片付けと慣らしの運動が終わった時にはすでに日が昇ろうとしていた。
多少動いてみてわかったことだが、筋力というかそういうものはそこまで変化していないということがわかった。
だが、一つ。大きく違うことがある。
それは足だ。
俊敏性というべき戦闘では大事なそれが大きく上昇していたのだ。
疾い。
正直にいえば、そんなところだ。
こんな少女にすら私は劣っているのかと思いつつ今度は弓を用意する。
しかし、大きさが合わないのかうまく放つことができない。
それもそのはずだ。
なにせ身長が20㎝ほど違う。
同じ弓など使えるはずがない。
そう思って今の自身に適した形に弓を変えていく。
「・・・こんなものか。」
そう呟き、一つの弓を完成させる。
それは生前いつも使っていたのようなカーボン製の何の装飾もついてない弓だ。
しかし、この体になった影響なのか、そんなものではいけないと思ってしまい、真紅の剣に似たものに変化していた。
「この体は派手なものが好きなのか?」
どちらかといえば、美しいものなのだが、そんなことはどうでもいい。
そろそろ自身のマスターである遠坂凛が起きてくると判断し、料理の準備をする。
「この体はどちらかといえば、作られる側だったのだろうか?」
料理自体は何も問題なかったのだが、作るという行為に少し違和感を感じつつ準備が終わる。
「すごい。ちょっと見直したかも。」
起きてそうそう彼女はそう言った。
体調がすぐれないのか少しだるそうにする彼女に私は対応する。
「もう、日は昇っているぞ。君はずいぶんだらしないんだな。」
自身が遠坂凛を知っていると気づかれたらまずいためそう演技する。
「おはよう。貴女はずいぶんリラックスしてるみたいだけど?」
少しぎこちない私に気づくことはなく彼女はのほほんと私の用意した料理を食べ始める。
「おいしい!アーチャー。あなた、生前メイドでもしていたの?」
メイド・・・という言葉に少し違和感を感じてしまうも自身の今の姿が本来のものではないと気づき取り繕う。
「メイドか。似たようなことをしていたのかもしれないな。」
「なにそれ。記憶が少し混同しているとはきいていたけど一つも思いだせないの?」
「・・・どうやらそのようだ。ぼんやりとならあるのだがな。」
「まあいいわ。それじゃあアーチャー、出かけるから支度しなさい。街を案内してあげるから。」
ふと彼女はそう言った。
本来私はこの街を知っているので街の地形の把握なら問題ないのだが。
まあいいと思いつつ。マスターである遠坂凛を見る。
「マスター。それはいいのだが、まだ私は君の名前を教えてもらっていない。これは大切なことだ」
「あっ、名前――ごめん。忘れてたわ。」
「大丈夫だ。それで私は君をなんと呼べばいい?」
「――遠坂凛よ。貴女の好きなように呼んでいいわ。」
「それじゃあ遠坂・・・いや、凛と呼ぼう。うむ、君にはこの響きがよく似合っている。」
遠坂はそれを聞いて少し顔を赤らめていたが、そんなことよりとすぐさま声を出す。
「それよりもアーチャー。あなたのその男のような話し方私はまだ納得していないのだけれど?」
「・・・努力はしよう。」
「あと、あなたの服も今日買おうかしら。」
「それは必要ない。凛。私は霊体化することが――。」
「そんなことは知ってるわよ。でも、あなたこうでもしないとその服しか着なさそうだし――覚悟しなさい。」
「――ッ!」
そうして悪寒を感じた私は逃げるように先に玄関を出た。
街に出た思ったことは一つだった。
――なつかしい。
昔見た風景。
今ではその記憶は朧気だが、間違いなくここにきたことはあると頭の中で理解できていた。
「どう?アーチャー。ここなら見通しがいいでしょ?」
「確かにいい場所だ。だが最初からここにくれば町を歩く必要もなかったのではないかね。」
「ん?何か言った?」
「いや、なんでもない。」
「そう。ねぇアーチャー。」
「どうした凛。」
「あなたの目ってどこまで見えてるの?」
「そうだな。あそこの橋のタイルを数えるくらいなら見ることができるぞ。」
「驚いた。アーチャーって本当にアーチャーなのね。」
「・・・。」
なめられているのだろうか。
まあ、見た目だけではただの少女だし本来の肉体であれば彼女は言っただけで信じてくれただろうと思いながら周りを見渡す。
その後もなんだかんだとありながら今日を終えるのだった。
次の日の朝
凛は私を連れずに学校にいくと宣言した。
私はそれに納得するもすぐに納得した私に少し困惑しているようだった。解せぬ。
「だが、霊体化して付近で見張らせてもらうぞ。」
「当たり前よ。少なくとも外に出ていくときはあなたを近くにはおいておくわ。」
これでも私は騎士の端くれだ。
見た目的にはお嬢様でも私にだって矜持はある。
プライドはそのほとんどをすててしまったが。
学校につくと凛は驚いていた。
それはもちろん、学校に魔術の気配があったからだ。
凛と念話で話すと日が沈んでから結界について調べるとのことだった。
私は凛の周りを警戒しながら周りを散策する。
いた・・・。思わずつぶやきそうになったが、口を閉じる。
衛宮士郎。
彼には時くれば聞かなければならない。
私にとって私が一番記憶の手がかりとなるはずだ。
時刻は日が沈んだ、夕方。
学校に人の気配はなく、生徒はいないはずだ。
「はじめるわよ、アーチャー。まずは結界を調べましょう。」
私はうなずいた。結界自体の基点見えてはいないだろうが、気配くらいはわかる。
その時だった。
近くにサーヴァントの気配が感じた。
「凛。近くにサーヴァントが向かってきているぞ!」
「お出ましってわけね。」
そこに現れたのは青いタイツの槍を持った男。
「ランサーのサーヴァント。・・・一応聞くけどこれあなたの仕業?」
「いいや?俺は命じられたことをするのみだ。あいにく今は小細工なんか言われてねえな。」
「下がれ、凛。奴は私がやろう。」
そうして私は真紅の剣を出す。
「へぇ。話がはえやつは嫌いじゃねえ。俺は見ての通りランサーだ。それで、お前はセイバーか?」
「・・・さあな。ライダーかもしれんしアサシンやもしれん。もしくはアーチャーかもしれんぞ?」
「なるほどな。他の分野も自信がある口か。そうなるとライダーか。まあなんでもいい。始めようか。」
「アーチャー、手助けはしないわ。貴女の力、ここで見せて!」
凛の声をきいた私はすぐさま駆け出す。
その速度はランサーほどの足を持つものでも驚くものだった。
「ちっ!」
どうやらこの体になって動体視力も上がったようでランサーの目にも止まらない速度にも少しはついていけるようになっていた。
しかし、流石はランサーか。少しずつ自身の速度を上回っていく。
まさに神速。
受け流すことは可能。
防ぐことも可能。
だが、攻めることができない。
焦るな。
焦るところを見せれば負けてしまう。
槍と剣がぶつかりあう。
ふと、一つの隙をランサーが見せるも自身の目がそれは隙ではないと否定する。
「やっぱり隙を見せても攻めてこねえか。それにその速度。セイバーかライダーだろ?」
「さて、どうだかな。・・・それに今の君は本気ではないな?」
「よく見てやがるな。まああれだ。マスターに恵まれなかったということだ。」
「その点こちらが羨ましいと?」
「まあ、な。ところでなんだが、すまねえ嬢ちゃん。その話し方どうにかならねえのか?」
「なっ・・・。」
凛にも言われたことをこいつも言うのか。
いやおかしいとはわかっているがそこまでなのか・・・?
「まあいい。あまり時間がないんでな。すぐに終わらせるぞ。」
「・・・簡単に殺されるつもりはないがな。」
「ほう?ならばくらうか。我が必殺の一撃を。」
「そうだな。いずれは越えなければならない壁だ。」
魔力がランサーのもつ槍へと集まる。
それは間違いなく宝具。
「誰だ――!」
ランサーは反射的に振り返り、すぐさまそちらに向かって走る。
「アーチャー追って!」
「承知した。」
いるはずがないこの時間にいる生徒などいるはずが・・・あっ。
深呼吸をしながら、走る。
そして思う。
確かにいた。衛宮士郎という男が。
ランサーがもつ槍は再生を阻害する効果がある。
一度刺されればそれから回復させるのは難しい。
私がランサーに追いついた時にはすでに衛宮士郎という少年は刺された後だった。
ランサーは私たちを見るとすぐさま走り去っていった。
_____________________________
後書き的なやつ
たぶん、次回かその次くらいにバーサーカーとの戦闘になると思います。
アーチャーの口調とかその他もろもろはまだこき使います。