を虹に例えた、と再解釈をすることが出来る。

 

『更に、生贄を求めるワームの行動や存在を “虹” というポジティブな概念に喩えることは、象徴的に矛盾がみられます』

 

 しかし、だ。空腹で山の怒りを起こしたワームは生贄を求めたはず。

 その()()()()()姿()を、果たして美しい虹に例えるだろうか?

 

『よって、警句の “天昇る竜は虹をかけ” の竜がワームである前提は破綻します。竜はワームと異なる存在でなければならない』

 

 人間的観点からして、竜がワームである解釈は不整合なのだ。これは面白いぞ!

 ならばこの警句は、一体何を示していたのか。

 

「そうだ!! 大蛇伝説なんかじゃない!!」

 

 桃が弾かれたように顔を上げ叫ぶ。

 

「 “天昇る竜” は()()だ!! あの時の噴泉は火山が噴火するって予兆だったんだ!!」

 

 桃が言う噴泉。

 それは温泉でターボババアに助けられた際に噴き出したもののことだ。

 それなら科学的にも警句の辻褄は合う。

 

「昔の人は知っていた、だからちゃんと言い伝えで残していたんだ!! どっかで解釈がねじ曲がっちまったみてぇだけどな!!」

 

 今度は桃が勝ち誇るように鬼頭家を指さした。

 うんうん、でもね。

 

『しかしワームが火山エネルギーを食べ、間接的に噴火確率を抑える調停者であった可能性はゼロではありません』

 

 この仮説、普通に証拠不足なんだよなぁ。

 

「ほらみろ! テメェらが大蛇様を殺したせいじゃねぇか!!」

「うるせ〜!! 知らね〜〜!! てめぇどっちの味方だコラ!!」

『桃ですね』

 

 それに、信仰って招き猫にも力を与えるでしょ?

 邪視も二百年であんなに成ったし、水害担当の水の神(くらがり)も火山噴火に携わる火の神に成るんじゃないかと私は思ったんだけど。でもそうなると虹の解釈がなぁ。

 

 矛盾点を説けば、鬼頭家から更にワームと噴火の因果関係を聞くことができるかと思ったが…。

 鬼頭家は盲目的に仮説に便乗してくるだけで、根拠になる情報は持ってないし。ガッカリ。

 

 鬼頭家に「ワームのゲロが虹なんだよ!」とか言われたら、仰る通りですとしか言いようがなかった。

 確かに噴火前にゲーしたし、表現としては虹にもなるし。でもそうしなかったんだから、鬼頭家はただの狂信者である。

 

 私に向かって吠えながらも、桃は超能力でワームの臀部を、むん! と持ち上げた。

 

「やる気かい!! 責任は取ってもらうよ!!」

「ざけんな!! 責任なんか取るつもり無ぇし!! 人柱なんかくそくらえ!!」

 

 死体を鬼頭家に投げつけるつもりかと思っていたのに、桃が取った行動は予想だにしないものだった。

 

「オリャアアア!!」

「テメェ!! 大蛇様の亡骸になんてことを!! 待てコラァ!!」

 

 黒焦げの死体が宙を飛ぶ。

 桃はワームの尻を階段下まで投げ飛ばし、それを追いかけて走り出した。

 

「ヒロ!! こいつらにうちの邪魔させないで!!」

 

 この人数相手にそんな無茶な!

 まだワームを振り回してくれた方が勝機があったぞ!!

 

『説得を試みます』

 

 鬼頭家のババアを筆頭に押し寄せる一団が、瓦礫の散乱する道路を突っ切りやってくる。

 念でどうこうする時間もなく、咄嗟に私は立ち塞がるように手を広げた。こっちに構ってないで村守ったらどうよ!?

 

『大蛇信仰の核心は村を災厄から守ることでは』

「だからテメェらを捧げんだよぉ!!」

 

 ぬわーーっ!!*1

 

 腹部に重い衝撃が走る。

 ババアの蹴りを受けた私は吹き飛び、ジジ宅跡地の瓦礫に叩き込まれた。髪の擬態がドロリと崩れる。

 ライムズ星人に物理を任せるとこうなります、覚えておこう!

 

「テメェ、よくも大蛇様を!!」

「許さねえからなコラァ!!」

「責任取りなぁ!!」

 

 そして複数に囲まれて叩かれると逃げられないんですねぇ!!

 分かってたよこうなることくらい! 正論で止まるなら人を生贄にしないもの!!

 

 筆頭のババアはおじ達を引き連れ桃を追ったが、残りのババア四人衆が角材を手に私を殴打し始めた。やめなされやめなされ、惨い殺生はやめなされ!

 私は手足を折って丸くなり、角材の殴打と蹴りをできる限り背中で防ぐ。

 

 逃げようにも下手に動けば庇っているコアに打撃が届いてしまう。ゲル体は無痛だが、コアへの攻撃は痛いどころの騒ぎじゃない。

 集中が切れれば擬態が解ける。そうなれば弱点(コア)丸わかりの姿にフォルムチェンジしてしまうー!!

 

 SOSと現在状況を送りつければ雷鳴に紛れた地響きと、直後に山からガサガサと熊でも降りてきたかのような薮の鳴る音が勢いよく近づいて来る。

 

「な」

 

 角材が宙を舞った。

 迫り来る音に振り返った顔がぐんにゃり歪む。

 赤いグローブが振り抜かれる頃には、ババアたちは顎にクリーンヒットを受けてK.O.されていた。

 

「大丈夫でぃスか!」

『感謝します』

 

 白目を剥いたババアたちが地面に転がる中、水玉模様のパジャマを着た@#/&が周囲を警戒しながらグローブを構え、私の前に立つ。

 空には巨大なUFOが浮かび、浮遊音を奏でながら光り輝いていた。彼はあそこから飛び降りて来たのだ。

 よかった、増援が間に合った!!

 

「皆さんはどこでぃす!!」

『オカルンは邪視と地下に。桃は敵に追われ町へ逃走中』

 

 桃がどこに向かうか念視で追っていたが、見覚えのある温泉街の道を走っていることに気が付き意図を理解した。

 あの子、ワームの体を通して間欠泉のお湯を。溶岩を塞き止めるつもりだ。

 UFOに相乗りする分体から受信した情報と照らし合わせ、即座に優先順位を定める。

 

『穴を塞ぐ瓦礫の撤去を。オカルンを救助します』

「地下の穴はどこでぃすか!」

『こちらです』

 

 指さした先の瓦礫に拳を引いた@#/&──ペニーが一撃で瓦礫の山を吹き飛ばす。

 瓦礫に埋もれていたターボババアが吹き飛んだ瓦礫と一緒に転がり出てきた。

 

『地上は任せます』

 

 万が一のため、頭部へコアの1つを動かす。そして顔上部のゲル体を分断した。この頭をお前に預ける。

 死んだら後はよろしくね!

 

 背後のペニーの悲鳴と分体の了承を余所に、私は地下空間へと飛び降りた。

 

 

 

 

 

「うう…綾瀬さん、助けて…」

 

 オカルンは満身創痍で瓦礫の上を這っていた。

 だがボロボロなのは彼だけではない、肩に担いだ邪視もだ。

 邪視は白目を剥いて意識を飛ばしていた。

 

 彼は成し遂げたのである。

 ()()を使い切り、肉体の限界で変身すら解けながらも邪視に勝った。

 

 が。

 ボウと足元に火がついて、オカルンはジジの体を抱え後退する。

 

「足場がやばぁい! 綾瀬さぁん!! ヒロさぁん! ターボババアー! 早く助けてえ!! ゲホ!」

 

 大きな地震の後。岩壁のヒビから火山ガスが噴出し、そして熔岩がドロリと滲み出していた。

 グツグツと嵩を増す溶岩に気温は上がり続け、汗すら出ない。熱気と煙に噎せながらジジの体を担ぎ直そうとして。

 首にひたりと何かが巻き付く。

 

「がっ…!!」

 

 つま先が空を切り、オカルンは自分の首を絞める邪視の腕を死に物狂いで掴んだ。

 絞められる首がギチギチと音を立てる。

 

「熱いぞ、なんで燃えとるんじゃ」

「う、ぐ…」

 

 目覚めた邪視は呪いの家の上に立ち、オカルンを片手で吊るし上げた。

 彼の体重を支えるのは、邪視の腕を必死に掴む彼の手だけだ。

 

 ワームが岩壁に空けた通り道の至る所から熔岩が滝のように流れ、マグマの水位が迫り来る。

 呼吸する度に喉が焼け、目が干上がるようなそんな地獄の有様。

 

「貴様を殺してさっさと出るじゃあ」

 

 首に指が食い込む。

 邪視は呪いの家の端へ歩き、溶岩湖の真上でオカルンを投げ捨てた。

 

 落下した彼が目を見開いて、

 ()()()()()()

 

 お前の苦労をずっと見ていたぞ!!

 

『トラクタービーム起動。対象(ターゲット)捕捉(ロック)。最大出力にて展開。緊急浮揚作戦、開始(Fire up)

「わかったでぃす!」

 

 分体が中継し指示を飛ばす。

 UFOの操縦席でペニーの息子、チキチータが淀みなくコンソールを動かしスイッチを切り替えれば、眩い黄色の光線が地下空間の闇を切り裂き降り注いだ。

 

 突如として照射された光に驚き、邪視が目を庇う。

 上へ伸ばされたオカルンの手を私は捕まえた。

 

『お待たせしました』

 

「ヒロさん!!」

「貴様ぁ、邪魔ばかりしくさりおってえ!」

 

 あースゴい、すごい殺気。殺す気と書いて殺気です。邪視が呪いの家を足場にしているおかげで呪弾即殺がなくて助かる。命拾いしたな!!

 私は雑に擬態し直した半溶けの髪をそのままにオカルンの胴をガッシリ掴んだ。シートベルト、ヨシ!

 

 降り注ぐ光の濃度が変化した。

 途端に瓦礫や熔岩が浮かび上がり、邪視が体勢を崩す。

 

『上へ参ります』

「うわっ!!」

 

 水中から急浮上するようにグンと引き寄せる光線の中を、私はオカルンを抱え飛ぶ。

 反転した重力下ならコア2つ分でも問題なしだ、問題あるのは私の体だけ! ウォオオオ!! 上昇負荷(G)ァアア!!

 

 邪視が呪いの家を足場に飛び上がった瞬間、私は地上のビーム照射外へ横っ飛びで抜け出す。

 

 邪視が続けざまに穴蔵から飛び出し、遅れて照射される黄色い光が眩さの度合いを減らした。

 オカルンの重みに負け、穴の横にべちゃりと落っこちた私たちの前にペニーが立った。さっきの分体が元の姿で彼の後頭部に張り付いている、最強の盾である。

 味方になるとホント心強いったら。

 

「なんじゃ貴様、妖怪か? うじゃうじゃと邪魔を、………!!」

 

 後は星子さんが地上に降りてくるまで邪視を足止めするだけ───ところが。

 

 邪視の殺気の矛先が突如として変わった。

 

「あっ、そっちは桃さんのいる方向でぃす!」

 

 邪視が山中に突っ込んでいく。

 森を突っ切った直線距離の先にいるのはワームをホース代わりに消火活動する桃と、途中参戦した星子さんの弟子であるツチノコ神社の神主。そして()()()()()()である。目ん玉お化けめ、視力も化け物級だ。

 怨嗟の元凶がのこのこ近場を歩いているんだもの、そりゃ真っ先に始末しに行くか! 問題は邪視に見境がないところだが。

 

「待て…! お前の相手はジブンだ、邪視っ! 綾瀬さんに手を出すなぁ!!」

「オカルンさんはここにいるでぃス!!」

 

 素早い邪視に横を抜かれ、慌ててペニーが走り出す。分体が離れ、こちらに合流した。

 

『チキチータ、目標が移動します』

「降りる場所を変えるでぃす!」

 

 オカルンが体を引き摺るようにして後を追う。そんな彼に、砂埃まみれのターボババアが半ギレで絡んだ。

 

「おいコラ桃の野郎どこだ、ワシを生き埋めにしやがって! グッバイ確定だぜ」

「ターボババア! 綾瀬さんのとこに邪視が、どうしよう!」

 

 よろけるオカルンにもお構い無しでターボババアがよじ登る。

 

「なにボケ面でチンタラ歩いてんだ! ワシの力はどうした!」

「もう本気2回使っちゃって変身できないよ!」

「テメェはほんと情けねえクソだぜ!!」

 

 私は彼に付き添って歩くことにした。共倒れするから肩は貸せない。

 なんなら彼の到着は遅い方がいい、戦闘の邪魔だ。

 

「大層な祭り騒ぎじゃねえか」

『直に開口部(ハッチ)が開放されます 。出入り口(ゲート)にて待機をお願いします』

 

 UFO内から見える火山噴火に、タバコに火をつけた星子さんが辟易した様に言った。

 

「ねぇマジでこっから飛び降りるんですか!? 足場ないんすけど!!」

「そうだな。お前ぇが足場になれ」

「ええーっ!?」

 

 学校からUFOにアブダクション(  誘拐  )され、救出に巻き込まれた人体模型の太郎が悲鳴をあげる。

 

「着陸地点に着いたでぃす、いってくるでぃーす!」

 

 急に落ちても良いようにか、太郎の背中に足を乗せた星子さんが頷いた。乗り捨て(ヨッシー)する気だこれ。

 

「行くぞ太郎!」

「これ降り方合ってるんすかコレェ!」

『合ってはないです』

 

「ほらぁ! 降りてくださいよ!!」

「よし、降りるぞ!」

「そっちじゃなぁい!!」

 

 地上では邪視が暴れ、桃と神主と鬼頭家が共闘を強いられていた。

 場が混沌とする中、開口部(ハッチ)が開きトラクタービームが展開する。

 

 ピカピカに照射されるビームの中、太郎の背を足場にバットを担いだ星子さんが満を持して降下した。

 うおー! 星子さーん!! そんな降り方しなくてもいいよー!

 

「師匠!!」

「満次郎!! 吐普加美依身多女(とおかみえみため)!!」

「ハイ!!」

「太郎は合図で突っ込め!!」

「はいい!!」

 

「行くぞ河童!!」

「でいす!!」

 

 星子さんが邪視へ突撃する。

 伴うペニーが呪弾で地に沈むも、邪視の拳を躱す星子さんはスイングしたバットで邪視の顎をかち上げた。

 

 足払いを躱し飛び上がった邪視へ、咥えていた煙草を吐き捨てる。

 攻撃の目測をズラし、星子さんはバットで邪視を地に叩きつけた。キャー!! 星子さーん!!

 

「太郎!! 来い!!」

「おっしゃあああ!!」

 

 クラウチングスタートをきった太郎が邪視に突撃した。

 地に叩きつけられた邪視はブリッジ状態から跳ね上がり、太郎に拳を叩き込んだ。

 太郎だったものが四散する。

 

 なんだって走るだけの人体模型が救出組に参戦したのか、現地の私には謎だった。

 だがその理由に今気づく。

 バラバラに粉砕された人体模型の内側には、あちこちに札が貼り付けられていた。

 

 邪視にまとわりつく太郎の体が急速に再構成される。

 後方で合掌する満次郎が呪文を唱える中、カチリと人体模型は元の形に収まった。

 邪視をその中に封じて。

 

「え!?」

 

 ピタリと終わった戦闘に桃が唖然と声を漏らす。

 1分とかからない短期決戦、その終幕であった。

 

「ほかくした。帰るぞ」

 

 星子さんはバットを担ぎ、事も無げに言った。

 

 素晴らしい。

 泡立つような興奮を私たちは分かち合う。

 脅威が瞬く間に拘束され無力化される、この制圧力よ。この技術を解析し転用すれば我々は更なる進化を遂げるだろう。

 

 足を引き摺り現れたオカルンに桃が駆け寄る。

 流れる熔岩と轟々と燃え盛る山火事が辺りを盛んに照らしている。

 黒焦げのワームの死体が間欠泉の温泉を噴き出し続けている。

 ジジも未だ邪視に体を取られたままだ。

 随分と酷い1日で、しかし誰も死ななかった。私を褒めてやりたいところだ。

 

 水を操るライムズ星人である私たちは、消火活動へ向け気合いを入れ直すのであった。

 後片付けまでがんばるぞい!

 

*1
知ってた お待たせ 33-4

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